人的資源管理
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プレミアムで見るここから人的資源管理に入ります。第7章が組織のかたち、第8章がそこで働く人の行動を扱ったのに対して、この章はそれを支える仕組みの話です。誰を採り、どう配置し、どう評価し、いくら払い、どう育てるか。これらは経営者の気分で決めてよいものではありません。基準をあらかじめ決めておかなければ、同じ働きをした2人に違う処遇を与えてしまうからです。この節では、人事制度が何のためにあるのか、そしてどんな部品で組み立てられているのかを押さえます。
簡単にいうと
人事制度は「人を扱うためのルール」。ルールがないと、その場の判断で決まってしまって不公平になる。だから制度が要るんだよ!
① 人的資源管理とは何をすることか
人的資源管理は、企業が戦略を実現していくうえで、いま必要な人材と、これから必要になる人材を見通し、その条件を満たす人を確保していく一連の活動を指します。採用も教育も、そのための手立てです。
定義のなかで押さえたいのは、視野が現在だけではないという点です。3年後、5年後にどんな能力を持つ人が何人要るのかを読み、そこから逆算して今日の採用と育成を決める。これが人的資源管理の考え方です。
第1章で学んだとおり、ヒトは育成に時間がかかる資源でした。だからこそ、先を見て手を打つ必要があります。
② なぜ「制度」が要るのか
従業員が数人のうちは、経営者が一人ひとりを見て判断できます。ところが人数が増えると、そうはいきません。
・誰にどんな仕事を任せるか
・その人の能力をどう確かめるか
・確かめた結果を賃金にどう反映させるか
こうした判断を、その都度の裁量で下していては、公正さを保てません。同じ働きをした2人に違う結果が出れば、第8章で学んだ公平説のとおり、不公平を感じた側は是正しようとします。手を抜くか、辞めるかです。
そこで、判断の基準をあらかじめ決めておく必要が生じます。人事制度とは、人的資源管理を行うためのルールであり、その土台になるものだといえます。
③ 4つのサブシステム
人的資源管理は、ひとつのまとまったシステムとして考えられます。そのなかは、次の4つの部分に分かれます。
具体例
従業員が12人から90人に増える過程で、人事制度を整えていった運送会社の例です。
12人のころ(制度がない)
社長が全員の働きぶりを見ていました。賞与は「今年はよく走ってくれたから」という社長の判断で、封筒に入れて手渡しです。
この規模では、これで回ります。社長の目が全員に届いているからです。
40人になって起きたこと
拠点が3か所に分かれ、社長が全員を見られなくなりました。
・A拠点の所長は部下を高く評価し、賞与も多めに申請する
・B拠点の所長は辛口で、同じ働きでも評価が低い
・結果として、B拠点の優秀な社員が「A拠点に移りたい」と言い出した
基準がなく、誰が見るかで結果が変わっていたのです。これは第8章で学んだ公平説そのままの状況で、B拠点では離職が続きました。
制度を作った(4つのサブシステム)
評価システム 評価項目を「安全(無事故日数)」「効率(積載率)」「協力(応援に入った回数)」の3つに絞り、いずれも数字で測れるものにしました。
採用・配置システム 採用時に確認する項目と、配置転換の希望を年1回出せる仕組みを定めました。
報酬システム 評価の3項目と賞与の関係を表にして、全員に配りました。

人事制度の4つのサブシステム
試験のポイント
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| 答えるべき問い |
|---|
| 評価システム | 従業員をどのような観点と尺度で評価するか |
| 採用・配置システム(雇用管理) | 従業員にどのような仕事を与えるか |
| 報酬システム | 成果を出した従業員に対してどう報いるか |
| 能力開発システム | 従業員の能力開発をどのように援助するか |
④ 中心にあるのは評価
4つのうち、要になるのは評価です。
理由を考えれば分かります。
・報酬を決めるには、その人の働きを測らなければならない
・配置を決めるにも、何ができる人かを知る必要がある
・能力開発の中身も、いま何が足りないかが分からなければ決められない
評価が曖昧なままでは、残り3つのどれもが根拠を失います。だから評価が中心に置かれるのです。
⑤ 4つは連動する
4つのサブシステムは、独立して動くものではありません。互いに矢印でつながっていると考えてください。
たとえば、評価で「挑戦した人を高く見る」と決めたのに、報酬が年功で決まり、配置も固定されているなら、誰も挑戦しません。4つの向きが揃って初めて、「従業員をどう扱い、どう報い、どう動機づけるか」という一貫した姿勢が形になります。
この章のこれからの節は、4つのサブシステムを順に細かく見ていく構成になっています。
| この章の節 | 対応するサブシステム |
|---|---|
| 第2〜3節(職能資格制度、成果主義) | 制度の土台 |
| 第4〜6節(採用・配置異動・退職) | 採用・配置システム(雇用管理) |
| 第7節(人事評価) | 評価システム |
| 第8〜10節(賃金、年俸制ほか) | 報酬システム |
| 第11節(能力開発) | 能力開発システム |
| 第12〜20節(労働法規) | 制度全体の前提となる法律 |
⑥ 第8章とのつながり
人事制度は、第8章で学んだモチベーション理論を制度として形にしたものだと見ることもできます。
・報酬システム → 過程理論(期待理論、公平説)が扱ってきた領域
・能力開発システム → 成長欲求や内発的動機づけに関わる領域
・評価システム → 目標管理制度(MBO)が組み込まれる場所
理論を知っているだけでは人は動きません。それを制度に落とし込むところまでが実務です。
4つが連動したから効いた
この会社がうまくいったのは、4つの向きが揃っていたからです。
「無事故を評価する」と決めただけなら、現場は「そうは言っても急がされる」と受け取ります。ところがこの会社では、
・評価項目に無事故日数が入り(評価)
・それが賞与に反映され(報酬)
・安全運転講習の費用も会社が出し(能力開発)
・無事故を続けた人が優先的に希望の路線に移れる(配置)
という形で、4方向すべてが同じことを指していました。
導入から3年で、事故件数は年14件から3件に減り、離職率も18%から7%に下がっています。
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