組織行動論
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プレミアムで見る内容理論が「何によって動機づけられるか」を問うたのに対し、過程理論は「どのように動機づけられるか」を問います。報酬がどう効くのか、他人と比べるとどうなるのか、努力と報酬のあいだに何があるのか。気持ちの流れを追いかける理論群です。とくに期待理論は、ブルームとローラーの違いが繰り返し問われます。図の関係ごと押さえましょう。
簡単にいうと
強化説は「報酬をもらうとその行動が増える」。しかも毎回より、たまに与えるほうが効く!公平説は「他人と比べて損だと感じると是正しようとする」だよ。
① 過程理論とは
過程理論とは、人はどのように(HOWやWHY)動機づけられるのか(個人の気持ちの流れ)についての理論です。
内容理論が「何が人を動かすか」を問うのに対し、過程理論は「どういう筋道で人が動くか」を問います。
② 強化説
ある行動に対してふさわしい報酬が折々に与えられると、その行動は繰り返されるようになります。逆に報酬がなかったり罰が与えられたりすれば、その行動は引っ込む。こう説明する理論です。
以下のような特徴があります。
❶ 部分強化のほうが効果が高い
報酬はつねに与える(連続強化)より、何回かに1度与える(部分強化)ほうが効果が高いとされます。
ここが試験で問われるところです。直感に反するように思えますが、毎回もらえると当たり前になり、もらえたりもらえなかったりするほうが行動が持続するのです。
| 連続強化 | 部分強化 | |
|---|---|---|
| 与え方 | つねに与える | 何回かに1度与える |
| 効果 | 相対的に低い | 高い |
❷ 外発的な動機づけ要因を対象にしている
外発的な動機づけ要因(金銭など他人からもたらされる動機づけ要因)を対象にしています。
強化説が扱うのは、あくまで外から与えられる報酬です。第4節で学ぶ内発的動機づけとは、扱う対象が違います。
③ 公平説
公平説とは、個人の動機づけを、報酬を他人と比較する過程において生じる主観的な公平感や不公平感に焦点をあてながら説明しようという理論です。
④ 公平説の仕組み
この説によれば、従業員はまず、自分が仕事に注ぎ込むもの(インプット)と、そこから受け取るもの(アウトプット)を天秤にかけます。そのうえで、自分の比率を他人の比率と見比べるのです。
自分の比率が比較相手のそれと等しければ公平であると感じ、そうでなければ不公平を感じます。
不公平を感じた場合は、それを是正しようとします。
式で表すと、次の比較をしているということです。
自分のアウトプット ÷ 自分のインプット と 他人のアウトプット ÷ 他人のインプット
⑤ 押さえるべき2点
❶ 絶対額ではなく比率で見ている
自分の給与が高いか低いかそのものではなく、投入したものに対する見返りの比率を比べています。だから、同じ給与でも自分のほうが働いていれば不公平を感じます。
具体例
同じ部署の2人の事例で、2つの理論の違いを見てみましょう。
強化説が効いた例
ある小売店で、店員の接客改善に取り組みました。
最初のやり方(連続強化) 「笑顔で挨拶できたら、毎回スタンプを1つ」という仕組みにしました。導入直後は挨拶が増えましたが、2か月で元に戻ります。スタンプが当たり前になり、有り難みが薄れたのです。
変えたやり方(部分強化) 「月に数回、店長がランダムに巡回し、その場で良い接客を見つけたら表彰する」形に変えました。
いつ見られているか分からないため、行動が持続するようになりました。半年後も挨拶率は高いままです。
報酬はつねに与えるより、何回かに1度与えるほうが効果が高いという、教科書どおりの結果です。
公平説が効いた例
同じ店で、こんなことが起きました。
Uさん 時給1,100円。1日8時間勤務。レジ、品出し、発注、シフト作成まで担当しています。
Vさん 時給1,100円。1日8時間勤務。レジと品出しのみ。
Uさんは、自分のインプット(担当業務の広さ)に対するアウトプット(時給)の比率が、Vさんのそれより低いと感じました。
ここが重要

過程理論の4つ
試験のポイント
簡単にいうと
ブルームは「期待×誘意性」。ローラーはその「期待」をさらに2つに分けた。努力→業績→報酬という図で覚えるのがいちばん確実だよ!
① 期待理論とは
期待理論とは、報酬を獲得できる主観的確率である期待と、その報酬がもつ魅力の度合いである誘意性との積和が、その活動に対する動機づけの強さを決定するとするものです。
2つの言葉の定義を正確に押さえましょう。
| 用語 | 定義 |
|---|---|
| 期待 | 報酬を獲得できる主観的確率 |
| 誘意性 |
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❷ 主観的なものである
主観的な公平感や不公平感という言葉のとおり、客観的に公平かどうかではありません。本人がそう感じるかどうかです。
第7章で学んだ組織均衡でも、「誘因が貢献以上であると主観的に評価されたとき」に貢献意欲が生まれるとされていました。同じ発想がここにも流れています。
⑥ 不公平を是正する方法
不公平を感じた人は、それを是正しようとします。取りうる方法は、比率を構成する要素から導けます。
・自分のインプットを減らす(手を抜く)
・自分のアウトプットを増やす(昇給を要求する)
・比較相手を変える(別の人と比べ直す)
・その場を離れる(異動を希望する、退職する)
「手を抜く」が選ばれることがある、という点が実務的に重要です。不公平感は、そのまま生産性の低下につながりうるのです。
Uさんが取った是正行動 最初は店長に昇給を求めましたが(アウトプットを増やす)、認められませんでした。
次にUさんは、発注とシフト作成を「時間内に終わらないので」と理由をつけて断るようになります(インプットを減らす)。
不公平感が生産性の低下につながったわけです。
店長が取った対応 Uさんの時給を1,250円に引き上げ、担当業務の違いを時給に反映させる基準を明示しました。比率をそろえることで、公平感が回復しています。
② 前提となる人間観
期待理論は強化説や公平説同様、報酬を動機づけの要因としています。
また人間を、自己の快楽を求め、不快なことは避けるという打算的で心理的快楽主義をもつ存在であると想定しています。
この人間観も問われることがあります。
③ ブルームの期待理論
以下の2つの積によって動機づけられるとしています。
| 中身 | |
|---|---|
| ① | 努力が特定の報酬をもたらす主観的確率(期待) |
| ② | 報酬の主観的魅力(誘意性) |
動機づけられるためには期待と誘意性の両方が大きい必要があります。
積であるという点が大事です。どちらかがゼロなら、掛け算の結果もゼロになります。
・報酬がどんなに魅力的でも、得られる見込みがゼロなら動機づけられない
・確実に得られると分かっていても、その報酬に魅力がなければ動機づけられない
④ ローラーの期待理論
ブルームの期待理論における「期待」を以下の2つの積であるとしています。
| 中身 | |
|---|---|
| ① | 努力すれば業績が向上するという期待(業績が向上する主観的確率) |
| ② | 業績が望ましい報酬の入手につながるという期待(業績向上を前提として、報酬が得られる主観的確率) |
動機づけられるためには上記2つがともに高い確率で期待できる必要があります。
⑤ 2つの期待理論の関係
図で理解するのがいちばん確実です。
努力 → 業績 → 報酬
という3つの要素が並び、
・ブルームの①……努力 → 報酬(全体を1本の矢印で結ぶ)
・ローラーの①……努力 → 業績
・ローラーの②……業績 → 報酬
という対応になります。
つまり、ブルームが1本の矢印で見ていたものを、ローラーは2本に分解したということです。
この分解には意味があります。動機づけが起きない理由を、より細かく特定できるからです。
| どこが低いか | 何が起きているか |
|---|---|
| 努力 → 業績が低い | いくら頑張っても成果が出ないと思っている(能力不足、環境の問題) |
| 業績 → 報酬が低い | 成果を出しても報われないと思っている(評価制度への不信) |
| 誘意性が低い | その報酬自体に魅力を感じていない |
⑥ 過去問で問われた形
次の記述が誤りとして出題されています。
『与えられた目標にとらわれることがないよう、報酬を目標の達成と切り離して処遇する』
期待理論では目標を達成することで報酬が得られることが期待できることが重要です。
報酬を目標の達成と切り離してしまうと、ローラーの②(業績 → 報酬)の期待がゼロになります。掛け算ですから、全体の動機づけもゼロになってしまいます。
⑦ 目標設定理論
目標設定理論とは、目標が動機づけの重要な源になるというものであり、以下の2つの条件をともに満たす場合に大きく動機づけられ、高い業績につながります。
| 条件 | |
|---|---|
| ① | 難しい目標であること |
| ② | その難しい目標を受け入れている(納得している)こと |
難しいだけでは足りず、納得していることが必要です。難しい目標を一方的に押しつけても、受け入れられなければ効きません。
⑧ 参加させれば業績が上がるとは限らない
ここが試験で問われる大事な留保です。
なお、従業員を自身の目標設定の場に参加させることは、目標が受け入れられる確率は上がりますが、必ずしも高い業績につながるとは限りません。
参加させると、
・受け入れられる確率は上がる(条件②は満たしやすくなる)
・しかし、本人が低い目標を設定してしまう可能性がある(条件①が崩れる)
2つの条件の両方が必要なので、参加させれば必ずうまくいくわけではない、ということです。
なお、目標設定理論は前節の対応表では内容理論と過程理論の中間に位置づけられていました。目標という「何」に着目する面と、目標が動機を生む「筋道」に着目する面の両方を持つためです。
具体例
同じ「今期の売上目標を1.3倍に」という指示に対して、3人の営業担当がまったく違う反応をした例です。ローラーの2つの期待で読み解けます。
Wさん(努力 → 業績の期待が低い)
「担当エリアは人口が減り続けていて、既存顧客も縮小しています。どれだけ回っても1.3倍は無理です」
・ローラーの①(努力すれば業績が向上するという期待)が低い
・報酬がどれだけ魅力的でも、動機づけられません
打つ手 担当エリアの見直しか、新規開拓の手法の支援が必要です。報酬を上げても効きません。
Xさん(業績 → 報酬の期待が低い)
「達成できる自信はあります。でも去年も達成しましたが、賞与はほとんど変わりませんでした」
・ローラーの②(業績が望ましい報酬の入手につながるという期待)が低い
・努力すれば成果は出ると思っているのに、報われないと思っている
打つ手 評価制度と報酬の連動を明確にすることです。ここで「報酬を目標の達成と切り離す」などという方向に進めば、動機づけは完全に失われます。
Yさん(誘意性が低い)
「達成できると思いますし、賞与も増えるのでしょう。ただ、私はいま子どもが小さいので、お金より休みが欲しいんです」
・2つの期待はどちらも高いが、誘意性(報酬の主観的魅力)が低い
打つ手 報酬の中身を変えることです。この会社は、達成者に特別休暇を選べる制度を追加しました。
目標設定理論から見ると
この会社は当初、目標を一方的に通知していました。難しい目標ではありましたが、納得がありません。
そこで期初の面談を設け、本人と話し合って決める形に変えました。
ただし副作用も出た 参加型にした結果、本人が達成しやすい低い目標を出してくるケースが増えたのです。受け入れられる確率は上がりましたが、目標が易しくなりました。
従業員を目標設定の場に参加させることは、目標が受け入れられる確率は上がるが、必ずしも高い業績につながるとは限らないという指摘の、そのままの実例です。
この会社は最終的に、「会社が提示する水準を下限とし、その上で本人と詰める」という折衷案に落ち着きました。
試験のポイント
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