技術経営
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プレミアムで見る前節で見た死の谷やダーウィンの海を越えるには、資金が要ります。しかも、失敗する可能性を承知で出してくれる資金です。その担い手がベンチャーキャピタルです。一方、新しい事業を生み出すのは新設の会社だけではありません。既存の大企業が社内に独立した組織を作る社内ベンチャーという道もあります。この節では、その2つを押さえます。
簡単にいうと
ベンチャー企業にお金を出す会社。銀行と違って「返してもらう」のではなく「株を買って、価値が上がったら売る」。この差額がキャピタルゲインだよ!
① なぜ多様な資金調達先が必要なのか
死の谷やダーウィンの海を乗り切るには、多様な資金調達先を確保する必要があります。その代表がベンチャーキャピタルです。
② ベンチャーキャピタルとは
ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業にリスクファイナンスを主に供給し、ベンチャー企業の企業価値向上の支援をするファイナンス企業のことです。
定義に2つの役割が入っている点に注意してください。
・リスクファイナンスの供給……失敗の可能性を承知で資金を出す
・企業価値向上の支援……お金を出すだけでなく、経営を手伝う
③ どうやって儲けるのか
主な仕事は、ベンチャー企業の株式などに投資することです。そして投資後の支援によって企業価値を引き上げ、キャピタルゲインを手にします。これは株式などの売却代金と、投じた資金との差額を指します。
ここが銀行融資との決定的な違いです。
| 銀行融資 | ベンチャーキャピタル | |
|---|---|---|
| お金の出し方 |
具体例
前節で出てきた新素材メーカーが、ベンチャーキャピタルから8億円の出資を受けたときの中身を見てみましょう。
出資の条件
・8億円で、発行済株式の25%を取得
・返済義務はなし
・担保も個人保証も不要
・取締役を1名派遣
・5年後をめどに株式公開を目指すことを合意
銀行だったらどうだったか 同じ8億円を銀行から借りるなら、毎月の返済が始まり、社長の個人保証も求められたはずです。そもそも売上のない会社に8億円は貸しません。リスクファイナンスが必要だったのは、このためです。
お金以外に受けた支援
・派遣された取締役が、管理会計の仕組みを導入した
・投資先ネットワークを通じて、風力発電メーカー3社を紹介された
・量産責任者の採用を手伝ってもらった
これが企業価値向上の支援です。ベンチャーキャピタルにとっても、この会社の価値が上がらなければ自分たちが損をするので、真剣です。
出口 6年後、この会社は株式公開を果たしました。ベンチャーキャピタルが保有していた株式の評価額は約40億円。投資した8億円との差額32億円がキャピタルゲインです。
もちろん、すべての投資先がこうなるわけではありません。ベンチャーキャピタルは10社に投資して数社の成功で全体の損失を埋める、という商売です。だからこそリスクを取れる

ベンチャーキャピタルと社内ベンチャー
試験のポイント
簡単にいうと
大企業の中に作る、独立した新事業の組織。既存の手続きを通さずに動けるから速い。優秀な人材が辞めて外に出ていくのを防ぐ効果もあるよ!
① 社内ベンチャーとは
社内ベンチャーとは、新事業の開発のために社内につくられる独立的運営組織です。
社内ベンチャーは、小規模な研究チームからスタートし、次第に予算や人員が増加され、やがては事業部となることもあります。
キーワードは「独立的運営」です。既存の部門の一部として動くのではなく、意思決定も予算も切り離された組織にする点が要です。
② 社内ベンチャーのメリット(ねらい)
| ねらい | 中身 |
|---|---|
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| 株式などに投資する(資本) |
| 返済 | 必要 | 不要 |
| 利益の源 | 利息 | キャピタルゲイン(売却代金と投資資金の差額) |
| 担保 | 求めることが多い | 求めない |
| 失敗したら | 貸し倒れとして回収に動く | 出資金が戻らない |
| 経営への関与 | 原則として関与しない | 企業価値向上の支援をする |
ベンチャーキャピタルは、投資先が成長して株式の価値が上がらないかぎり儲かりません。だからこそ、ただ資金を出すのではなく、役員を派遣したり、取引先を紹介したり、人材採用を手伝ったりするのです。投資先が成長することが、自分たちの利益に直結しているからです。
④ 出資のスタイル
過去問では、次の記述が正しいものとして出題されています。
『ベンチャーキャピタルは、有望な中小企業に対して、本体や他のベンチャーキャピタルが運用するファンドを通じた投資と本体の自己資金を原資とした投資のスタイルで、中小企業の企業価値を高める』
資金の出どころには、
・ファンドを通じた投資……外部の投資家から集めた資金をまとめて運用する
・本体の自己資金を原資とした投資……自社の資金を直接投じる
の2通りがあるということです。
⑤ 出資を受ける側から見ると
ベンチャー企業の側から見れば、返済不要の資金が手に入り、経営の支援も受けられるという大きな利点があります。
一方で、
・株式を渡すため、創業者の持分(議決権)が薄まる
・投資家は数年内の株式公開や売却という出口を期待するため、その時期までに成果を出す圧力がかかる
・経営に関与されるため、意思決定の自由度が下がることがある
という面もあります。資金の性格を理解したうえで、どこから調達するかを選ぶことが大切です。
| 個人の創意や少数の熱意が、既存のプロセスを経由せずに特定問題に集中するために、成果をあげる時間が短縮される |
| 人材の流出防止 | 優秀な技術者や起業家精神をもつ人材の外部流出を防止する |
| 創造性の喚起 | 新規事業開発の経験によって社員の創造性が喚起される |
③ なぜ独立させる必要があるのか
1つ目のねらいにある「既存のプロセスを経由せずに」という部分が重要です。
大企業の既存の意思決定プロセスは、失敗を避けるために何段階もの承認を求めます。これは既存事業を安定して回すには適していますが、新しい事業の芽を育てるには遅すぎます。だから手続きの外に置くわけです。
さらに、第3節で学んだ革新者のジレンマを思い出してください。破壊的イノベーションは、初期段階では性能が低く、市場が小さく、利益率も低いのでした。既存事業と同じ評価基準(売上規模や利益率)で判断すれば、必ず却下されます。
社内ベンチャーを独立させるのは、この評価基準の問題を避けるためでもあります。革新者のジレンマへの対応策のひとつだと理解しておくと、章全体のつながりが見えてきます。
④ 何を目的に設置されるのか
過去問では、次の記述が正しいものとして出題されています。
『社内ベンチャーは、本業や既存事業の思考様式にとらわれない発想を生み出し、本業や既存事業と異なった事業への進出や根本的に異質な製品開発を目的として設置されることが多い』
本業の延長ではなく、異質なものを生み出すために設置される、という点です。既存事業の改良が目的なら、既存の部門でやればよいわけです。
⑤ 人材流出の防止という側面
2つ目のねらいも実務的に重要です。
起業家精神を持つ人材は、社内で挑戦の場がなければ、会社を辞めて自分で始めてしまいます。そうなると、その人の能力も、温めていた構想も、まるごと社外に出ていってしまいます。
社内ベンチャーは、そうした人材に社内で挑戦の場を用意することで、能力と構想を自社に留めるという働きも持っているのです。
⑥ 第7章とのつながり
社内ベンチャーは、組織構造の話でもあります。第7章で学ぶ組織構造の動態化、つまり固定的な組織とは別に柔軟な組織を併設するという考え方の一例です。あわせて理解しておくと定着しやすくなります。
具体例
大手精密機器メーカーが設けた社内ベンチャー制度の実際を見てみましょう。
制度の仕組み
・年1回、全社員から事業構想を公募する
・選ばれた提案者は、既存部門から完全に切り離された「新規事業開発室」に異動する
・初年度の予算は3,000万円。使途は提案者の裁量に任される
・売上目標は課さない。評価するのは「顧客が本当に困っているかを確かめたか」
・3年で芽が出なければ元の部門に戻れることを保証する
なぜこの設計なのか
売上目標を課さないのは、革新者のジレンマへの対応です。既存事業は年商1,000億円規模なので、同じ基準で評価すれば新規事業はすべて「小さすぎる」と却下されます。
元の部門に戻れることを保証するのは、挑戦の心理的な負担を下げるためです。失敗したら居場所がなくなるという状況では、誰も手を挙げません。
成果
5年間で27件が採択され、うち3件が事業部に昇格しました。とくに大きかったのは、工場の設備データを分析するサービスです。本業の精密機器とはまったく異なる事業で、既存の事業部の中にいたら決して通らなかった構想でした。
人材面の効果 制度の導入後、技術職の離職率が下がりました。「この会社にいても、やりたいことができる」と思える人が増えたためです。優秀な人材の外部流出の防止が、実際に効いた形です。
試験のポイント
プレミアムプラン
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