企業活動と経営戦略の全体概要
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プレミアムで見る経営戦略には、目標を達成するための行為のコースや行動指針、すなわち計画(Plan)としての側面があります。
しかし、経営目標の達成のためには、計画を立てるだけでなく、企業内部の経営資源(財務資源や人的資源など)を有効活用するために運営・管理(マネジメント)していくことが必要です。
そのためのフレームワークとして、PDSサイクルやPDCAサイクルがあります。
この節では、戦略を回す仕組みと、さまざまなタイプの経営計画を見ていきます。
最後に、計画どおりにいかないときの考え方であるプロセス型(学習型)アプローチを扱います。
簡単にいうと
計画して、やって、見直す。この繰り返しが管理の基本だよ!
① PDSサイクル
戦略実行の管理のためのフレームワークとして、マネジメントサイクルがあります。
マネジメントサイクルとは、計画(Plan)⇒ 実行(Do)⇒ 統制(See)という管理要素の一連の流れです。
② PDCAサイクル
PDSサイクルとほぼ同じ内容の管理活動のためのフレームワークとして、PDCA(plan-do-check-action)サイクルがあります。
③ PDCAの各段階の中身
ⅰ まず目標を設定し、それを具体的な計画に落とし込みます(plan)。
ⅱ 次に、組織構造と役割を決めて人員を配置し、組織構成員の動機づけを図り、具体的な行動を指揮・命令します(do)。
ⅲ 途中で成果を測定・評価し(check)、
ⅳ 必要に応じて修正を加えます(action)。
④ 回し続けることに意味があります
1つのサイクルが終わったら、反省点をふまえて再計画のプロセスへ入り、次期もまた新たなPDCAサイクルを進めます。
1回で終わらせないことが要点です。
⑤ do の中身に注意してください
具体例
部品メーカーの工場で、1年かけて回したサイクルです。
Plan(目標設定 → 計画化)
まず目標を立てました。
「不良品率を2.8%から1.5%に下げる」
そのうえで、具体的な計画に落とし込みます。
目標を設定し、それを具体的な計画に落とし込むという段取りです。
Do(組織化 → 動機づけ → 指揮・命令 → 実行)
ここが「ただ作る」ではないところです。
組織をつくり、人を動かすところまでが do

PDSサイクル(マネジメントサイクル)

PDCAサイクル

PDCAサイクル
試験のポイント
簡単にいうと
期間で呼び方が変わるよ。ただし分け方が2通りあるので気をつけて!
① 経営計画とは
経営計画とは、企業において策定される諸計画のことであり、誰が、いつ、何を行うのかといった具体的な行動予定です。
② 期間による分類
一般には、1年以内の計画を短期計画、1年を超える計画を長期計画といいます。
③ もうひとつの分け方
ただし、2〜3年の計画を中期計画、3〜5年の計画を長期計画という場合もあります。
④ 2通りあることに注意してください
ここが引っかかるところです。
簡単にいうと
計画どおりにいかないときの備えだよ。定期的に直すか、別案を用意しておくか!
① なぜ必要になるのか
企業を取り巻く環境の変化が激しい今日、計画が陳腐化したり、計画策定時点では予期しなかった事象が起こったりする可能性があります。
そういった場合に対応するための経営計画の修正方法として、ローリングプランとコンティンジェンシープランがあります。
② ローリングプラン
中・長期計画の内容を定期的に見なおし、部分的に修正を加えていく技法のことです。
③ どう動くのか
たとえば5年計画を立てた場合、
1年が経過したら、実績と環境変化をふまえて残り4年分を修正
簡単にいうと
災害が起きても、中核の事業を止めない。そのための備えだよ!
① BCPとは
BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
② 定義のなかの3つの要素
長い定義ですが、分けると3つです。
ⅰ 何に備えるのか … 自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態
ⅱ 何をめざすのか … 事業資産の損害を最小限にとどめ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧
ⅲ 何を取り決めるのか … 平常時に行うべき活動と緊急時における事業継続のための方法・手段
簡単にいうと
完璧な計画を先に作らず、やりながら学ぶ。分析しすぎて動けなくなるのを避ける考え方だよ!
① 計画は分析に基づいて立てられます
多くの場合、計画はさまざまな分析に基づいて立てられることになります。
経営環境が安定した状況においては、それまでの事業活動の分析に基づいた計画が機能する可能性が高いとされます。
② しかし、うまくいかない場合があります
環境不確実性が高い状況においては、事前に策定した計画が機能しにくい場合があります。
③ 分析麻痺症候群
また、
分析を重視するあまりに現場の実情を軽視してしまったり、現場の状況を感じ取る能力が低下してしまったりといった分析麻痺症候群とよばれる状況が生じることもあります。
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ここが見落とされがちなところです。
do は「実行する」だけではありません。
組織構造と役割を決めて人員を配置し、動機づけを図り、指揮・命令する——つまり、組織化と動機づけまで含みます。
第7章以降で扱う組織論が、ここでマネジメントサイクルとつながっています。
⑥ PDSとPDCAの違い
PDSは3段階で、統制(See)が評価と是正を一括して扱います。
PDCAは4段階で、評価(Check)と改善(Action)を分けています。
分けることで、「何がうまくいかなかったか」の分析と「どう改善するか」の行動を別の工程として扱えます。
そのぶん、具体的な改善活動につなげやすくなります。
Check(成果の測定・評価)
半期の時点で測ったところ、不良品率は2.1%。
目標には届いていません。
さらに調べると、
不良の68%が、特定の1工程(はんだ付け)に集中していました。
Action(修正・改善)
そこで計画を変えました。
第3四半期に予定していた手順書の作り直しを後回しにし、はんだ付け工程の温度管理装置を先に入れ替えたのです。
PDSならどうなっていたか
PDSの「統制(See)」では、評価と是正をまとめて扱います。
「2.1%だった。もっと頑張ろう」で終わってしまいがちです。
PDCAでは、
と分けて考えます。
分けているから、具体的な手が出てくるわけです。
次のサイクルへ
年度末の不良品率は1.6%。惜しくも届きませんでした。
この反省をふまえて、翌年度は「はんだ付け以外の工程」を重点にした新しい計画を立てました。
1つのサイクルが終わったら、反省点をふまえて再計画へ入るというのは、このことです。
ⅱ 三分する考え方 … 1年以内が短期、2〜3年が中期、3〜5年が長期
どちらも使われます。
試験では、どちらの区分で問われているかを文脈から読み取ってください。
⑤ 期間が変われば中身も変わります
計画の期間が長くなるほど内容は抽象的・戦略的になり、短くなるほど具体的・業務的になります。
5年後の姿を、日割りで決めることはできません。逆に、来月の予定を「社会に貢献する」と書いても動けません。
期間に応じて、書ける粒度が決まるということです。
具体例
ある食品メーカーの3つの計画を、並べて見てみます。
長期計画(5年)
「5年後に、海外売上比率を30%にする」
書いてあるのはこれだけです。
どの国に、どう売るかは決まっていません。
抽象的で、戦略的です。
中期計画(3年)
長期計画を受けて、もう少し踏み込みます。
どこで、どうやるかまで決まりました。
短期計画(1年)
さらに具体的になります。
誰が、いつ、何を行うのかが書かれています。
並べると見えること
| 期間 | 書かれている内容 | 粒度 |
|---|---|---|
| 5年 | 海外売上比率30% | 抽象的・戦略的 |
| 3年 | アジア3カ国に進出、現地生産 | その中間 |
| 1年 | 4月に用地契約、予算8億2,000万円 | 具体的・業務的 |
上から下へ、だんだん細かくなっています。
期間が長くなるほど抽象的・戦略的になる、というのはこういうことです。
試験のポイント
こうすることで、常に「直近5年分」の計画がある状態を保てます。
ローリング(rolling)は転がしていくという意味です。
④ 長所と短所
固定的な計画と比べて環境変化に柔軟に対応できる一方、毎期の見直しに手間とコストがかかります。
⑤ コンティンジェンシープラン
企業の業績に対する影響の大きい不測事象をあらかじめ想定し、その適応行動を事前に策定しておき、その内容を具体化したものです。
状況対応計画、あるいはシャドープランともいわれます。
⑥ 通常の計画との違い
通常の経営計画は、「こうなるだろう」という想定のもとで作られます。
コンティンジェンシープランは、「もしこうなったらどうするか」という別のシナリオを用意します。
⑦ 長所と短所、そして要点
コンティンジェンシープランを作成しておくことは、適応行動の柔軟性・迅速性という点ではメリットがあります。
しかし、計画策定に関するコストの増大というデメリットもあり、どこに妥協点を見いだすかが策定上のポイントとなります。
どちらか一方が正しいのではありません。妥協点を見つけること自体が論点だ、という書かれ方をしています。
⑧ 2つの違い
ローリングプランは、計画そのものを定期的に書き換えます。
コンティンジェンシープランは、本計画を残したまま、別案を用意しておきます。
何がきっかけで動くかが違います。
具体例
自動車部品メーカーの、2つの備え方です。
ローリングプラン
この会社は、2026年から2030年までの5カ年計画を立てました。
そして毎年3月に、こう見なおします。
| 時期 | 計画が指す期間 | やること |
|---|---|---|
| 2026年3月 | 2026〜2030 | 最初の5カ年計画を策定 |
| 2027年3月 | 2027〜2031 | 残り4年分を修正し、2031年を追加 |
| 2028年3月 | 2028〜2032 | 残り4年分を修正し、2032年を追加 |
いつ見ても、先5年分の計画がある状態が保たれます。
実際、2027年の見なおしでは、電動化の進み方が想定より速かったため、エンジン部品への投資を2割減らし、電池部品に振り向けました。
固定的な計画なら、2030年まで気づかないふりをすることになります。
ただし手間はかかります
毎年、各部署から実績を集め、市場予測を取り直し、役員会で3回審議する。
経営企画部の1〜3月は、これでほぼ埋まります。
コンティンジェンシープラン
こちらは別の話です。
この会社は、ある樹脂部品を1社からだけ仕入れていました。
その工場が止まれば、自社の生産も止まります。
そこで、あらかじめ用意しておきました。
平時は何もしません。本来の計画はそのまま動いています。
実際に起きたとき
2027年の夏、その工場が水害で停止しました。
この会社は3日で代替調達に切り替え、生産を止めずに済みました。
適応行動の柔軟性・迅速性が、ここで効いています。
コストの問題
ただし、2社の認定維持と年1回の試作に、年間2,400万円かかっていました。
起きなければ、まるごと無駄になるお金です。
どこまで備えるか——これが妥協点の見極めです。
実際この会社は、全部品に同じ備えはしていません。止まると困る12部品に絞っています。
2つの違い
試験のポイント
③ 平常時にやることが入っています
見落とされやすいのがここです。
BCPは、緊急時の手順書ではありません。
平常時に行うべき活動も取り決めの対象です。
バックアップ体制の整備、代替拠点の確保、従業員の安否確認手段の構築などが、これにあたります。
④ 「中核となる事業」が主語です
すべてを守るとは書かれていません。
中核となる事業の継続あるいは早期復旧です。
限られた資源のなかで、何を先に立て直すかを事前に決めておくところに意味があります。
⑤ コンティンジェンシープランとの違い
コンティンジェンシープランは、不測事態への適応行動を幅広く定めます。
BCPは、そのなかでもとくに「事業の継続性」を主眼とした計画です。
BCPは、コンティンジェンシープランを事業存続に焦点を絞って発展させたものと位置づけられます。
具体例
地方銀行のBCPを見てみます。
中核事業を決めるところから始まります
この銀行が、災害時に何がなんでも止めないと決めたのは3つです。
1. 預金の引き出し
2. 送金・決済
3. 融資先への資金供給
逆に、止めてよいと決めたものもあります。
すべてを守ろうとすると、何も守れません。
中核となる事業を先に決めるのは、そのためです。
平常時に行うべき活動
ここが日ごろの備えです。
緊急時における事業継続の方法・手段
実際に起きたとき
大きな地震で本店が使えなくなりましたが、
中核事業だけを立て直し、ほかは後回しにしたわけです。
コンティンジェンシープランとの違い
この銀行は、システム障害時の対応手順も別に持っています。
そちらは「こういう障害が起きたら、こう対応する」という不測事態への対応を幅広く定めたものです。
BCPは、そのなかで「事業を止めない/早く戻す」という一点に焦点を絞った計画になっています。
試験のポイント
名前のとおり、分析のせいで麻痺するということです。
データの収集や分析に時間と労力をかけすぎた結果、かえって意思決定や行動が遅れてしまいます。
そして、分析結果を信用するあまり、現場の生きた情報を見落とすようになります。
分析そのものが悪いのではありません。重視しすぎることが問題になります。
⑤ プロセス型(学習型)アプローチ
そのため、1970年代末以降に、プロセス型(学習型)アプローチとよばれる戦略アプローチが脚光を浴びるようになりました。
プロセス型(学習型)アプローチとは、実行段階において予期せぬ状況に直面したとしても、実行プロセスを見直すと同時にそれを学習の機会とするものです。
つまり、事後的に戦略を創発していくというものです。
⑥ 計画型との違い
計画型 … 先に戦略を決め、そのとおりに実行する
プロセス型 … やりながら戦略ができていく
予期せぬ状況を、失敗ではなく学習の機会ととらえるところが分かれ目です。
⑦ 実現のための条件
そのためには、戦略や計画をトップマネジメントや本社の経営企画スタッフだけで策定するのではなく、現場を含めた組織全体として生み出していくことが必要になります。
⑧ なぜ現場が必要なのか
予期せぬ状況に最初に出会うのは、現場だからです。
本社で分析している人のところには、数字になったあとの情報しか届きません。
学習の機会が現場にあるのなら、戦略をつくる場も現場を含んでいなければならない——これが「組織全体として生み出す」という条件の意味です。
具体例
業務用の清掃ロボットを開発した会社の話です。
計画型でやろうとした
この会社は、発売前に徹底的に分析しました。
11カ月かけて、180ページの事業計画ができあがりました。
分析麻痺症候群
ところが、この間に起きたことがあります。
ⅰ 行動が遅れました
分析している11カ月のあいだに、競合2社が先に製品を出してしまいました。
ⅱ 現場の実情を軽視しました
営業担当が「アンケートでは価格を気にする回答が多いが、実際に見せるとまず充電時間を聞かれる」と報告していました。
しかし、アンケートの集計結果のほうが信用され、価格を下げる方向で計画が作られました。
ⅲ 感じ取る力が落ちました
この会社では、いつの間にか「データで示せない話は会議に出さない」空気ができていました。
データの収集と分析に力を注いだ結果、かえって意思決定と行動が遅れたわけです。
プロセス型に切り替えた
そこで、やり方を変えました。
ⅰ 完成していない試作機を、協力してくれる5社に置かせてもらう
ⅱ 営業と技術者が毎週その現場に行く
ⅲ 見聞きしたことを、翌週の設計に反映する
予期せぬことが次々に分かりました
戦略が後からできた
この3つ目が決定的でした。
この会社は、ロボットを売るのをやめ、夜間清掃を請け負うサービスに事業を変えました。
最初の180ページの計画には、一言も書かれていなかった方向です。
予期せぬ状況に直面し、それを学習の機会とし、事後的に戦略を創発したわけです。
組織全体で生み出す、という条件
注目すべきは、この転換を言い出したのが経営企画部ではなかったことです。
毎週現場に通っていた入社3年目の営業担当でした。
予期せぬ状況に最初に出会うのは現場なので、戦略をつくる場にも現場が入っていなければならない。
この会社は、月1回の戦略会議に現場担当者が直接参加する仕組みに変えました。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
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