マーケティングの基礎概念
下の動画はこの節の解説ではありません。 解説動画の雰囲気を知っていただくための見本として、「PPM」の動画を再生します。
この節の解説動画はプレミアム限定です。プレミアムなら全科目・全節が見放題!
プレミアムで見るここからマーケティングに入ります。
マーケティングという言葉がアメリカで生まれてから、およそ1世紀。一般には、販売活動やプロモーション活動などモノを売るための具体的な活動だと考えられることも多い言葉です。
しかし本来のマーケティングは、もっと広い意味をもった概念的なものです。
この章では、まずマーケティングとは何かを概念として押さえます。具体的な手法に入るのは次の章からです。
学習の中心は2つ。コトラーが示したマーケティング1.0から5.0までの進化と、マーケティングと社会との関わりを扱うソーシャル・マーケティングです。とくに後者は、似た言葉が並ぶので違いを意識しながら読み進めてください。
簡単にいうと
マーケティングって「売る技術」のことだと思われがちだけど、本当は「市場をどう見るか」という考え方なんだ!
① マーケティングコンセプトの意味
マーケティングコンセプト(マーケティング概念)とは、企業の市場に対する考え方と表現することができます。
もう少し具体的にいえば、企業経営にあたって必要とされる、企業の市場に対する考え方、あるいは接近法としてとらえることができます。
② なぜ抽象的な定義しか置けないのか
この定義は、かなり抽象的です。しかし、さらに具体化を図ろうとすると、その答えは時代とともに異なることになります。
企業が市場に対してどのように考えて働きかけるべきかは、100年前や50年前と現在ではまったく異なるからです。
100年前なら、作れば売れました。どう安く大量に作るかがマーケティングの中心だった。
いまは、消費者が情報を持ち、選択肢も豊富です。同じ問いへの答えが変わってしまう。
だから「市場に対する考え方」という器だけを定義しておいて、中身は時代ごとに見るという構えをとります。次のテーマで扱うコトラーの5段階は、その中身の変遷をたどったものです。
③ コンセプトと手法は別物
ここを取り違えないでください。
広告の打ち方、価格の決め方、チャネルの組み方。これらは手法です。
それに対しマーケティングコンセプトは、そもそも市場をどう見るかという上位の考え方です。
同じ広告という手法を使っていても、「作った製品を売り込むため」に使うのか、「消費者が求めるものを伝えるため」に使うのかで、背後にあるコンセプトはまったく違います。
具体例
同じ「冷蔵庫を売る」という仕事でも、コンセプトが違えば取る行動がまったく変わります。
製品を中心に考える会社
「うちの冷蔵庫は他社より20リットル容量が大きい」という点を訴えます。カタログには内容積、消費電力、製氷能力の数字が並びます。作ったものをどう伝えるか、が出発点です。
消費者を中心に考える会社
まず、共働き世帯が週末にまとめ買いをすることを調べます。そして「2週間分の食材が入る冷凍室」を設計し、「買い物は週1回でいい」と訴えます。
同じ大容量でも、前者は製品の性能として、後者は生活の変化として語られています。
社会を含めて考える会社
さらに、食品ロスを減らすという社会的な課題に着目します。残っている食材を写真で記録する機能を付け、「捨てる食べ物を減らす冷蔵庫」として売り出します。
3社とも冷蔵庫を売っていますが、市場をどう見ているかが違う。その違いがマーケティングコンセプトです。

マーケティングコンセプトの変遷と志向の分類
試験のポイント
簡単にいうと
コトラーは、マーケティングが5段階で進化してきたと言っているよ。何を中心に置くかが、少しずつ移り変わってきたんだ!
① 5段階の進化
経営学者(マーケティング論)であるフィリップ・コトラーは、マーケティングコンセプトがマーケティング1.0〜5.0という5段階の進化を遂げてきたことを提唱しています。
② マーケティング1.0 ― 製品中心
マーケティング1.0は、製品中心のマーケティングです。
はるか昔の工業化時代には、生産した製品をすべての潜在的消費者に売り込むことがマーケティングでした。
当時の製品はかなり基本的なもので、マス市場のために設計されていました。そのため、規格化と規模の拡大によって生産コストを低減し、低価格でより多くの消費者に買ってもらうことを目指すものでした。
③ マーケティング2.0 ― 消費者志向
簡単にいうと
マーケティングと社会との関わりを扱う分野だよ。似た名前の言葉がたくさん出てくるから、違いを丁寧に見ていこう!
① ソーシャル・マーケティングとは
マーケティング3.0以降で提唱されているように、昨今は、マーケティングは営利目的だけで実施するのではなく、社会とのかかわりをふまえて実施するものです。
このような、マーケティングと社会とのかかわりを扱うものが、広義のソーシャル・マーケティングです。
ここで最初に注意しておきます。ソーシャル・マーケティングは、SNSを活用したマーケティングのことではありません。
名前が似ているため取り違えやすいところですが、ソーシャルメディアを使うかどうかとは関係ありません。営利目的だけでなく、社会との良好なかかわり方をふまえてマーケティング活動を実施するという概念です。
② 3つの領域
具体的には、次の3つがこれに含まれます。
ⅰ 非営利組織のマーケティング
動画・テキスト・過去問・AI添削まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
第1章で学んだ経営理念と経営戦略の関係を思い出してください。理念があって戦略があったように、コンセプトがあって手法があります。
マーケティング2.0は、消費者志向のマーケティングです。
消費者は十分な情報を有しており、類似の製品との比較も容易に行うことができます。
製品の価値は消費者によって決められ、その消費者の選好は多様です。そのため、標的市場を設定し、他社よりも優れた製品を開発する必要があります。
消費者の暮らしは豊かになり、幅広い選択肢の中から購入する製品を選択できるようになりました。
④ マーケティング3.0 ― 価値主導
マーケティング3.0は、価値主導のマーケティングです。
消費者を単に消費者として見なすのではなく、グローバル化した世界をよりよい場所にしたいという想いを有した存在であるととらえます。
そのため、自らの中にある社会的、経済的、環境的公正に対する欲求に対し、ミッションやビジョンや価値で対応しようとしている企業の製品を選好することになります。
つまり、選択する製品やサービスに対し、機能的、感情的な充足だけでなく、精神の充足をも求めているということです。
⑤ マーケティング4.0 ― オンラインとオフラインの一体化
マーケティング4.0は、ソーシャルメディアの爆発的な普及による横のつながりの強化が、マーケティングを企業と消費者の縦の関係だけで考えられるものではなくしたことを踏まえたものです。
その一方で、デジタルの交流だけでは不十分であり、オンライン化が進む昨今においては、オフラインの触れ合いも重要な要素となります。
よってマーケティング4.0を端的に表現すれば、企業と顧客のオンライン交流とオフライン交流を一体化させるマーケティング・アプローチだと考えることができます。
⑥ マーケティング5.0 ― 人間を模倣した技術の活用
マーケティング5.0は、人間を模倣した技術を使って、カスタマー・ジャーニー(製品やサービスを知った顧客が購入・推奨に至るまでの道筋)の全行程で価値を生み出し、伝え、提供し高めること、とされます。
人間を模倣した技術とはネクスト・テクノロジーと称され、具体的には、AI、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、IoTなどを含みます。
⑦ 発表された年
⑧ 技術が主役になったわけではない
ここが5.0で押さえるべき点です。
マーケティング5.0では、これらの技術を活用するだけでなく、依然、人間の重要性も示しています。
顧客との接点を通して、人間とネクスト・テクノロジーがそれぞれの特長を生かして価値提供することの重要性が示されています。
3.0で示された人間中心という軸は、4.0でも5.0でも捨てられていません。技術の話に見える段階でも、根にあるのは人間中心の考え方だという点を押さえてください。
具体例
1台のコーヒーメーカーを、5つの段階のマーケティングで売るとどうなるかを並べてみます。
1.0 同じ型を大量に作り、「1杯あたり10円、他社の半額」と訴えます。作れるものをいかに安く広く届けるか、が主眼です。
2.0 一人暮らし向けの小型、オフィス向けの大容量、こだわり派向けの豆挽き機能付き、と3種類に分けます。誰に売るかを決めてから作る形です。
3.0 豆の産地の農家と直接取引し、その収入が学校の建設に使われることを伝えます。買う人は、コーヒーの味だけでなく「この会社のあり方に共感できるか」で選びます。
4.0 SNSで利用者どうしがレシピを共有できる場を作り、同時に街中に試飲できる実店舗を出します。オンラインで知り、店で試し、また投稿する。この行き来を一続きに設計します。
5.0 アプリが利用者の抽出履歴をAIで学習し、好みに合わせて湯温と抽出時間を提案します。ただし、味の最終的な調整の余地は本人に残す。
5.0だからといって、すべてをAIに任せるわけではありません。技術と人がそれぞれの持ち味を出す設計にしている点が要点です。
試験のポイント
従来のマーケティングは、その対象として営利組織を主体としていました。
非営利組織のマーケティングとは、非営利組織(政府組織、学校、病院、美術館など)の事業目的の達成の際に、マーケティングの手法を適用していこうとするものです。
ⅱ アイデア・社会的主張を対象とするマーケティング
経済財ではなく、アイデアや社会的主張を扱うマーケティングです。
環境保護運動やエイズ予防などの社会変革キャンペーンがこれに該当します。
ⅲ ソサイエタル・マーケティング
企業が行うマーケティング活動によって、地球環境や社会に対して悪い影響が生じてしまわないようにするという、社会的利益を考慮したマーケティング活動のことです。
③ ソサイエタル・マーケティングは企業の活動
ここが引っかけどころです。
ソサイエタル・マーケティングは、企業が行うマーケティング活動の1つです。
「病院、大学、協会、NGOなどの非営利組織で培われた考え方を営利組織にも適用したマーケティングである」という説明は誤りとして扱われます。
それは上のⅰとⅲを混ぜた言い方です。3つは並列に並ぶ別の領域であって、一方が他方から派生したものではありません。
④ コーズリレーテッド・マーケティング
ソサイエタル・マーケティングの具体的なもののひとつとして、コーズリレーテッド・マーケティングがあります。
特定の製品の売上の一部を社会貢献事業に対して寄付するマーケティング活動のことです。
通常の寄付行為とは異なり、事業収益と関連づけるのが特徴です。
ここが定義の要です。会社の利益から寄付するのではなく、特定の製品が1つ売れたらいくらという形で結びつける。買う人から見れば、その製品を選ぶこと自体が寄付になります。
⑤ サステイナブル・マーケティングとの違い
ソサイエタル・マーケティングと関連する用語として、サステイナブル・マーケティングがあります。
2つは同義ではありません。ここが最も問われる論点です。
ソサイエタル・マーケティングは、現在の企業のニーズと将来の消費者のニーズを満たしていくことに主眼が置かれています。
サステイナブル・マーケティングは、消費者、企業双方の長期的なニーズを満たすものとされます。
⑥ 4つの志向を整理する
この違いは、企業のニーズと消費者のニーズを、それぞれ現在と将来で切って並べると見通せます。
ソサイエタル・マーケティングは企業側が現在に立っているのに対し、サステイナブル・マーケティングは双方が将来を向いている。この一点で区別できます。
具体例
ミネラルウォーターを売るU社の取り組みを、4つの志向に当てはめてみます。
マーケティング志向の施策いま売れている500mlサイズを増産し、今期の売上を伸ばします。企業も消費者も、いまのニーズを見ています。
戦略計画志向の施策3年後の主力にするため、いま需要のある炭酸水市場に工場を建てます。消費者の現在のニーズに、企業が将来を見て投資しています。
ソサイエタル・マーケティング志向の施策ペットボトルを薄くして、プラスチックの使用量を3割減らしました。いまの消費者は薄いボトルを求めていません。むしろ持ちにくくなります。
しかし、将来の消費者が暮らす環境のためにこれを行う。企業は現在の事業のなかで、消費者の将来のニーズに応えています。
コーズリレーテッド・マーケティングの施策この商品が1本売れるごとに1円を水資源の保全活動に寄付します。
会社の利益から寄付するのではなく、売上と結びつけているのがこの手法の特徴です。買った人は、自分の買い物が寄付につながったと感じられます。
サステイナブル・マーケティング志向の施策水源地の森林を買い取り、50年かけて育てる事業を始めました。
この森が育つころには、いまの経営陣はいません。企業も消費者も、長期のニーズを見ています。ここがソサイエタル・マーケティングとの違いです。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。