組織構造論
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プレミアムで見る官僚制という言葉には、お役所仕事という悪い響きがあります。しかし本来は、合理性を追求するために編み出された優れた仕組みでした。規則を定め、専門化し、文書で残す。そうすることで、誰がやっても同じ結果が出るようになります。問題は、それが行き過ぎたときに起きます。この節では、官僚制組織の5つの特徴と、そこから生まれる6つの逆機能を押さえます。
簡単にいうと
官僚制は「合理性を追求する組織原則」。規則・専門化・階層・専門人材・文書の5つが特徴だよ。もともとは良いものとして作られたんだ!
① 官僚制組織とは
高度に専門化された職務が、権限と責任を土台にしたピラミッド型の階層を作る。そして構成員には、規則にもとづく没主観的な判断で職務を果たすことが求められる。こうした組織構造の性格です。
定義が長いので分解しておきましょう。
・高度に専門化された職務……専門化の原則
・権限・責任を基礎としたピラミッド型の階層……権限責任一致の原則、階層性の原則
・規則に基づいた没主観的判断……個人の好みや感情ではなく規則で判断する
前節までに学んだ設計原理が、ほぼそのまま入っていることが分かります。官僚制組織は、設計原理を徹底した姿だといえます。
② 5つの特徴
合理性を追求する組織原則に基づくため、次のような特徴があります。
| 特徴 | |
|---|---|
| ① | 規則、手続きの徹底 |
| ② |
具体例
従業員500人に成長した物流会社が、官僚制の5つの特徴を導入していった過程です。どれも問題を解決するための措置だったことが分かります。
① 規則、手続きの徹底 かつては、荷物の破損が起きたときの補償額を担当者がその場で決めていました。親しい顧客には全額、そうでない顧客には半額、といった差が生じ、苦情が絶えません。そこで補償規程を定め、誰が担当しても同じ判断になるようにしました。
② 専門化と分業の徹底 全員が配送も倉庫管理も請求業務もやっていたころは、請求書の誤りが月に40件出ていました。請求業務の専任者を置いたところ、月3件に減りました。
③ ヒエラルキーの形成 誰が最終的に決めるのかが曖昧で、現場が判断を仰ぐ相手を探して回っていました。センター長→エリア長→本部長という階層を明確にし、責任の所在をはっきりさせました。
④ 専門的な知識や技術をもった人材の採用 それまで縁故採用が中心でしたが、危険物取扱の資格保有者や物流システムの経験者を公募で採用するようになりました。血縁や情実ではなく能力で選ぶということです。
⑤ 文書による記録・伝達 口頭の指示で行き違いが起き、誤配送が続いていました。作業指示書を必ず発行することにしたところ、誤配送が月18件から2件に減りました。
すべて、実際の問題を解決するために導入されたものです。官僚制が「合理性を追求する組織原則」だというのは、こういうことです。
ところが15年後、この会社では次のようなことが起きます。それが次のテーマの逆機能です。

官僚制組織と4つの逆機能
試験のポイント
簡単にいうと
良かれと思って作った仕組みが、行き過ぎると裏目に出る。「訓練された無能」と「目標の置換」の2つは用語として要暗記!
① 官僚制の逆機能とは
官僚制は、合法的支配を土台に効率を追い求めた組織構造です。ところが行きすぎると裏返ります。これが官僚制の逆機能です。硬くなった組織は、規模が大きくなったときも、業務が複雑になったときも、環境が変わったときも、うまく手を打てなくなります。
過度に進行するとという条件に注目してください。官僚制そのものが悪いのではなく、行き過ぎたときに裏返るという構造です。
② 6つの逆機能
官僚制の逆機能には次のようなものがあります。
① 行動の標準化や規則の遵守により個人の意思決定パターンが硬直化する(訓練された無能)
訓練された無能とは、決められたやり方に習熟した結果、そのやり方でしか対応できなくなる
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| ③ | ヒエラルキー(階層構造)の形成 |
| ④ | 専門的な知識や技術をもった人材の採用 |
| ⑤ | 文書による記録・伝達 |
③ 官僚制は本来すぐれた仕組み
ここを誤解しないことが大切です。
官僚制は合理性を追求するために作られました。5つの特徴は、いずれも次のような利点を生みます。
| 特徴 | 本来の利点 |
|---|---|
| 規則、手続きの徹底 | 誰が担当しても同じ判断になる。えこひいきが起きない |
| 専門化と分業の徹底 | 専門性が高まり、効率が上がる |
| ヒエラルキーの形成 | 指揮系統がはっきりし、責任の所在が明確になる |
| 専門的な人材の採用 | 血縁や情実ではなく能力で人を選べる |
| 文書による記録・伝達 | 記録が残り、引き継ぎや検証ができる |
没主観的判断という言葉も、悪い意味ではありません。担当者の気分で結果が変わらない、ということです。
前節のライフサイクルモデルで、組織が規模の拡大に伴い効率性を確保するために官僚制組織を選択するとされていたのは、この利点があるからです。
問題は、これが過度に進行したときに起きます。
② 処罰を免れるために、規則どおりの行動しかとらなくなる
規則を守っていれば責められません。逆に、良かれと思って規則から外れたことをして失敗すれば責められます。守りの姿勢が合理的になってしまうのです。
③ 人間関係の非人格化を強制し、規則どおりの行動を促し、顧客中心のサービスが行われなくなる
官僚制の利点だった没主観的判断が、行き過ぎると顧客の事情を見ない対応になります。
④ 本来、規則は組織目標を達成する手段であるが、規則を固守することが組織メンバーの目標になってしまう(目標の置換)
目標の置換は、手段と目的が入れ替わることです。規則は目標を達成するための手段だったはずなのに、いつの間にか規則を守ること自体が目的になってしまいます。
⑤ 過度な専門化と分業の強調によって効率性を追求するあまり、個人の成長が阻害される
⑥ 革新が阻害される
③ 用語として問われる2つ
6つのうち、訓練された無能と目標の置換は用語として問われるので、内容と結びつけて覚えてください。
| 用語 | 中身 |
|---|---|
| 訓練された無能 | 行動の標準化や規則の遵守により個人の意思決定パターンが硬直化する |
| 目標の置換 | 規則を固守することが組織メンバーの目標になってしまう |
④ 逆機能は特徴の裏返し
前のテーマの5つの特徴と並べると、対応が見えてきます。
| 官僚制の特徴 | 行き過ぎたときの逆機能 |
|---|---|
| 規則、手続きの徹底 | 訓練された無能、処罰を免れるための行動、目標の置換 |
| 専門化と分業の徹底 | 個人の成長の阻害、革新の阻害 |
| ヒエラルキーの形成 | 意思決定の遅延、硬直化 |
| 没主観的判断 | 人間関係の非人格化、顧客中心のサービスの欠如 |
同じ性質から、利点と逆機能の両方が生まれていることが分かります。
⑤ 対処の仕方を間違えない
過去問では、次の記述が誤りとして出題されています。
『組織の公式化が進み官僚制の逆機能が顕在化した段階では、公式の権限に依拠した規則や手続きをより詳細に設計しなければならない』
規則や手続きをより詳細に設計すれば、ますます官僚制の逆機能が進行します。
逆機能は規則の行き過ぎから生まれているのですから、規則をさらに増やせば火に油を注ぐことになります。正しい対処は、次節で学ぶ組織構造の動態化です。
具体例
前のテーマに出てきた物流会社で、15年後に起きていたことを見てみましょう。
訓練された無能 ベテランの配送員ほど、決められたルートと手順に習熟していました。ところが大規模な道路工事で従来のルートが使えなくなったとき、最も経験の長い配送員が最も対応に苦労しました。決まったやり方に習熟していたぶん、別のやり方に切り替えられなかったのです。入社2年目の若手のほうが柔軟に迂回路を見つけました。
処罰を免れるための行動 顧客から「今日中にどうしても届けてほしい」と頼まれたとき、配送員は断るようになりました。規程では翌日配送だからです。無理に届けて事故を起こせば処分されますが、規程どおりに断れば責められません。
顧客中心のサービスが行われなくなる 高齢の顧客から「玄関まで運んでほしい」と言われても、「規程では玄関前までです」と答えるようになりました。没主観的判断が行き過ぎた姿です。
目標の置換 補償規程の運用をめぐって、こんなことが起きました。顧客の荷物を破損させた際、担当者は顧客の納得を得ることではなく、規程どおりに処理することに全力を注ぎました。書類は完璧に揃いましたが、顧客は二度と発注しませんでした。
手段であったはずの規程が、目的になっているのです。
革新が阻害される 若手が「配送ルートをアプリで最適化しては」と提案しましたが、「作業指示書の様式を変えるには本部の承認が要る」「規程の改定には半年かかる」と言われ、立ち消えになりました。
会社が最初にやろうとしたこと 経営陣は当初、「顧客対応が悪いのは、規程が細かく定められていないからだ」と考え、接客マニュアルをさらに詳細に作ろうとしました。
これは逆効果です。規則や手続きをより詳細に設計すれば、ますます逆機能が進行するだけだからです。
この会社が実際に効果を上げたのは、次節で学ぶ組織構造の動態化、とくに現場への権限委譲とエンパワーメントでした。
試験のポイント
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