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プレミアムで見る前の節で見た4つの文書のうち、この節では労働契約と就業規則を詳しく見ていきます。
労働契約では、契約期間の上限が繰り返し問われます。原則3年、例外として5年になる場合が2つ。さらに、有期労働契約を反復更新したときの無期転換申込権という仕組みがあります。
就業規則では、絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項の区別が出題の的です。とくに退職に関する事項と退職手当に関する事項は、別々の区分に入っていて取り違えやすいところです。
簡単にいうと
契約期間の上限は原則3年。でも5年になる場合が2つあるんだ。誰が対象かをしっかり押さえよう!
① 労働契約とは
労働契約とは、労働者が使用者に労働力を提供し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを約束するものです。
賃金、労働時間、休日など職場の労働条件についても、労働契約の内容として取り決められます。
② 成立の要件
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者および使用者が合意することによって成立します。
ここで押さえたいのは、書面がなくても合意があれば成立するという点です。契約書を交わしていないから労働契約がない、ということにはなりません。
③ 契約期間の上限 ― 原則は3年
長期の労働契約による労働者の拘束という弊害をなくすため、契約期間を定める場合の最長期間は3年に限定されています。
なぜ上限があるのか、という理由が大事です。長い期間で縛られること自体が、労働者にとっての不利益だからです。10年契約を結んでしまえば、条件の良い職場が見つかっても移れません。
なお、期間の定めのない契約(いわゆる正社員の契約)にはこの上限はあてはまりません。期間の定めがない以上、労働者はいつでも解約する自由があるからです。
④ 5年になる例外
ただし、労働者が次のいずれかに該当する場合は、5年の労働契約が認められます。
具体例
同じ会社で結ばれた4つの契約を見比べてみます。
Jさん(正社員・35歳)期間の定めのない労働契約です。上限の話は関係ありません。Jさんはいつでも辞める自由があります。
Kさん(契約社員・28歳・一般事務)契約期間は3年まで。4年の契約を結ぼうとしても、その部分は認められません。
Lさん(公認会計士・42歳・財務システムの構築を担当)高度の専門的知識等を有し、その知識を必要とする業務に就いているため、5年の契約が可能です。
ただし、もしLさんが会計士の資格を持ちながら一般事務を担当しているのなら、5年の対象にはなりません。その知識を必要とする業務に就いていることが条件だからです。
Mさん(62歳・再雇用)満60歳以上にあたるため、5年の契約が可能です。
そして、この会社が受注したトンネル工事完成までに7年かかる見込みです。この工事のために雇う作業員とは、7年の契約を結ぶことができます。事業の完了に必要な期間だからです。

労働契約と就業規則
試験のポイント
簡単にいうと
短い契約を何度も更新されると、いつまでも不安定なままだよね。それを防ぐ仕組みが2つあるんだ!
① 何が問題なのか
有期労働契約とは、期間を定めて締結された労働契約のことです。
1年契約を10回更新すれば、実質10年勤めていることになります。それでも契約上は「1年ごとの雇用」ですから、更新しないと言われればそれまでです。
この雇止め、すなわち契約期間が満了し契約が更新されないことを規制するため、労働契約法等は2つの規定を設けています。
② 無期労働契約への転換(無期転換申込権)
同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で5年(原則)を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約(期間の定めのない労働契約)に転換できます。使用者は拒否できません。
ここは要件を正確に押さえてください。
簡単にいうと
常時10人以上なら作らなきゃいけない規則だよ。「必ず書くこと」と「定めるなら書くこと」の区別が最頻出!
① 作成義務
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作り、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。
10人という数字は、人数が増えると一人ひとりと個別に取り決める形では職場の秩序を保てなくなる、という線引きです。第1節で見た「人事制度がなぜ必要か」という話と、同じ発想がここにも表れています。
② 絶対的必要記載事項
必ず記載しなければならない事項です。3つあります。
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どちらも、長い契約で縛られても不利益になりにくい人という共通点があります。高い専門性を持つ人は他に移る力があり、60歳以上の人にとってはむしろ長い契約が雇用の安定になる。上限を緩めても保護の目的に反しない、という判断です。
⑤ 3年を超えてもよい場合
一定の事業の完了に必要な期間を定めるものについては、3年を超える契約が可能です。
これは有期事業、たとえばダムや道路の建設などを指します。工事の完成に6年を要するなら、6年の契約期間を結ぶことができます。
こちらは「5年まで」ではなく、事業の完了に必要な期間までである点に注意してください。3つの場合を混ぜないよう、整理しておきます。
③ クーリング期間
ただし、有期労働契約とその次の有期労働契約の間に、無契約期間(クーリング期間)が6か月以上(原則)あるときは、通算期間がリセットされます。
④ 転換申込権が発生しない場合
有期雇用特別措置法により、事業主が雇用管理措置に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた場合、次の者については無期転換申込権が発生しません。
ⅰ 専門的知識等を有する有期雇用労働者(高度専門職)
高収入で、かつ高度の専門的知識等(公認会計士、弁護士等)を有し、その高度の専門的知識等を必要とし、5年を超える一定の期間内に完了する業務(特定有期業務)に従事する者です。
ただし、無期転換申込権が発生しない期間の上限は10年です。
ⅱ 定年に達した後引き続き雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)
定年前の事業主(子会社や関連会社を含む)に定年後引き続き雇用される期間は、無期転換申込権が発生しません。こちらは上限なしです。
第6節で見た再雇用制度を思い出してください。定年後に1年ごとの嘱託契約を更新していく形でした。5年を超えたところで無期契約に転換されてしまっては、定年制そのものが意味を失います。この例外は、そのための手当てです。
⑤ 雇止め法理
もうひとつが、有期労働契約の更新等に関する規定です。
次のいずれかにあてはまる場合で、雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、有期労働契約が更新(締結)されたとみなされます。
無期転換申込権が期間の長さで線を引くのに対し、雇止め法理は実態と期待で判断します。通算5年に満たなくても、更新が当然のように繰り返されてきたのなら、この規定で守られる余地があります。
2つは別の仕組みですが、どちらも「短い契約の反復で不安定な立場に置き続ける」ことへの歯止めだという点では共通しています。
具体例
コールセンターを運営するN社の3人を見てみます。
Oさん1年契約を6回更新し、通算6年になりました。5年を超えているので、Oさんが申し込めば無期労働契約に転換されます。N社は拒否できません。
ただし、Oさんが何も言わなければ転換されません。労働者の申込みが要件だからです。
Pさん1年契約を4回更新して通算4年のところで、8か月間の無契約期間がありました。その後、再び契約して2年が経っています。
無契約期間が6か月以上ありましたから、通算期間はリセットされています。Pさんの通算はいま2年。まだ転換申込権は発生しません。
Qさん1年契約を3回更新し、通算3年です。5年に満たないので無期転換申込権はありません。
しかしQさんの場合、更新のたびに面談も手続きもなく、上司から「来年もよろしく」と言われるだけでした。同僚も全員が同じ形で更新され続けています。
ここで突然、合理的な理由なく雇止めをすれば、雇止め法理により契約が更新されたとみなされる余地があります。反復更新の実態と、雇用継続への合理的期待があるからです。
5年という線に届いていなくても守られる道がある。2つの規定が別々に置かれている意味は、ここにあります。
試験のポイント
3つとも、どんな会社にも必ず存在する事柄だという共通点があります。働く時間、もらう賃金、辞めるときの決まり。この3つがない職場はありません。
③ 相対的必要記載事項
定めがあるときは記載しなければならない事項です。主なものを挙げます。
こちらは、その会社に制度があるとは限らない事柄です。退職金のない会社も、表彰制度のない会社もあります。
④ 引っかかりやすいのは退職と退職手当
ここが最頻出の論点です。
退職に関する事項(解雇の事由を含む)は絶対的必要記載事項です。必ず書かなければなりません。
退職手当に関する事項は相対的必要記載事項です。退職金制度がないなら書かなくてかまいません。
「退職手当の定めをしないなら、解雇の事由を含めて退職に関する事項を記載する必要はない」という言い方は誤りです。退職手当を定めないことと、退職に関する事項を書かないことはまったく別だからです。
⑤ 任意的記載事項
使用者が任意に記載することができる事項です。経営理念や服務心得などがここに入ります。
⑥ 作成手続
使用者は、就業規則の作成または変更について、次の者の意見を聴かなければなりません。
ここは言葉に注意してください。意見を聴くことが義務であって、同意を得ることまでは求められていません。反対意見であっても、聴いたうえで届け出ることはできます。
さらに、就業規則は労働者に周知させなければなりません。存在を知らされていない規則で労働者を拘束することはできない、という当然の要請です。
⑦ 効力
就業規則は、法令または当該事業場について適用される労働協約に反してはなりません。前の節で見た優先順位が、ここで具体的な条文になっています。
具体例
従業員12名の設計事務所R社が、初めて就業規則を作ったときの作業を追ってみます。
作成義務の確認常時10人以上にあたるため、作成と届出が必要です。
必ず書いた事項(絶対的必要記載事項)
定めがあるので書いた事項(相対的必要記載事項)
R社には退職金制度がありました。そこで、勤続3年以上の正社員を対象とすること、計算方法、支払時期を記載しました。
一方、R社には表彰制度も制裁の定めもありません。これらは書きませんでした。書かなくてよいからです。
やってはいけなかったこと作成の途中で、社長が「退職金の規定を書いたのだから、定年や解雇の事由はわざわざ書かなくてもよいのでは」と言い出しました。
これは逆です。退職手当の定めは相対的、退職に関する事項(解雇の事由を含む)は絶対的。書かなくてよいのは前者であって、後者ではありません。
作成手続R社に労働組合はないため、全従業員の投票で過半数代表者を選び、その人の意見を聴きました。代表者からは「休憩の一斉付与を見直してほしい」という反対意見が出ましたが、意見書を添えて届け出ることはできます。同意は要件ではないからです。
最後に、全員がいつでも見られるよう事務所の共有フォルダに置き、朝礼で周知しました。
試験のポイント
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