価格戦略
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プレミアムで見るここから4Pの2つめ、価格(Price)に入ります。
価格は、企業内外の影響要因について考慮したうえで、一定のプロセスを経て設定されます。また、企業目標や戦略によって価格政策や設定法も異なってきます。
この節で押さえるのは3つ。
価格設定に影響する8つの要因、新製品の2つの価格政策とその成立要件、そしてテクノロジーライフサイクルとキャズムです。
とくに2つの価格政策は、「どういう場合に有効か」という成立要件まで問われます。名前だけ覚えて終わらないようにしてください。
簡単にいうと
値段は「原価+利益」だけでは決まらないんだ。社内の事情も社外の事情も、8つが効いてくるよ!
① 8つの要因
価格設定には、次の8つが影響します。
ⅰ 企業・マーケティング目標
売上高や市場シェアといった目標により、価格設定は影響を受けます。
第11章2節で見たマーケティング目標が、そのまま価格に跳ね返ります。シェアを取りにいくなら安く、利益を取りにいくなら高く、となります。
ⅱ 価格以外のマーケティング要素
マーケティング要素はそれぞれ独立の変数ではありません。
したがって、ブランド戦略やチャネル戦略、プロモーション戦略が価格設定に影響をおよぼすことになります。
第11章4節で「4Pは統一的に展開する」と述べたことの、価格側からの言い換えです。
ⅲ コスト
製品の製造コストやマーケティングコストは、価格設定に影響をおよぼします。
ⅳ 競争戦略
競争戦略を構築する際に、コストリーダーシップ戦略を採用するのか、もしくは差別化戦略を採用するのかにより、製品価格の設定は異なってきます。
ⅴ 競争地位別戦略
リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーのいずれの地位に位置しているかにより、価格戦略は異なってきます。
具体例
業務用プリンタを売るメーカーが、値段を決める場面を見てみます。
社内の事情
社外の事情
決定
原価6万円に対し、12万円と決めました。

価格設定の影響要因と新製品の価格政策
試験のポイント
簡単にいうと
新製品を安く出すか、高く出すか。どちらが有効かは、市場の条件で決まるんだ!
① 2つの政策
新製品の価格設定政策には、初期低価格政策と初期高価格政策があります。
② 初期低価格政策
初期低価格政策とは、新製品の価格を低価格に設定して大量の顧客に製品購入を促し、圧倒的な市場シェアを早期に獲得する、という政策です。
市場シェアを獲得した企業は、累積生産量も多くなっていることから、コストダウンによってさらなる低価格を設定することができます。
別名を市場浸透価格政策、ペネトレーションプライス政策といいます。
簡単にいうと
新しい製品が広まる順番と、途中にある深い溝の話だよ。溝がどこにあるかが、いちばん問われるところ!
① テクノロジーライフサイクル
新製品や新サービスが市場に登場してからのライフサイクルは、ベル型(釣鐘型)の標準偏差のグラフであるテクノロジーライフサイクル(新たな製品が市場でどのように受け入れられていくかを理解するためのモデル)によって示されます。
② 5つの層
ⅰ イノベーター(革新者)
新しもの好きの層であり、価格に無頓着で新製品を真っ先に購入する消費者です。
ⅱ アーリー・アドプター(早期採用者)
目利きの層であり、新製品を早い段階で手にする消費者です。
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たとえば、リーダーは非価格対応戦略をとりますが、フォロワーは低価格の戦略を採用することが多くなります。
第2章7節で学んだ競争地位別戦略が、ここで具体的に効いてきます。リーダーが値下げに応じないのは、市場規模が最も大きい自社が最も損をするからでした。
ⅵ 需要の価格弾力性
需要の価格弾力性とは、価格が1%変化した際に需要量が何%変化するかという指標です。
その程度により、価格設定の意思決定も異なったものになります。
ⅶ マクロ経済状況
景気変動などの経済状況も価格設定に大きな影響を与えます。すなわち不況期と好況期では価格設定の基準も変動します。
ⅷ 法規制
独占禁止法では、再販売価格の拘束や不当対価、差別価格などの不公正な取引方法が規制されています。
② 内と外で分けて捉える
8つは、社内の事情と社外の事情に分けると整理できます。
「価格は原価から決まる」と考えがちですが、コストは8つのうちの1つにすぎません。この点が、この項目の要点です。
③ 交差弾力性
また、ある財の価格変化に対する別の財の需要変化を表す指標に価格の交差弾力性があります。
たとえば、A財の価格が変化した際に、B財の需要量がどう変化するかを示すものです。A財に対するB財の価格の交差弾力性は次式で表されます。
A財に対するB財の価格の交差弾力性 = B財の需要変化率 ÷ A財の価格変化率
④ 2つの弾力性の違い
混ざりやすいので分けておきます。
交差弾力性がプラスなら、2つは代替品の関係です(バターが高くなればマーガリンが売れる)。
マイナスなら補完品の関係です(プリンタ本体が高くなればインクも売れなくなる)。
交差弾力性の話
この会社の利益の柱は、実は本体ではなく交換インクです。
本体を安くすると、設置台数が増え、インクの需要が増えます。本体価格に対するインクの交差弾力性がマイナス、つまり補完品の関係にあるからです。
だから、本体で薄く、インクで厚く取る。この設計ができるのも、交差弾力性という見方があるからです。
初期高価格政策とは、新製品の導入時に高い価格を設定しておき、成長期に移行するとともに価格を徐々に低下させる政策です。
新製品の開発費の早期回収も可能です。
新製品の発売当初は、高価格でもその製品を購入する革新的な消費者(市場における上澄み)に網を掛け、その後価格を下げて保守的な消費者を取り込んでいくという政策です。
別名を上澄吸収価格政策、スキミングプライス政策といいます。
④ 名前と中身を結びつける
別名がそれぞれ2つずつあるので、意味から結びつけます。
浸透(ペネトレーション)は、安くして市場の隅々まで染み込ませるイメージ。だから初期低価格です。
上澄み(スキミング)は、最初に浮いている濃い部分をすくい取るイメージ。高くても買う層から順に取っていくので、初期高価格です。
⑤ 初期低価格政策の成立要件
次の場合に有効です。
⑥ 初期高価格政策の成立要件
次の場合に有効です。
⑦ 要件は裏返しになっている
2つの要件を並べると、対になっているのが分かります。
低価格政策は、価格弾力性が高いことが前提。下げれば売れる市場でなければ、下げる意味がありません。
高価格政策は、高くても買う人が十分いることが前提。つまり価格弾力性が低い層が存在することです。
そして両方に共通して、競合他社への言及があります。低価格政策は締め出せること、高価格政策は簡単に入ってこられないこと。
どちらも、他社が真似できるなら成り立たないという点で同じです。
⑧ 少量生産のコストに注意
高価格政策の3つめの要件は、見落としやすい項目です。
高く売れても、少量しか作らないので1個あたりのコストが跳ね上がります。そのコスト増が高く売れる利点を食い潰すほど大きくないことが条件になる、ということです。
具体例
同じ新型のワイヤレスイヤホンを、2社が正反対の値付けで出した例を見てみます。
A社 ― 初期低価格政策
原価3,200円のところ、3,980円で発売しました。利益はほとんど乗っていません。
狙いは、一気にシェアを取ることです。
成立要件を確かめると、
実際、半年で150万台を売り、累積生産量が増えたことで原価が2,600円に下がりました。さらに値下げできる立場に立ったわけです。
B社 ― 初期高価格政策
同じ性能の製品を39,800円で発売しました。
狙いは、高くても買う層から順に取ることです。
成立要件を確かめると、
発売から1年、まず革新的な消費者が買いました。開発費はこの時点でほぼ回収できています。
その後、価格を29,800円、19,800円と段階的に下げ、保守的な消費者を順に取り込んでいきました。
もし要件が欠けていたら
仮にB社に特許がなく、半年で他社が同じ性能を2万円で出していたらどうなるか。
39,800円で買った客は「損をした」と感じ、値下げを待つ客が増えて売れ行きは止まります。
成立要件が揃わない政策は、うまくいかない。名前だけでなく要件まで問われるのは、そのためです。
試験のポイント
ⅲ アーリー・マジョリティー(前期多数採用者)
流行に敏感な層であり、新製品に対して若干慎重な消費者です。
ⅳ レイト・マジョリティー(後期多数採用者)
流行を後追いする層であり、新製品に対して懐疑的な消費者です。
ⅴ ラガード(採用遅滞者)
無関心の層であり、伝統的な考えをもっている消費者です。
③ キャズム
これらの顧客セグメントごとに異なるマーケティング施策を行いながら、徐々に顧客層を広げていくことになります。
しかし、アメリカのマーケティング・コンサルタントであるジェフリー・ムーアは、
イノベーターとアーリー・アドプターで構成される初期市場と、
アーリー・マジョリティーやレイト・マジョリティーによって構成されるメジャー市場
のあいだには、容易には越えがたい「キャズム(深い溝)」があるとしています。
④ キャズムの位置
ここが最も問われる点です。
キャズムは、アーリー・アドプターとアーリー・マジョリティーのあいだにあります。
5つの層を並べると、2番目と3番目の境目です。
イノベーター|アーリー・アドプター ==キャズム== アーリー・マジョリティー|レイト・マジョリティー|ラガード
⑤ なぜ溝ができるのか
理由は、求めるものが違うからです。
アーリー・アドプターは、既存の製品とは革新的に異なるものを求めます。
アーリー・マジョリティーは、既存の製品の延長上で進化したものを求めます。
求めているものが正反対なので、前者に受けた売り文句が後者にはまったく響きません。
よって、イノベーターとアーリー・アドプターで構成される初期市場に受け入れられる新製品や新サービスは、アーリー・マジョリティーやレイト・マジョリティーによって構成されるメジャー市場にはすぐには受け入れられがたく、企業努力や多くの時間を要することが多くなるという考えです。
⑥ 出題されている取り違え
次の言い方は誤りです。
「市場の断層(キャズム)を乗り越えるためには、新しいモノ好きの層(イノベーター)や流行に敏感な層(アーリー・マジョリティー)には受け入れられても、いかに無関心の層(ラガード)に受け入れられるかが課題である」
課題となるのはラガードではなく、アーリー・マジョリティー(流行に敏感な層)に受け入れられるかです。
溝の向こう側にいるのは、すぐ隣のアーリー・マジョリティーであって、いちばん遠いラガードではありません。
⑦ 第4章3節との対応
5つの層の名前は、第4章3節で学んだイノベーター理論(普及理論)と同じです。
違いは、キャズムという断層を置いたことです。
普及理論は「順に広がっていく」と描きましたが、ムーアは「途中で止まることが多い」と指摘しました。連続ではなく断絶があると見た点が、この理論の主張です。
具体例
スマートグラス(眼鏡型の情報端末)を例に、キャズムの働きを見てみます。
初期市場では売れた
発売から1年、イノベーターが飛びつきました。12万円という価格を気にせず、「とにかく新しいから」という理由で買った層です。
続いてアーリー・アドプターが動きました。技術系の記事を書く人や、現場作業の効率化を検討していた企業の担当者です。
この層は目利きで、オピニオンリーダーでもあります。SNSや専門誌で使用感を発信し、話題になりました。
ここまでで、累計8万台。順調に見えました。
そこで止まった
2年目、販売台数は8万5千台で頭打ちになりました。
アーリー・マジョリティーが動かなかったのです。
この層の反応は、
求めているものが違ったわけです。
アーリー・アドプターは「これまでに無い、まったく新しい体験」を求めていました。
アーリー・マジョリティーが求めているのは「いま使っているものが、少し良くなること」です。
「まったく新しい」は、この層にとっては魅力ではなく不安なのです。
キャズムを越えた例
この会社は3年目、売り方を変えました。
「新しい体験」を訴えるのをやめ、倉庫の在庫確認作業に用途を絞り、「手が塞がらないぶん作業が15%速くなる」という既存業務の延長として売り直しました。
導入企業の事例を数字付きで並べ、「同業の〇社も使っています」と伝えます。
延長上の進化として示したことで、ようやくアーリー・マジョリティーが動き始めました。
課題はラガードではない
この間、無関心層(ラガード)のことは一度も考えていません。
溝の向こうにいるのは、あくまですぐ隣のアーリー・マジョリティーです。
試験のポイント
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