多角化の戦略的効果
企業戦略(成長戦略)
多角化によって得られる戦略的効果には、シナジー効果・相補効果・範囲の経済性があります。それぞれの違いを明確に押さえましょう。
シナジー・相補効果・範囲の経済性
簡単にいうと
多角化のメリットを表す3つの概念。似ているようで微妙に違うので整理しましょう。
【シナジー(相乗効果)】同一企業が複数の事業活動を行うことで、異なる企業が個別に行うよりも大きな成果が得られることです。複数事業の組み合わせによる費用の低下も含まれます。シナジー効果は範囲の経済の効果とは別個に発生し、両者は同時に生じることも多い点に注意しましょう。
【相補効果】互いに足りない部分を補い合うことで、市場における需要変動や資源制約に対応することができ、より大きな成果が得られるものです。たとえばA事業とB事業の間に直接的な相互作用があるかどうかが、相乗効果との違いを判断するポイントです。相補効果はA事業とB事業の間に直接的な相互作用がなくても生じます。企業の多角化による効果として、特定の事業の組み合わせで発生する相補効果は、各製品市場分野の需要変動や資源制約に柔軟に対応し、費用の低下にも寄与します。
【範囲の経済性】企業が複数の事業を営むことによって、それぞれの事業を独立して行うよりも経済的(コスト節約)に行えることです。シナジーに近い概念ですが、複数事業の組み合わせにより「効果が大きくなる」というよりも「経済的になる」点に着目した表現です。
【規模の経済と範囲の経済の違い】規模の経済は、同一の製品を大量に生産することで固定費を分散させ、1単位あたりのコストを下げる考え方です。一方、範囲の経済は、多様な種類の製品・サービスを同じ企業内で生産・提供することで固定費を分散させる考え方です。規模の経済が「量」による効率化であるのに対し、範囲の経済は「多様性」による効率化といえます。
【範囲の経済の源泉】範囲の経済が生じる源泉は大きく2つに分類されます。
① 有形資源:販売チャネル、生産設備、物流網など物理的に存在する経営資源
② 無形資源:ブランド力、技術的知識、ノウハウ、顧客情報など形のない経営資源
近年では特に②の無形資源が重要視されており、これらは「見えざる資産(情報的経営資源)」と呼ばれます。見えざる資産は使っても消耗しない特徴があるため、複数事業で同時に活用しやすく、範囲の経済を生み出す原動力として注目されています。
具体例
光学技術に対する研究開発費(ノウハウ)を、プリンタ事業・カメラ事業・コピー事業・FAX事業で共有できるのが範囲の経済性の典型例です。
範囲の経済性の仕組み
試験のポイント
- ・シナジーと相補効果の違い(直接的な相互作用の有無)は定番の出題ポイントです
- ・「範囲の経済=多様な製品で固定費を分散」「規模の経済=同一製品を大量生産で固定費を分散」の違いも頻出です
- ・試験では「多角化は規模の経済を利用するために行われる」という誤った選択肢がよく出ます(正しくは範囲の経済)
- ・また「範囲の経済の源泉=有形資源+無形資源(見えざる資産)」も押さえておきましょう
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