組織行動論
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プレミアムで見る組織文化を学び、組織学習を学んできました。この章の締めくくりは、それらを踏まえた戦略的組織変革です。業績が悪化し、変革が必要だと誰もが分かっているのに、なぜ組織は変われないのか。この節では、変革を妨げる力の正体を明らかにし、そのうえで何から始めればよいのかを押さえます。2次試験でも、組織面の助言を考えるときの土台になる内容です。
簡単にいうと
環境が不連続に変わったとき、組織能力や戦略を根本から見直すこと。鍵は「組織文化の意図的な変革」と「学習する組織への変革」だよ!
① 戦略的組織変革とは
組織が環境変化に適応し、成長を遂げるためには戦略的な組織変革が必要になります。
戦略的組織変革とは、組織の戦略、構造、文化、プロセスなどを抜本的に変革することです。
変革の対象が4つ挙げられています。
・戦略
・構造
・文化
・プロセス
この4つは、第1編から第2編にかけて学んできた内容そのものです。経営戦略(第1編)、組織構造(第7章)、組織文化(第10節)。それらをまとめて抜本的に変えるのが戦略的組織変革です。
② 変革の鍵はどこにあるか
その鍵は組織文化の意図的な変革、すなわち学習する組織への変革を総合的に行うことにあります。
ここが重要です。制度や組織図を変えるだけでは足りず、組織文化を意図的に変えることが鍵だとされています。
第10節で学んだアンゾフの命題「戦略は組織(文化、風土)に従う」を思い出してください。文化を変えなければ、新しい戦略は実行されません。
③ 高次学習が必要になる
環境変化に対する長期適応を図るためには、既存の枠を超えた組織学習(高次学習)が必要となります。
具体例
創業90年の印刷会社が直面した状況です。
連続的な変化への対応(低次学習で済んだ時期)
1990年代まで、この会社が対応してきた変化は連続的でした。
・印刷機が活版からオフセットに変わった
・版下作成が手作業からコンピュータに変わった
・納期が2週間から1週間に短くなった
いずれも「印刷物を作って納める」という枠組みの中の変化です。設備を入れ替え、手順を見直せば対応できました。
漸次的進化過程における継続的な改善の積み重ねです。
不連続な変化(高次学習が必要になった)
2010年代に入り、様相が変わります。
・顧客が「紙のカタログをやめてWebにする」と言い始めた
・印刷物の総需要そのものが年5%ずつ減り続けた
・単価は10年で4割下がった
これは印刷物を作って納めるという枠組みの外側で起きている変化です。印刷機をどれだけ新しくしても、対応できません。
環境が不連続な変化を起こしたとき、組織は従来の組織能力や戦略を見直し、環境との新たな関係を抜本的に再構築する必要に迫られるというのは、この状況のことです。

レヴィンの組織変革3段階モデル
試験のポイント
簡単にいうと
変革が必要だと分かっていても実現しない理由は3つ。コストが見えない・必要性に気づけない・それでも続けてしまう。埋没コストと有能性のわなは用語として要暗記!
① なぜ変革は実現しないのか
業績が落ち込み、危機的な状況に追い込まれ、変革が要ることも分かっている。それでも実現しないことがあります。考えられる理由は次のとおりです。
理由は大きく3つの群に分かれます。
② ❶ 変革には既存の行為を継続する場合には現れないコストが伴うから
埋没コスト
革新のコストの典型は埋没コストです。こうしたコストは現在の状況にとどまる限り発生しないため、組織が現状に執着する要因となります。
埋没コストとは、取り戻せないコストのことです。組織変革の場面に当てはめると、性格がはっきりします。いまのやり方を続けている限りは表に出てこない。ところが、それを捨てて新しいやり方に移った瞬間に発生する、そういうコストです。
定義が長いので、要点を押さえましょう。
簡単にいうと
変革は「必要性の認識」から始まる。そのために要るのが「リッチな情報」と「スラック資源」。余裕がないと、そもそも多様な解釈ができないんだ!
① 変革の必要性の認識から始まる
変革にあたっては、まず経営者もしくは経営者グループによって変革(高次学習)を創始する必要性が認識されなければなりません。
前のテーマで見たとおり、必要性を認識できないこと自体が抵抗要因でした。だからこそ、ここが出発点になります。
② リッチな情報
そのために要るのが、組織の既存の手続きを通って加工された情報ではなく、より生に近いリッチな情報です。そして経営者は、その意味するところを自分の責任で読み解かなければなりません。
リッチな情報(経験)とは、いままでにないような多様な解釈(意味・教訓)を導き出せる程度が高い、すなわち潜在的多義性が高い情報(経験)のことです。
定義の要点を押さえましょう。
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前節で学んだ高次学習(ダブルループ学習)、つまり既存の価値や目標、政策などの枠組みを超えて行う学習活動です。
④ 環境の不連続な変化が引き金になる
環境が不連続な変化を起こしたとき、組織は従来の組織能力や戦略を見直し、環境との新たな関係を抜本的に再構築する必要に迫られます。
不連続な変化という点が大事です。少しずつの変化であれば、前節の漸次的進化過程(低次学習)で対応できます。
・連続的な変化 → 漸次的進化過程 → 低次学習で対応
・不連続な変化 → 革新的変革過程 → 高次学習が必要
⑤ この章の流れ
この章の終盤は、組織文化・組織学習・戦略的組織変革をひとまとまりとして扱っています。
組織文化(第10節)→ 組織学習(第11節)→ 戦略的組織変革(第12節)
という順に並んでいるのは、次の筋道があるからです。
1. 組織には文化があり、それが行動を方向づけている
2. 文化は組織学習の成果として形成される
3. 環境が不連続に変わったとき、文化を意図的に変える(=高次学習)必要が出てくる
3つの節を切り離さず、ひと続きの話として理解してください。
⑥ 第4章とのつながり
第4章で学んだ革新者のジレンマを思い出してください。
リーダー企業が破壊的イノベーションに対応できないのは、主要顧客の声に応えるという合理的な判断の積み重ねによるものでした。
これも、既存の枠組みのなかで最適化を続けた結果(低次学習)であり、枠組みそのものを疑うこと(高次学習)ができなかった、と言い換えることができます。
この会社が取り組んだのは、次の4つを同時に変えることでした。
・戦略……「印刷業」から「顧客の情報発信を支援する業」へ
・構造……製版部・印刷部という機能別から、顧客業種別のチーム制へ
・プロセス……受注生産から、企画提案型へ
・文化……ここが最も難しかった
文化の変革が鍵だった
設備も組織図も1年で変えられました。ところが、社員の意識が変わりません。
・「うちは印刷屋だ」という自己認識が根強い
・Web制作の提案を「本業ではない」と感じる
・「刷ってなんぼ」という言葉が日常的に使われる
この会社の社長は後に「設備を変えるのに1年、人の頭を変えるのに7年かかった」と述べています。
組織文化の意図的な変革、すなわち学習する組織への変革を総合的に行うことが鍵というのは、こういうことです。
・回収不能なコスト
・現状を続ける限り発生しない
・変えようとしたときに初めて発生する
だから、変えないほうが「損をしないように見える」のです。
既得権益
いまの組織均衡を崩す変革は、既得権益を失うことを意味します。だから組織の内外にいる利害関係者は、強く抵抗する見込みが高い。これが抵抗要因のひとつになります。
過去問では、次の記述が正しいものとして出題されています。
『組織内で大きな予算を有し決定権限を持つグループは、自らの利益や権力を守ろうとする』
これまでに大きな予算を有し決定権限を持つグループは、その割合を減らされる可能性が生じるため、抵抗勢力になる可能性があります。
③ ❷ 組織は変革の必要性を認識することができない可能性があるから
ルーティン化による外部シグナルの排除
直面する環境の多様性や不確実性を除去するために、組織は外部環境の変化に関する情報を集め処理するプロセスをさまざまなルールや手続きとしてルーティン化します。
ところが、そのルーティンはいまの事業を回すために作られたものです。だから、そこに直接関わらない情報やデータは通りません。変革が要ることを告げる外部からの信号も、そうやってふるい落とされてしまいます。
ここは重要です。情報を集める仕組みそのものが、既存事業向けに作られているため、変革が必要だという信号が届かないのです。
第4章の革新者のジレンマで、リーダー企業が破壊的技術に気づけなかったのと同じ構造です。
有能性のわな
組織も利害関係者も、満足できる水準を超える利益を得ていて、これといった不満がない。この状態では、いまのやり方や戦略より優れたものをわざわざ探そうという気が起きなくなります。これを有能性のわなといいます。
有能性のわなという用語を押さえてください。
うまくいっているからこそ、変える動機が生まれないという状態です。業績が悪いときより、そこそこうまくいっているときのほうが変革が起きにくい、という逆説的な指摘です。
第7章第4節で学んだ満足化基準を思い出してください。人は十分満足できる水準に達すると探索を止めます。有能性のわなは、それが組織レベルで起きている状態です。
④ ❸ たとえ業績が悪化しても、なお既存の行為を継続しようとする強い力が作用するから
4つの理由が挙げられています。
| 理由 | |
|---|---|
| ① | 失敗に対する責任を認めることで心理的コストが上昇するため、経営者や管理者は新しい行為よりも従来の行為にコミットする |
| ② | 多少の損失が発生しても、従来の行為を止めることで新たに埋没コストが発生するのを防ごうとし、今度こそは成功するだろうという期待をもって、従来の行為を追い続ける |
| ③ | 失敗によって損失が生じ、環境から脅威がやってきた場合、組織は従来慣れ親しんできて、経験も豊富な対応のほうを選択する傾向がある |
| ④ | 仮に管理者が適切なデータを手にできたとしても、まだ壁があります。そのデータを読む枠組みが、いまの組織文化に染まっているからです。結果として、重要さを低く見積もったり、見当違いの読み方をしたりしがちになります |
※ ❸の内容は❶❷の内容と一部重複します。
⑤ ④がとくに重要
4つのうち、④は前節までの内容と直結しています。
適切なデータを入手できても、それを解釈する認知枠組が既存の組織文化に依拠しているため、正しく読めないというのです。
前節の組織学習サイクルの4つの断絶でいえば、曖昧さのもとでの学習(④の断絶)に近い状態です。
そして第10節の組織文化が、ここで抵抗要因として働いていることも分かります。文化の変革が鍵だとされる理由が、ここにあります。
⑥ 抵抗にあたらないもの
過去問では「組織が変化へ抵抗する理由として最も不適切なもの」を選ばせる問題が出ています。
抵抗の理由として正しいもの
・個人が変革を志向していたとしても、グループの規範がこれを抑制する慣性をもつから
(その個人が属するグループの規範が変革を抑制するような力(慣性)が働く)
・組織が有する公式化されたルールが、既存のルールに従うよう組織メンバーを社会化するから
(既存のルールに従うような力学は、それを逸脱するような変革を起こしにくくする)
・組織内で大きな予算を有し決定権限を持つグループが、自らの利益や権力を守ろうとするから
・組織を構成するサブシステムが存在するため、変化が部分的なものにとどまりがちになるから
(規模が拡大するにつれ部門化され、それぞれ異なる文化や規範が形成されるため、特定のサブシステムで生じた学習活動が全社的な広がりにまで至らないことも多い)
抵抗の理由ではないもの
・組織固有の特殊スキルを持つグループが、組織の外部へと専門家ネットワークを広げているから
外部へと専門家ネットワークを広げているのであれば、組織変革が生じたとしても、その変化に対する対応力が高いと考えられます。
外部とのつながりは、抵抗要因ではなく、むしろ対応力を高める要因です。
第4章のオープン・イノベーション、第7章のバウンダリー・スパンニング、前節の外部組織との接触が知識創造を促進するという論点と、いずれも同じ方向を向いています。
具体例
業績が3年連続で悪化していた中堅アパレル企業の経営会議を覗いてみましょう。3つの理由群がすべて現れています。
❶ 埋没コストと既得権益
この会社は、全国に120店舗を構えていました。オンライン販売への転換が議題に上がります。
埋没コスト 店舗の内装に投じた総額28億円は、閉店すれば回収できません。現状を続ける限り、この損失は表に出ません。帳簿上は資産として残り続けます。
閉店を決めた瞬間に、28億円が特別損失として計上されます。「いま決めると、今期の赤字が一気に膨らむ」という理由で、判断が先送りされました。
既得権益 店舗運営本部は、社員の6割と予算の7割を握っていました。オンラインへの転換は、この割合を減らすことを意味します。本部長は会議で一貫して反対しました。
組織内で大きな予算を有し決定権限を持つグループは、自らの利益や権力を守ろうとするという、そのままの姿です。
❷ 必要性を認識できない
外部シグナルの排除 この会社の月次報告には、店舗別売上、客単価、在庫回転率が並んでいました。
既存のビジネスを管理・運営するために構築されたルーティンです。
一方、「顧客が来店前にどこで情報を得ているか」というデータは、どこにも報告されていませんでした。変革の必要性を示す外部シグナルが、報告の枠組みに入っていないのです。
有能性のわな 実はこの会社、3年連続の減収ではありましたが、営業利益はまだ黒字を保っていました。
・株主からの追及もない
・給与も賞与も維持できている
・「業界全体が厳しいのだから」という説明が通っている
満足水準を超える利潤を得ており、とりたてて不満がない状態です。だから、あえて優れたものを探索しようとする動機づけが失われていました。
❸ それでも既存の行為を継続する
責任と心理的コスト 店舗網を拡大したのは、現社長が専務だった時代の決定でした。失敗に対する責任を認めることで心理的コストが上昇するため、「もう少し様子を見よう」という判断が繰り返されます。
今度こそはという期待 「来春の新ブランドで反転させる」という説明が、3年続けて行われました。
慣れ親しんだ対応の選択 打ち出された施策は、セールの前倒し、既存店の改装、人員の再配置。いずれも従来慣れ親しんできて、経験も豊富な対応です。
データの解釈 外部のコンサルタントが「オンライン比率が業界平均の3分の1」というデータを示しました。
ところが会議では「うちの顧客層は店舗で試着したい人だから、この数字は当てはまらない」と解釈されました。
データを解釈する認知枠組が既存の組織文化に依拠しているため、重要性を過小評価してしまうという、まさにその状態です。
転機になったもの この会社が動いたのは、外部から迎えた役員が、社外の専門家ネットワークを通じて他業界の転換事例を持ち込んでからでした。
外部とのつながりは抵抗要因ではなく、対応力を高める要因だという指摘が、ここでも当てはまります。
試験のポイント
・言い換えれば潜在的多義性が高い
ふつう、情報は「はっきりしているほうがよい」と考えます。ところが変革の場面では逆で、いろいろに読める情報こそが役に立つというのです。
③ なぜ多義的な情報が要るのか
加工された情報は、既存の枠組みで整理済みです。月次報告の数字は、既存事業を測るために作られています。そこからは、既存の枠組みの中の結論しか出てきません。
一方、加工されていない生の経験は、いろいろに解釈できます。だからこそ、これまでと違う結論にたどり着く可能性があるのです。
前節で学んだ知識創造の促進要因に経営者の主観的な思いは、時に曖昧であり、その曖昧さは解釈の多義性を生み、従業員にこれまでと異なる取り組みを促すことがあるという指摘がありました。同じ考え方です。
④ リッチな情報を得るための要件
リッチな情報を獲得し、また効果的な解釈を行うためには、次のようなことが要件になります。
❶ スラック資源の保有
現在の日常業務で使われていない、変革のために利用可能な組織的なスラック資源(余裕)を保有すること。これがないと多様な解釈をする余裕がなくなります。
スラック資源という言葉は、この科目で3回目の登場です。
| 章 | 文脈 |
|---|---|
| 第3章 | 組織スラック(余裕資源)を多角化に活用する |
| 第7章第14節 | スラック資源の創設により不確実性のショックを和らげる |
| この節 | 変革のために利用可能なスラック資源がないと多様な解釈ができない |
いずれも「余裕があることの価値」を述べています。
余裕がないと、目の前の業務をこなすだけで精一杯になり、別の解釈を考える時間も気力も残りません。これは実務的にも納得のいく指摘です。
❷ 加工されていない情報に触れること
既存の情報処理手続きによって加工されておらず、多様な解釈が成立し得る情報に触れることが要件とされています。
具体的には、
・経営者が自ら現場に出て、生の声を聞く
・数字に整理される前の出来事に触れる
・外部の人と、目的を定めずに話す
といったことが該当します。
前のテーマで見たとおり、組織のルーティンは既存のビジネス向けに構築されているため、そこを通った情報からは変革の種が出てきません。
⑤ 変革を実行する段階
必要性が認識されたら、次は実行の段階です。
変革の進め方としてよく知られているのが、レヴィンの組織変革の3段階モデルです。
| 段階 | 中身 |
|---|---|
| ❶ 解凍(unfreezing) | 現状のやり方に対する疑問を生み、変わる必要があるという認識を共有する |
| ❷ 変革(changing) | 新しい行動様式や価値観を実際に導入する |
| ❸ 再凍結(refreezing) | 新しいやり方を定着させ、後戻りしないようにする |
解凍が必要なのは、既存の状態が凍りついているからです。組織文化も、ルーティンも、既得権益も、いずれも現状を固める力として働いています。
いきなり新しいやり方を持ち込んでも、解凍されていなければ受け入れられません。
そして再凍結を怠ると、人は元のやり方に戻ってしまいます。新しいやり方を、制度、評価、文化として固め直すところまでが変革です。
⑥ 章全体のまとめとして
この節で第8章は終わりです。組織行動論の全体を振り返ると、次の筋が通っています。
人は何で動くのか(第1〜4節 モチベーション理論)
↓
人が集まると何が起きるか(第5〜7節 集団)
↓
誰がどう導くのか(第8〜9節 リーダーシップ)
↓
組織に何が蓄積されるのか(第10〜11節 組織文化と組織学習)
↓
それをどう変えるのか(第12節 戦略的組織変革)
個人 → 集団 → リーダー → 組織全体 → 変革、という順に対象が広がっていく構成になっています。
具体例
前のテーマに出てきたアパレル企業が、実際に変革に踏み出した過程です。
❶ リッチな情報を取りに行った
新任の役員が最初にやったのは、報告書を読むのをやめることでした。
・店舗に3か月、週2日立った レジの横で、接客の様子をただ見ていました
・購入しなかった客に声をかけた 「なぜ買わなかったのか」を200人以上に聞きました
・若手社員と目的のない雑談を重ねた
ここで得たもの 月次報告には「試着率」という項目がありました。数字は前年並みです。
ところが現場で見ていると、試着室に入る客の多くが、入る前にスマートフォンで何かを調べていることに気づきます。
調べてみると、他店の価格や、同じ商品の着用写真を見ていました。
この経験は、いろいろに解釈できました。
・「値下げが必要だ」とも読める
・「自社の情報発信が足りない」とも読める
・「店舗は最終確認の場になっている」とも読める
多様な解釈(意味・教訓)を導き出せる程度が高い、すなわち潜在的多義性が高い情報です。
月次報告の「試着率は前年並み」という加工済みの数字からは、この解釈は決して出てきませんでした。
❷ スラック資源があったから解釈できた
この役員には、担当する日常業務がほとんど割り当てられていませんでした。社長が意図的に空けたのです。
現在の日常業務で使われていない、変革のために利用可能な組織的なスラック資源です。
もし通常の役員業務を抱えていたら、3か月も店頭に立つ時間は作れず、多様な解釈をする余裕もなかったはずです。
❸ 解凍
役員は、集めた200人の声を編集して、全社員向けに1時間の映像にまとめました。
数字ではなく、顧客の生の言葉です。
・「試着だけさせてもらって、家で買いました」
・「この店の商品は好きだけど、情報が全然入ってこない」
これを見た社員から、初めて「このままではまずい」という声が上がり始めました。
現状のやり方に対する疑問を生み、変わる必要があるという認識を共有する段階です。
❹ 変革
・店舗を60店に集約し、残る店舗を「試着と受け取りの拠点」と位置づけ直した
・オンラインと店舗の在庫を統合した
・販売員の評価指標に、オンライン経由の売上を含めた
❺ 再凍結
最も時間をかけたのがここでした。
・評価制度を全面的に作り直した(制度として固める)
・「刷ってなんぼ」ならぬ「店で売ってなんぼ」という言葉を使わないよう、管理職に徹底した(文化として固める)
・オンライン経由で成果を出した販売員を、社内表彰した
再凍結を怠れば、人は元のやり方に戻ります。実際、この会社でも2年目に一度、店舗側の評価が元に戻りかけたことがありました。
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