組織構造論
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プレミアムで見る組織はなぜ続くのか。逆に、なぜ潰れるのか。バーナードとサイモンは、これを誘因と貢献のつり合いで説明しました。組織が参加者に与えるものが、参加者が組織に差し出すものを上回っているかぎり、組織は存続する。この考え方を組織均衡といいます。5つの命題と、有効性・能率という2つの物差しを押さえましょう。
簡単にいうと
組織が参加者に与える「誘因」が、参加者が差し出す「貢献」以上であれば組織は続く。しかも参加者は従業員だけじゃない。資本家も顧客も供給業者も含むよ!
① 組織均衡とは
組織が成立・存続するためには均衡を実現することが必要条件となります。
バーナードやサイモンは、均衡を次のようにとらえました。参加者が参加し続けたくなるだけの支払いを、組織が用意できている状態。裏返せば、生き延びるのに要る経営資源を、組織が手に入れて使えている状態です。
2つの言い方が並んでいますが、同じことを別の面から言っています。
・参加者の側から……継続的な参加を動機づける十分な支払いができている
・組織の側から……生存に必要な経営資源の獲得・利用に成功している
参加者が去らずにいてくれるから、資源が手に入る。資源が手に入るから、支払いができる。この循環が回っている状態が均衡です。
② 組織均衡の5つの命題
組織均衡の中心的命題は次のとおりです。
❶ 組織は、組織の参加者とよばれる多くの人々の相互に関係した社会的行動の体系である。
❷ 参加者それぞれ、および参加者の集団それぞれは、組織から誘因を受け、その見返りとして組織に対して貢献を行う。
❸ それぞれの参加者は、組織から提供される誘因が、組織から行うことを要求されている貢献と等しいか、あるいはより大である場合にだけ、組織への参加を続ける。
❹ 参加者のさまざまな集団によって供与される貢献が、組織が参加者に提供する誘因をつくりだす源泉である。
❺ 貢献が十分に集まり、その貢献を引き出せるだけの誘因を組織が出せている。つまり
具体例
創業12年で解散した印刷会社の経緯を、参加者ごとの誘因と貢献のつり合いで見てみましょう。
従業員(誘因<貢献になった) 受注単価の下落を受けて、残業が月60時間を超えるようになりました。一方、賃金は据え置き、昇進の見通しもありません。貢献(労働力の提供)に対して誘因(賃金・昇進)が足りないと評価され、3年で技術職の6割が退職しました。
供給業者(先に離れた) 資金繰りが苦しくなり、用紙代の支払いを45日から90日に延ばしました。供給業者にとっては貢献(用紙の納入)に対する誘因(代価)が悪化したことになります。主要な用紙商社2社が取引を縮小しました。
顧客(品質低下で離れた) 人が減り、材料も揃わなくなった結果、納期遅れと印刷ミスが増えます。顧客にとっては誘因(財・サービス)が対価に見合わなくなったわけです。大口の3社が発注を止めました。
資本家(最後まで残ったが) 創業者一族が株式を保有していましたが、5期連続で無配となり、増資にも応じませんでした。
連鎖の構造 命題❹を思い出してください。参加者が供与する貢献が、誘因をつくりだす源泉でした。
顧客が対価を払わなくなれば、従業員に払う賃金の原資がなくなります。賃金が払えなければ従業員が去り、さらに品質が落ちて顧客が去る。どこか1か所の均衡が崩れると、他の参加者との均衡も連鎖的に崩れていくのです。
この会社が最初に手を打つべきだったのは、おそらく受注単価の下落そのものでした。誘因の源泉が細っているのに、貢献だけを求め続けたことが、12年で終わった理由だといえます。

組織均衡の仕組み
試験のポイント
簡単にいうと
有効性は「組織の目標をどれだけ達成したか」、能率は「貢献をどれだけ誘因に変えられたか」。この2つは別物で、しかも有効性が先に来るよ!
① 能率とは
❹の命題を裏返すと、組織の姿が見えてきます。参加者の貢献を入力とし、参加者への誘因を出力する変換装置、というとらえ方です。この貢献から誘因への変換率を能率と呼びます。
組織を、貢献を入れると誘因が出てくる装置として見るわけです。
・インプット……参加者からの貢献(労働力、資本、原材料、代価)
・アウトプット……参加者への誘因(賃金、配当、代価、財・サービス)
・能率……その変換率
能率が高いとは、同じ貢献からより多くの誘因を生み出せる、ということです。
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③ 均衡条件は「誘因 ≧ 貢献」
5つの命題の結論は、次の1本の不等式にまとめられます。
誘因 ≧ 貢献
組織が与えるもの(誘因)が、参加者が差し出すもの(貢献)以上であること。これが組織の均衡条件です。
前節で学んだ貢献意欲の話と同じ構図ですが、等しい場合も含む(≧)という点に注意してください。
④ 参加者は従業員だけではない
ここが試験で問われるところです。
オープンシステムである経営組織の参加者には、従業員、資本家、供給業者、顧客など多様な主体が含まれます。
それぞれについて、誘因と貢献の中身が違います。
| 参加者 | 組織から受ける誘因 | 組織に対する貢献 |
|---|---|---|
| 資本家 | 配当 | 資本提供 |
| 従業員 | 賃金、昇進、良好な人間関係などの各種報酬 | 労働力の提供 |
| 供給業者 | 代価 | 原材料・設備等 |
| 顧客 | 財・サービス | 代価 |
図では、まん中に組織があり、上に資本家、下に従業員、左に供給業者、右に顧客が配置され、それぞれとのあいだで双方向の矢印が描かれます。
顧客まで「参加者」に含めるのが、この考え方の特徴です。顧客が対価を払ってくれなければ組織は続かないのですから、顧客もまた組織に貢献している、という見方です。
第1章で学んだ4つの市場の図と重ねてみると、同じ構図を別の角度から描いたものだと分かります。
組織はまた、外の環境の変化に合わせ続けながら、組織目標を達成しなければなりません。この目標の達成度を指して有効性といいます。達成度が高ければ、有効性が高い状態です。
たとえば、貢献以上の誘因を提供できている状態は、組織の主たる目標を達成しているという意味で、「組織が有効である状態」です。
③ 2つの違い
| 有効性 | 能率 | |
|---|---|---|
| 何を測るか | 組織目標の達成度 | 貢献から誘因への変換率 |
| 問い | 目指したことができたか | 少ない元手で多くを生み出せたか |
| 向いている先 | 外部環境への適応 | 内部の効率 |
④ どちらが先か
ここが最も問われるところです。
以上をふまえると、組織は均衡を実現する手段の選択にあたり、有効性基準を満たすものの中から、より能率的なものを選択することになります。
順番は「有効性が先、能率が後」です。
まず目標を達成できる手段をいくつか挙げ(有効性の判定)、そのなかから最も少ない貢献で済むものを選ぶ(能率の判定)。
この順番が逆になると、「効率はよいが目標を達成できない手段」を選んでしまうことになります。どんなに安く作れても、売れない製品を作っていては意味がありません。
⑤ 覚え方
・有効性……やるべきことをやっているか(Doing the right things)
・能率……うまくやっているか(Doing things right)
この対比で覚えると、順番も自然に頭に入ります。やるべきでないことをうまくやっても仕方がないので、有効性が先に来るのです。
具体例
同じ「配送コストを下げる」という課題に対して、2つの案が出た運送会社の例です。
組織の目標 「当日18時までの注文を、翌日中に届ける」という約束を守ること。これが顧客に提供している誘因の中身です。
A案(能率だけを見た案) ・配送を週3回にまとめ、トラックの積載率を95%まで上げる
・燃料費と人件費は年間2,200万円削減できる
・変換率(能率)で見れば、明らかに優れている
しかしこの案では、翌日配送ができません。有効性の基準を満たしていないのです。
B案(有効性を満たしたうえでの案) ・翌日配送は維持する
・そのうえで、配送区域を再編して重複を減らす
・削減額は年間900万円とA案の半分以下
どちらを選ぶか 経営会議はB案を選びました。有効性基準を満たすものの中から、より能率的なものを選択するという順番どおりの判断です。
もしA案を選んでいたら コストは下がりますが、翌日配送という約束が果たせなくなります。顧客にとっての誘因が下がるので、顧客が離れます。顧客からの貢献(代価)が減れば、命題❹のとおり誘因の源泉そのものが細り、従業員への賃金も払えなくなっていきます。
能率を追って有効性を失うと、結局は均衡そのものが崩れる。だから有効性が先なのです。
試験のポイント
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