人的資源管理
下の動画はこの節の解説ではありません。 解説動画の雰囲気を知っていただくための見本として、「PPM」の動画を再生します。
この節の解説動画はプレミアム限定です。プレミアムなら全科目・全節が見放題!
プレミアムで見るここから9つの節を使って労働関連法規を扱います。
労働関連法規とは、一般に労働者の生活・福祉の向上を目的とする法のことをいいます。労働条件、労働組合、労使関係、労働福祉、社会保険などに関する各種の法律が含まれ、労働者と使用者の関係を規律するとともに、さまざまな場面で労働者の保護を図ります。
その中心にあるのが労働基準法です。
法律の分野は、条文の数字を覚える負担が重く感じられるところです。ただ、数字は「なぜその線が引かれたのか」と一緒に覚えると定着します。この節では、労働基準法が何を守ろうとしている法律なのか、そして労働条件を決める文書のあいだにどういう強弱の関係があるのかを押さえます。
簡単にいうと
この法律は「働く人を守る」ためにあるんだ。なぜ守る必要があるのか、そこから入ると条文が頭に入りやすいよ!
① 法の目的
労働基準法は、使用者が労働者を働かせるときに、労働条件に一定の基準を設けることで労働者を保護することを目的としています。
② なぜ基準が要るのか
一般的に、労働者は使用者に対して経済的に弱い立場にあります。
契約は本来、当事者が対等に話し合って決めるものです。しかし、働き口を失えば生活が立ち行かない側と、断られても別の人を探せる側とでは、交渉の力が釣り合いません。
使用者が勝手に賃金や労働時間などの労働条件を決めてしまえば、労働者は不利な条件で働くことになる。そこで労働基準法は、労働条件に一定の基準を定めて労働者を保護すると同時に、使用者に対してはその基準を守ることを強制しています。
③ 定められている基準は最低限のもの
ここが労働条件の原則の第一点です。
労働基準法で定めている労働条件の基準は、最低限のものです。これを上回る条件を定めることは、もちろん差し支えありません。
そして第二点。使用者はもちろんのこと、労働者も、この基準を理由に労働条件を低下させてはなりません。
労働者の側にも同じ制約がかかっている、というのは見落としやすいところです。「法律では8時間までとなっているのだから、いま7時間の所定労働時間を8時間に延ばしてもよいはずだ」という理屈は通りません。最低基準は、そこまで下げてよいという許可ではないからです。
④ 3つの言葉の定義
労働基準法における言葉の意味を押さえておきます。
使用者とは、事業主(個人事業者であれば個人事業者自身、法人であれば法人自身)または事業の経営担当者、その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいいます。
具体例
従業員30名の運送会社で、次のようなやり取りがあったとします。
ケース1この会社の所定労働時間は1日7時間半です。社長が「法律は8時間までなのだから、全員8時間に延ばしても問題ないだろう」と提案しました。
これは通りません。法律の基準は最低限のものであって、そこまで引き下げてよいという意味ではないからです。労働条件を下げるには、別の手続きが要ります。
ケース2配車係の主任が、ドライバーの残業時間を決めています。主任は役員ではありませんが、労働者に関する事項について会社のために行為をしている以上、この場面では使用者にあたります。
労働基準法に違反する指示を出せば、主任自身も責任を問われうる立場だということです。
ケース3ドライバーのHさんが「制服の洗濯代を自分で負担するのは労働条件の話ではない」と言われました。
これも違います。労働条件とは職場におけるすべての待遇を指すので、費用の負担も労働条件に含まれます。実際、就業規則の相対的必要記載事項にも作業用品の負担に関する項目が挙げられています。

労働基準法の基本原則
試験のポイント
簡単にいうと
労働条件を決める文書は4つあるんだ。どれが強いかという順番が決まっているよ。ここは必ず出るところ!
① 労働条件は対等の立場で決める
労働条件は、労働者と使用者が対等の立場で決定すべきものです。
現実には力の差があるからこそ、法律が「対等であるべきだ」と宣言しているわけです。
② 決定された労働条件は3つの形になる
決定された労働条件は、労働協約、就業規則、労働契約といった形になります。労働者と使用者は、それらを誠意をもって守らなければなりません。
3つの中身は次のとおりです。
簡単にいうと
労基法には、働く人を守るための原則が7つ並んでいるよ。どれも「昔これで苦しんだ人がいた」という歴史があるんだ!
① 7つの基本原則
労働基準法は、労働条件の基準を定めるほかに、働く人を守るための原則をいくつも置いています。代表的なものは次のとおりです。
ⅰ 均等待遇
使用者は、労働者の国籍、信条、社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取扱いをしてはなりません。
ここに性別は入っていません。性別による差別は、次の男女同一賃金の原則と、第20節で見る男女雇用機会均等法が扱います。均等待遇の3つに性別を混ぜないよう注意してください。
ⅱ 男女同一賃金の原則
使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について男性と差別的取扱いをしてはなりません。
ここも範囲に注意します。労基法が禁じているのは
動画・テキスト・過去問・AI添削まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
ここで大事なのは、社長だけを指すのではないという点です。労働者に関する事項について事業主のために行為をする人であれば、部長も課長も使用者にあたりえます。
労働者とは、職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいいます。
労働条件とは、賃金、労働時間、解雇など、労働者の職場におけるすべての待遇をいいます。賃金と時間だけではない、という広さに注意してください。
③ 当事者が誰かで区別する
3つは、誰と誰のあいだのものかで見分けられます。
④ 優先順位
ここがこのテーマの山場です。4つのあいだには、次の強弱の関係があります。
法令 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約
左へ行くほど強く、右へ行くほど弱くなります。
⑤ この順番はどこから来るのか
丸暗記する必要はありません。及ぶ範囲が広いものほど強い、という一本の筋が通っています。
法令は国全体に及びます。労働協約は組合員全体に及びます。就業規則はその事業場の労働者に及びます。労働契約は一人にしか及びません。
個人の契約で法律を上書きできてしまっては、労働者を保護するという目的が果たせません。弱い立場の人が、その場では不利な契約に同意してしまうからです。順位が決まっているのは、そこを守るためです。
⑥ 基準に達しない部分はどうなるか
たとえば、労働基準法に定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となります。
ここで注意したいのは、契約の全部が無効になるのではないという点です。基準に達している部分は有効なままです。
そして、無効となった部分には、労働基準法で定める基準が適用されます。穴が空いたままにはならず、法律の基準で埋められる、という仕組みです。
⑦ 労使協定はこの順位に入らない
後の節で出てくる労使協定は、この優先順位のどこにも該当しません。
労使協定は、労働条件を決める文書ではなく、本来は禁止されている行為について罰せられなくなる効果を持つものだからです。性格が違うので、同じ物差しには載りません。混同しやすいところなので、切り分けて覚えてください。
具体例
ある会社の3つの文書に、次のような定めがあったとします。
Iさんの労働契約から見ていきます。1日9時間は労働基準法の8時間を超えています。この部分は無効となり、労働基準法の基準が適用されます。
次に就業規則です。8時間は法律に違反していませんが、労働協約の7時間30分より長い。就業規則は労働協約に反してはならないので、この部分は労働協約が優先します。
結論Iさんの所定労働時間は7時間30分になります。
ここで、Iさんの労働契約に「賃金は月給28万円」という条項もあったとしましょう。これは法律にも協約にも反していません。契約のうち労働時間の部分が無効になっても、賃金の条項はそのまま有効です。無効になるのはその部分だけ、という意味がここにあります。
試験のポイント
ⅲ 強制労働の禁止
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはなりません。
ⅳ 中間搾取の排除
何人も、法律に基づいて許される場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはなりません。
第20節で見た職業安定法が「人身売買的な紹介機関からの保護と中間搾取の防止」を背景に持つと述べたのは、この原則と対になっています。
ⅴ 公民権行使の保障
使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使したり、公の職務を執行したりするために必要な時間を請求した場合、拒んではなりません。
ただし、権利の行使や公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することはできます。拒否はできないが時刻の変更はできる、という形は第14節の年次有給休暇の時季変更権と同じ構えです。
ⅵ 賠償予定の禁止
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはなりません。
「3年以内に辞めたら研修費100万円」といった定めができないのはこの原則によります。実際に生じた損害の賠償を請求すること自体は別の話で、あらかじめ額を決めておくことが禁じられています。
ⅶ 前借金相殺の禁止
使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と、賃金を相殺してはなりません。
借金を返すために働き続けざるをえない状態を作らせない、という趣旨です。
② 7つに共通するもの
並べてみると、どれも働く人が辞められなくなる仕組みを断つという一点を向いています。
強制労働、中間搾取、賠償予定、前借金相殺。いずれも、労働者を職場に縛りつける手口として実際に使われてきたものです。
第12節の冒頭で「労働者は使用者に対して経済的に弱い立場にある」と述べましたが、その弱さがどう悪用されうるかを具体的に封じているのがこの7原則だと捉えてください。
具体例
ある会社の就業規則と運用を、7つの原則に照らしてみます。
「特定の宗教の信者は管理職に登用しない」
信条を理由とする労働条件の差別にあたり、均等待遇に反します。
「女性社員の基本給表は男性より一律5%低い」
女性であることを理由とする賃金の差別で、男女同一賃金の原則に反します。
「入社時に預けた保証金は退職まで返さない」
辞めにくくする仕組みなので、強制貯金や前借金相殺の趣旨に触れます。
「新人研修を受けた者が3年以内に退職した場合、研修費80万円を支払う」
あらかじめ賠償額を決めているので、賠償予定の禁止に反します。
「投票に行きたいので午前中に2時間ください」と言われ、「繁忙期なので認めない」と答えた
公民権行使の保障に反します。拒むことはできません。
ただし、「その2時間を午後に回してほしい」と時刻を変更することはできます。投票に行けなくなるわけではないからです。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。