製品戦略
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プレミアムで見るここから4Pの1つめ、製品(Product)に入ります。
製品とは、特定のニーズや欲求を充足する興味・所有・使用・消費のために市場に提供され得るすべてのものを指します。
それは、物理的財・サービス・人間・場所・組織・アイデアを含んでいます。
定義が思いのほか広いことに注目してください。手に取れるモノだけが製品ではありません。第10章で見たソーシャル・マーケティングでアイデアや社会的主張が対象になっていたのも、この広さがあるからです。
この節では、製品をいくつかの軸で分類したうえで、製品ラインと製品アイテムという製品の並べ方、そして製品やサービスの4つの価値を押さえます。
簡単にいうと
まず財を分ける物差しを2つ。形があるかどうかと、誰が使うかだよ!
① 有形財と無形財
企業が提供する経済的な財には有形財と無形財とがあります。
② 消費財と産業財
またその使用目的によって、有形財、無形財ともに消費財と産業財(生産財)に分類されます。
消費財は、消費者用品ともよばれ、最終消費者や家庭で使用される製品の総称であり、原則として再加工されたり、再販売されたりしない製品です。
これに対して産業財は、業務者用品、生産財ともよばれ、産業用資材として生産者に提供される製品です。
③ 2つの軸は独立している
ここが押さえどころです。
有形/無形と、消費財/産業財は別の軸
具体例
同じ「音楽を届ける」という事業を、3つの形で比べてみます。
CDで売る(有形財の消費財)
1枚作るのにプレス代とジャケット代がかかります。在庫は倉庫の場所を取り、売れ残れば廃棄費用が発生します。
1人が聴いている間、その1枚は他の人には渡りません。
配信で売る(デジタル財)
非排他性 … 1万人が同時に同じ曲を再生できます。
複製可能性 … 1万人目に配信する費用は、1人目とほとんど変わりません。
非空間性 … サーバーの容量以外に置き場所は要らず、国内でも海外でも同じように届きます。
ライブで届ける(無形財の消費財)
会場の座席数が上限です。その場にいなければ体験できません。
デジタル財とは正反対の性質を持っています。だからこそ、配信が広まった後もライブの価値がむしろ上がりました。
産業財としての音楽
同じ音源でも、テレビ番組の制作会社に使用許諾を売るなら産業財です。その会社は音楽を再加工して番組という別の製品にします。
同じ財でも、誰にどう使われるかで分類が変わる。使用目的による分類だという点は、ここに表れています。

財の分類(有形財・無形財・評価別分類)
試験のポイント
簡単にいうと
買う前に良し悪しが分かるか、という分け方だよ。第13章の認知的不協和とつながってくるんだ!
① 3つの分類
財は、いつ評価できるかという観点で3つに分かれます。
② 探索財
探索財とは、購入する前に顧客が製品について調べ、評価が可能な財です。
購入前と購入後で認識のギャップが生じにくいため、認知的不協和が生じにくくなります。
③ 経験財
経験財とは、購入後や使用中に評価が可能な財です。
簡単にいうと
製品の並べ方の話だよ。横の広がりが「幅」、縦の細かさが「深さ」。ここを取り違えないでね!
① 製品ライン
製品ラインとは、製品の種類、属性、品質、価格、顧客層などについて、同一のあるいは類似しているグループのことです。
1つの製品ラインは複数のサブラインをもつ場合が多くあります。
企業が採用する製品ラインの広がりを製品ラインの幅といいます。
② 製品アイテム
製品アイテムとは、特定の製品ラインを構成している製品群の最小分類であり、カラー、サイズなどにより区分されるものです。
製品ラインにおける製品アイテムの豊富さを
簡単にいうと
製品の価値は4つに分かれるよ。そのうち2つが、差別化の源になるんだ!
① 4つの価値
製品の価値は、基本価値、便宜価値、感覚価値、観念価値の4つに分類されます。
特に、感覚価値と観念価値は差別化の源泉となりやすいとされます。
② 基本価値
その製品の基本的な機能です。
この基本価値が完璧に備わっていると消費者に認識されることが前提となります。
たとえば、ボールペンであれば文字が書ける、時計であれば時刻が表示されるといったことです。
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サービスだから消費者向け、ということにはなりません。
④ デジタル財
無形財にはデジタル財が含まれます。
デジタル財とは、音楽や映画のコンテンツ、天気予報やニュースのような情報、パソコンのアプリケーションのようなソフトウェアをデジタル情報で表した財です。
⑤ デジタル財の3つの特徴
有形財と比較すると、次の特徴があります。
⑥ 3つの特徴が何をもたらすか
この3つは、売り方を根本から変えます。
有形財は、1つ作れば1人にしか売れません。だから追加で売るには追加で作る費用がかかります。
デジタル財は、1つ作れば何人にでも売れます。追加の費用はほぼゼロです。
この性質があるため、第10章で見たマーケティング1.0の規模の経済とはまったく違う経済が働きます。同時に、複製できるということは違法に複製されやすいということでもあります。
④ 信用財(信頼財)
信用財とは、購入・使用後も評価が困難な財です。
購入・使用後でさえ、その購買行動が良かったのか否かの判断が困難であるため、他のブランドの長所を認識した場合に認知的不協和が生じやすくなります。
⑤ 認知的不協和の起きやすさ
ここが最も問われる論点です。
「認知的不協和は、信頼財よりも探索財や経験財において生じやすい」という言い方は誤りです。
正しい順序は次のとおりです。
探索財 < 経験財 < 信用財
信用財が最も認知的不協和を生じやすい。
⑥ なぜその順になるのか
理由は、いつまで不安が残るかです。
探索財は、買う前に確かめられます。だから買った後で「思っていたのと違う」となりにくい。
経験財は、使ってみて初めて分かります。使った結果が悪ければ、そこで不協和が生じます。しかし、少なくとも答えは出ます。
信用財は、使った後でも答えが出ません。永遠に「あれで良かったのか」が分からない。だから、他のブランドの良さを知るたびに不安が蘇ります。
⑦ 第12章・第13章とのつながり
第12章で見たとおり、準拠集団の情報的影響は「新製品など、評価が難しい経験財の場合により大きな影響を与える」とされていました。
自分で評価できないものほど、他人の評価に頼る。この構図は、信用財ではさらに強くなります。
具体例
3つの財を、具体例で見比べてみます。
探索財 ― ノートパソコンのメモリ
16GBか32GBかは、買う前に仕様で分かります。価格も比べられます。
買った後で「実は8GBだった」ということは起きません。認知的不協和が生じにくい。
経験財 ― レストランの料理
写真とメニューを見ても、実際の味は食べるまで分かりません。
食べてみて「思ったほどではなかった」となれば、そこで不協和が生じます。
ただし、食べれば答えは出ます。2度と行かない、という判断ができる。
信用財 ― 医療や法律の助言
ある手術を受けたとします。経過は良好でした。
しかし、別の医師なら、もっと良い方法があったのではないか。これは、受けた後でも確かめようがありません。別の選択肢を同時に試すことはできないからです。
そして後日、「あの病院では切らずに治す方法がある」と聞いたとき。他のブランドの長所を認識した瞬間に、不協和が生じます。
企業の打つ手も変わる
探索財を売るなら、仕様を正確に示せば足ります。
経験財を売るなら、試せる機会を用意するのが効きます。試食、試着、無料体験。
信用財を売るなら、評価できないという前提で信頼を作るしかありません。資格、実績、第三者の評価、長い付き合い。信用財という名前は、そこから来ています。
試験のポイント
③ 幅と深さを取り違えない
ここが出題の的です。
シャンプーとリンスと洗顔料を扱うのは幅の話。
シャンプーを200ml・400ml・詰め替え用の3サイズ、しっとり・さらさらの2タイプで揃えるのは深さの話です。
④ プロダクトミックス
企業がラインアップしている製品の組み合わせの集合のことをプロダクトミックスといいます。
幅と深さを両方あわせた、その企業が扱う製品の全体像だと考えてください。
⑤ 幅と深さはどちらも費用がかかる
幅を広げれば、新しい技術や設備が要ります。
深さを増やせば、同じ製品ラインの中で在庫の種類が増えます。パッケージも別々に作ることになります。
第11章で見た差別型の標的市場設定がコスト増を伴うのと同じ構図です。揃えるほど応えられる範囲は広がりますが、そのぶん負担も増えます。
具体例
日用品メーカーQ社のプロダクトミックスを見てみます。
製品ラインの幅(4つのライン)
同じ会社が4つの領域を扱っています。これが幅です。
製品アイテムの深さ(ヘアケアの中身)
ヘアケアという1つのラインの中に、次のアイテムが並んでいます。
合計20アイテム。これが深さです。
サブライン
ヘアケアの中の「シャンプー」「コンディショナー」「ヘアオイル」は、それぞれサブラインにあたります。
戦略を変えるとどうなるか
Q社が化粧品事業に進出すれば、幅が広がります。新しい技術と販路が要ります。
Q社がシャンプーに「ボリュームアップ」タイプを加えれば、深さが増します。技術は既存のもので足りますが、工場のラインを切り替える手間と在庫が増えます。
逆に絞る場合
Q社が詰め替え用をやめれば深さが減り、在庫と包装の種類が減って費用が下がります。
しかし、詰め替えを求めていた客は他社へ移るかもしれません。この見極めが、製品戦略の判断になります。
試験のポイント
③ 便宜価値
便利さや使い勝手の良さ、購買のしやすさといったことです。
たとえば、シャンプーであればポンプ付きの容器に入っているといったことです。また、価格が安い、購入時の持ち運びがしやすい、といったことも含まれます。
④ 感覚価値
購買や使用に際して、消費者に楽しさを与えるなど、主観的なものであり、ブランド価値の源泉ともなるものです。
たとえば、パッケージデザインによる心地よさといったことです。
⑤ 観念価値
製品自体の品質や機能以外に、その製品に付された意味や解釈といったものです。
感覚価値とともに主観的であり、ブランド価値の源泉となるものです。
たとえば、その製品が生まれたストーリーや文化的な意味といったことです。
⑥ 4つの並びには段差がある
4つは横並びではありません。
基本価値は前提です。備わっていて当たり前で、備わっていなければ話が始まりません。だから、ここで差はつきません。
便宜価値は、比べられます。使いやすさも安さも客観的に測れるので、他社がすぐに追いつけます。
感覚価値と観念価値は主観的です。測れないぶん、真似も難しい。だから差別化の源泉になりやすいわけです。
⑦ 感覚価値と観念価値の違い
2つとも主観的でブランド価値の源泉ですが、見ているところが違います。
感覚価値は、その場で感じるもの。手触り、見た目、香り、使ったときの心地よさ。
観念価値は、意味として付いているもの。どこで誰がどういう経緯で作ったか、その製品が何を表しているか。
同じボトルでも、デザインが美しいと感じるのが感覚価値、「創業100年の技が込められている」と受け取るのが観念価値です。
具体例
1本3,000円の万年筆で、4つの価値を見てみます。
基本価値 ― 文字が書ける
インクが出て、かすれず、紙を破らない。
これは前提です。3,000円の万年筆でこれができなければ、他に何があっても売れません。
そして、100円のボールペンでもこれはできます。ここでは差がつきません。
便宜価値 ― 使い勝手
カートリッジ式で、インクの交換が簡単。キャップが尻軸に差せる。全国の文具店で買える。
これは比べられます。他社も同じ仕組みを採用できます。追いつかれやすい部分です。
感覚価値 ― 書いたときの心地よさ
ペン先が紙に触れたときの、わずかな沈み込み。軸を握ったときの重心の落ち着き。キャップを外すときの音。
数値では表せません。使った人が「気持ちがいい」と感じるだけです。
同じ仕様の他社製品を作っても、この感じは再現できません。
観念価値 ― 意味
その万年筆が、創業者が戦後に町工場で作り始めたものだという話。職人が一本ずつペン先を調整しているという事実。「就職祝いに贈るもの」という文化的な位置づけ。
製品そのものの品質とは別のところに付いた意味です。
差がつく場所
この万年筆が3,000円で売れているのは、基本価値や便宜価値のためではありません。
感覚価値と観念価値があるからです。
そして、その2つは他社が真似しにくい。差別化の源泉となりやすいというのは、こういうことです。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
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