企業戦略(成長戦略)
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プレミアムで見るアンゾフによれば、多角化戦略とは新たな製品・市場分野に進出することです。一般的には、市場浸透戦略をはじめとする拡大化戦略と比べてリスクが高いといわれています。製品も市場も新しいのですから、当然といえば当然です。それにもかかわらず、なぜ企業は多角化に踏み出すのでしょうか。この節では、その理由を5つに整理して押さえます。5つ目のシナジーの追求は、次節の内容に直結する大事な論点です。
簡単にいうと
リスクが高いのに、なぜ多角化するのか。理由は5つ。とくに4つ目の「リスクの分散=無関連多角化」と5つ目の「シナジー=関連多角化」はセットで覚えよう!
❶ 組織スラックの活用
企業は、経営活動を通じて絶えず組織スラック(余裕資源)を蓄積しています。この組織スラックを、多角化戦略のために有効活用できるというのが1つ目の理由です。
組織スラックとは、企業が事業活動を続けるなかで生まれる「いま使い切れていない余力」のことです。使われていない設備の空き時間、手が空いている技術者、内部留保として積み上がった資金、活用しきれていない販路などが該当します。
この余力は、そのまま放っておけば単なるムダですが、新しい事業に振り向ければ、追加の投資をほとんどせずに事業を立ち上げられます。組織スラックは第7章の組織論でも登場する重要語なので、ここで「余裕資源」という意味を押さえておきましょう。
❷ 新しい事業分野の認識
企業を取り巻く外部環境の変化を受けて、それに対応する新しい事業分野を認識し、その事業分野に経営資源を投入するというものです。
第1章で学んだとおり、企業はオープンシステムです。外の世界が変われば、そこに新しい事業の種が生まれます。それに気づいて資源を投じるのが、この理由にあたります。
❸ 主力事業の需要の停滞
現在主力となっている事業分野の需要が停滞する局面に入った場合には、新しい事業分野への進出を考慮するというものです。
次節以降で学ぶ製品ライフサイクルでいえば、主力事業が成熟期から衰退期にさしかかった状況です。このまま何もしなければ、会社全体の売上が縮んでいくしかありません。
❹ リスクの分散
多角化して事業を複数持てば、どれか一つが不振に陥っても、残りが支えてくれます。この支え合いの効果をポートフォリオ効果と呼びます。
ここが試験で問われる大事なところです。ポートフォリオ効果を得るには、事業間の製品あるいは市場の関連性が低いことが前提
具体例
5つの理由が実際にどう重なるかを、1社の事例で見てみましょう。
創業50年、業務用製氷機を作っているL社の話です。
❸ 主力事業の需要の停滞 飲食店の店舗数が減少に転じ、製氷機の国内需要が頭打ちになりました。ここが出発点です。
❶ 組織スラックの活用 社内を見渡すと、金属板を精密に曲げる加工ラインが年間で4割ほど空いていることが分かりました。また、冷媒を扱える技術者が5名いて、そのうち2名は手が空きがちでした。
❷ 新しい事業分野の認識 ちょうどそのころ、ワクチンの低温輸送が社会的な話題になっていました。外部環境の変化から、医療用の小型保冷庫という分野が見えてきたのです。
❺ シナジーの追求(関連多角化) 保冷庫は、既存の冷媒技術と板金加工ラインがそのまま使えます。製氷機で培った「霜がつきにくい庫内設計」のノウハウも活きました。既存の経営資源が利用可能なので、立ち上げは1年半で済みました。
❹ リスクの分散(無関連多角化) 一方でL社は、まったく関連のない太陽光発電所の運営にも乗り出しました。こちらは製氷機とも保冷庫とも無関係なので、飲食業界や医療業界の景気に左右されません。ポートフォリオ効果を狙った動きです。
結果を見ると、保冷庫事業は3年で売上の22%を占めるまでに育ちました。太陽光のほうは安定した収入源にはなったものの、運営のノウハウがなく外部委託に頼ることになり、利益率は低いままです。関連多角化のほうが成功確率は高いという定石どおりの結果でした。

多角化を展開する5つの理由
試験のポイント
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関連性が高い事業ばかりを集めても、その分野が不調になれば全部が同時に傾いてしまうからです。リスクを分散したいなら、あえて関連の薄い事業を組み合わせる必要があるわけです。
❺ シナジーの追求
事業をまたいで経営資源を持ち寄り、足りないところを補い合えば、シナジー(相乗効果)が生まれます。それを狙って新しい事業へ出ていくのが、5つ目の理由です。このとき、既存事業と新事業とでは使う資源に重なりがあります。そこから関連多角化という呼び名が付いています。
⑥ 関連多角化と無関連多角化
4つ目と5つ目は、ちょうど逆の方向を向いています。
| 関連多角化 | 無関連多角化 | |
|---|---|---|
| 事業間の関連性 | 高い(資源展開に共通点がある) | 低い |
| ねらい | シナジー(相乗効果) | ポートフォリオ効果(リスクの分散) |
| 成功確率 | 高い | 相対的に低い |
そして押さえておきたいのが、一般的に無関連多角化よりも、既存の経営資源が利用可能な関連多角化のほうが成功確率は高いとされるという点です。
リスク分散という目的だけを見れば無関連多角化に分がありますが、まったく知らない分野に飛び込むことになるため、事業そのものがうまくいく確率は下がります。この二律背反が、多角化をめぐる議論の面白いところです。
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