価格戦略
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プレミアムで見る前の節で、価格に影響する要因と新製品の価格政策を見ました。この節では、実際にどうやって値段を決めるかという方法に入ります。
覚える用語が最も多い節ですが、何を基準に値段を決めるかで3つに大別すれば整理できます。
この3つを柱に置いたうえで、心理的価格政策、製品ミックス価格設定戦略、参照価格、価格カルテル、そしてデジタル時代の価格戦略を見ていきます。
簡単にいうと
原価から決めるか、買い手から決めるか、他社から決めるか。この3つが土台だよ!
① コスト志向的価格設定法
コスト志向的価格設定法は、製造原価に、一定のマージン(粗利益)を加算することにより、販売価格を設定する方法です。
この方法はコストプラス法とよばれていますが、流通業ではマークアップ法(値入法)とよぶことがあり、その場合には製造原価ではなく、仕入原価に値入額が加算されていきます。
いずれにしても、その他の経費がマージンや値入額でカバーできれば、必ず利益を得ることが可能です。
② コストプラス法の限界
しかしながら、インターネットの普及によって企業と消費者の間の情報格差が縮小し、価格の品質バロメーター機能が作用しにくくなっています。
そのため、
簡単にいうと
消費者の心理に働きかける値付けだよ。4つあって、それぞれ需要曲線の形が違うんだ!
① 心理的価格政策とは
心理的価格政策とは、消費者の心理に働きかけて購入を促進させる政策であり、主に小売業で採用される場合が多くなります。
前のテーマで見たとおり、需要志向的価格設定法の一種と位置づけられます。
② 端数価格
298円、3,999円などの端数が設定された価格のことです。
ただし、消費税の総額表示により見かけることが少なくなりました。
③ 慣習価格
消費者が慣習的にその価格水準を認めており、その価格水準を上回る価格設定を行うと需要が激減する
簡単にいうと
組み合わせで値段を決める方法と、お店が客を呼ぶための値段の付け方だよ!
① 製品ミックス価格設定戦略
ある製品が製品ミックスの一部を構成している場合などに取られる戦略です。
キャプティブ価格
製品本体と、その本体を使用するために必要な消耗品から構成される製品の場合に、本体を比較的低価格に設定し、消耗品を比較的高価格に設定することで、トータルで利益を獲得していく価格設定戦略です。
ゲーム機とソフト、プリンターとインクなどの例がこれに相当します。
価格バンドリング
関連する、または無関連な複数の製品やサービスを組み合わせて価格設定を行い、個々の製品を別々に購入した場合の合計金額よりも低い価格設定にすることです。
なお、
簡単にいうと
客が「高い・安い」を判断する基準の話と、やってはいけない値決めの話だよ!
① 参照価格
参照価格とは、消費者が価格を判断する際に基準とする価格のことであり、内的参照価格と外的参照価格があります。
② 内的参照価格
過去の購買経験から形成された消費者の記憶内にある価格水準です。
特定のブランドについて、頻繁な価格プロモーションや大幅な値引きに接すると、そのブランドについての消費者の内的参照価格は低下することになります。
前のテーマで見たハイ・ロープライシングの値崩れは、この内的参照価格の低下として説明できます。
③ 外的参照価格
簡単にいうと
需給に合わせて値段が動く仕組みと、無料で配って有料版で稼ぐ手法だよ!
① 何が変わったのか
デジタル技術の浸透により、様々な基準で価格を変動させて需要を調整する価格設定法や、デジタル財特有の価格設定法が広まっています。
② ダイナミック・プライシング
ダイナミック・プライシングとは、基本的に需給の変化に応じて価格を柔軟に変更する価格設定法です。
季節や時間帯などで価格を変化させる手法などがよく見られます。
③ 3つの型
ⅰ 時期(時間)に対応したダイナミック・プライシング
時期(時間)やタイミングによって需要が大きく変化する市場環境において導入される価格設定法です。
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価格の品質バロメーター機能とは、価格が品質を判断するための機能を果たすというものであり、これが作用しやすい場合には、消費者は価格が高ければ品質が良いのであろう、低ければ品質が悪いのであろう、といった具合に判断する、ということです。
情報が手に入るようになると、値段ではなく中身で比べられてしまう。だから原価に上乗せしただけの値付けが通らなくなる、という筋道です。
③ ターゲット・コスティング
また、逆に目標価格を出発点とし、そこから必要とする目標利益を算出することで、目標(ターゲット)とするコストを設定していくものをターゲット・コスティングといいます。
コストプラス法とは向きが逆です。
「いくらで売るか」を先に決め、「ならば原価はいくらに抑えるべきか」を逆算します。
④ 需要志向的価格設定法
需要志向的価格設定法とは、コストよりもむしろ需要に重点をおいて価格を設定する方法であり、消費者が知覚する商品価値を基準に価格を設定したり、価格に対して抱く心理を活用して価格を設定したりする方法です。
該当する価格設定法としては、知覚価値法、差別価格法などがあります。
なお、後述する心理的価格政策も需要志向的価格設定法の一種ととらえることができます。
知覚価値法
消費者が当該商品にどれだけの価値を知覚するかに基づいて価格を設定する方法です。
類似商品や代替商品の価格帯から推計する方法や、市場調査によって直接消費者の知覚価値を測定するなどの方法があります。
差別価格法
市場をいくつかのセグメントに分けることが可能であり、セグメントごとに需要の強度が異なっている場合に、同一商品もしくは原価がほとんど変わらないほぼ同一な商品に異なった価格を設定する方法です。
⑤ 競争志向的価格設定法
実勢価格設定法
競合他社や業界のプライスリーダーの価格を念頭において自社の価格設定を行う方法であり、消費者が価格差に敏感に反応する製品に採用される場合が多くなります。
入札による価格設定
請負契約による受注を入札で決定する際に、入札参加企業が採用する価格設定です。この場合も入札する競合他社の動向を想定して、入札価格を決定します。
⑥ 出題されている取り違え
次の言い方は誤りです。
「伝統的な価格設定方法のひとつにコスト・プラス法がある。この手法は、消費者の価格感度や製品市場での競争状況を価格設定に反映させている」
コストプラス法は、コストをベースに(利益が確保できるように)価格設定する手法です。
そして、
3つのどれの説明かを、文中に出てくる言葉(コスト/消費者/競合)で見分けてください。
具体例
同じ革製の名刺入れを、3つの方法で値付けしてみます。
コスト志向的価格設定法(コストプラス法)
製造原価が2,400円。マージンを60%と決め、3,840円としました。
計算は簡単で、その他の経費がこのマージンで賄えるなら必ず利益が出ます。
ただし、この店がネット通販を始めたとき、客は他店の同等品が2,980円で売られているのをその場で確かめられます。
情報格差が縮まり、品質バロメーター機能が効かなくなったわけです。「高いから良いのだろう」とは思ってもらえません。
ターゲット・コスティングに切り替えると
「この市場では2,980円でなければ売れない」と先に決めます。
目標利益を1,000円とすると、原価を1,980円に抑えなければならない。
そこから、革の仕入先を見直し、縫製工程を1つ減らす検討が始まります。価格から原価へという逆向きの発想です。
需要志向的価格設定法(知覚価値法)
調査したところ、「手縫いであること」に客が大きな価値を感じると分かりました。
同等の手縫い品は6,000円前後で流通しています。そこで5,800円と設定しました。
原価は同じ2,400円のままです。客が感じる価値から決めている点が違います。
差別価格法
同じ製品を、
原価はほとんど変わらないのに、セグメントごとの需要の強さに応じて変えています。
競争志向的価格設定法(実勢価格設定法)
この市場のプライスリーダーが3,980円で売っています。
客は価格差に敏感なので、3,880円と、わずかに下回る値を付けました。
原価も客の知覚価値も、この判断には入っていません。他社を見て決めているだけです。

価格設定の方法と価格政策
試験のポイント
たとえば、自動販売機の缶コーヒーなどがこれに相当すると考えられます。
④ 名声価格(威光価格)
ブランド品などの高級品に対し、そのステータスを保つためにつける価格です。
高い社会的評価や価値づけを示す価格設定であるため、通常は高価格に設定するということになります。
このような企業や製品の社会的評価の高さを表す要素をプレステージ性といいます。
⑤ 名声価格と価格感度
ここが出題される論点です。
次の言い方は誤りです。
「威光価格の考え方は、消費者の価格感度を高め、需要の価格弾力性を低下させるうえで重要な手法である」
価格感度が高いとは、価格に対してシビアであるということです。
威光価格が成立するような状況では、高価格であることがむしろ好ましいため、価格感度は低くなります。
「安いほうがいい」と思っていない客に売っているのだから、価格に対してシビアではない——という筋道です。
⑥ 需要曲線の形が違う
3つは、価格と需要量の関係が異なります。
一般的な需要曲線は、価格が上がれば需要量が減る右下がりです。
慣習価格では、ある水準までは需要が保たれますが、その水準を超えると需要が急に落ちます。缶コーヒーが150円から250円になったところを想像してください。
名声価格では、安すぎると逆に売れません。「この値段では本物ではないのでは」と思われるからです。一定の価格までは、むしろ高いほうが売れます。
⑦ プライスライニング
消費者が一定の価格の範囲内では、価格の小さな相違を気にせず購入するような商品に対して、10,000円、15,000円、20,000円などキリのよいいくつかの価格ラインに整理することです。
値段を細かく刻んでも客は区別しないので、段に整理して選びやすくするわけです。
具体例
4つの政策を、身近な例で見てみます。
端数価格 ― スーパーの惣菜
298円。300円と3円しか違いませんが、200円台という印象を与えます。
ただし総額表示になってからは、税込で321円などと表示されるため、端数の効果は出しにくくなりました。
慣習価格 ― 自動販売機の缶コーヒー
長く130円前後でした。
ここで1本200円にしたらどうなるか。需要が激減します。「缶コーヒーはこのくらい」という水準が客の頭にできあがっているからです。
原価が上がっても値上げしにくい。だからメーカーは、内容量をわずかに減らすなどで凌いできました。
名声価格 ― ブランドのハンドバッグ
48万円。
この価格を「高すぎる」と感じる人は、そもそも客ではありません。
むしろ、これが9万8千円で売られていたら売れなくなります。「本物だろうか」「安っぽい」と思われるからです。
プレステージ性を保つために、高く付けている。この客層は価格感度が低い——値段にシビアではない、ということです。
プライスライニング ― 紳士服店のスーツ
この店は、19,800円・29,800円・49,800円の3つの価格ラインに整理しています。
仕入原価は1着ごとに微妙に違いますが、客は22,400円と23,100円の差を気にしません。
段にまとめたほうが選びやすいので、3つに整理しているわけです。
試験のポイント
代替品同士を束ねても意味がないからです。同じ用途のものを2つ買う理由がありません。
② 期間に対する価格政策
サブスクリプション価格
販売する財の数、あるいはサービスの量や回数といったことではなく、それらを一定期間利用したり享受したりする権限を提供し、その資格を有する期間に対して対価を得る契約です。
売っているのは「量」ではなく「期間」だという点が定義の要です。
③ 流通業者の販売促進的価格政策
プロモーション(販売促進)の視点により価格を設定するものです。
ロスリーダー政策(おとり価格政策)
小売店で特売用の目玉商品を選んで、その商品に商品原価を下回るほどの安値を設定し、それをチラシなどで大きく打ち出すことにより、顧客を誘引するものです。
商品の数は限定されているのが一般的であり、目玉商品以外の通常の商品を同時に購入させることを目的としています。
ハイ・ロープライシング
特売など、通常価格よりも安い価格で提供したり、特売を中止することで通常価格に戻したりといった、店頭で最も一般的に見られる価格政策です。
ただし、値崩れを引き起こし、通常価格で売れにくくなるなどのマイナス面もあります。
エブリデーロープライス(EDLP)政策
つねに徹底した低価格で販売する政策です。
④ ハイ・ローとEDLPの対比
2つは正反対の考え方です。
ハイ・ロープライシングは、価格を上下させて特売のたびに客を呼びます。チラシと特売の運営に手間がかかり、値崩れという副作用もあります。
EDLPは、価格を動かしません。特売の手間がかからず、客も「いつ行っても安い」と分かるので来店が平準化します。
次のテーマで見る内的参照価格の観点でいえば、ハイ・ローは内的参照価格を下げてしまう(特売の値段が基準になってしまう)のに対し、EDLPにはその問題がありません。
具体例
家電量販店とその周辺で、それぞれの政策がどう使われるかを見てみます。
キャプティブ価格 ― プリンターとインク
プリンター本体は8,900円。製造原価を下回る水準です。
一方、交換インクは4本セットで5,800円。こちらは原価の3倍以上です。
本体だけ見れば赤字ですが、3年使えばインクを10回買います。トータルで利益を得ているわけです。
価格バンドリング ― パソコンとソフトのセット
パソコン128,000円、表計算ソフト18,000円、セキュリティソフト6,000円。別々に買えば152,000円です。
これを139,800円のセットにします。
なお、パソコン2台をセットにしても意味がありません。互いに代替的だからです。
サブスクリプション価格 ― 動画配信
月額990円で見放題。
何本見たかは関係ありません。1本しか見なくても、100本見ても990円です。
売っているのは量ではなく期間——1か月間見られるという権限です。
ロスリーダー政策 ― 特売の卵
隣のスーパーが、卵1パック98円とチラシに大きく出しました。原価を下回っています。
そして「お一人様1点限り、先着100名」と、数を限定しています。
狙いは卵で儲けることではなく、来店した客に他の商品も買わせることです。
ハイ・ロープライシングの副作用
このスーパーは毎週末に特売を打ってきました。
その結果、客は「週末まで待とう」と考えるようになり、平日の通常価格では売れにくくなりました。
これが値崩れです。
EDLP政策に切り替えた店
向かいのディスカウント店は、特売を一切やりません。
そのかわり、卵はいつでも158円。チラシの印刷費も、特売日の応援人員も要りません。
客は「いつ行っても同じ」と分かっているので、来店が週末に偏らず、人員配置も平準化できています。
試験のポイント
④ 2つの違い
内的参照価格は記憶のなかにあり、外的参照価格は目の前にあります。
第13章2節で見た内部探索と外部探索と同じ構図です。自分の記憶から探すか、外から探すか。価格についても同じ2つの源があります。
⑤ バンドル販売と内的参照価格
ここが出題される論点です。
次の言い方は誤りです。
「キャンペーン期間中に一定数量以上の買い物を行った顧客に対して、次回以降に使用可能なバンドル販売型買い物クーポンを配布した。この種のバンドル販売の欠点は、消費者の内的参照価格が下がることである」
バンドル販売は、個別の製品やサービスの価格がわからないため、内的参照価格は下がりにくいのです。
セットで13万9,800円と言われても、そのうちパソコンがいくらだったのかは分かりません。
だから「パソコンは10万円で買えるものだ」という記憶が作られにくい。値崩れを起こしにくい値引きの仕方だ、ということです。
単品を2割引にすると内的参照価格が下がりますが、束ねて割り引けば下がりにくい。ここがバンドリングの利点でもあります。
⑥ 価格カルテル
価格カルテルとは、同一のチャネル段階にある競争業者が、お互いに共同して販売価格を協定することです。
これは独占禁止法違反行為です。
競争業者間において、話し合いによって、あるいは共同し、共謀して価格を決定する行為は、その業界内における公正な競争、自由な競争を阻害するためです。
⑦ 公正性は担保されない
次の言い方は誤りです。
「高い市場占有率をもつ企業は、しばしば同種製品市場での競争相手となる他の上位企業と相談し、それぞれの製品の価格に関する意思決定を行うことがある。これによって市場における競争の公正性が担保され、非価格競争が促される」
需要と供給のメカニズムによって価格が決定されなくなるため、市場における競争の公正性が担保できなくなります。
話し合いで値段を決めれば、市場の働きが止まります。公正になるどころか、逆です。
具体例
内的参照価格が下がっていく様子を追ってみます。
きっかけ
ある洗剤の通常価格は498円でした。
この会社は売上を伸ばすため、月2回、298円の特売を打つようになりました。
半年後に起きたこと
客の頭のなかで、「この洗剤は298円のもの」という記憶ができあがりました。
内的参照価格が498円から298円へ下がったわけです。
こうなると、498円の日には「今日は高い」と感じて買わなくなります。特売日を待つようになるのです。
バンドル販売なら違った
仮に、この洗剤を柔軟剤と組み合わせて「2点セット698円」として売っていたらどうか。
客には、そのうち洗剤がいくらなのか分かりません。
だから「洗剤は298円のもの」という記憶は作られず、内的参照価格は下がりにくい。
同じ値引きでも、やり方によって後に残るものが違うわけです。
外的参照価格の働き
この客が別の店で、
を見たとします。
これらは目の前にある判断材料です。記憶ではなく、その場で参照している——外的参照価格です。
価格カルテルの場合
もし洗剤メーカー3社が集まり、「今後は498円を下回らない」と申し合わせたら。
これは同一のチャネル段階にある競争業者が共同して販売価格を協定する行為であり、独占禁止法違反です。
需要と供給で価格が決まらなくなるので、市場の公正性はむしろ失われます。
試験のポイント
一般的に需要の価格弾力性が高い製品やサービスに効果的といわれますが、供給力も加味したうえで、最適な製品やサービスの量を最適な価格で最適な顧客に提供するレベニュー・マネジメントが重要になります。
ⅱ 顧客の収益性に応じたダイナミック・プライシング
需給や支払意思価格の変化への対応だけでなく、顧客の収益性に応じた価格の変更に適用する価格設定法です。
企業はリピーターや上位顧客など収益性の高い顧客との関係を強化して継続的に自社の製品やサービスを選んでもらう狙いから、ポイントやマイレージの付与を通して間接的に価格を変化させます。
また、学割などは顧客の長期的な収益性への期待によるダイナミック・プライシングの例といえます。
ⅲ 消費者間取引におけるダイナミック・プライシング
消費者間取引における価格の設定には、次の3パターンに大別されます。
特に3つめのパターンが消費者間取引におけるダイナミック・プライシングといえ、価格交渉が可能なオークションサイトなどで適用されています。
④ エリア別の料金も該当する
ここが出題された論点です。
次の言い方は誤りです。
「コンサートやスポーツ・イベントのチケットに関するダイナミック・プライシングでは、購入時期に応じて価格を変動させる例がある。しかし席のエリア別に異なる料金を設定し、かつ売れ行きに応じて価格を変動させるものはダイナミック・プライシングとは呼ばない」
まさにダイナミック・プライシングについての記述です。
売れ行き(=需給)に応じて価格を変えているのだから、エリア別であってもダイナミック・プライシングにあたります。
⑤ フリーミアム
フリーミアムとは、ソフトウェアなどの基本バージョンを無料で提供しながら、高機能バージョンを有料で購入してもらう手法のことです。
⑥ フリーミアムが成り立つ理由
第14章1節で見たデジタル財の3つの特徴を思い出してください。
複製可能性があるため、無料の利用者が何人増えても追加の費用はほとんどかかりません。
有形財ではこうはいきません。1台配れば1台分の原価がかかるので、無料で配り続けることはできません。
デジタル財だからこそ成り立つ価格設定法だ、という点を押さえておいてください。
⑦ キャプティブ価格との違い
「安く配って、別のところで稼ぐ」という点でキャプティブ価格と似ていますが、違います。
キャプティブ価格は、本体を買った人が必ず消耗品を買うという関係です。プリンターを買えばインクが要ります。
フリーミアムは、無料の利用者が有料版に移るとは限りません。多くはずっと無料のまま使います。
一部の有料利用者が、大多数の無料利用者を支える構造です。
具体例
3つの手法が実際にどう使われるかを見てみます。
時期に対応したダイナミック・プライシング ― ホテル
同じ客室が、
需要に応じて自動で変わります。
ここで大事なのは、ただ高くすればよいのではないことです。
24,000円にして半分しか埋まらないなら、18,000円で満室にしたほうが儲かります。
最適な量を、最適な価格で、最適な顧客に——これがレベニュー・マネジメントです。
顧客の収益性に応じた例 ― 航空会社のマイレージ
年間30回乗る客には、無料の座席指定やラウンジ利用が付きます。
実質的な値引きですが、運賃表そのものは変えていません。ポイントを通して間接的に価格を変えているわけです。
学割も同じ考え方です。
学生は支払能力が低いので安くする——というだけではありません。
いま安くしておけば、就職後も使い続けてくれるという長期的な収益性への期待があります。
消費者間取引の例 ― オークションサイト
中古カメラの出品に対し、買い手が値下げ交渉を持ちかけ、売り手が応じて価格が決まります。
売り手と買い手で価格交渉をするパターンで、消費者間取引におけるダイナミック・プライシングにあたります。
エリア別の料金も該当する
あるスタジアムのチケットは、
と、エリアごとに、さらに売れ行きに応じて日々変動します。
これもダイナミック・プライシングです。エリア別だからといって除外されません。
フリーミアム ― 会計ソフト
取引件数が月50件までは無料。それを超えると月額1,980円。
無料の利用者は8万人、有料は6千人です。
無料の8万人にかかる費用は、サーバー代くらいでほとんど増えません(複製可能性)。
そして、事業が育った利用者が自然と有料版へ移っていきます。
プリンターとインクとの違い
プリンターを買った人は、必ずインクを買います。
しかし無料の会計ソフトを使う8万人のうち、有料に移るのは一部です。大多数は無料のままでも成り立つ。ここが2つの違いです。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。