事業戦略(競争戦略)
下の動画はこの節の解説ではありません。 解説動画の雰囲気を知っていただくための見本として、「PPM」の動画を再生します。
この節の解説動画はプレミアム限定です。プレミアムなら全科目・全節が見放題!
プレミアムで見る競争優位の源というと、規模や資源、ブランドが思い浮かびます。しかし「速さ」そのものも、立派な武器になります。この節では、速度の経済性という考え方と、早く市場に入ることの利点(先発優位性)、あえて後から入ることの利点(後発優位性)を見ていきます。先発が有利とは限らないという点が、この節のいちばん面白いところです。
簡単にいうと
「速い」こと自体が儲けにつながる、という考え方。開発が速い、回転が速い、決断が速い。時間を武器にする競争をタイムベース競争と呼ぶよ!
① 速度の経済性
競争優位性の源には、規模の経済性や範囲の経済性、ブランドなど独自の経営資源、経験曲線効果などさまざまなものが考えられますが、「速さ」もそのひとつです。
速度の経済性とは、スピードを上げることによって得られる経済的便益の総称です。具体的には、
・情報獲得のスピード
・仕事のスピード
・商品の開発スピード
・商品回転スピード
などを上げることで、有効性や効率性を高めることができます。
② タイムベース競争
こうしたスピード(時間)に焦点をあてた競争のことをタイムベース競争といいます。
規模の経済性が「大きさ」を、経験曲線効果が「積み重ね」を武器にするのに対し、タイムベース競争は「速さ」を武器にします。規模で劣る企業でも、意思決定の速さや開発期間の短さでなら大企業に勝てることがある、という点で、中小企業にとって現実的な戦い方でもあります。
③ 速度を上げると何が得られるのか
スピードを上げることによりもたらされるメリットの例としては、次のようなものがあります。
| メリット | 中身 |
|---|---|
具体例
アパレル業界で、速さが利益に変わった例を見てみましょう。
従来型のメーカーA社
・展示会で半年先のシーズンの商品を決める
・生産のリードタイムは4か月
・シーズン終盤には約3割をセール価格で処分
速度を武器にしたB社
・企画から店頭まで最短2週間
・初回は少量だけ投入し、売れ行きを見てから追加生産
・セール処分は約1割
この差はそのまま粗利益率に現れます。定価販売の比率が7割から9割に上がれば、同じ売上高でも利益は大きく変わります。
さらにB社は在庫回転率が高いため、同じ売上を作るのに必要な運転資金が少なくて済みます。手元資金を新店舗の出店に回せるので、成長も速くなる。速さが利益を生み、利益がさらなる速さへの投資を生むという循環です。
「規模で勝てないなら、速さで勝つ」というのがタイムベース競争の基本的な発想です。

先発優位性と後発優位性
試験のポイント
簡単にいうと
早く出たほうが有利……とは限らない。後から出ると「市場が本当にあるか確かめてから入れる」という強みがあるんだ。両方の中身をセットで押さえよう!
① 先発優位性
競争相手よりもいち早く市場に参入することで、超過利潤を手にすることができる場合が多いとされます。先発優位性の内容としては、次のようなものがあります。
❶ 消費者の心の中に「参入障壁」を形成できる
強力なブランド連想を構築できます。「この分野といえばこのブランド」という結びつきが顧客の頭のなかにできると、後から来た企業はそれを崩さなければなりません。
❷ (早期に)経験曲線効果を実現できる
前節で見たとおり、累積生産量が先に積み上がるためです。
❸ 利用者の生の声をいち早く得られる
実際に使った顧客のフィードバックを、他社より先に製品改良に反映できます。
❹ 価格に無頓着なイノベーター層を取り込める
動画・テキスト・過去問・AI添削まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
| 先行者優位の獲得 |
| 他社より早く製品を市場投入することで先行者優位を獲得できる |
| 利益率の向上 | スピードの速さそのものが競争優位の源となり、利益率が向上する |
| 投資効率の向上 | 在庫回転率など投資効率が高まり、投資利益率が向上する |
| ロスと機会損失の減少 | 生産から販売までのリードタイムが短縮され、売れ残りロスや機会損失が減少する |
④ なぜ速さが利益に変わるのか
リードタイムの短縮が効く理由を、もう少し踏み込んで見てみましょう。
商品を企画してから店頭に並ぶまで6か月かかる会社は、6か月先の需要を予測して作らなければなりません。予測が外れれば、売れ残りか品切れのどちらかが起きます。
これが2週間で回せる会社なら、いま売れているものを見てから作れるようになります。予測の精度を上げるのではなく、予測する必要そのものを減らすわけです。その結果、値引き販売も品切れも減り、利益率が上がります。
在庫回転率の向上も同じ理屈です。同じ売上を、より少ない在庫でまかなえれば、在庫に縛られる資金が減り、投資利益率が上がります。
❺ 最も有利な市場ポジションを先取りできる
いちばんおいしい位置を、選び放題の状態で選べます。
❻ 製品の規格(例:デファクトスタンダード)を決定しやすい
自社方式が業界標準になれば、その後の競争が極めて有利になります。第4章で詳しく扱います。
❼ 製品の切り替えコスト(スイッチングコスト)の発生を利用できる
顧客はわざわざ慣れ親しんだ自社製品から他社製品へスイッチすることを躊躇するためです。
❽ 希少資源を先取りできる
優秀な人材、希少天然資源、有利な立地などを先に押さえられます。
② 後発優位性
一般的には先発が有利とされる一方で、後発のほうがリスクを回避できることから有利になる場合もあります。後発優位性の内容としては、次のようなものがあります。
| 後発優位性 | 中身 |
|---|---|
| 需要の不確実性を見極めることができる | その市場が本当に存在するのかを、先発企業の結果を見てから判断できる |
| プロモーションコストを節約できる | 先発企業が市場を啓蒙してくれているので、ゼロから説明する必要がない |
| 模倣により研究開発コストを節約できる | 先発企業の製品を分析すれば、失敗した試行錯誤の分を省ける |
| 顧客の変化に対応しやすい | すでに固まった設備や顧客基盤に縛られていない |
| 技術面の不確実性に対応できる | どの技術方式が生き残るかを見届けてから投資できる |
③ どちらが有利かは状況による
先発優位性の中身を見ると、いずれも「その市場が本当に立ち上がるなら」という前提の上に成り立っています。立ち上がらなければ、先行投資はそのまま損失になります。
逆に後発優位性は、「その市場が立ち上がったことを確認してから入れる」という点に集約されます。ただし入るころには、先発企業がブランドもスイッチングコストも築いています。
つまり、不確実性が高い市場ほど後発が有利になりやすく、市場の存在が明らかで、ブランドや規格が効きやすい領域ほど先発が有利になりやすいという整理ができます。
第4章で学ぶデファクトスタンダードやネットワーク外部性が働く領域では、先発優位性が極端に強く出ます。一方、技術方式が複数あって決着がついていない段階では、後発優位性のほうが効きます。
具体例
同じ業界で、先発と後発がそれぞれ勝った例を並べてみます。
先発が勝った例 ある調味料メーカーは、その製品カテゴリーを国内で初めて作り出しました。発売から数十年経ったいまでも、消費者はそのカテゴリー全体をその会社の商品名で呼んでいます。後発各社が同等品を出しても、「本家はあちら」という消費者の認識を崩せていません。これが「消費者の心の中に参入障壁を形成できる」ということです。
後発が勝った例 家庭用ゲーム機の歴史では、新しい記録媒体をいち早く採用した先発機が、ソフトの供給体制が整わないまま市場から退いたことがあります。一方、2年遅れて参入したメーカーは、どの媒体が定着するかを見極めたうえで投資し、ソフトメーカーとの関係も整えてから発売しました。技術面の不確実性に対応できるという後発優位性が効いた形です。
先発と後発のどちらが正解かは、その市場の不確実性がどれくらい高いかで変わる、ということです。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。