組織学習
組織行動論
組織学習は、組織が経験を通じて知識を獲得・蓄積・活用するプロセスです。野中郁次郎のSECIモデルやシングルループ/ダブルループ学習を学びます。
組織学習とSECIモデル
簡単にいうと
組織が学ぶとはどういうこと?シングルループ学習とダブルループ学習、そしてナレッジマネジメントの基盤であるSECIモデルを学びましょう。
組織学習とは、組織あるいはその構成員が新しい知識を獲得する活動、あるいはプロセスを指します。組織学習の成果は、組織メンバー個々人の経験や知識、組織内の規則や慣行、経営理念、教育訓練プログラムといった形で組織文化として蓄積・伝承されていきます。また、組織の発展段階に応じて必要とされる学習の性質も異なります。
■ 低次学習と高次学習
組織学習には低次学習と高次学習の2種類があります。低次学習とは漸進的な学習であり、主にシングルループ学習(既存の制約条件・枠組みのなかで行う修正・学習活動)を指します。高次学習とは断続的な学習であり、組織全体に影響を与えるようなダブルループ学習(既存の価値や目標、政策などの枠組みを超えて行う学習活動)を指します。漸次的進化過程に対応するのが低次学習であり、革新的変革過程に対応するのが高次学習です。
■ 組織の発展プロセス
組織の発展は、漸次的進化過程と革新的変革過程という2つのタイプの変化プロセスが交互に組み合わさって成り立っています。漸次的進化過程とは安定した段階において継続的な改善の積み重ねが進行するフェーズであり、革新的変革過程とはある段階から別の段階へ飛躍する不連続な変化を指します。
■ SECIモデル(野中郁次郎)
SECIモデルとは、暗黙知と形式知の相互変換によって組織的に知識が創造されるプロセスを4つのモードで表現したものです。
1. 共同化(Socialization):組織メンバーが経験を共有することで、個人の暗黙知が共有され、新たな暗黙知が創出される段階です。
2. 表出化(Externalization):個人が蓄積した暗黙知が、言語やモデルなどの表現手段によって形式知へと変換される段階です。
3. 連結化(Combination):形式知を組み合わせて、より高次の形式知の体系へと統合していく段階です。
4. 内面化(Internalization):共有された形式知が、属人的な暗黙知として再び個人に取り込まれていく段階です。実践の中で知識を体得していくプロセスのなかで、新たな暗黙知が生み出されます。
■ 暗黙知と形式知
知識は暗黙知と形式知に大別されます。暗黙知とは、文字や言葉では表現しにくい主観的なノウハウや信念など、他者への伝達が困難な知識です。形式知とは、言語化可能で文書や言葉で表現できる客観的な知識です。暗黙知の形式知化に関連して、IT技術を活用して各組織構成員が保有する暗黙知を形式知化して結びつけるナレッジマネジメントという概念があります。
具体例
ベテラン職人の「勘」や「コツ」(暗黙知)をマニュアル化する(形式知化=表出化)ことで組織全体の知識として共有できるようになります。また、職務を細分化して過程別専門化を進めていくことは、シングルループ学習を阻害し、ダブルループ学習を促進する可能性を高めます。
SECIモデル(知識創造プロセス)
試験のポイント
- ・シングルループ学習(低次・枠組み内の修正)とダブルループ学習(高次・枠組みを超える変革)の違い、SECIモデルの4つのモード(共同化→表出化→連結化→内面化)と暗黙知・形式知の関係、組織の発展プロセスにおける漸次的進化過程と革新的変革過程の対応関係を覚えましょう
組織学習サイクルと4つの断絶パターン
簡単にいうと
組織学習はサイクルで回るはずなのに、うまくいかないことも。学習サイクルが途切れてしまう4つのパターンを押さえましょう。
■ 組織学習サイクル
組織学習は以下の4つのステップが循環するサイクルとして捉えることができます。
(1) 個人の行動:組織メンバーが個別にエージェントとして行動を起こします。
(2) 個人の信念:ある組織行動がもたらした結果を観察・分析した結果、個人レベルの信念や知識に修正が加わります。
(3) 個人の行動変化の促進:個人が学習した成果は個人レベルの行動の変化を促し、それが組織レベルでの行動の変化をもたらします。
(4) 環境の変化:組織は新たな行動を展開し、その結果が環境での優れた成果に結びつけば、組織における個人の信念は強化されます。逆に、低い成果しかもたらされない場合には、その信念は棄却され新しい信念が形成される契機となります。
しかし実際には、この学習サイクルが完全に機能しないことが多く、特に組織が安定的な段階では次の4つの断絶パターンが生じやすくなります。
■ 4つの断絶パターン
1. 役割制約的学習(サイクルの(1)の断絶)
与えられた役割規定や手続き上の制約によって、個人が具体的な行動に出ることができない状態を指します。個人が学習し新しい知見を得たとしても、職務上の制約がそれを実際の行動に反映させることを妨げます。
2. 傍観者的学習(サイクルの(2)の断絶)
個人の学習成果が組織の次の行動に活かされず、個人が傍観者と化している状態です。個人は知識を獲得しても、それが組織全体の行動へと結びつかないため、組織レベルでの学習効果が発揮されません。
3. 迷信的学習(サイクルの(3)の断絶)
学習が行われ、個人が組織の行動に影響を与えるものの、組織の行動は環境に何ら作用しない状態です。つまり「人々は作用すると思い込んでいるが、実際には効果を生んでいない」という空回り状態に陥ります。
4. 曖昧さのもとでの学習(サイクルの(4)の断絶)
個人は組織の行動に影響を与え、それが環境にも作用するものの、個人には何が生じたか、なぜそれが生じたかが判然としない状態です。因果関係が不明確なため、組織としての学びの認知的枠組みの固定化、組織ルーティンの存在、分業化による部門間の壁の存在などが要因として挙げられます。
具体例
「新しいアイデアがあっても規定上できない」(役割制約的)、「提案しても誰も聞いてくれない」(傍観者的)、「施策を実行しても成果が出ない」(迷信的)、「成果は出たが何が原因かわからない」(曖昧さ)、このように現場で起きる学習の停滞を4パターンに分類して理解できます。
試験のポイント
- ・4つの断絶パターンの名前と、それぞれがサイクルのどの段階で途切れるかの対応関係が頻出です
- ・役割制約的→個人が行動できない、傍観者的→組織に反映されない、迷信的→環境に作用しない、曖昧さ→因果関係が不明、というキーワードで区別しましょう
- ・組織ルーティンは公式の文書として制度化された組織の行動プログラムであることも押さえておきましょう
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