速度の経済性・先発優位性と後発優位性
事業戦略(競争戦略)
競争優位を築く要因のひとつとして「速さ」があります。速度の経済性(タイムベース競争)と、市場に先に入るか後から入るかによって生じる優位性の違いを学びましょう。
知的財産戦略(特許戦略)
簡単にいうと
せっかくのイノベーションも、他社にマネされたら意味がない。だから特許で守る——でも特許の使い方にも戦略があるんです。
特許権などの知的財産権を企業収益につなげるための戦略目標は次のようになります。
①自社のイノベーションに対する他社の模倣を防ぐ。
②他社の関連技術の特許化を防ぐ。
③業界における技術的な標準(デファクトスタンダードなど)を自社中心に確立する。
④他社に対する特許侵害リスクを回避する。
⑤クロスライセンス契約における優位性を確保する。
⑥ライセンス供与による収入を確保する。
クロスライセンスとは、特許の相互使用契約のことです。
なお、上記6つのうち、一般的に知的財産戦略の「5つの目標」として特に重要視されるのは、①模倣防止、②他社の特許化阻止、③標準の確立、④侵害リスク回避、⑤クロスライセンスの優位性確保の5つです。⑥のライセンス収入確保は付随的な目標として位置づけられることもあります。試験対策としては、まず5つの目標の核心を押さえ、さらに⑥も含めた全体像を理解しておくと万全です。
具体例
半導体業界では、大手企業同士がお互いの特許をクロスライセンスすることで、訴訟リスクを減らしながら製品開発を進めています。
試験のポイント
- ・知的財産戦略の目標について、「5つの目標」として問われることがあります
- ・①模倣防止、②他社特許化の阻止、③標準確立、④侵害リスク回避、⑤クロスライセンス優位性の5つが核心です
- ・⑥ライセンス収入も含め6つ全体で覚えておきましょう
- ・クロスライセンス(特許の相互使用契約)の意味は頻出です
デファクトスタンダード
簡単にいうと
VHS vs ベータの規格争い、覚えてますか?市場競争の結果、事実上の業界標準になったものがデファクトスタンダードです。
デファクトスタンダードとは、市場競争の結果、需要者や供給者によって認められた事実上の業界標準です。家庭用VTRやパソコン、ゲーム機などが有名な例です。
自社が採用する規格をデファクトスタンダードとするために、同一規格陣営に属する複数の企業が技術供与やOEM供給などを通じて戦略的に協調行動をとる場合が多いです。その一方で同陣営内においても最終的な規格競争の勝者の座を巡って激しい競争が展開されます。
これに対し、デジュールスタンダード(de jure standard)とは、ISO(国際標準化機構)やITU(国際電気通信連合)、JIS(日本産業規格)などの公的な標準化機関が公式な手続きを経て策定・認定する標準規格のことです。市場競争ではなく、委員会での合議や投票によって定められる点がデファクトスタンダードとは根本的に異なります。
近年では、技術の複雑化に伴い、デファクトスタンダードとデジュールスタンダードの両方を組み合わせた戦略をとる企業も増えています。
具体例
家庭用VTRでは、品質面ではベータ規格よりやや劣るとされていたVHS規格のほうが普及の速さや利便性の面で利用者を増やし、デファクトスタンダードとなりました。
試験のポイント
- ・デファクトスタンダード(市場競争で事実上の標準)とデジュールスタンダード(ISO・JIS等の公的機関が策定する標準)の違いは頻出論点です
- ・「de facto=事実上の」「de jure=法律上の」というラテン語の語源も押さえておきましょう
- ・OEMの定義も頻出です
OEM(相手先ブランド生産)
簡単にいうと
コンビニのPB商品って、実は大手メーカーが作っていることが多いですよね。あれがOEMの身近な例です。
OEM(Original Equipment Manufacturing)とは、相手先のブランド名で製品を製造する生産形態のことです。受託側(実際に製造する側)は、自社の生産設備の稼働率や生産量を高めることができ、委託側(ブランドを持つ側)は、自社で製造設備への大規模な投資をせずに製品ラインナップを拡充し、販売量の拡大を図ることができます。
デファクトスタンダードの獲得において、OEM供給は重要な手段です。規格の普及を早めるため、同一規格の陣営内で積極的にOEM供給を行い、多くのブランドから同規格の製品が市場に出回るようにすることで、シェア拡大を加速させることができます。
なお、OEMと類似する概念としてODM(Original Design Manufacturing)があります。ODMでは、受託側が設計・開発まで行う点でOEMより踏み込んだ関係になります。
具体例
ある家電メーカーが、自社ブランドのエアコンを別の製造会社に委託して生産してもらうケースがOEMの典型例です。委託側はエアコンの製造設備を持たなくても販売数を拡大でき、受託側は工場の稼働率を高められます。
試験のポイント
- ・OEMは「相手先ブランドでの生産」であり、受託側のメリット(稼働率向上)と委託側のメリット(設備投資不要で販売量拡大)の両面を理解しましょう
- ・デファクトスタンダードの確立手段としてのOEM供給という文脈でも問われます
ネットワーク外部性とクリティカルマス
簡単にいうと
ユーザーが増えれば増えるほど、その製品の価値が高まる——これがネットワーク外部性です。SNSとかまさにそうですよね。ある一定のユーザー数を超えると一気に広まる、その転換点がクリティカルマスです。
ソフトウエアやソフトウエアが絡む製品の規格競争においては、ネットワーク外部性に留意する必要があります。ネットワーク外部性とは、同じネットワーク(あるいは規格)に参加するメンバーが多いほど、そのネットワークに参加する各メンバーの効用が高まることを指します。
ネットワーク外部性がある製品は、品質の優劣にかかわりなく、ある技術や規格がいったんシェア上で優位になると、その規格の製品を購入したほうが利便性が高いため、雪だるま式にユーザーが増えていくことになります。
そして、ある規格がある程度市場に普及すると、他の規格がそれを逆転するのは非常に困難になります。
【クリティカルマス】
クリティカルマスとは、ある商品やサービスが爆発的に普及し始めるために最低限必要な市場普及率(あるいはユーザー数)のことです。この閾値を超えると、ネットワーク外部性の効果によって自律的に普及が加速し、市場での支配的地位を確立しやすくなります。逆に、クリティカルマスに到達できなければ、その製品・規格は淘汰される可能性が高くなります。
デファクトスタンダードの獲得を目指す企業にとって、いかにして早期にクリティカルマスを達成するかが戦略上の最大の課題となります。そのために、低価格戦略、OEM供給、補完製品の充実、戦略的提携などの手段が用いられます。
具体例
家庭用VTRでは、品質面ではベータ規格よりやや劣るとされていたVHS規格のビデオデッキやビデオテープのほうが普及の速さや利便性で利用者を増やしました。現代ではSNSやメッセージアプリなどもネットワーク外部性が強く働く典型例です。
試験のポイント
- ・ネットワーク外部性の概念と、クリティカルマス(爆発的普及に必要な最低限の市場普及率)をセットで覚えましょう
- ・品質よりもシェアが優先されるケースがある点も重要です
- ・クリティカルマスに達した後は他規格による逆転が極めて困難になるという点も押さえておきましょう
まとめ
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