製品戦略
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プレミアムで見る無形財には、有形財とは異なる特性があります。そのため、マーケティングの各要素を考える際にもその特性をふまえた対応が必要になります。
第11章1節で、サービスには4Pに3つを加えた7Pを用いると述べました。なぜ3つ足りないのか——その答えが、この節にあります。
押さえるのは3つ。
サービスの5つの特性(それぞれ特性と対応が対になっています)、サービス・トライアングル(3つのマーケティング)、そしてサービス品質をめぐる考え方です。
特性は「だから何をするか」という対応までがセットで問われます。特性だけ覚えて終わらないようにしてください。
簡単にいうと
形がない、質がぶれる、その場でしか成り立たない、ためられない、波がある。この5つが、サービスの扱いにくさの正体だよ!
① 無形性(非有形性)
特性 … 形がなく、目で見たり触ったりすることができない。
対応 … サービスの有形性(可視化)を高める。
買う前に確かめられないので、目に見えるもので手がかりを作るわけです。第11章1節で見たPhysical Evidence(物的証拠)が、この対応そのものにあたります。
② 品質の変動性(非均一性)
特性 … 誰がそれを提供するか、いつそれが提供されるかによって、その質が異なる可能性が大きく、質の均一性を保ちにくい。
対応 … 接客マニュアルの整備、顧客アンケートや教育訓練の実施、業務の機械化により迅速性や正確性を高める。
7PのPersonnel(人)が必要になるのは、この特性のためです。
③ 不可分性
特性 … 提供する側とされる側が必ずその場にいなければならない。つまり生産と消費が同時に行われる。
対応 … 一度に多数の消費者にサービスを提供できる仕組みや、サービスを記録・保存する方法を構築する
具体例
ホテルを例に、5つの特性と対応を見てみます。
無形性への対応
泊まるまで、その快適さは分かりません。そこでこのホテルは、客室の写真、清掃の手順を紹介する動画、受賞歴の掲示、ロビーの設え——目に見えるものを厚く用意しています。
品質の変動性への対応
フロント係によって対応の質が違う、という苦情がありました。
そこで接客の手順書を整え、月1回の研修を行い、チェックイン手続きを機械化して誰が対応しても同じ時間で終わるようにしました。
不可分性への対応
客室での接客は1対1です。そこで、朝食をビュッフェ形式にして一度に多数へ提供できるようにしました。
消滅性への対応
空室は翌日に持ち越せません。10月20日の空室を11月に売ることはできない。
そこで、

サービス・トライアングル
試験のポイント
簡単にいうと
企業・顧客・サービス提供者の3者関係だよ。どの2者の間の話かで、マーケティングの名前が決まるんだ!
① サービス・トライアングルとは
サービス・トライアングルとは、特に労働集約的な接客業務などを伴う場合に、顧客・サービス提供者・企業の3者の関係性を図示したものです。
② 3つのマーケティング
エクスターナルマーケティング… 企業と顧客の関係。提供するサービス内容の約束です。
企業と顧客の間で行われる活動であり、企業が顧客に対して行う4Pを中心とするマーケティング活動のこと。伝統的なマーケティング手法です。
インタラクティブマーケティング… サービス提供者と顧客の関係。その約束を実現する
簡単にいうと
従業員の満足が利益につながる筋道、品質の測り方、そして「勝負は15秒」という考え方だよ!
① サービス・プロフィット・チェーン
ヘスケット(J.S.Heskett)、サッサー(W.E.Sasser,Jr.)らによって示された、サービス業における従業員満足(ES)、顧客満足(CS)、企業利益といった要素の因果関係を示したフレームワークです。
従業員満足度を向上させることでサービス水準を高め、そのことが顧客満足度や顧客ロイヤルティの向上につながり、企業利益を高めるとしています。
さらに、生み出した利益によって従業員満足度をさらに向上させるという好循環を生み出すものです。
② 連鎖の流れ
図で示される流れは次のとおりです。
従業員満足 → 従業員の定着率・生産性 → サービスの価値 → 顧客満足 → ロイヤルティ → 成長性・収益性
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7PのProcess(業務プロセス)が要るのは、提供の過程そのものを客が体験するからです。
④ 消滅性(非貯蔵性)
特性 … 生産と消費が同時に行われるため、在庫をもつことができない。
対応 … 大きく需要管理と供給管理に分かれる。
需要管理の例
供給管理の例
⑤ 需要の変動性
特性 … 需要量が季節、週、一日の時間帯などによってかなり変動する。観光業や、利用が集中する交通機関を想起すればイメージがつきます。
対応 … 消滅性(非貯蔵性)への対応と同様。
⑥ 顧客参加は満足を下げない
ここが出題されたことのある論点です。
「ドリンクバーのように顧客自身にサービス提供者が行う活動を代替してもらうことはコスト削減につながるなどメリットもあるが、顧客満足の視点からは避けたほうがよい」
という言い方は誤りです。
顧客参加は顧客満足の向上に寄与します。
自分の好きなタイミングで好きなだけ取れるほうが、店員を呼んで待つより満足度が高い場合があります。コスト削減と満足度向上が両立する手段だ、ということです。
⑦ 消滅性と需要の変動性は表裏
対応が「同様」とされているのには理由があります。
在庫が持てない(消滅性)だけなら、需要が一定であれば困りません。需要が波打つ(需要の変動性)だけなら、在庫で吸収できます。
2つが重なると、ピーク時に売り逃し、閑散時に設備と人が遊ぶという事態になります。
だから、需要を平すか(需要管理)、供給を伸び縮みさせるか(供給管理)しかない。これが両者に共通の対応になる理由です。
需要の変動性への対応
連休は満室、平日は3割。この波に対しては、
顧客参加が満足を上げた例
朝食のセルフ化は、当初「手抜きと思われる」と心配されました。
ところが調査すると、「自分のペースで好きなものを取れる」「待たされない」という理由で満足度は上がりました。
コストが下がり、満足も上がったわけです。顧客参加を避けるべきとは限らない、というのはこういうことです。
サービス提供者が顧客に対して行うマーケティングで、サービスマーケティングは顧客と販売者の相互作用の質に影響されます。
また、サービス提供者をコンタクトパーソナル(CP)といい、CPの質、能力でサービスの満足度は変わります。
インターナルマーケティング… 企業とサービス提供者の関係。顧客に対する約束を可能たらしめるものです。
対社内のマーケティングで、従業員を組織の内部にいる顧客ととらえ、ターゲットである従業員のニーズをふまえて、あたかも組織内部で仕事をマーケティングするかのように仕事を提供することをいいます。
これにより従業員の組織へのコミットメントの向上や離職率の低下を図りながら、組織の成果を高めることを目指します。
③ 3つは「約束」の3段階
覚え方は、約束という言葉で通します。
広告で「笑顔の接客」を約束しても(エクスターナル)、現場の従業員が笑顔になれる環境になければ(インターナル)、その約束は果たされません(インタラクティブ)。
④ バランスが重要
サービス・トライアングルでは、これら3つのバランスが重要であることが示されています。
どれか1つに偏ると、たとえば広告だけ立派で現場が追いつかない、という事態が起きます。
⑤ インターナルマーケティングの位置づけ
3つのうち、最も見落とされやすいのがインターナルです。
従業員を「内部にいる顧客」ととらえるという発想が要点で、第8章で学んだモチベーション理論や、第9章で学んだ人的資源管理とつながっています。
従業員の満足を高めることが、回りまわって企業の利益になる——その筋道を示したのが、次のテーマのサービス・プロフィット・チェーンです。
具体例
レストランチェーンで、3つがどう働くかを見てみます。
エクスターナルマーケティング(企業 → 顧客)
「注文から10分以内に提供します」というテレビCMを打ち、店頭にもその表示を出しました。
これが顧客への約束です。
インタラクティブマーケティング(提供者 → 顧客)
実際に約束を果たすのは、現場のホールスタッフと調理担当です。
この人たちがコンタクトパーソナル(CP)にあたります。CPの手際と応対で、客の満足は大きく変わります。
同じ10分でも、「お待たせしました」の一言があるかどうかで印象が違う。相互作用の質が効くわけです。
インターナルマーケティング(企業 → 提供者)
10分以内を実現するには、
といった社内向けの手当てが要ります。
バランスが崩れるとどうなるか
この会社は当初、CMだけを大量に打ちました。
結果、来店は増えたものの人手が足りず、提供は平均18分。約束を破られた客の不満が口コミで広がりました。
外に約束し、内で支えていなかったわけです。
その後、時給を上げて人員を確保し、厨房の動線を組み替えてから、改めてCMを打ち直しました。

サービス・プロフィット・チェーン
試験のポイント
そして、生まれた利益が再び従業員満足へ戻ります。
③ 出発点が従業員満足である意味
この枠組みの要点は、起点が顧客ではなく従業員であることです。
顧客満足を直接高めようとしても、実際にサービスを提供するのは従業員です。その従業員が疲弊していれば、どれだけ号令をかけても質は上がりません。
だからまず従業員から、という順序になります。前のテーマのインターナルマーケティングがひとつの理想型とされるのは、この筋道があるからです。
④ サーブクォル(SERVQUAL)
サービス品質の測定尺度であり、サービス(Service)とクオリティ(Quality)を合成した造語です。
顧客がサービスの品質をどう知覚するかという観点で評価するものであり、具体的には次の5つの次元に基づいた項目で測定されます。
顧客の知覚で測る点に注意してください。第14章4節で見た知覚品質と同じ立場です。
⑤ 真実の瞬間
スカンジナビア航空のヤン・カールソンが提唱したものです。
旅行客が従業員と接する時間は平均すると約15秒という短い時間であり、その短い時間における対応が、そのサービスに対する顧客の評価を決めるため、その時間内にいかに顧客を満足させる適切な対応ができるかが重要だとする考えです。
⑥ 3つはひとつながり
この3つは、別々の話ではありません。
真実の瞬間が言うように、評価は現場の15秒で決まります。
その15秒を担うのは、前のテーマで見たCP(コンタクトパーソナル)です。
そのCPが良い対応をできるかは、サービス・プロフィット・チェーンが言うように従業員満足に左右されます。
そして、その結果できあがった品質を顧客の知覚で測るのがSERVQUALです。
従業員を整える → 現場の15秒で決まる → 顧客の知覚で測る。この順で結びつけておくと、3つが一度に頭に入ります。
具体例
航空会社の事例で、3つのつながりを見てみます。
真実の瞬間が起きる場面
ある乗客がこの会社を利用したとき、従業員と実際に接したのは合計で1分に満たない時間でした。
この短い接点の積み重ねが、「この会社は良かった」という評価を決めます。
機体の性能でも路線網でもなく、この数十秒で決まるというのが真実の瞬間の主張です。
その15秒を支えるもの
カウンター係が疲れていて笑顔が出なければ、その20秒は台無しになります。
この会社は、
という手当てを行いました。従業員満足から始める、という順です。
結果として起きたこと
従業員の定着率が上がり(離職率18%→9%)、経験の長い人が現場に残るようになりました。
対応の質が上がり、顧客満足度が改善し、リピート率が上がり、収益が改善しました。
そして、その利益で待遇をさらに改善する——好循環です。
品質をどう測ったか
この会社はSERVQUALの5次元で毎月測っています。
いずれも客がどう感じたかを尋ねています。定刻到着率という客観的な数字ではなく、「定刻に着いたと感じたか」を測る。知覚で測るとはこういうことです。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
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