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プレミアムで見る職能資格制度は、運用が年功的になりやすく、従業員の高年齢化とともに人件費を押し上げるという問題を抱えていました。そこで1990年代以降、能力に代わるものとして注目されたのが成果主義です。ただし、成果で処遇すると決めるだけでは制度になりません。何をもって成果とするのか、誰がどう測るのか。この節では、成果主義の考え方と、それを支えるコンピテンシーモデルを押さえます。
簡単にいうと
賃金や賞与、昇格を「仕事の成果」で決める考え方。能力主義と違うのは「可能性ではなく、実際に出た成果を見る」こと。ただし短期志向に傾くという弱点もあるよ!
① なぜ成果主義が出てきたのか
前節で見たとおり、職能資格制度に代表される能力主義的人事制度には、次の2つの問題がありました。
・昇格基準が曖昧で、運用が年功的になりやすい
・従業員が高年齢化するにつれ、人件費が膨らむ
1990年代以降、これに代わるものとして注目されたのが成果主義です。
② 成果主義とは
成果主義は、賃金・賞与・昇格などを、仕事の成果をもとに決めるという考え方です。
ねらいは2つあります。
・人件費負担の増大を避ける
・従業員のモチベーションを高める
企業業績への貢献度に応じて処遇を決めることで、この2つを同時に満たそうとするわけです。
③ 能力主義との違い
ここが試験で問われるところです。
| 能力主義 | 成果主義 | |
|---|---|---|
| 何を見るか | 可能性としての能力、潜在的な能力 | 実際に具現化された成果 |
| 評価の対象 | できるはずのこと | できたこと |
能力主義では「この人にはこれだけの能力がある」という可能性を評価します。成果主義は、その能力が実際に成果として現れたかを見ます。
この違いによって、両者は明確に区別されます。
④ 成果主義の弱点
成果主義には、次のような副作用が生じることがあります。
| 弱点 | どういうことか |
|---|---|
| 短期志向に傾く | 目先の成果にこだわるあまり、中長期の課題への取り組みがおろそかになる |
| 協力意識が下がる | 個人の成果で処遇が決まるため、組織構成員どうしの協力が生まれにくくなる |
2つ目は、第8章で学んだチームの議論と正面からぶつかります。チームが相乗効果を生むには協調が要るのに、個人の成果だけで処遇すれば、協調する動機が弱まるからです。
⑤ 運用で大事になる3つのこと
成果主義に基づく処遇を実際に回していくには、次の3点が重要になります。
❶ 目標設定や評価における公平性と透明性を担保すること
何をもって成果とするのかが不透明なままでは、第8章の公平説のとおり、不公平感が生じます。
❷ 目標設定や遂行について個人の裁量権があること
成果を問われるのに、やり方を自分で決められないのでは筋が通りません。第7章の権限責任一致の原則(責任と権限は等量でなければならない)と同じことを言っています。
❸ 能力開発の機会があること
成果を出せと求めるなら、出せるようになるための手立ても用意する必要があります。
⑥ 他の仕組みと組み合わせる
成果主義は、単独で導入するより、次のような仕組みと組み合わせて実施することが望ましいとされます。
| 組み合わせる仕組み | 何を補うか | 学ぶところ |
|---|---|---|
| 目標管理制度 | 目標設定への本人の参加と、透明性 | 第7節 |
| コンピテンシーモデル | 成果に至る行動の評価 | 次のテーマ |
| 社内公募制 | 本人の裁量とキャリアの選択 | 第5節 |
| 多面評価 | 評価の公平性 | 第7節 |
「成果で決める」と宣言するだけでは、制度は機能しません。それを支える周辺の仕組みまで含めて設計する必要がある、ということです。
具体例
成果主義の導入で、失敗した会社と定着した会社を比べてみましょう。どちらも従業員200人規模のソフトウェア開発会社です。
失敗したB社
・「今期から成果主義にする」と宣言
・評価は「売上目標の達成率」の一本
・目標は上司が一方的に割り当てる
・賞与の差は最大で3倍
何が起きたか
短期志向 技術者が、保守性を犠牲にしてでも早く納品する作り方を選ぶようになりました。2年後、過去案件の不具合対応に人手を取られ、新規案件が受けられなくなります。目先の成果にこだわるあまり、中長期の課題がおろそかになった形です。
協力意識の低下 他のプロジェクトが遅れていても、誰も応援に入らなくなりました。助けても自分の評価は上がらないからです。
公平性と透明性の欠如 目標の難易度が案件によってまるで違いました。「あの案件は最初から達成しやすい」という不満が広がります。
裁量権がない 使用する技術も工程も会社が決めているのに、結果だけを問われました。責任と権限が釣り合っていない状態です。
3年で技術職の4割が離職しました。
定着したC社
同じ時期に、同じ「成果で処遇する」方針を掲げましたが、進め方が違いました。

成果主義とコンピテンシーモデル
試験のポイント
簡単にいうと
高い成果を出す人の「行動の特徴」を指標にする考え方。ポイントは『潜在的な特性』ではなく『顕在化した行動』であること。ここを取り違える問題がよく出るよ!
① コンピテンシーとは
コンピテンシーとは、高い業務成果を生み出す、顕在化された個人の行動特性のことです。
ハーバード大学の行動心理学者マクレランドが中心となって考案した概念とされます。第8章の三欲求理論を提唱した人物と同じです。
② 定義のどこが重要か
この定義には、試験で繰り返し問われる要素が2つ入っています。
❶ 顕在化されたもの
潜在的な特性ではありません。実際に行動として表れているものを指します。
過去問では、次の記述が
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個人の裁量権 目標は期首に本人と上司で話し合って決め、使用技術と進め方は本人に委ねました(目標管理制度との組み合わせ)。
能力開発の機会 外部研修の受講費を年20万円まで会社が負担し、業務時間内の受講を認めました。
協力を評価に組み込んだ 「他チームの応援に入った実績」を評価項目に加えました。個人の成果だけを見る設計にしなかったのです。
結果 3年後、離職率は導入前より下がり、不具合の発生率も半分になりました。
違いは「成果主義にしたかどうか」ではありません。公平性と透明性・裁量権・能力開発の機会という3つの条件を整えたかどうかでした。
『コンピテンシー評価とは、優れた業績をあげるための知能や性格といった従業員の潜在的な特性に基づいて、従業員の職務成果を評価する手法を指す』
コンピテンシーは、従業員の潜在的特性ではなく、顕在的な行動特性です。「知能や性格」といった内面のものは、コンピテンシーではありません。
❷ 行動特性であって、成果そのものではない
もうひとつ、次の記述も誤りとされています。
『実際にあげられた顕著な個人的成果は、因果に関わりなく、コンピテンシーに含まれる』
コンピテンシーは「行動として顕在化する職務遂行能力」です。つまり、成果ではなく、行動を表す概念だということになります。
③ 3つを区別する
混同しやすいので、並べて整理しておきましょう。
| 何を見るか | 例 | |
|---|---|---|
| 潜在的な特性 | 内面にあるもの | 知能、性格、価値観 |
| コンピテンシー | 顕在化した行動特性 | 商談前に必ず相手企業の直近3期の決算を調べる |
| 成果 | 結果として出た数字 | 受注件数、売上高 |
コンピテンシーは、潜在的な特性と成果のあいだに位置します。
④ どう使うのか
高い業務成果をあげている人の行動特性を洗い出し、それをベンチマーク(指標)として、採用・昇格・教育訓練・評価といった人事制度に活用します。
図にすると、次の流れになります。
コンピテンシーモデルが土台にあり、そこから
採用 → 能力開発 → 評価 → 昇進・昇格/賃金/配置・異動
という一連の人事の場面に、共通の物差しとして使われます。
前節で見た4つのサブシステムのすべてに効く、ということです。
⑤ なぜ行動を見るのか
この考え方の利点は、再現できるという点にあります。
・「地頭がいい」という潜在的特性は、真似できません
・「受注が多い」という成果だけを見ても、どうすればよいか分かりません
・しかし「商談前に相手の決算を調べる」という行動なら、他の人も同じことができます
成果に至る行動を取り出すからこそ、育成にも採用にも使える物差しになるわけです。
前のテーマで、成果主義がコンピテンシーモデルと組み合わせて実施することが望ましいとされていたのは、この性質によります。成果だけを見る制度に、成果へ至る道筋の評価を足す役割を果たすのです。
⑥ 日本での広がり
1990年代から人事システムへの適用が進みました。日本では、次の3つを背景に大企業を中心に導入されています。
・成果主義の浸透
・人事のグローバルスタンダード化
・職能資格制度に代わる新しい能力主義という観点
ただし、人事システムとしての歴史はまだ浅く、課題を指摘する声もあります。
具体例
保険会社が、営業職のコンピテンシーモデルを作った過程です。
❶ 高い成果をあげている人を特定した
全国800人の営業職のうち、3年連続で上位10%に入っている24人を選びました。
❷ 何が違うのかを調べた
最初に出てきたのは、次のような答えでした。
・「人当たりがいい」
・「粘り強い」
・「頭の回転が速い」
これらはすべて潜在的な特性です。性格や資質の話であり、顕在化された行動特性ではありません。
これでは、他の人が真似しようがありません。
❸ 行動に落とし込んだ
そこで、24人に同行し、何をしているかを1日単位で記録しました。すると、共通する行動が見えてきます。
・訪問の前日に、その顧客の家族構成の変化を必ず確認している
・初回訪問では商品の話をせず、相手の心配事を聞くことに30分以上使っている
・契約後3か月以内に、必ず一度は用件なしで顔を出している
・断られた顧客の情報も、理由を書いて記録に残している
これがコンピテンシーです。潜在的な特性でもなく、「受注件数」という成果でもなく、その間にある行動です。
❹ 人事制度に組み込んだ
採用 面接で「前職で、断られた後にどうしましたか」と聞くようにしました。性格を見るのではなく、行動の実績を確かめます。
能力開発 新人研修の内容を、商品知識中心から「初回訪問で心配事を聞き出す練習」に組み替えました。
評価 評価項目に、成果(受注件数)だけでなく「契約後のフォロー訪問の実施率」を加えました。
昇進・昇格・配置 行動特性の評価が高い人を、新人の指導役に配置するようにしました。
成果
2年後、入社3年目までの離職率が31%から14%に下がりました。何をすればよいかが具体的に示されたためです。
「人当たりがいい人を採る」では、この結果は出ませんでした。行動として顕在化するものを取り出したからこそ、教えられるし、測れるし、真似できたわけです。
試験のポイント
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