技術経営
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プレミアムで見る製品をどう部品に分け、部品どうしをどうつなぐか。この設計の思想を製品アーキテクチャといいます。パソコンのように部品を寄せ集めれば動くものもあれば、自動車のように全部品を微妙に調整し合わないと成立しないものもあります。この違いは、単なる設計の話にとどまらず、どんな企業が勝つのか、業界がどう分業するのかまで決めてしまいます。近年の出題が多い重要テーマです。
簡単にいうと
モジュール型は「部品ごとに独立していて、擦り合わせが要らない」設計。パソコンが分かりやすい例。CPUもメモリも別のメーカーが勝手に作ってるよね!
① 製品アーキテクチャとは
製品アーキテクチャとは、どのようにして製品を構成部品に分割し、そこに製品機能を配分し、それによって必要となる部品間のインターフェースをいかに設計・調整するかに関する基本的な設計思想のことです。
ここでいうインターフェースとは、部品間で情報やエネルギーのやりとりが行われる部分であり、要はモジュール間のつなぎ目のことです。
製品アーキテクチャは大きく、モジュール(モジュラー)型とインテグラル型(統合型、擦り合わせ型)に分かれます。
② モジュール化(モジュール型アーキテクチャ)
モジュール化とは、全体システムを、明確に定義されたインターフェースにより、相互調整が不要となるような下位システム(モジュール)に分解するという設計思想です。
キーワードは「相互調整が不要」です。つなぎ目のルールさえ守っていれば、中身をどう作ろうが他の部品に影響しない。これがモジュール型の本質です。
③ パソコンの例
パソコンで考えてみましょう。CPU、OS、ハードディスク、RAM。これらを作っているのはすべて別の会社で、互いに打ち合わせをしているわけではありません。それでも組み合わせて動くのは、つなぎ目の仕様が先に決まっているからです。各社はその仕様を守って作ればよく、分業の形がモジュール化されているわけです。
CPUのメーカーとメモリのメーカーが毎回打ち合わせをしなくても、規格どおりに作れば組み合わせて動きます。モジュールと機能の関係は基本的に1対1であり、各モジュールは自己完結的です。
具体例
自作パソコンを組み立てる場面を思い浮かべてください。
ある人が、次の部品を別々の店で買ってきました。
・CPU(A社製)
・マザーボード(B社製)
・メモリ(C社製)
・ストレージ(D社製)
・電源(E社製)
この5社は、互いに打ち合わせを一度もしていません。それでも組み合わせれば動きます。事前に定められた規格(インターフェース)を守っているからです。
メリットが効いている場面
・メモリが足りなくなったら、メモリだけ増設すればよい(変化の局所化)
・同じ予算でも、ゲーム用と事務用で部品構成を変えられる(多様性の確保)
・各社は自社の部品だけを考えればよく、他社と調整しなくてよい(調整コストの削減)
デメリットが効いている場面
・規格が長年変わらないため、もっと良いつなぎ方が技術的に可能でも採用できない(インターフェースの進化の抑制)
・どんな部品でも挿さるように汎用的な作りになっているため、専用設計なら要らないはずの回路や空間が残っている(全体システムの無駄)

モジュール型 vs インテグラル型アーキテクチャ
試験のポイント
簡単にいうと
インテグラル型は「全部品が微妙に調整し合っている」設計。自動車が代表例。1か所いじると全部に影響するから、擦り合わせが欠かせないんだ!
① インテグラル型アーキテクチャとは
インテグラル型アーキテクチャとは、製品の機能が複数のコンポーネント(部品)にまたがって複雑に配分されており、コンポーネント間のインターフェースも事前に標準化されていないような製品設計思想のことです。
その結果、モジュール型のアーキテクチャとは異なり、1つのコンポーネントに変更を加えると他のコンポーネントすべてに変更を加えなくてはなりません。
モジュール型では機能と部品が1対1でしたが、インテグラル型では機能群とコンポーネント群の関係が複雑に錯綜し、相互に影響を与え合います。だからこそ相互調整(擦り合わせ)が必要になります。
② 自動車の例
自動車を考えてください。タイヤ、サスペンション、シャシー、ボディ、エンジン、トランスミッション。これらは互いに細かく調整し合って、はじめて1台としての性能を出しています。
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| メリット | 中身 |
|---|---|
| 調整コストの削減 | 構成要素間の調整等にかかるコストを削減できる |
| 変化の局所化 | モジュールの独立性が確保されると、全体に対する変化を部分(モジュール)に集中することができる |
| 多様性の確保 | システムの多様性を容易に確保できる。つまりさまざまな組み合わせが可能である |
2つ目は分かりにくいので補足します。メモリを増やしたいとき、パソコン全体を設計し直す必要はありません。メモリというモジュールだけを交換すれば済みます。変更の影響がそのモジュールの中で止まるということです。
⑤ モジュール化のデメリット
| デメリット | 中身 |
|---|---|
| インターフェースの進化が抑制される | 各モジュールの独立的な開発を促すためにはインターフェースを長期間固定しなくてはならない |
| 全体システムに無駄が生じる | 幅広いモジュールを扱うにはインターフェースに汎用性をもたせなくてはならず、結果、全体システムに無駄が生じる(全体システムが無駄を許容できることが前提) |
| コモディティ化 | 完成品メーカー間で同じような部品を用いることになるため、コモディティ化が生じやすい |
⑥ コモディティ化
コモディティ化とは、製品の規格化・標準化が進み、差別化が困難になり、価格競争が生じることです。
モジュール型では、どの完成品メーカーも同じ部品を買ってきて組み立てます。そうなると中身に差がつかず、残る違いは価格だけになります。第2章で学んだポーターの差別化戦略が効かなくなり、コストリーダーシップの消耗戦に陥りやすいということです。
⑦ 過去問で問われた論点
次の記述が誤りとして出題されています。
『製品アーキテクチャがモジュール型の場合には、製品のサブシステム間の関係が簡素になるので、部品メーカーは部品生産技術をめぐって、組立メーカーとの技術交流を緊密化することが重要になる』
モジュール型の場合には、緊密さは要件ではありません。むしろ「相互調整が不要」であることがモジュール型の定義ですから、緊密な技術交流が必要になるのはインテグラル型のほうです。
また、次の記述はモジュラー化の典型的な特徴として正しいとされています。
『モジュラー化の進展によって、自社固有の技術開発余地が狭まり、標準部品を使った製品間の競争が激化し、価格競争が激しくなる』
これはまさにコモディティ化の説明です。
最後の点が、パソコン業界の利益率が長く低いままである理由です。部品メーカーは儲かるが、組み立てるメーカーは儲かりにくいという構造がここから生まれます。
ボディを重くすれば、支えるサスペンションの設定が変わります。サスペンションが変われば、乗り心地が変わり、それに合わせてタイヤも変える必要が出てきます。こうして変更が連鎖していくのです。
③ インテグラル型のメリット
| メリット | 中身 |
|---|---|
| まとまりの良さ | 製品としてのまとまりの良さ(プロダクトインテグリティ)を追求でき、小型化製品や軽量化製品の開発に適している |
| 全体最適 | システム全体の最適設計が可能になる(無駄のない全体システムの設計が可能) |
| 模倣困難性 | 構成要素間に相互依存性があるため、システム全体の模倣が困難になり、持続的な競争優位性が確保できる |
3つ目が経営上とくに重要です。第3章のVRIO分析で学んだ模倣困難性が、アーキテクチャの性質そのものから生まれているわけです。部品を1つ分解して真似ても、全体の調整までは再現できません。
④ インテグラル型のデメリット
| デメリット | 中身 |
|---|---|
| 調整コスト | 構成要素間に相互依存性があるため、調整(擦り合わせ)コストがかかる。あるいは、部分の変更によってシステム全体の変更を促すケースが発生する |
| 多様性と進化の遅さ | 上記の結果、システムの多様性を追求しにくく、進化に時間がかかる |
⑤ 系列取引との関係
ここが日本企業を理解するうえで重要な論点です。
日本の自動車産業に系列取引という閉じた取引関係が見られるのも、ここから説明できます。自動車がインテグラル型である以上、完成車メーカーと部品メーカーは密に手を組まなければ製品になりません。その必要が、固定的な関係を生んだという見方です。
擦り合わせには、長年の付き合いと相互の理解が要ります。毎回新しい相手と一から調整するのでは、時間も費用もかかりすぎます。だから固定的な取引関係が合理的になるのです。
第2章で学んだバリューチェーンの「全体として連結されていれば模倣が難しい」という話とも重なります。
⑥ 自動車もモジュール化に向かっている
いま市場に出ている自動車、とくに乗用車は、依然としてインテグラル型が主流です。とはいえこの業界にも、モジュール化の波は届いています。はっきり表れているのが次世代自動車です。ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車。いずれも電子機器の部品を多く使うため、モジュール型に近づいていきます。
電気自動車はガソリン車に比べて部品点数が大きく減り、制御が電子化されるため、モジュール型に近づきます。そうなると何が起きるか。コモディティ化が進み、擦り合わせを強みにしてきた企業の優位が崩れる可能性があります。これはまさに前節で学んだ技術革新の非連続性と革新者のジレンマが問われている場面です。
⑦ 2つの型の比較
| モジュール型 | インテグラル型 | |
|---|---|---|
| 機能と部品の関係 | 基本的に1対1、自己完結的 | 複数の部品にまたがって複雑に配分 |
| インターフェース | 明確に定義・標準化されている | 事前に標準化されていない |
| 相互調整 | 不要 | 必要(擦り合わせ) |
| 代表例 | パソコン | 自動車 |
| 模倣 | されやすい | されにくい |
| 競争の帰結 | コモディティ化・価格競争 | 持続的な競争優位が確保しやすい |
| 取引関係 | オープンな水平分業 | クローズな系列取引 |
| 多様性・進化 | 多様性を確保しやすい | 多様性を追求しにくく進化に時間がかかる |
具体例
同じ「車体を10キロ軽くする」という変更が、2つのアーキテクチャでどう違うかを比べてみましょう。
モジュール型(パソコンで、ケースを10グラム軽くする場合) ケースの設計を変えるだけで済みます。中に入るマザーボードもメモリも、寸法の規格が変わらなければ何も影響を受けません。設計変更は1部門で完結し、2週間で終わりました。
インテグラル型(自動車で、ボディを10キロ軽くする場合) こうはいきません。
1. ボディを軽くすると、剛性が落ちる
2. 剛性が落ちると、走行時のねじれ方が変わる
3. ねじれ方が変わると、サスペンションの設定を見直す必要が出る
4. サスペンションを変えると、乗り心地とタイヤの接地が変わる
5. 接地が変わると、ブレーキの効き方と制御プログラムも調整する
6. 車重が軽くなると、エンジンの出力特性の最適点もずれる
7. 静粛性も変わるため、遮音材の配置を見直す
関わる部門は7つ、社外の部品メーカーは12社。調整会議を重ね、試作車を作り、テストコースで走らせ、完了まで14か月かかりました。
ここにインテグラル型の本質が表れています。調整コストは膨大だが、そのぶん全体として無駄のない仕上がりになり、他社が分解しても再現できない。
この14か月の擦り合わせこそが、VRIOでいう模倣困難性であり、系列取引という関係が続いてきた理由でもあります。
試験のポイント
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