組織行動論
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プレミアムで見る同じ業界の2社を訪ねると、空気の違いにすぐ気づきます。決め方、話し方、何を大事にするか。明文化されていないのに、組織の全員が共有している何か。それが組織文化です。組織文化は一体感を生む一方で、強すぎると組織を硬くします。この節では、その両面と、環境に応じた4つの類型を押さえます。
簡単にいうと
組織文化は「共有された価値や信念、習慣となった行動パターン」。一体感を高める効果がある一方で、強すぎると思考が均質化して組織が硬くなる。この両面が大事だよ!
① 組織文化とは
組織文化とは、組織メンバー間で共有された価値や信念、あるいは習慣となった行動パターンの集合体のことをいいます。
定義に含まれているものを分解しておきましょう。
・共有された価値や信念……何を大事だと考えるか
・習慣となった行動パターン……どう振る舞うか
・それらの集合体
② 組織文化の効果
組織文化には、組織メンバーに対し、行動や判断、コミュニケーションのベースを提供し、組織的な目標に対する一体感を高めるという効果があります。
3つの効果が挙げられています。
| 効果 | 中身 |
|---|---|
| 行動や判断のベース | 迷ったときの拠り所になる |
| コミュニケーションのベース | 前提を共有しているので話が早い |
| 一体感を高める | 組織的な目標に向かってまとまる |
第1章で学んだ経営理念の働きと重なります。理念が明文化されたものだとすれば、組織文化は明文化されていない部分まで含んだものだといえます。
③ 強い組織文化の5つの形成要因
強い組織文化の形成要因としては、次のようなものがあげられます。
| 形成要因 | |
|---|---|
| ① | 組織メンバーが物理的に近接していること |
| ② | 組織メンバー間の同質性が高い、つまり、性や年齢、学歴、職能などの特性、興味や関心が似通っていること |
| ③ | 組織内のタスクが相互依存関係(つまり協力し合う関係)にあること |
| ④ | 同質の情報を組織内に満遍なく伝達できるコミュニケーション・ネットワークが発達していること |
| ⑤ | 研修、会社主催の行事、社是・社訓の徹底など組織文化の浸透と組織メンバーの帰属意識を高揚させる技法がとられていること |
5つを眺めると、いずれも同じ場所で、似た人たちが、助け合いながら、同じ情報に触れるという方向を向いています。
④ 強すぎるとどうなるか
ここがこの節の最重要の論点です。
強い組織文化には、組織の目標に対する一体感を高める働きがあります。その一方で、メンバーに同調の圧力(斉一性への圧力)をかけ、考え方を一色に染め、組織を硬くしてしまうこともあるのです。
斉一性への圧力という用語を押さえてください。みんなと同じであれという圧力のことです。
| 強い組織文化の効果 | 強すぎたときの弊害 |
|---|---|
| 組織的な目標に対する一体感を高める | 斉一性への圧力を通じた思考様式の均質化 |
| 行動や判断のベースを提供する | 組織の硬直化 |
⑤ 他の節とのつながり
この構造は、本章でも第7章でも繰り返し出てきました。
・第6節の集団の凝集性……高いほど従うよう圧力が働く
・第6節の集団浅慮……画一性や同調への圧力によってもたらされる
・第7章第10節の官僚制の逆機能……効率のための仕組みが硬直化を生む
よいものが行きすぎると裏返るという同じ構図です。組織文化についても、
・一体感が欲しいから強い文化を作る
・強い文化が異論を許さなくなる
・環境が変わったときに変われない
という筋道をたどります。
そして5つの形成要因を見直すと、②同質性が高いことも④同質の情報が満遍なく伝わることも、まさに集団浅慮が起きる条件そのものであることが分かります。
⑥ 文化はいつ変革するのか
過去問では、次の記述が誤りとして出題されています。
『創業者やその家族が支配している創業段階の組織では、組織文化を変革するためには、組織開発などの手法が効果的である』
具体例
創業60年の精密機械メーカーで、強い組織文化が働きと弊害の両方を見せた例です。
5つの形成要因がすべて揃っていた
・①物理的な近接……本社と工場と研究所が同じ敷地内にある
・②同質性……新卒採用が中心で、9割が同じ地方の出身。技術系が7割を占める
・③相互依存……試作は設計と製造が一緒に手を動かす
・④コミュニケーション・ネットワーク……朝礼が全社放送で流れ、社内報が毎週配られる
・⑤浸透の技法……入社時に3か月の合宿研修、毎年の創業記念行事、社是の唱和
効果として現れた面
「0.001ミリにこだわる」という価値が全社で共有されていました。
・新人でも判断に迷ったとき「精度を優先する」と決められる(判断のベース)
・「あの精度で」と言えば通じる(コミュニケーションのベース)
・全社員が同じ方向を向いている(一体感)
この文化のおかげで、同社の製品は業界で高い評価を得ていました。
弊害として現れた面
試験のポイント
簡単にいうと
チャンドラーは「組織構造は戦略に従う」、アンゾフは「戦略は組織(文化、風土)に従う」。2人の主張が逆向きになっているのがポイント!
① 戦略と組織は密接に関係する
戦略と組織には密接な関係があります。組織構造を決定する際には、組織原則だけでなく、拡大化、多角化といった企業の戦略も関係します。
② チャンドラーの命題
チャンドラーが調べたのは、アメリカの大企業が多角化によって成長していく過程で、組織構造がどう変わったかでした。行き着く先は事業部制組織です。この実証研究から導かれたのが、「組織構造は戦略に従う」という命題です。
第1章と第7章でも出てきた命題です。
・多角化という戦略をとる
↓
・機能別組織では回らなくなる
↓
・事業部制組織という
簡単にいうと
環境のニーズ(柔軟性か安定性か)と戦略的集中(外部志向か内部志向か)の2軸。4つの文化にはそれぞれ別名があるから、セットで覚えよう!
① 分類の考え方
置かれている環境から求められていること(ニーズ)と、その環境に適応するための戦略によって、適応しやすい組織文化が変わることになります。
具体的には以下の4つに分類されます。
第7章で学んだコンティンジェンシー理論と同じ発想です。唯一最善の組織文化があるのではなく、環境と戦略によって適した文化が変わるということです。
② 2つの軸
| 軸 | 2つの値 |
|---|---|
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第7章第9節で学んだ「組織文化の変革は、主に成長後期や成熟期に行われる」という記述と同じ論点です。長年かけて固まった文化が環境に合わなくなったときに、初めて変革が課題になります。
ところが、市場に変化が起きます。顧客の一部が「そこまでの精度は要らないから、半額で」と言い始めたのです。
社内で「普及版を出してはどうか」という提案が出たとき、何が起きたか。
・「うちがそんなものを作るのか」という空気が広がった
・提案した社員は、会議の後で先輩に「あれは言わないほうがいい」と諭された
・別の部署でも同じ提案が出たが、同じように立ち消えになった
組織メンバーに対する同調の圧力(斉一性への圧力)を通じ、思考様式の均質化や組織の硬直化をもたらすとは、このことです。
誰も明示的に禁じていません。言いにくい空気が、それを止めていました。
その後 普及版を出さないまま5年が過ぎ、その領域は海外メーカーに取られました。
一体感を生んだのと同じ文化が、変化を妨げたわけです。だからこそ組織文化は、強ければよいというものではないのです。
戦略が先、組織が後という順番です。
③ アンゾフの命題
また、アンゾフは、どのような戦略を採るかは、その組織の文化や風土が影響するとし、「戦略は組織(文化、風土)に従う」という命題を提示しています。
こちらは逆向きです。
・その組織には、ある文化や風土がある
↓
・そのため、採れる戦略が限られる
組織が先、戦略が後という順番になります。
④ 2つの命題の対比
| チャンドラー | アンゾフ | |
|---|---|---|
| 命題 | 組織構造は戦略に従う | 戦略は組織(文化、風土)に従う |
| 順番 | 戦略が先 | 組織が先 |
| 根拠 | アメリカ大企業の多角化と事業部制への移行の実証研究 | どのような戦略を採るかは組織の文化や風土が影響する |
人名と命題の組み合わせが、そのまま出題されます。逆にして覚えないよう注意してください。
覚え方としては、
・チャンドラー……Chandler の「Ch」→ 「組織は戦略に従う」
・アンゾフ……成長ベクトルの人。「どんな戦略を採れるかは、その会社次第」
あるいは、チャンドラーは歴史を調べた人、アンゾフは戦略を考えた人、と役割で覚える手もあります。
⑤ どちらが正しいのか
第1章でも触れたとおり、どちらか一方が正しいというより、両方向の力が働いていると考えるのが実務的です。
新しい戦略を決めれば、それに合わせて組織を変える必要が出てきます(チャンドラー)。一方、その組織の文化に合わない戦略は、決めたところで実行されません(アンゾフ)。
前のテーマで見た精密機械メーカーの例を思い出してください。「普及版を出す」という戦略は、精度を最優先する文化と合わなかったために実行されませんでした。まさにアンゾフの命題が現れた場面です。
⑥ だから文化の変革が必要になる
アンゾフの命題を受け入れると、重要な結論が導かれます。
文化に合わない戦略を実行したいなら、文化のほうを変えなければならないということです。
これが、この章の最後(第12節)で学ぶ戦略的組織変革につながっていきます。
この章の終盤が組織文化 → 組織学習 → 戦略的組織変革という順に並んでいるのも、この筋道があるからです。
具体例
同じ「海外展開に踏み切る」という戦略が、2社でまったく違う結果になった例です。
O社(チャンドラーの命題が現れた)
戦略が先に決まった 国内市場の縮小を受けて、アジア3か国への進出を決定しました。
組織を変えた
・国内向けの機能別組織では対応できないため、地域別の事業部制に組み替えた
・各国に現地法人を設立し、権限を委譲した
・本社に海外事業統括部を新設した
組織構造は戦略に従うという命題どおりの展開です。3年目には海外売上比率が28%に達しました。
P社(アンゾフの命題が現れた)
同じ時期に、同じ業界のP社も海外展開を決めました。投じた資金も、設立した現地法人の数も、ほぼ同じです。
ところが進まなかった
P社には、創業以来の強い文化がありました。
・「現場を自分の目で見ないと決めない」
・「稟議は全部署の合意を取ってから」
・「30年勤めた人が判断する」
この文化のもとで、
・現地法人が出した提案が、本社の全部署の合意を待つあいだに3か月以上かかり、商機を逃し続けた
・現地採用の管理職には決裁権が与えられず、優秀な人材が次々に辞めていった
・日本から派遣された役員が「現場を見たい」と月の半分を移動に使い、どちらの意思決定も遅れた
5年後、P社は海外事業から撤退しました。
どのような戦略を採るかは、その組織の文化や風土が影響するというアンゾフの指摘が、そのまま現れた形です。
戦略を決めただけでは足りない P社に必要だったのは、海外展開という戦略を決めることではなく、その前に「合意を待たずに現地が決めてよい」という文化に変えることでした。
だからこそ、この章は組織文化 → 組織学習 → 戦略的組織変革という順で構成されているのです。

戦略と組織の関係・組織文化
試験のポイント
| 柔軟性 / 安定性 |
| 戦略的集中 | 外部志向 / 内部志向 |
③ 4つの類型
| 環境のニーズ:柔軟性 | 環境のニーズ:安定性 | |
|---|---|---|
| 戦略的集中:外部志向 | 適応能力/起業家的文化(アドホクラシー文化) | ミッション重視文化(マーケット文化) |
| 戦略的集中:内部志向 | 仲間的文化(クラン文化) | 官僚主義的文化(ハイアラーキー文化) |
④ それぞれの中身
❶ 適応能力/起業家的文化(アドホクラシー文化)
顧客ニーズに対する柔軟な対応や変革を起こすなど、外部環境に戦略的主眼が置かれている文化です。
つまり、環境変化にいち早く対応し、また、積極的に変化を生み出すものであるため、イノベーション、創造性、リスクテイキングが評価されます。
❷ 仲間的文化(クラン文化)
組織メンバーの関与と参加が推奨される文化であり、従業員のニーズを重視するものです。
❸ ミッション重視文化(マーケット文化)
売上、収益、市場シェアといった目標の達成に重点が置かれている文化です。
❹ 官僚主義的文化(ハイアラーキー文化)
組織内部の状況と、安定した環境との整合性を取ることを重視し、秩序だったタスクの遂行が推奨される文化です。
⑤ 別名をセットで覚える
4つとも別名があり、どちらでも問われます。
| 名称 | 別名 |
|---|---|
| 適応能力/起業家的文化 | アドホクラシー文化 |
| 仲間的文化 | クラン文化 |
| ミッション重視文化 | マーケット文化 |
| 官僚主義的文化 | ハイアラーキー文化 |
⑥ 位置を導く考え方
4つの位置は、名前から推測できます。
・起業家的……新しいことを始める → 柔軟性、外を見る → 外部志向
・仲間的(クラン=一族)……内輪の結束 → 内部志向、人を大事にする → 柔軟性
・マーケット……市場での成果 → 外部志向、目標の達成 → 安定性
・ハイアラーキー(階層)……秩序 → 内部志向、安定性
⑦ 第7章とのつながり
官僚主義的文化(ハイアラーキー文化)は、第7章第10節で学んだ官僚制組織の文化面にあたります。
そして第13節のバーンズ&ストーカーでいえば、
・官僚主義的文化 ≒ 機械的システム(安定的環境に適する)
・適応能力/起業家的文化 ≒ 有機的システム(不安定な環境に適する)
という対応になります。
組織構造の側から見るか、文化の側から見るかの違いで、同じことを述べているわけです。
具体例
同じグループ内の4社が、それぞれ異なる文化を持っている例です。
Q社:アドホクラシー文化(柔軟性 × 外部志向)
設立5年のデジタルサービス会社です。
・新しいサービスを年4回リリースする
・失敗したサービスは3か月で撤退し、次に移る
・社内で最も評価されるのは「まだ誰もやっていないことを試した人」
・肩書きより、何を提案したかで発言力が決まる
イノベーション、創造性、リスクテイキングが評価される文化です。
R社:クラン文化(柔軟性 × 内部志向)
従業員80人の地域密着の介護サービス会社です。
・月1回、全職員が集まって現場の困りごとを話す
・シフトは本人の家庭の事情を最優先で組む
・離職率は業界平均の3分の1
・「この人たちと働きたいから続けている」という声が多い
組織メンバーの関与と参加が推奨され、従業員のニーズを重視する文化です。
S社:マーケット文化(安定性 × 外部志向)
グループの主力である消費財メーカーです。
・全部署に売上・利益・シェアの目標が割り当てられている
・月次で達成度が全社に公開される
・評価も報酬も、数字で決まる
・「で、いくらになるのか」が口癖
売上、収益、市場シェアといった目標の達成に重点が置かれている文化です。
T社:ハイアラーキー文化(安定性 × 内部志向)
グループの医薬品製造子会社です。
・手順書が整備され、逸脱は認められない
・決裁は階層を順に上がっていく
・最も重んじられるのは「決められたとおりにやること」
・監査で指摘を受けないことが評価される
組織内部の状況と、安定した環境との整合性を取ることを重視し、秩序だったタスクの遂行が推奨される文化です。
どれが優れているという話ではない
医薬品製造でアドホクラシー文化を採れば、品質事故が起きます。逆にデジタルサービスでハイアラーキー文化を採れば、競合に置いていかれます。
置かれている環境から求められていることと、その環境に適応するための戦略によって、適応しやすい組織文化が変わるというのは、こういうことです。
グループ本社の悩み 実はこのグループでは、S社の成功体験をQ社にも持ち込もうとして失敗しています。数値目標と月次管理を導入したところ、Q社から挑戦的な提案が出なくなりました。
試験のポイント
プレミアムプラン
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