企業戦略(成長戦略)
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プレミアムで見る多角化によってどんな効果が生まれるのか。ここではシナジー、相補効果、範囲の経済性という3つを扱います。この3つは似ているようで中身が違い、過去問では説明を入れ替えた形で繰り返し出題されています。とくに「相乗効果と相補効果」「範囲の経済と規模の経済」の2組は、どちらがどちらか瞬時に言えるところまで固めておきましょう。
簡単にいうと
AをやることがBにいい影響を与え、BをやることがAにもいい影響を与える。この「お互いに効き合う」関係がシナジーだよ!
① シナジーとは
シナジーとは相乗効果ともいい、同一企業が複数の事業活動を行うことによって、異なる企業が別個に行うよりも大きな成果が得られることです。
たとえば鉄道会社が小売業やレジャー施設を運営するといったように、Aを運営することがBによい効果をもたらし、Bを運営することがAによい効果をもたらすといったことです。
鉄道の沿線に商業施設や遊園地があれば、乗客が増えて鉄道が儲かります。逆に鉄道があるからこそ、その商業施設に人が来ます。双方向に効き合っているのがシナジーの特徴です。
② シナジーの種類
アンゾフは、シナジーを効く場所によって次のように分類しています。
| シナジーの種類 | 中身 |
|---|---|
| 販売シナジー | 流通経路、販売組織、ブランド、広告を共通に使えることで生まれる |
| 生産シナジー | 設備、人員、原材料の一括調達などを共通化できることで生まれる |
| 投資シナジー | 工場、機械、研究開発の成果を複数の事業で使えることで生まれる |
具体例
私鉄各社の事業構成は、シナジーの教科書のような例です。
ある私鉄グループは、鉄道のほかに次の事業を持っています。
・沿線の宅地開発と分譲
・ターミナル駅の百貨店
・沿線のレジャー施設
・プロ野球球団
これらがお互いに効き合っている様子を追ってみます。
宅地開発 → 鉄道 沿線に住宅地を作れば、そこに住む人が毎日その鉄道で通勤します。定期券という安定収入が生まれます。
鉄道 → 宅地開発 逆に、鉄道があるからその土地が住宅地として価値を持ちます。路線がなければ、ただの郊外の土地です。
球団 → 鉄道と百貨店 試合のたびに数万人が球場へ移動します。そのほとんどが自社の鉄道を使い、帰りにターミナルの百貨店に立ち寄ります。
百貨店 → 鉄道 ターミナルに人を集める磁石になり、休日の乗客数を押し上げます。
それぞれの事業を別々の会社がやっていたら、ここまでの効果は生まれません。同一企業が複数の事業を行うからこそ、別個に行うより大きな成果が得られる。これがシナジーです。

範囲の経済性の仕組み
試験のポイント
簡単にいうと
相乗効果との違いは「直接の相互作用があるかどうか」。AとBでも、AとCでも同じように得られるなら相補効果。AとBの組み合わせでしか得られないなら相乗効果だよ!
① 相補効果とは
相補効果とは、互いに足りない部分を補い合うことで、市場における需要変動や資源制約に対応することができ、より大きな効果が得られるものです。
「足りないところを埋め合う」というイメージです。夏に売れる商品と冬に売れる商品を両方持っていれば、工場も人員も一年中動かせます。これが相補効果です。
② 相乗効果との違いを見分ける物差し
相乗効果との違いを判断するポイントのひとつは、たとえばAとBという事業があった場合に、AとBの間に直接的な相互作用があるか否かという点です。
| 相乗効果(シナジー) | 相補効果 |
|---|
簡単にいうと
規模の経済は「同じものをたくさん作る」、範囲の経済は「いろんなものを作る」。どちらも固定費を分散させるけど、分散のさせ方が違うんだ!
① 範囲の経済性とは
範囲の経済性とはシナジーと似た概念であり、企業が複数の事業活動を行うことにより、それぞれの事業を独立して行っているときよりも、より経済的な事業が可能になることをいいます。
シナジーとの違いを押さえておきましょう。
・シナジー……複数事業の組み合わせによって「大きくなる」ということ。必ずしも「経済的になる」ということではありません
・範囲の経済性……「経済的になる(安くなる)」ということ
② 規模の経済との違い
ここが最重要です。
どちらも固定費を分散させる話ですが、分散のさせ方が違います。
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| マネジメントシナジー | 経営者の経験やノウハウを複数の事業に活かせることで生まれる |
③ 気をつけたい点
過去問では、次の記述が誤りとして出題されています。
『シナジー効果は、範囲の経済の効果とは別個に発生し、複数事業の組み合わせによる費用の低下を生じさせる』
この記述の誤りは2か所あります。
・費用の低下を直接表現する概念は「範囲の経済」のほうです。シナジーは「成果が大きくなる」ことを指し、必ずしも「費用が下がる」ことを意味しません。
・また、シナジーと範囲の経済は同時に発生することも多く、「別個に発生する」と言い切るのも不正確です。
シナジー=大きくなる、範囲の経済=経済的になる(安くなる)。この区別を頭に入れておいてください。
| 直接的な相互作用 | ある | ない |
| どういう効果か | AとBという組み合わせだからこそ得られる効果 | AとBでも得られる効果が、AとCでも同じように得られる |
| 何に対応するか | 経営資源の共有・補完による成果の拡大 | 需要変動や資源制約 |
鉄道と沿線の百貨店は、互いに客を送り合うので直接的な相互作用があります。だから相乗効果です。
一方、かき氷機と暖房器具を作っている会社を考えてみましょう。夏と冬で工場の稼働が平準化されますが、かき氷機が売れたから暖房器具が売れるわけではありません。直接的な相互作用はないので相補効果です。しかもこの効果は、暖房器具でなく「冬に売れる別の何か(C)」でも同じように得られます。
③ 過去問で問われた形
次の記述が誤りとして出題されています。
『企業の多角化による効果には、特定の事業の組み合わせで発生する相補効果と、各製品市場分野での需要変動や資源制約に対応し、費用の低下に結びつく相乗効果がある』
相補効果と相乗効果の説明が逆になっています。
・「特定の事業の組み合わせで発生する」のは相乗効果
・「需要変動や資源制約に対応する」のは相補効果
この入れ替えは頻出パターンなので、「特定の組み合わせ=相乗、需要変動と資源制約=相補」とセットで覚えてしまいましょう。
具体例
相補効果が効いている会社の例を見てみましょう。
ある中堅の食品機械メーカーM社は、次の2つの事業を持っています。
・業務用かき氷機……売上のピークは5月〜8月
・業務用おでん鍋……売上のピークは10月〜2月
需要変動への対応 かき氷機だけを作っていたころは、秋から春にかけて工場がほとんど止まり、それでも人件費と設備の減価償却費はかかり続けていました。おでん鍋を手がけたことで、一年を通じて工場が動くようになりました。
資源制約への対応 板金加工の技能者を通年で雇用できるようになり、繁忙期だけの短期採用に頼らずに済むようになりました。技能の蓄積も進んでいます。
ここで大事なのは、かき氷機とおでん鍋のあいだに直接の相互作用はないということです。かき氷機が売れたからおでん鍋が売れるわけではありません。しかも、冬の商品はおでん鍋でなくても、たとえば「業務用の焼き芋機」でも同じ平準化の効果が得られます。AとBでも、AとCでも同じように得られる効果。これが相補効果です。
対比のために、同じM社の別の組み合わせを見てみましょう。M社はかき氷機と専用のシロップも販売しています。こちらは、かき氷機が売れるほどシロップが売れ、シロップの品揃えが良いからかき氷機が選ばれる、という双方向の関係があります。こちらは相乗効果です。
試験のポイント
| 規模の経済 | 範囲の経済 | |
|---|---|---|
| 何をするか | 同じものを数多く作る | 多様な種類のものを作る |
| 固定費の分散のさせ方 | 生産量を増やして1個あたりの負担を下げる | 複数の事業で共通に使って負担を分け合う |
| どんな戦略と結びつくか | 特定のものに特化する(コストリーダーシップ) | 多角化する |
過去問では、次の記述が誤りとして出題されています。
『多角化は規模の経済を利用するために行われる』
規模の経済は、特定のものに特化することで経済的な効果が得られる概念です。多角化と結びつくのは範囲の経済のほうですから、この記述は誤りです。
「多角化」という言葉を見たら「範囲の経済」、「特化」「大量生産」を見たら「規模の経済」。この反射を作っておくと迷いません。
③ 範囲の経済の源
源になるものは2種類あります。ひとつは販売チャネルや設備といった有形の資源。もうひとつがブランド、知識、ノウハウといった無形の資源です。近年はとくに後者が見えざる資産(情報的経営資源)として重く見られるようになりました。
第1章で学んだ情報的資源の性質を思い出してください。情報的資源は同時に多重利用できるという特徴がありました。ひとつの技術ノウハウを、同時にいくつもの事業で使えるのです。だからこそ範囲の経済の源として重要視されるわけです。
④ 3つの概念の関係
この節で見た3つを並べて整理しておきましょう。
| 概念 | 何が起きるか | キーワード |
|---|---|---|
| シナジー(相乗効果) | 別々にやるより成果が大きくなる | 直接的な相互作用がある |
| 相補効果 | 互いの足りない部分を補い合う | 需要変動・資源制約への対応 |
| 範囲の経済性 | 独立して行うより経済的になる | 多様な種類を作って固定費を分散 |
シナジーと範囲の経済性は同時に発生することも多いため、きれいに切り分けられるとは限りません。ただし試験では、それぞれが何を指しているかを正確に問われます。
具体例
ある光学機器メーカーの事業構成が、範囲の経済の典型例としてよく取り上げられます。
この会社は、光学技術に対する研究開発費(ノウハウ)というひとつの土台の上に、次の4つの事業を乗せています。
・プリンタ事業
・カメラ事業
・コピー事業
・FAX事業
レンズの設計、光の制御、画像の読み取りといった技術は、この4つのすべてで使われます。もし4つの事業が別々の会社だったら、同じ研究開発費を4回払わなければなりません。
ひとつの会社が4つをまとめて持つことで、研究開発という固定費を4つの事業で分け合えます。これが多様な種類のものを作ることによる固定費の分散、つまり範囲の経済です。
ここで規模の経済と比べてみましょう。もしこの会社がカメラだけを作り、年間の生産台数を10倍に増やしたとすれば、カメラ1台あたりの研究開発費の負担は10分の1になります。これは同じものを数多く作ることによる分散なので、規模の経済です。
同じ「固定費を分散させる」でも、種類を増やすのか、量を増やすのかという違いがあることが分かります。
試験のポイント
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