チャネル・物流戦略
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プレミアムで見る物流とは、メーカーから消費者に製品を流通させるために必要な、受注、保管、配送などの一連の活動のことです。
この節では2つを扱います。
ひとつは延期-投機の理論。「いつ作るか、どこに在庫を置くか」を決める考え方です。
もうひとつはサプライチェーンマネジメント(SCM)。調達から販売までを一本の流れとして管理する仕組みです。
延期と投機は、6つの項目がすべて裏返しの関係になっています。どちらが規模の経済を生むのかがとくに問われるので、理由まで押さえてください。
簡単にいうと
できるだけ待ってから作るか、先回りして作っておくか。この2つで、工場も在庫も配送も全部変わるんだ!
① 延期-投機の理論とは
延期-投機の理論とは、バックリン(L.P.Bucklin)によって体系化された理論です。
② 延期
延期とは、製品の生産から消費に至る流れにおける製品形態の確定と在庫形成を、消費現場に近い点まで引き延ばすものであり、実需が把握されるまでできるだけ製品の生産を引き延ばすことで消費者のニーズに適応することを志向するものです。
③ 投機
投機とは、製品の生産から消費に至る流れにおける製品形態の確定と在庫形成を、消費現場から遠い点で前倒しして行うものであり、需要予測などに基づいて生産し、規模の経済を得ることを志向するものです。
④ 2つを分ける軸
2つは、製品の形を決める地点と、在庫を作る地点がどこかで分かれます。
言葉のとおりです。延期は決定を先延ばしにし、投機は先回りして賭ける。
具体例
同じシャツを、2つの方式で供給する会社を比べてみます。
投機型のA社
半年前に需要を予測し、海外の大規模工場(生産拠点の集中化)で見込生産します。
サイズ・色の組み合わせ60種類を、各5,000枚。大ロットで作るので、1枚あたりの縫製費は280円。
完成品は国内の大型物流センター1か所に集約し(中間在庫の集中化)、月2回まとめて各店へ送ります(長サイクル・大ロット配送)。
各店は多めに在庫を持ちます(店頭在庫の大量化)。
結果:安く作れました。しかしその年は暖冬で、厚手の色が8万枚売れ残り、最終的に半額処分となりました。
延期型のB社
生地と白いシャツの状態まで作っておき、染色と仕上げは注文が入ってから行います(製品形態の確定を引き延ばす)。
工場は国内に4か所(生産拠点の分散化)、中間在庫も4か所に分けます(中間在庫の分散化)。
各店からの注文に応じて、週3回・少量ずつ配送(短サイクル・小ロット配送)。店頭在庫は最小限です(

延期−投機の理論
試験のポイント
簡単にいうと
調達から販売までを、会社の壁を越えて一本の流れとして管理するんだ。めざすのは「部分最適」ではなく「全体最適」だよ!
① SCMとは
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、原材料の調達から輸送、さらに最終消費者への販売に至るまでの一連のプロセス(サプライチェーン)を、企業の枠を超えて総合的にマネジメントするシステムです。
② 企業の枠を超える
定義の要点は企業の枠を超えてという部分です。
自社の中だけを効率化するのではありません。サプライヤー、自社、物流業者、小売業者——取引関係にある企業をまたいで管理します。
③ 何を管理するのか
このシステムでは、原材料や製品の流通情報と、顧客への現場での販売情報などを戦略的に管理します。
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この違いは、生産と流通のあらゆる項目に及びます。
生産の様式
生産の拠点
中間在庫
配送
店頭在庫
⑥ 規模の経済を生むのは投機
ここが最も問われる点です。
次の言い方は誤りです。
「製品形態と生産数量についての意思決定をできるだけ実需の発生時点まで延期し、原料・素材から迅速・柔軟な生産を行う方式は、生産段階における規模の優位性を生み出す」
規模の経済を生み出せるのは投機です。
理由は単純です。投機は見込生産で、拠点を集中させ、大ロットで作る。だからまとめて作る効果が効きます。
延期は受注が入ってから、分散した拠点で、小ロットで作る。注文に合わせて作るので、まとめ作りができません。
⑦ それぞれの得失
延期は、実需を見てから作るので売れ残りが出にくく、ニーズに合う。ただし、1個あたりのコストは高く、納期も長くなります。
投機は、安く大量に作れる。ただし、予測が外れれば在庫を抱えます。
在庫のリスクを取るか、コストの高さを取るか。この選択が、延期と投機の本質です。
結果:1枚あたりの縫製費は520円とA社の倍近い。しかし売れ残りはほぼゼロでした。
どちらが得か
A社:280円×50万枚=1億4,000万円。ただし8万枚を半額処分したので、値引き損が大きい。
B社:520円×32万枚=1億6,640万円。値引き損はほぼなし。
作るコストだけ見ればA社が安い。売れ残りまで含めるとB社が有利でした。
規模の経済はどちらにあるか
1枚280円で作れたのはA社です。集中した拠点で、大ロットで、見込みで作ったから。
規模の経済を生むのは投機——この例を思い出せば、取り違えません。
④ 何を実現するのか
これによって、次を実現していきます。
⑤ めざすのは全体最適
SCMがめざすのは、「部分最適」ではなく「全体最適」です。
ここが押さえどころです。
各社がそれぞれ自分の都合で最適化すると、全体としては非効率になることがあります。
たとえば、小売業者が欠品を恐れて多めに発注すると、その注文を受けた卸は余裕を見てさらに多めに発注し、メーカーはもっと多く作る。上流へ行くほど注文の振れ幅が大きくなるという現象が起きます。
各社の判断はそれぞれ合理的(部分最適)ですが、鎖全体では過剰在庫の山ができます。
だから、販売情報を共有して鎖全体で判断する。これが全体最適という言葉の意味です。
⑥ 延期-投機との関係
前のテーマとつながります。
SCMで販売情報が素早く上流に届くようになると、実需を早く把握できます。
実需が見えるほど、延期の方式を取りやすくなります。予測に頼らず、売れた分だけ作ればよくなるからです。
情報技術の発達が延期型の供給を広げてきたのは、この筋道によります。
具体例
菓子メーカーとコンビニチェーンのSCMを見てみます。
SCMがなかったころ
コンビニ各店は、経験と勘で発注していました。
ある新商品が話題になり、各店が欠品を恐れて普段の3倍を発注します。
注文を受けた卸は「まだ足りなくなるかも」とさらに余裕を見てメーカーへ4倍を発注。
メーカーは工場を増産体制にし、5倍を作りました。
実際に売れたのは1.5倍でした。
ブームが去ったあと、各段階に在庫が積み上がり、大量の廃棄が出ました。
各社の判断はそれぞれ合理的でした。欠品を避けたい、品切れで叱られたくない。しかし部分最適の積み重ねが、全体の損失を生んだわけです。
SCMを入れた後
全店のPOSデータが、1時間ごとにメーカーまで届く仕組みを作りました。
実際に売れた数が上流に見えるようになります。
結果として起きたこと
延期型へ近づいた
実需が見えるようになったので、メーカーは見込みで大量に作る必要がなくなりました。
半製品まで作っておき、売れ行きを見て最終的な味や包装を決める方式に変えています。
情報が速く流れるほど、延期が取りやすくなる。SCMと延期-投機の理論は、この点でつながっています。
試験のポイント
プレミアムプラン
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