人的資源管理
下の動画はこの節の解説ではありません。 解説動画の雰囲気を知っていただくための見本として、「PPM」の動画を再生します。
この節の解説動画はプレミアム限定です。プレミアムなら全科目・全節が見放題!(この節は全2パート)
プレミアムで見る第9章の最後に、これまでの節で扱いきれなかった労働関連法規をまとめて見ていきます。
扱うのは4つです。
労働者派遣法は、雇う会社と働く場所が別になる仕組みを定めた法律。職業安定法は、職を探す人と人を探す会社をつなぐ仕組み。高年齢者等雇用安定法は、第6節の退職管理で触れた定年のルール。男女雇用機会均等法は、性別による差別を禁じる法律です。
4つとも、制度の登場人物と関係を図に描けるようにしておくと理解が安定します。とくに労働者派遣は三者が登場するので、誰と誰のあいだにどんな関係があるのかを押さえてください。
簡単にいうと
雇っている会社と、働く場所の会社が違う。だから登場人物が3人いるんだ。この関係を図で覚えよう!
① 法の目的
労働者派遣法は、労働力の需給の適正な調整を図るために労働者派遣事業の適正な運営を確保するとともに、派遣労働者の保護等を図ることを目的としています。
② 労働者派遣とは
労働者派遣とは、自己の雇用する労働者を、その雇用関係のもとにかつ他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいいます。
③ 三者の関係
登場するのは3者です。それぞれのあいだに、別の関係が結ばれています。
ここが制度の核心です。
雇用するのは派遣元、指揮命令するのは派遣先。この2つが分かれているのが労働者派遣の特徴です。
給与を払うのも、社会保険に入れるのも派遣元。しかし、毎日の仕事の指示を出すのは派遣先。普通の雇用ならひとつの会社が担う役割が、2つに割れています。
第5節で見た在籍出向と似た形ですが、出向が企業間の人事異動であるのに対し、労働者派遣は派遣を事業として行う点が違います。
具体例
システム開発会社K社が、派遣を使った場面を見てみます。
三者の関係
K社(派遣先)は、人材サービス会社L社(派遣元)と労働者派遣契約を結びました。
実際にK社へ来たのはMさんです。Mさんを雇用しているのはL社で、給与もL社から支払われ、社会保険もL社で加入しています(雇用関係)。
一方、Mさんが毎日どの作業をするかは、K社の課長が指示します(指揮命令関係)。
判断が分かれる場面
Mさんの残業を命じるのは、指揮命令を行うK社です。
Mさんの年次有給休暇の申請を受けるのは、雇用しているL社です。
同じ人について、権限や義務がどちらの会社に属するかは雇用か指揮命令かで分かれます。
使えない場面
K社は、自社ビルの改修工事の作業員を派遣で賄おうとしました。しかし建設業務は労働者派遣の禁止業務にあたるため、この方法は取れません。請負契約を結ぶことになりました。
また、繁忙期の1日だけ人手が欲しいと考えましたが、30日以内の期間を定めて雇用する労働者の派遣(日雇派遣)は原則として禁止されています。こちらも別の方法を探すことになりました。

その他の労働関連法規
試験のポイント
簡単にいうと
職を探す人と、人を探す会社をつなぐ法律だよ。昔あった悪質な仲介から働く人を守る、という背景があるんだ!
① 法の目的
職業安定法は、公共職業安定所を中心とする職業安定のための諸機関が、労働者の能力に適合した職業に就く機会を提供することによって、雇用の安定を図り、経済および社会の発展に寄与することを目的としています。
② なぜこの法律ができたのか
かつて見られた人身売買的な紹介機関から労働者を保護し、またその機関による中間搾取を防止することが狙いです。
仕事を探している人は弱い立場にあります。そこにつけ込んで、法外な手数料を取ったり、劣悪な条件の職場へ送り込んだりする仲介業者がいた。そうした歴史を背景に持つ法律です。
この背景を知っておくと、次に見る許可制や禁止業務の意味が分かります。
③ 職業紹介の仕組み
登場するのは3者です。
簡単にいうと
第6節で出てきた定年のルールが、この法律だよ。65歳までが義務、70歳までが努力義務。ここを分けて覚えてね!
① 法の目的
高年齢者等雇用安定法は、高年齢者の雇用の確保と就業機会の確保などを図ることを目的としています。
雇用と就業という2つの言葉が並んでいる点に注目してください。後で見るとおり、この2つは義務の重さが違います。
② 定年年齢の下限
第6節で見たとおり、定年の定めをする場合、60歳を下回ることができません。
なお、この定年年齢は、継続雇用制度を導入していない場合は65歳まで引き上げられます。
③ 継続雇用制度の範囲
簡単にいうと
性別による差別を禁じる法律だよ。でも「賃金の差別」だけは別の法律の担当なんだ。ここが引っかけどころ!
① 法の目的
男女雇用機会均等法は、雇用の分野における男女の均等な機会および待遇確保などを目的としています。
② 募集、採用
事業主は、労働者の募集および採用について、性別とかかわりなく均等な機会を与えなければなりません。
③ 募集、採用以外の事項
事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由とした差別的取扱いをしてはなりません。
簡単にいうと
ここまでの4つ以外にも、名前だけは押さえておきたい法律があるよ。どの場面を守る法律かで覚えよう!
① 労働契約法
労働契約法は、労働契約についての基本的なルールを定めた法律です。
第13節で見た無期転換申込権(通算5年超の反復更新)と雇止め法理、そして第15節で見た解雇権濫用法理は、いずれもこの法律に置かれています。
労働基準法が罰則をもって最低基準を守らせる法律であるのに対し、労働契約法は民事上のルールを定めるもので、罰則はありません。この性格の違いを押さえてください。
② 最低賃金法
最低賃金法は、賃金の最低額を保障する法律です。
最低賃金には、都道府県ごとに定められる地域別最低賃金
動画・テキスト・過去問・AI添削まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
④ 労働者派遣の禁止業務等
次に該当する業務等については、原則として労働者派遣を行ってはなりません。
⑤ なぜこれらが禁止されるのか
禁止の理由は同じではありません。
港湾運送業務と建設業務は、もともと労働力の需給調整に別の仕組みがある分野です。
警備業務は、警備業法上、指揮命令の系統が分かれると責任の所在が曖昧になるためです。
医業等は、業務の性質上、指揮命令関係を切り分けにくいことによります。
日雇派遣は、雇用が極端に不安定になり、第2の目的である派遣労働者の保護に反するからです。
⑥ 許可制
労働者派遣事業を行う場合、厚生労働大臣の許可が必要です。
許可の有効期間は、最初の有効期間が3年、更新の場合の有効期間は5年となります。
この「新規3年・更新5年」という組み合わせは、次に見る有料職業紹介事業とまったく同じです。2つまとめて覚えてしまってください。
そして、あっせんが実って求職者と求人者のあいだに雇用契約が結ばれます。
④ 労働者派遣との違い
ここが重要な対比です。
職業紹介では、紹介機関は雇用関係に入りません。あっせんするだけで、雇用契約は求職者と求人者のあいだに直接結ばれます。
これに対し労働者派遣では、派遣元が雇用関係を持ち続けます。
紹介はつなぐだけ、派遣は雇い続ける。この違いで区別してください。
⑤ 有料職業紹介事業の許可
有料職業紹介事業は、厚生労働大臣の許可を受けて行うことができます。
ただし、港湾運送業務および建設業務は有料職業紹介事業が禁止されています。
⑥ 労働者派遣の禁止業務と比べる
労働者派遣の禁止業務は5つありました。有料職業紹介の禁止は2つです。
共通するのは港湾運送業務と建設業務。この2分野は、どちらの仕組みでも人を仲介できません。
一方、警備業務と医業等は、労働者派遣では禁止されますが、有料職業紹介では禁止されていません。
指揮命令が分かれることが問題なのであって、雇用先を紹介すること自体に問題はない、という区別だと考えると腑に落ちます。
⑦ 許可の有効期間
新規許可については3年、更新許可については5年です。
労働者派遣事業の許可とまったく同じ組み合わせです。
具体例
転職を考えているNさんが、2つの方法を比べた場面を見てみます。
有料職業紹介を使った場合
Nさんは人材紹介会社O社に求職申込みをしました。O社は、求人を出していたP社にNさんをあっせんします。
面接を経て採用が決まると、NさんとP社のあいだに直接、雇用契約が結ばれます。
O社はここで役割を終えます。Nさんの給与を払うのも、指示を出すのもP社です。O社はP社から紹介手数料を受け取りますが、Nさんの雇用には関わりません。
労働者派遣を使った場合
NさんがQ社(派遣元)に登録し、R社(派遣先)へ派遣されたとします。
この場合、Nさんを雇用するのはQ社のままです。給与もQ社から出ます。R社は指揮命令をするだけです。
違いがはっきりする場面
1年後、Nさんが働いている職場で人員削減が行われました。
紹介で入った場合、NさんはP社の社員ですから、P社の雇用調整の手続きに従います。
派遣の場合、R社との派遣契約が終わってもNさんはQ社の社員のままです。Q社が次の派遣先を探すことになります。
紹介と派遣は、こういう場面で違いが出ます。
試験のポイント
自社で雇い続けなければならないわけではない、ということです。グループ内での受け入れも認められます。
第13節で見た「定年前の事業主(子会社や関連会社を含む)に定年後引き続き雇用される期間は無期転換申込権が発生しない」という規定と、同じ範囲の話をしています。
④ 高年齢者就業確保措置(70歳まで)
65歳から70歳までの就業機会を確保するため、事業主に対して高年齢者就業確保措置として、次のいずれかの措置を講ずる努力義務が規定されています。
ⅰ 70歳までの定年引上げ
ⅱ 70歳までの継続雇用制度の導入(特殊関係事業主や他の事業主によるものを含む)
ⅲ 定年廃止
ⅳ 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入(高年齢者が創業した際、元の事業主が当該高年齢者と業務委託契約を結ぶ制度)
ⅴ 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に、事業主が自ら実施する社会貢献事業、または事業主が委託・出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入
⑤ 創業支援等措置
このうちⅳとⅴを創業支援等措置といい、導入する場合には過半数労働組合等の同意が必要となります。
ⅰからⅲが雇用による確保であるのに対し、ⅳとⅴは雇用によらない就業の確保です。
業務委託契約で働く人は労働者ではありませんから、労働基準法の保護が及びません。会社の一存で雇用から業務委託へ切り替えられては、実質的に保護を外す抜け道になってしまいます。
だから、この2つだけは労働者側の同意を必要としているわけです。
⑥ 65歳までと70歳までで義務の重さが違う
ここが整理の要点です。
65歳まで … 雇用確保措置(義務)
70歳まで … 就業確保措置(努力義務)
法の目的に「雇用の確保」と「就業機会の確保」が並んで書かれていたのは、この2段構えを指しています。
そして、70歳までのほうが就業という広い言葉になっているのは、業務委託や社会貢献事業といった雇用によらない形が含まれているからです。
具体例
定年60歳のS社が、法律への対応を検討しています。
65歳までの対応(義務)
S社は継続雇用制度(再雇用制度)を導入しました。60歳でいったん退職し、1年ごとの嘱託契約を65歳まで更新する形です。
このとき、本社では受け入れきれない人については、子会社のS物流に受け入れてもらうことにしました。
子会社は特殊関係事業主にあたるため、これも継続雇用制度に含まれます。
70歳までの対応(努力義務)
S社は5つの選択肢を検討しました。
同意が必要になった場面
業務委託契約の制度は創業支援等措置にあたるため、導入にあたって過半数労働組合の同意を取りました。
組合からは「業務委託になると労災保険の対象から外れる」という懸念が出されました。
そこでS社は、労災保険の特別加入の手続きを会社が支援することを約束したうえで、同意を得ています。
雇用によらない形を選ぶときに同意が求められるのは、まさにこうした点を労使で確かめさせるためです。
試験のポイント
この章で学んできた人事の各場面が、ほぼそのまま並んでいることに気づいてください。
配置と昇進は第5節、教育訓練は第11節、福利厚生は第10節、退職と定年は第6節で扱ったものです。人事のあらゆる場面に、この法律が及んでいます。
④ 賃金だけは別の法律
ここが最大の引っかけどころです。
賃金に対する差別的取扱いは、男女雇用機会均等法ではなく労働基準法で禁止されています。
上に挙げた列挙のなかに、賃金が入っていません。見落としやすいところですが、担当する法律が違うためです。
労働基準法は、女性であることを理由として賃金について差別的取扱いをすることを禁じています。こちらのほうが古くからある規定です。
「賃金の男女差別は均等法が禁じている」という言い方は誤りとして扱われます。
⑤ 間接差別の禁止
間接差別とは、性別以外の要件で、他の性の構成員と比較して一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるもので、合理的理由がないものをいいます。
具体的には、労働者の募集または採用等について、次の3つを合理的な理由なく講じることが間接差別として禁止されています。
⑥ なぜ間接差別が問題になるのか
「男性のみ募集」と書けば、それは直接の差別です。分かりやすいので、禁止も守られやすい。
ところが、「身長170cm以上」という条件を付ければどうでしょうか。性別には触れていませんが、結果として女性がほとんど応募できなくなります。
「全国転勤に応じられること」も同じです。条件そのものは中立に見えますが、現実には一方の性に重く働きます。
中立に見える要件で、実質的に差別と同じ結果をもたらす。これが間接差別です。
ただし、禁止されるのは合理的な理由なく講じる場合です。その仕事に本当に体力が要るのなら、体力要件を課すこと自体は許されます。
⑦ ポジティブアクション
均等法は、女性の優遇措置についても禁止しています。
均等というのは、男性を優遇してはならないというだけでなく、女性を優遇してもならない、という意味だからです。
ただし、男女の均等な機会・待遇の支障となっているような事情を改善するための措置については認められます。
これがポジティブアクションです。
たとえば、管理職の女性比率が著しく低い会社が、その状況を改めるために女性を対象とした研修を行う。これは認められます。
すでにある偏りを直すための措置は認められるという整理です。
⑧ 公表
厚生労働大臣は、一定の規定に違反している事業者に対して勧告することができ、その勧告に従わなかった場合は企業名等を公表することができます。
なお、この厚生労働大臣による企業名の公表は、労働者派遣法や高年齢者等雇用安定法など多くの法律で同じ規定が設けられています。
均等法だけの仕組みではない、という点に注意してください。
罰金ではなく公表という手段が使われるのは、採用に関わる法律だからです。企業名が公表されれば、人材が集まらなくなります。この分野では、そのほうが効く場合があるわけです。
具体例
メーカーT社の募集要項を、均等法に照らしてみます。
ケース1「営業職(男性)を募集」
募集および採用について性別とかかわりなく均等な機会を与えていないため、認められません。
ケース2「営業職を募集。応募資格:身長170cm以上」
性別には触れていませんが、身長要件を合理的な理由なく課すことは間接差別として禁止されます。
ただし、T社が高所での機器設置を行う職種で、安全上その身長が必要だと説明できるなら、合理的な理由があるとして認められる余地があります。
ケース3「総合職を募集。全国転勤に応じられる方」
転勤要件も、合理的な理由なく課せば間接差別になります。
T社に全国の拠点があり、総合職が実際に各地を回って育つ職種なのであれば合理的といえますが、実際には転勤の実績がほとんどないのに要件だけ課しているなら、合理性を欠きます。
ケース4 女性管理職比率が5%だったので、女性向けの管理職研修を開いた
均等法は女性の優遇措置も禁止していますが、男女の均等な機会・待遇の支障となっている事情を改善するための措置にあたるため、ポジティブアクションとして認められます。
ケース5 同じ等級の男性社員と女性社員で基本給に差をつけていた
これは禁止されますが、根拠となるのは労働基準法です。均等法ではありません。
同じ会社で起きた差別でも、賃金だけは担当する法律が違う。ここを取り違えないようにしてください。
試験のポイント
両方が適用される場合は、高いほうが適用されます。
③ パートタイム・有期雇用労働法
短時間労働者と有期雇用労働者の公正な待遇の確保を図る法律です。
通常の労働者との間で、不合理な待遇の差を設けてはならないとされています(いわゆる同一労働同一賃金)。
第13節で見た有期労働契約の規制が契約の期間を扱うのに対し、こちらは待遇の中身を扱う、という住み分けです。
④ 育児・介護休業法
育児や家族の介護を行う労働者の仕事と家庭の両立を支える法律です。
第14節で見たとおり、育児休業や介護休業をした期間は、年次有給休暇の出勤率を計算するうえで出勤したものとみなされます。
⑤ 労働安全衛生法
第17節で扱ったとおり、労働災害の防止と、労働者の安全と健康の確保を図る法律です。
⑥ どの場面を守る法律かで整理する
名前が似ていて混ざりやすいので、守っている場面で並べ直しておきます。
この並びで覚えておくと、選択肢で法律名が入れ替えられていても気づけます。
具体例
パート従業員のNさんをめぐる出来事を、どの法律が扱うかで分けてみます。
時給が県の最低賃金を下回っていた
最低賃金法の問題です。なお、Nさんの働く業種に特定最低賃金もあった場合は、高いほうが適用されます。
同じ仕事をしている正社員だけに通勤手当が出ていた
パートタイム・有期雇用労働法の問題です。通常の労働者との間に不合理な待遇の差を設けることになります。
1年契約を6回更新したところで、次は更新しないと言われた
労働契約法の問題です。通算5年を超えているので無期転換を申し込めますし、雇止めに合理的な理由がなければ雇止め法理が働きます。
子が1歳になるまで休みたいと申し出た
育児・介護休業法の問題です。そしてこの期間は、年次有給休暇の出勤率の計算では出勤したものとみなされます。
職場の棚が倒れてけがをした
労働安全衛生法(防止の側)と労災保険(補償の側)の問題です。
一つの職場で起きることでも、場面ごとに担当する法律が違います。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。