人的資源管理
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プレミアムで見るこの節では、賃金以外の報酬にも視野を広げます。
まず年俸制。1年を単位として賃金額を決める制度で、第3節で学んだ成果主義を賃金の形にしたものにあたります。第7節で学んだ目標管理制度と面接制度が不可欠の前提になっている点にも注意してください。
次に、株式を使ったインセンティブ制度、すなわち従業員持株制度とストックオプション制度。現金以外で報いる仕組みです。
最後に福利厚生。賃金という基本的な労働条件とは別に、従業員とその家族の福祉のために行われる施策です。
簡単にいうと
1年単位で賃金を決める制度だよ。成果主義そのものだけど、目標管理と面接がセットで要るんだ!
① 年俸制とは
年俸制とは、1年を単位として、年間の賃金額を決定する制度です。
② 何を基準に額を決めるのか
賃金額の決定基準としては、次のようなものが挙げられます。
過去の実績と、これからの期待。この2つを見て年間の額を決めるわけです。
したがって年俸制は、成果主義的な賃金制度のひとつと考えられます。第3節で学んだ成果主義が、賃金の決め方として形になったものだと捉えてください。
③ 目標管理制度と面接制度が不可欠
ここが年俸制の最も重要な論点です。
賃金額などの決定や業績評価にあたっては、目標管理制度や面接制度の導入を行い、労働者と上司との話し合いを行うことが不可欠となります。
理由を考えてみれば当然のことです。1年分の賃金を業績の達成度で決めるなら、何を達成すれば良いのかが期首に決まっていなければなりません。目標がないところに達成度は測れません。
そして、決まった額を本人が納得するには、なぜその評価になったのかを face to face で説明する場が要ります。第7節で見た目標管理制度と面接制度が、そのまま年俸制の土台になっているわけです。
年俸制を「成果で賃金を決める制度」とだけ覚えていると、この前提を見落とします。年俸制は目標管理制度とセットで動く、と押さえておいてください。
具体例
ソフトウェア会社のA社が、管理職に年俸制を導入したときの動きを追ってみます。
導入前の課題管理職の賃金は職能給と役職手当の積み上げで、勤続が長い人ほど高くなっていました。部下を持たない専門職の管理職も、20人の部下を率いる部長も、勤続年数が同じなら賃金はほぼ同じ。「成果を出しても報われない」という声が出ていました。
導入した仕組み
実際の動き部長のBさんの年俸は、前年度の達成度がAだったことと今年度に新規事業を任されることから、1,080万円から1,200万円に上がりました。
同じ管理職のCさんは、担当プロジェクトが2期続けて赤字だったため、980万円から920万円に下がりました。
欠かせなかったものA社がこの制度を動かせているのは、期首の目標設定面談と期末のフィードバック面談を全管理職に義務づけているからです。
導入1年目、この面談を省いた部署がひとつありました。そこでは「なぜ下がったのか分からない」という不満が噴き出し、翌年から面談の実施が徹底されました。年俸制が目標管理制度とセットでなければ動かないことが、身をもって確かめられた形です。

年俸制と株式インセンティブ・福利厚生
試験のポイント
簡単にいうと
現金じゃなくて株で報いる仕組みだよ。持株制度とストックオプション、似てるけど中身は全然違うんだ!
① 従業員持株制度
従業員持株制度とは、従業員が自分の勤務先の会社の株式を取得することについて、会社が何らかの便宜や経済的援助を与え、これを奨励する制度をいいます。
毎月の給与から一定額を天引きして株式を買い付け、会社が購入額の何%かを奨励金として上乗せする、といった形が一般的です。
ここで従業員が手にするのは株式そのものです。買った時点で株主になります。
② ストックオプション制度
ストックオプション制度とは、会社が発行する株式をあらかじめ定めた価格で取得する権利(新株予約権)を付与する制度をいいます。
ここで従業員が手にするのは株式ではなく、買う権利です。この違いが決定的です。
③ ストックオプションで利益が出る仕組み
簡単にいうと
賃金とは別枠で、暮らしを支える仕組みだよ。法律で決まっているものと、会社が独自に決めるものがあるんだ!
① 福利厚生とは
福利厚生とは、賃金など基本的な労働条件とは別に、企業が従業員やその家族の福祉の向上のために行うさまざまな施策のことをいいます。
賃金とは別枠である、という点が定義の出発点です。
② 2つの種類
福利厚生プログラムには、大きく2つがあります。
法定福利制度
法律で事業主に義務づけられているものです。健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険などの各種社会保険料の事業主としての負担がこれにあたります。
義務ですから、企業が選ぶ余地はありません。詳しくは第18節・第19節の労働保険と社会保険で扱います。
法定外福利制度
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年俸制の導入には、次のような理由が挙げられます。
このなかで見落としやすいのが賃金総額の上昇を避けるためという項目です。
従来の年功的な賃金では、勤続とともに自動的に額が積み上がっていきました。年俸制なら、毎年ゼロから額を決め直せます。動機づけの制度であると同時に、人件費を抑えるための制度でもある。この両面があることは押さえておく価値があります。
ストックオプションを持つ人は、株式の買取価格よりも株価が高い場合に権利を行使して、あらかじめ定めた価格で株式を買い取り、それを第三者に売却してキャピタルゲインを得られます。
逆に、株価が定めた価格を下回っていれば、権利を行使しなければよいだけです。損はしません。
権利であって義務ではない。ここが持株制度との大きな違いです。持株制度で買った株は、株価が下がれば損失になります。
④ ストックオプションが向いている会社
金銭的な報酬の原資が不足しているベンチャー企業などでは、この制度の導入によって、優秀な人材の確保や貢献意欲の向上を図ることが有効になります。
現金が乏しくても、将来の株価上昇という形で報いる約束ができる。しかも権利を付与した時点では現金が出ていきません。創業期の会社が使う理由はここにあります。
⑤ ストックオプションのデメリット
一方で、次のような問題も指摘されています。
報酬が株価という外部要因に左右されるため、本人の努力と報酬が必ずしも結びつきません。第8章で見た期待理論に照らせば、努力しても報酬につながらないと感じられた時点で、動機づけの力は失われてしまいます。
具体例
創業4年目のベンチャー企業D社が、エンジニアのEさんを迎え入れたときの条件を見てみます。
Eさんは大手企業で年収900万円でした。D社が出せる現金は600万円が限界です。300万円の開きをどう埋めるか。
D社が提示したもの1株1,000円で1万株を取得できるストックオプションを付与しました。権利を行使できるのは3年後からです。
3年後・うまくいった場合上場して株価が5,000円になりました。Eさんは権利を行使して1,000円で1万株を買い(1,000万円)、市場で5,000円で売ります(5,000万円)。差額の4,000万円がキャピタルゲインです。
3年後・うまくいかなかった場合株価が800円にとどまりました。1,000円で買う権利には意味がないので、行使しません。Eさんに損はありませんが、3年間、年収300万円分を諦めた形になります。「話が違う」という気持ちが残るのは避けられません。
もし従業員持株制度だったらEさんは自分のお金で株を買っていたことになります。株価が800円に下がれば、買った金額との差が実際の損失になります。
権利をもらうのか、株そのものを買うのか。抱えるリスクの向きがまったく違うことが分かります。
試験のポイント
③ 見直しが迫られている
福利厚生プログラムは、いま見直しを迫られています。理由は3つあります。
3つとも、従来型の福利厚生が何を前提にしていたかを考えると腑に落ちます。
社宅も、家族向けの保養所も、同じ会社に定年まで勤める人が同じような暮らし方をするという前提の上に成り立っていました。
共働きが当たり前になり、独身のまま働き続ける人も、転職する人も増えた。そうなると、社宅を必要とする人とまったく使わない人のあいだで、受け取る価値に大きな差が出ます。
そこで広がったのがカフェテリアプランです。従業員に一定のポイントを与え、用意されたメニューから自分で選んでもらう方式で、ニーズの多様化とコスト管理を同時に扱えます。
第1節で見た三種の神器の揺らぎが、福利厚生の形にも表れているわけです。
具体例
製造業のF社が、福利厚生を組み替えたときの話です。
もともとあったもの
年間の法定外福利費は、一人あたり18万円でした。
調べて分かったこと
社宅に入っているのは全社員の18%。保養所の利用は年間で延べ120人、社員数の1割程度。社員旅行の参加率は年々下がって52%。
一人あたり18万円を使っているのに、実際に受け取っている価値には数倍の差がありました。持ち家の共働き世帯は、ほとんど何も受け取っていません。
組み替えた内容
保養所を2か所閉じ、社員旅行を廃止しました。そのぶんを原資に、一人あたり年12万円分のポイントを配るカフェテリアプランを導入します。
メニューには、住宅補助、育児・介護の費用補助、自己啓発の講座受講料、健康診断の追加項目、財形貯蓄への上乗せを並べました。
結果子育て中の社員はポイントの大半を保育費用に、資格取得を目指す社員は講座受講料に充てています。総額を抑えながら、「自分のために使われている」という実感は上がりました。
なお、健康保険や厚生年金の事業主負担は法定福利費ですから、この組み替えの対象にはなりません。削れるのは法定外の部分だけです。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
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