マーケティングリサーチ
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プレミアムで見るマーケティングリサーチとは、マーケティングの対象領域で発生する問題を発見したり、解決のための戦略を策定したりするうえで必要な情報を体系的に収集、分析、評価するための諸活動のことです。
前の章で見たマーケティングマネジメントプロセスの最初、環境分析を支えるのがこのリサーチです。
この章で押さえるのは4つ。
データの種類(1次データと2次データ)、リサーチの分類(調査対象による分類と目的による分類)、データの収集方法(質問法・観察法・実験法)、そしてデジタル時代の手法です。
とくに質問法の5つの手法は、コストや回答率などの特徴が細かく問われます。丸暗記せず、手法の性質から導けるようにしておきましょう。
簡単にいうと
自分で集めたデータか、すでにあるデータか。この違いと、集める順番が大事だよ!
① 2種類のデータ
マーケティングにおけるデータは、大きく1次データと2次データに分かれます。
1次データは、ある目的のために、実験や調査などを行うことによって新規に収集されたデータです。
2次データは、他の目的のためにすでに収集されているデータです。組織内に蓄積されている内部データと、図書館、業界団体といった組織外に存在している外部データがあります。
② 集める順番
ここが押さえどころです。
通常は、2次データを収集し、必要に応じて1次データを収集します。
順番には理由があります。2次データはすでに存在するので、費用も時間もかからないからです。
1次データは、目的に合ったものが手に入る代わりに、調査の設計から実施まで一から行うことになります。先に2次データで分かることを済ませ、それでも埋まらない部分だけを1次データで取りにいく。これが効率のよい進め方です。
③ 内部データと外部データの見分け方
2次データのうち、自社の組織内に蓄積されているものが内部データ、組織の外にあるものが外部データです。
ここで取り違えやすいのがPOSデータ
具体例
ドラッグストアを30店舗展開するA社が、新しいプライベートブランドの化粧水を企画しました。
まず2次データを集める
内部データとして、自社のPOSデータから、化粧水の価格帯別の売れ行きと、購入者のポイントカード情報(年齢層)を取り出しました。2,000円台がよく売れ、購入者の6割が30〜40代と分かります。
外部データとして、業界団体が出している化粧品市場の統計と、国の家計調査から化粧品への支出額の推移を調べました。
ここまでは、費用はほぼゼロ、期間は2週間で済んでいます。
2次データでは分からなかったこと
「30〜40代女性が2,000円台の化粧水を買っている」ところまでは分かりました。
しかし、なぜその価格帯なのか、どんな成分を重視しているのかは、どの統計にも載っていません。
そこで1次データを取る
A社は、自社カードの会員300人にアンケートを行い、さらに20人にグループインタビューを実施しました。
費用は180万円、期間は2か月。2次データとは桁が違います。
しかし、この調査で初めて「詰め替えができるかどうかを重視している」という要望が浮かび上がりました。
先に2次データ、足りない分だけ1次データ。この順番を守ったからこそ、調査の費用を必要な一点に集中できたわけです。
試験のポイント
簡単にいうと
調査の分け方は2通りあるよ。誰を調べるかによる分け方と、何のために調べるかによる分け方だよ!
① 2つの分け方
マーケティングリサーチの分類には、調査対象による分類とリサーチの目的による分類などがあります。
② 調査対象による分類
全数調査は、母集団(調査対象の集団)すべてを調査するものです。
標本調査(サンプル調査)は、母集団から標本(サンプル)を抽出して調査するものです。
母集団が大きいほど全数調査は現実的でなくなるため、実務では標本調査が中心になります。
③ 標本の抽出方法
標本調査における標本の抽出方法には、次の2つがあります。
簡単にいうと
5つの聞き方があるよ。コストと回答の質はだいたい裏返しの関係にあるんだ!
① 1次データの3つの収集方法
1次データの収集方法には、質問法、観察法、実験(計画)法があります。
② 質問法とは
質問法は、調査対象者に対し質問を提示することによりデータを収集するものです。
面接法、電話法、郵送法、留置法、インターネット調査などがあります。
③ 面接法
簡単にいうと
聞かずに見る方法と、条件を変えて試す方法だよ。聞いても本当のことが分からない場面で効いてくるんだ!
① 観察法
観察法とは、調査対象者の行動や反応を直接調査者が観察することによって情報収集する方法です。
たとえば、小売業で行われる次のようなものがこれにあたります。
また、グループインタビューの様子を観察するということも可能です。
② なぜ観察するのか
質問法には限界があります。
簡単にいうと
デジタル技術で、集められるデータの量が桁違いになったんだ。目的による分類に沿って整理すると分かりやすいよ!
① 何が変わったのか
デジタル技術の革新に伴い、膨大なデータ量を収集・分析することが可能となりました。
従来のリサーチは、誰に何を聞くかを決めて、その分だけ集めるものでした。デジタル時代は、自然に溜まっていくデータを後から読むという進め方が加わります。
② 探索的リサーチにあたるもの
ビッグデータの収集と分析
ビッグデータに含まれるデータには、次のようなものがあります。
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小売業者にとって、POSデータは自社の店舗で日々蓄積しているものですから、内部データにあたります。外部データではありません。
「POSデータなどの販売データは外的データである」という言い方は誤りとして扱われます。
判断のしかたは単純です。そのデータを作ったのが自社かどうかを見ます。自社の活動の記録として溜まったものなら内部データ、他所が作ったものを手に入れたのなら外部データです。
有意抽出法(有意サンプリング)は、選択者が設定したいくつかの条件に基づいて標本を抽出する方法です。
無作為抽出法(ランダムサンプリング)は、乱数表などを用いて、統計的に一定の確率で標本を抽出する方法です。
④ 2つの違いと向き不向き
違いは、誰が選ぶかです。
有意抽出法では、調査する側が条件を決めて選びます。狙った層の声を確実に集められる一方、選び方に偏りが入ります。母集団全体の姿を推し量る用途には向きません。
無作為抽出法では、確率に委ねます。手間はかかりますが、得られた結果から母集団全体を統計的に推し量れます。
「アンケートで7割が満足と答えた」という結果に意味があるかどうかは、どちらの方法で選んだかによって変わってきます。
⑤ 目的による分類
リサーチの目的による分類には、次の2つがあります。
探索的リサーチは、市場のニーズやトレンドを事前に把握したり、新たな仮説を設定したりするためのものです。
検証的リサーチは、自社によるマーケティング活動の効率性と有効性を事後に測定するためのものです。
⑥ 事前と事後で区別する
2つの違いは時点で覚えるのが確実です。
探索的リサーチは、手を打つ前。何が起きているか分からない段階で、見当をつけるために行います。だから「仮説を設定する」という言い方になります。
検証的リサーチは、手を打った後。やったことが効いたかどうかを測ります。
この対応は、次のテーマで見るデジタル時代の手法にも通じます。
具体例
コンビニチェーンB社が、新しいおにぎりを出すまでの調査を追ってみます。
探索的リサーチの段階
「おにぎり市場で何が起きているか」を知るため、まず全国の会員10万人から無作為抽出法で1,000人を選び、おにぎりの購入頻度と選ぶ理由を尋ねました。
乱数で選んでいるので、この1,000人の回答から会員全体の傾向を推し量れます。
結果、「夕方に買う人が増えている」という予想外の傾向が見えました。新しい仮説が立ったわけです。
有意抽出法を使った段階
そこで、「夕方に買う人」だけを条件に選んで30人にインタビューしました。
これは有意抽出法です。会員全体の姿は分かりませんが、知りたい層の声は確実に集まります。
「夕食の代わりに食べるので、少し大きめが欲しい」という声が多く出ました。
検証的リサーチの段階
B社は大盛りのおにぎりを発売し、3か月後に効果を測りました。
夕方の来店客数が7%増え、おにぎりの客単価が32円上がっていました。
これが検証的リサーチです。打った手が効いたかどうかを、事後に測っています。
もし全数調査をしていたら
会員10万人全員に尋ねれば、推し量る必要はなくなります。しかし費用も期間も桁違いになる。だから標本調査を使うわけです。

マーケティングリサーチの種類と方法
試験のポイント
さらに次のように分かれます。
また、とくに多くの時間をかけて個別面接を行い、深層心理を探る調査方法をデプス・インタビューといいます。
④ その他の4つ
電話法は、電話で調査対象者に質問に回答してもらう方法です。
郵送法は、事前に調査票を調査対象者に送付し、回答を記入のうえ返送してもらう方法です。
留置法は、事前に調査票を調査対象者に送付し、後日担当者が対象者を直接訪問して調査票を回収する方法です。
インターネット調査は、Webページ上に用意した質問の答えを回答欄に記入して送信してもらったり、電子メールやSNSを活用したりして情報収集する方法です。
⑤ 郵送法と留置法の違い
2つはよく似ています。どちらも事前に調査票を送る点は同じです。
違いは回収の仕方だけです。
この違いが、回答率とコストと信頼性の差を生みます。
訪問して回収すれば、その場で記入漏れを点検でき、回答の信頼性が高まります。その代わり、訪問する人件費がかかります。
返送してもらえば安く済みますが、そもそも返送されない可能性があります。
⑥ バイアスという言葉
比較表に出てくるバイアスとは「バラツキ・偏り」という意味です。
インタビュアーのバイアスとは、回答内容がインタビュアーの質によって左右されるということです。
回答におけるバイアスとは、回答者が実際とは異なる回答をする(収入を多めに答えてしまうなど)傾向があるということです。
⑦ インターネット調査は正直な回答を得やすい
ここが引っかけどころです。
「インターネット調査は低コストで短期間にデータを回収できるが、面接法や電話法ほど正直な回答が得られない」という言い方は誤りです。
他の回答者やインタビュアーが同じ場所にいないインターネット調査のほうが、正直な回答を得やすいとされています。
人が目の前にいれば、収入や生活習慣について本当のことを答えにくくなります。誰も見ていないほうが本音が出る、というわけです。
比較表でも、インターネット調査のインタビュアーのバイアスは「なし」、回答におけるバイアスは「低い」となっています。
具体例
同じ「新商品の味の評価」を、5つの方法で調べるといくらかかるかを並べてみます。対象は全国の300人とします。
面接法
全国を回るため、調査員の交通費と日当で約450万円。期間は6週間。
ただし、実際に試食してもらいながら「どのあたりが甘すぎますか」と踏み込んで聞けます。視覚的な用具も使えます。
電話法
約60万円、期間は1週間。広い地域を短時間で回れます。
ただし、味の説明を口頭だけで伝えるのは難しく、複雑な質問には向きません。短時間で切り上げるため、調査の主旨が伝わらず不信感を持たれることもあります。
郵送法
送料と印刷代で約15万円。5つのなかで最も安い部類です。
しかし、返ってきたのは300通のうち78通。回答率が低いのがこの方法の弱点です。
留置法
訪問して回収するため約280万円。期間は4週間。
回収率は9割を超え、記入漏れもその場で埋めてもらえました。ただし、本人ではなく家族が書いていた例が数件ありました。
インターネット調査
約12万円、期間は3日。最も安く、最も速い。
しかも、対面ではないため「正直なところ、甘すぎて最後まで食べられなかった」といった厳しい回答が多く集まりました。
面接では言いにくいことが、画面越しなら書けるわけです。
試験のポイント
「店内をどう回りましたか」と聞かれても、正確に答えられる人はいません。だから見る。それが観察法の存在理由です。
③ エスノグラフィー
調査員が生活者の家庭に入り込み、家族と生活を共にしながらライフスタイルなどを記録・研究するものをエスノグラフィーによる調査といいます。
定性調査の一種であり、元来は人類学者が先住民族や少数民族と生活を共にすることで風習やライフスタイルを研究するといったことでした。
定性調査である点は押さえておいてください。数字を集める調査ではありません。
④ 実験(計画)法
実験法とは、ある変数(マーケティングの要素)を操作することによる、別の変数への影響度を調査する方法です。
たとえば、広告を実施した地域と実施していない地域の売上高の変化を比較し、広告の効果を測定するといったことです。
⑤ 3つの方法の使い分け
3つは、答えたい問いが違います。
意識を知りたいなら聞く。行動を知りたいなら見る。効果を知りたいなら変えて比べる。この対応で整理しておくと迷いません。
⑥ モチベーション・リサーチ
モチベーション・リサーチとは、消費者の購買行動における潜在的欲求を明らかにするための調査技法であり、精神分析学を拠り所としています。
ただし、次の問題点がありました。
本人も気づいていない欲求を探ろうとするため、調査する側の腕に大きく依存してしまう。これが広く使われなかった理由です。
具体例
スーパーマーケットC社が、「野菜売場の売上が伸びない」という問題を調べた過程を追ってみます。
質問法で聞いてみた
来店客200人に「野菜売場は使いやすいですか」と尋ねたところ、78%が「使いやすい」と答えました。
これでは問題が見えません。
観察法に切り替えた
動線調査を行い、来店客50人の歩いた跡を記録しました。
すると、入口から入った客の6割が、野菜売場の前を素通りして惣菜売場へ直行していることが分かりました。
客に自覚はありません。だから聞いても出てこなかったのです。
通行量調査も行い、夕方6時以降の来店が全体の45%を占めることも分かりました。
エスノグラフィーで踏み込んだ
さらにC社は、共働き世帯5軒の了解を得て、調査員が夕方から夜にかけて台所に入らせてもらいました。
そこで見えたのは、帰宅後に野菜を洗って切る時間がないという実情です。冷蔵庫には買ったまま傷んだ野菜が残っていました。
アンケートでは「野菜を食べたい」と答えていた人たちです。意識と実態がずれていたわけです。
実験法で確かめた
C社は、10店舗のうち5店舗だけで夕方5時からカット野菜を増量する試みを行いました。
1か月後、実施した5店舗では野菜売場の売上が14%増え、実施しなかった5店舗では横ばいでした。
変えた要素と変えなかった要素を比べることで、この施策が効いたと確かめられます。
聞いて分からず、見て分かり、試して確かめた。3つの方法が順に役割を果たしています。
試験のポイント
これらを収集・分析することで、自然発生的に生まれた消費者の声や行動を迅速に捉えることが可能になります。
ソーシャルリスニング
ソーシャルリスニングとは、ソーシャルメディアやオンライン・コミュニティなどで製品がどのように語られているかを積極的にモニターする作業のことです。
伝統的なリサーチに比べ、次のメリットがあります。
③ 検証的リサーチにあたるもの
A/Bテスト
A/Bテストとは、ウェブサイトやアプリといったデジタルコンテンツを最適化するために、画像やテキスト、デザイン、レイアウト、導線などの要素が異なる複数のパターンを入れ替えて表示させ、どのパターンが効果的かをテストする手法です。
一般的に2つのパターンを用意し、ウェブサイトならばサイト訪問者をどちらかのパターンに振り分けて、ウェブ上の行動を追跡することでどちらが効果的かを特定します。
④ A/Bテストは実験法のデジタル版
A/Bテストの仕組みは、前のテーマで見た実験法そのものです。
ある変数(ボタンの色、見出しの文言)を操作して、別の変数(クリック率、購入率)への影響度を調べる。構造は同じです。
違うのは規模と速さです。地域を分けて広告を打つ実験には数か月かかりますが、A/Bテストなら数日で答えが出ます。
⑤ 3つを分類に当てはめる
前2つは「何が起きているか」を見つける段階、A/Bテストは「やったことが効いたか」を測る段階です。
⑥ ソーシャルリスニングは聞き出すものではない
名前から誤解しやすいところです。
ソーシャルリスニングは、企業が質問を投げて答えてもらうものではありません。すでに交わされている会話を横で聞く作業です。
だから「自然発生的に生まれた声」を拾えます。聞かれたから答えた言葉ではなく、誰にも頼まれずに書かれた言葉だという点に価値があります。
具体例
化粧品を通信販売するD社の1年間を追ってみます。
ソーシャルリスニングで気づいた
D社は、自社の主力商品名がSNSでどう語られているかを毎日モニターしています。
ある月、「詰め替え」という言葉と一緒に言及される回数が3倍に増えていることに気づきました。
誰にも聞いていません。利用者どうしの会話を横で聞いていただけです。自然発生的に生まれた声です。
ビッグデータで裏づけた
自社サイトの閲覧履歴(パーソナルデータ)を分析すると、「詰め替え」で検索して何も買わずに離脱した人が半年で2.4倍になっていました。
さらに、国の統計(オープンデータ)でプラスチック削減への関心が高まっていることも確かめました。
ここまでが探索的リサーチです。「詰め替え用を求める声がある」という仮説が立ちました。
A/Bテストで検証した
D社は詰め替え用を発売し、商品ページを2種類用意しました。
訪問者を半々に振り分けて、2週間追跡しました。
結果は、Bの購入率がAの1.6倍。D社はBに一本化しました。
これが検証的リサーチです。
従来の方法なら
同じことをアンケートでやろうとすれば、設計に2週間、実施に3週間、集計に1週間かかります。
A/Bテストは、実際に買うかどうかという行動そのものを2週間で測っています。言ったことではなく、やったことを見ている点でも違います。
試験のポイント
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