マーケティングマネジメント戦略の展開
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プレミアムで見るマーケティング目標が設定された後は、その目標を達成するための市場の選定が行われます。
市場を選定する際には、まずその市場を同じニーズをもつ消費者グループに細分化することが必要になります。
この節は、この章で最も出題の多い部分です。押さえるべきは4つ。
市場細分化の4つの基準、コトラーの3類型、エーベルの5類型、そして市場ポジショニング。
とくにコトラーとエーベルは、どちらも標的市場の設定パターンでありながら切り口がまったく違います。そこを混ぜないことが、この節を攻略する鍵です。
簡単にいうと
みんなに同じものを売る時代は終わったんだ。誰に売るかを絞る。その手順が3段階あるよ!
① マスマーケティングの限界
消費者の価値観や嗜好が多様化している昨今では、市場の消費者のニーズを単一なものと考えて、同じ製品を大量に投入していくマーケティング手法(マスマーケティング)では、消費者の個々のニーズに製品を適合させることが困難になっています。
第10章で見たマーケティング1.0が、まさにこの手法でした。作れば売れた時代には有効でしたが、選択肢が増えた市場では通用しなくなります。
② ターゲットマーケティング
したがって、市場を細分化し、その細分化された市場の中で最も適切な市場を標的(ターゲット)とし、その標的に対して最も効果的なマーケティング手段を投入していく方法(ターゲットマーケティング)が広く採用されています。
③ 3つの段階
ターゲットマーケティングの内容は、次の3つです。
④ 各段階の留意点
それぞれの段階で何をするかが決まっています。
市場細分化
具体例
スポーツシューズを作るZ社の動きを3段階で追ってみます。
マスマーケティングだった頃
「走れる靴」を1種類だけ作り、全国に卸していました。20年前はこれで売れました。
ところが、市場に専門ブランドが増えるにつれ、「悪くはないが、自分向けではない」と言われるようになります。
ⅰ 市場細分化 ― 分ける
Z社はランナーを走る目的で分けました。「健康のために週2回走る人」「大会の完走を目指す人」「タイムを縮めたい人」の3つです。
ⅱ 市場ターゲティング ― 測って選ぶ
3つのセグメントを、規模、成長率、競合の数、自社の技術との相性という4つの物差しで採点しました。
結果、「大会の完走を目指す人」が最も高得点。規模が伸びており、大手が手薄だったためです。ここを標的に選びました。
ⅲ 市場ポジショニング ― 位置を決めて手段を組む
この層のなかで「42キロ走りきるためのクッション」という位置に置くことにします。
そして、その位置に合わせて4Pを組みました。厚底のクッション、1万8千円という中位の価格、大会の会場での販売、完走者の声を使った広告。
3段階を踏んだからこそ、4Pが一本の線でつながっていることが分かります。

ターゲットマーケティング(S・T・P)
試験のポイント
簡単にいうと
市場を分ける物差しが4つあるよ。外から見て分かるものと、聞かないと分からないものがあるんだ!
① 市場細分化とは
市場細分化(マーケットセグメンテーション)とは、市場を一定の規模に保ちながら、かつ同質的なニーズをもつ消費者の集合に区分していく手法です。
定義に2つの条件が入っている点に注意してください。
細かく分ければ分けるほどニーズは揃いますが、規模が小さくなりすぎては商売になりません。同質性と規模の両立が求められます。
② 4つの基準
市場を細分化する際に使用される基準には、次のようなものがあります。
ⅰ ジオグラフィック基準(地理的基準)
地理的な基準を用いるもので、地域や気候、人口密度などにより市場を細分化します。
簡単にいうと
細分化した市場の、どこをどう狙うか。コトラーは3つのパターンに分けたよ!
① 標的市場の設定
市場を細分化したら、市場セグメントの魅力度を測定する方法を開発し、標的セグメントを選択します。
② コトラーの3類型
コトラーは、標的市場の設定パターンとして、無差別型、差別型、集中型の3つをあげています。
ⅰ 無差別型
細分化された市場間の差異を考慮に入れずに、単一の製品(マーケティングミックス)をすべての市場に投入していく方法です。
すなわち、消費者ニーズの相違点ではなく共通点に着目した設定方法です。
ⅱ 差別型
簡単にいうと
エーベルは製品と市場のマス目で考えたんだ。5つの形があるよ。マス目を塗る形で覚えよう!
① エーベルの5類型
エーベル(Abell, D. F.)は、標的市場のとらえ方を、全市場を対象とするものと絞り込んだ市場を対象とするものに分け、次の5つに分類しています。
② 製品と市場のマス目で考える
この5つは、縦に製品(P)、横に市場(M)
簡単にいうと
狙う市場のなかで、自分をどこに置くか。地図を描いて空いている場所を探すんだよ!
① 市場ポジショニングとは
市場ポジショニング(分析)とは、競争上の位置づけを意味し、製品間における競争のなかで、いかにして自社製品が競合製品と差異を図って優位に立つかを検討することです。
市場細分化の最終段階としてポジショニングを行い、競争市場で自社の占めたい位置を決定します。
② 知覚マップ
ポジショニング分析では、消費者が意識する製品の知覚上の位置づけを表す知覚マップ(ポジショニングマップ)を作成し、当該製品の相対的な知覚上の位置づけを分析・評価します。
知覚マップを作成することで、新製品ならば目標をどこのポジションに置くのか、既存製品ならばリポジショニングする必要があるのかを検討します。
③ 「知覚上の」がなぜ大事か
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市場ターゲティング
市場ポジショニング
⑤ 段階ごとの動詞に注目する
細かい項目を丸暗記するより、各段階が何をする段階なのかで捉えてください。
ターゲティングの段階に「魅力度を測定する方法を開発する」という項目が入っているのが特徴的です。選ぶには物差しが要る、ということです。
人口統計的な基準を用いるもので、年齢、性別、所得、職業、学歴、宗教、国籍などにより細分化します。
なお、ジオグラフィック基準とデモグラフィック基準をまとめてデモグラフィック基準とする場合もあります。
ⅲ サイコグラフィック基準(心理的基準)
デモグラフィック基準では区分できない、消費者の心理的な側面に焦点をあてるもので、消費者の価値観やライフスタイルなどにより細分化します。
ⅳ 行動変数基準
消費者の製品に対する知識、態度、使用、反応などに焦点をあてて細分化する方法で、ベネフィット、使用率、ロイヤルティなどにより細分化します。
なお、サイコグラフィック基準と行動変数基準をまとめてサイコグラフィック基準とする場合もあります。
③ 4つを2つに束ねて捉える
まとめ方の注記が2つ出てきました。これは偶然ではありません。
ジオグラフィックとデモグラフィックは、外から観察できる属性です。統計や公表データから把握できます。
サイコグラフィックと行動変数基準は、本人に聞かなければ分からないものです。
だから、サイコグラフィック変数は刊行データによって入手することはできません。マーケティングリサーチが必要になります。ここは出題されたことのある論点です。
④ 市場細分化のメリット
次の3つが挙げられます。
⑤ 細分化しても均一にはならない
気をつけたい点があります。
ある基準で細分化しても、その基準以外の点まで均一になるわけではありません。
たとえば企業間取引のマーケティングで企業規模に基づき市場細分化を行った場合、各セグメント内の企業が企業規模以外の基準においても均一になる、ということはありません。
企業規模以外は考慮していないのですから、当然です。この形の選択肢は誤りとして扱われます。
具体例
同じ「インスタントラーメン」の市場を、4つの基準で切ってみます。
ジオグラフィック基準
関西は薄口、関東は濃口。寒冷地では冬場の消費量が跳ね上がる。地域や気候で分けると、味付けと生産計画が変わります。
デモグラフィック基準
20代の単身男性、40代の主婦、70代の高齢者。年齢と世帯構成で分けると、容量と塩分量の設計が変わります。
ここまでは、国勢調査などの公表データで分かります。
サイコグラフィック基準
「健康に気を使う人」「手軽さを最優先する人」「新しい味を試したい人」。
この分け方は、どの統計にも載っていません。自社で調査するしかないのです。
行動変数基準
週5回食べるヘビーユーザー、月1回のライトユーザー、まったく食べないノンユーザー。あるいは、特定ブランドだけを買い続ける人と、安いものに乗り換える人。
細分化の落とし穴
Z社は「40代の主婦」というセグメントを設定しました。
しかしこの中には、健康志向で塩分を気にする人も、手軽さ最優先で味は問わない人もいます。
年齢と性別で分けただけでは、価値観までは揃わない。だからZ社は、サイコグラフィック基準を重ねて「40代主婦のうち健康志向の層」まで絞り込みました。
試験のポイント
細分化された市場ごとのニーズに適合した製品(マーケティングミックス)を複数の市場に対して投入していく方法です。
ⅲ 集中型
細分化された市場の中から特定の市場に限定し、そこに最適な製品(マーケティングミックス)を投入していく方法です。
③ 数の対応で覚える
3つは、マーケティングミックスの数と狙うセグメントの数の組み合わせで区別できます。
無差別型と集中型は、どちらもミックスが1つです。違いは、それを全市場に当てるか、1つの市場に絞るかです。
④ メリットとデメリット
無差別型
差別型
集中型
⑤ 長所と短所は裏返しになっている
3つの短所は、いずれも長所の裏側です。
無差別型は、1つで済むから安い。だが1つしかないから合わない人が出る。
差別型は、それぞれに合わせるから売れる。だが、それぞれに作るから高くつく。
集中型は、1点に集められるから資源が活きる。だが、1点しかないからその市場が崩れると逃げ場がない。
この対応で理解しておけば、組み合わせを取り違えることはありません。
具体例
腕時計メーカー3社の戦い方を比べてみます。
A社 ― 無差別型
3,000円のデジタル時計を1種類だけ作り、世界中のあらゆる売場に置いています。
「時刻が分かればいい」という共通のニーズだけを見ています。年間2,000万個を同じラインで作るため、1個あたりの製造コストは極めて低い。
ただし、「仕事で使うから見栄えのするものを」という人にも、「登山で使うから気圧計が欲しい」という人にも応えられません。
B社 ― 差別型
学生向け5,000円、ビジネス向け3万円、アウトドア向け5万円、贈答向け20万円の4系統を持っています。
それぞれに専用の設計、専用の広告、専用の販路。全体の売上はA社を上回ります。
しかし、4つの開発陣と4種類の広告予算が要ります。1本あたりの固定費はA社の何倍にもなります。
C社 ― 集中型
ダイビング用の防水時計だけを作っています。水深300メートルまで耐える設計に、技術者20人の全員を投入しています。
このセグメントでは世界シェア40%。小さな会社が大手と互角に戦えているのは、資源を1点に集めているからです。
ただし、スマートウォッチがダイビング市場に入ってきたとき、C社には逃げ込む別の市場がありません。これがリスクを分散させられないということです。
試験のポイント
製品3種類、市場3種類で3×3のマス目を思い浮かべてください。どのマスを埋めるかで5つの型が分かれます。
ⅰ 単一セグメント集中型
1つのマスだけを埋めます。特定の製品を、特定の市場だけに出す形です。
ⅱ 製品専門型
横一列を埋めます。1つの製品を、すべての市場に出す形です。
ⅲ 市場専門型
縦一列を埋めます。1つの市場に対して、すべての製品を出す形です。
ⅳ 選択的専門型
飛び飛びのマスを埋めます。製品と市場の組み合わせを選んで、そこだけに出す形です。
ⅴ 全市場浸透型
すべてのマスを埋めます。すべての製品を、すべての市場に出す形です。
③ 製品専門型と選択的専門型の取り違え
ここが最も狙われる論点です。
同一の製品を、いくつもの異なる売り先へ出している場合、これは製品専門型です。選択的専門型ではありません。
たとえば製パンメーカーが、同じパンをスーパー、コンビニ、総合スーパー、学校、病院、企業の食堂、大手レストラン・チェーンに販売している。
売り先は多様ですが、製品は1つです。だから横一列を埋める製品専門型にあたります。
選択的専門型は、製品も市場も複数あって、その組み合わせを選んでいる形です。製品が1種類しかなければ、選択的専門型にはなりません。
④ コトラーとエーベルは切り口が違う
2人の分類を混ぜないでください。
コトラーは、マーケティングミックスをいくつ用意するかで分けました。
エーベルは、製品と市場の組み合わせのどこを埋めるかで分けました。
軸が違うので、「集中型」と「単一セグメント集中型」のように名前が似ていても別の分類体系です。どちらの話かを問題文から読み取ってください。
具体例
業務用冷蔵庫を作る5社を、エーベルの型で分けてみます。
製品は「小型」「中型」「大型」の3種類、市場は「飲食店」「スーパー」「工場」の3つとします。
単一セグメント集中型 ― B社
小型冷蔵庫を、飲食店にだけ売っています。マス目でいえば1マスだけ。
製品専門型 ― C社
大型冷蔵庫だけを作り、飲食店にもスーパーにも工場にも売っています。製品は1つ、売り先は3つ。横一列です。
先ほどの製パンメーカーの例と同じ形です。売り先が多くても、製品が1つなら製品専門型になります。
市場専門型 ― D社
スーパーだけを相手にして、小型・中型・大型のすべてを供給しています。縦一列です。
この会社は、スーパーの売場に必要な冷蔵設備をまるごと引き受けることで強みを作っています。
選択的専門型 ― E社
「小型×飲食店」と「大型×工場」の2つだけをやっています。
この2つに共通点はありません。たまたま、この2つの組み合わせで自社の技術が活きると判断しただけです。飛び飛びのマスを埋めています。
全市場浸透型 ― F社
3種類すべてを、3つの市場すべてに供給しています。業界最大手です。
試験のポイント
客観的には同等の性能でも、消費者が「あちらのほうが高級だ」と感じていれば、マップ上ではそちらが上に置かれます。
ポジショニングが戦うのは、スペック表の上ではなく消費者の頭の中だということです。
④ ポジショニングの2つの意味合い
ポジショニングには、次の2つの意味合いがあります。
外を見るだけではない、という点が要点です。
⑤ カニバリゼーション
自社の製品ラインにおける新製品のポジショニングを検討する際には、自社内でのカニバリゼーション(共食い)を起こさないように注意します。
カニバリゼーションとは、同一企業内の類似製品間で同一市場を奪い合う現象のことです。
新製品を出したのに全体の売上が伸びない、という事態はここから生まれます。取ったシェアが、他社からではなく自社の既存製品からだった、ということです。
⑥ レッドオーシャンとブルーオーシャン
多くの企業がすでに製品を展開している市場は競争も激しいものの、消費者が確実に存在します。
一方、まだ企業が製品を展開していない市場は競争がないものの、消費者のニーズが存在するかは未知です。
よって、どのようなポジショニングを行うのが好ましいかはさまざまな考え方がありますが、次のように呼び分けられています。
⑦ 空白地帯が必ず良いとは限らない
知覚マップに空白があると、そこを狙えばよいように見えます。
しかし、空白である理由が「誰も欲しがらないから」である場合があります。
競争がないことと、需要があることは別の話です。ブルーオーシャンに出るかどうかは、この見極めにかかっています。
具体例
国内のビール市場で、新商品を出そうとするG社の検討を追ってみます。
知覚マップを描く
縦軸に「飲みごたえ(強い/軽い)」、横軸に「価格(高い/安い)」をとりました。
空白をどう読むか
左下が空いています。一見すると狙い目です。
しかしG社は調査を行い、「軽いものに高い金を払う理由がない」という消費者の声が多いことを確かめました。
空白だったのは、誰も欲しがらなかったからです。この空白は狙いませんでした。
軸を変えてみる
そこでG社は、軸そのものを変えました。縦軸を「食事と合わせるか/単独で飲むか」に置き換えます。
すると、「食事と合わせる・高い」の位置が手薄であることが見えてきました。しかも、この層には確かな需要がありました。
知覚マップの軸をどう取るかで、見えるものが変わる。これがポジショニング分析の勘所です。
カニバリゼーションの検討
ただし、G社にはすでに「食事に合う」を訴える既存ブランドがありました。
そのまま出せば、新商品が取る客の多くは既存ブランドから移ってきた人になります。これがカニバリゼーションです。
そこでG社は、新商品を和食専用の位置づけに絞り、既存ブランドとの重なりを小さくしました。
試験のポイント
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