企業戦略(成長戦略)
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プレミアムで見る競争優位はどこから生まれるのか。ポーターは「業界の中での位置取り」と答えましたが、バーニーは「企業が持っている資源そのもの」と答えました。これがリソースベースドビューであり、その資源が本当に強いかどうかを判定する物差しがVRIO分析です。4つの頭文字を覚えるだけなら簡単ですが、試験で問われるのは模倣困難性の中身と、どの条件まで満たせばどこまでの優位が得られるのかという段階です。そこまで踏み込んで押さえていきましょう。
簡単にいうと
「会社ごとに持っている資源が違うから、勝ち負けが生まれる」という見方。外の環境じゃなくて、自分の中に強さの理由を探すアプローチだよ!
① ペンローズから始まる
エディス・ペンローズは、企業は経営資源の集合体であるととらえ、組織内のマネジャーは、これらを最大限活用することが重要であるとしています。
企業を「市場での位置」ではなく「資源のかたまり」として見る、という発想の転換です。
② リソースベースドビューとは
リソースベースドビュー(RBV)とは、経営資源に基づいた企業観ということができます。
その前提には、「企業ごとに有している経営資源は異質である」というものがあります。会社ごとに持っているものが違うからこそ、同じ市場にいても成績に差が出る。よって、その経営資源をベースにして競争優位の構築を考えるのです。
③ ポジショニングアプローチとの対比
| ポジショニングアプローチ | リソースベースドビュー | |
|---|---|---|
| 代表的な論者 | マイケル・E・ポーター | ジェイ・バーニー |
| どこを見るか |
具体例
同じ市場で同じ設備を使っている2つの工場が、なぜ違う成績を出すのかを考えてみましょう。
G工場とH工場 どちらも同じメーカーの同じ型番の加工機を10台ずつ持っています。原材料の仕入先も同じ、製品の売り先も同じ。ポジショニングの観点では、まったく同じ位置にいます。
ところが、
・G工場の不良率……0.8%
・H工場の不良率……3.2%
差はどこから来るのか。調べてみると、G工場では加工前の材料の温度を測り、季節ごとに機械の設定を微調整する手順が根づいていました。機械の説明書には書かれておらず、20年前の工場長が経験から始めて、後輩に口伝えで受け継がれてきたものでした。
同じ設備(物的資源)を持っていても、そこに蓄積された段取りの知恵(情報的資源)が違えば、成績は変わる。
これが「企業ごとに有している経営資源は異質である」ということであり、リソースベースドビューが見ている世界です。
試験のポイント
簡単にいうと
V・R・I・Oの4つの問いで、自社の資源が本当に強いかを判定する。しかも「どこまで満たすとどこまでの優位が得られるか」に段階があるのがポイント!
① VRIO分析とは
VRIO分析とは、次の4つの点から自社の経営資源を分析する手法です。
❶ 資源の価値(Value)
その資源・能力があれば、事業機会を逃さず、脅威にうまく対応できるのか。
❷ 資源の希少性(Rarity)
競争相手のうち何社が、その価値ある資源・能力をすでに保有しているのか。
❸ 資源の模倣困難性(Inimitability)
その資源を持っていない企業がその資源を獲得・開発しようとすると、コスト面で不利が生じるのか。
簡単にいうと
なぜ真似できないのか。理由は4つ。歴史・因果が分からない・社会的に複雑・特許。とくに「経路依存性」と「因果関係の不明性」は取り違えやすいから要注意!
模倣困難性の規定要因には、次の4つがあります。
❶ 独自の歴史的条件
当該経営資源がその企業独自の歴史的な過程の結果、形成されたものかどうかということです。
独自の歴史的条件に関連する用語として経路依存性があります。
経路依存性とは、当初起きたことによって、その後の発展経路を規定するということです。競争優位が形成されていくプロセスにおいて経路依存性が意味するのは、企業が現時点で競争優位を獲得できるのは、それ以前の段階で獲得したり開発したりした経営資源のおかげであるということです。
経路依存性が高い経営資源は、他の企業がその経営資源が形成されるに至る一連の過程をそのまま辿ることはもはや不可能であるため、模倣困難性が高くなります。
❷ 因果関係の不明性
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| 業界の構造と、その中での位置 |
| 自社が持つ経営資源 |
| 前提 | 同じ業界の企業は似た資源を持つ | 企業ごとに資源は異質 |
| 考える順番 | 位置を決めてから能力を作る | 資源を見定めてから位置を決める |
| 使う道具 | 5フォース、3つの基本戦略 | VRIO分析 |
④ とくに強いのは情報的資源
第1章で学んだ4つの経営資源のうち、企業が有するノウハウや専門的なスキルといった情報的経営資源は、汎用的な設備といった物的な経営資源と比較して模倣困難性が高く、持続的な競争優位の源泉になりやすいとされます。
設備は買えばその日から使えますが、ノウハウは買ってくることができず、積み上げるしかないからです。この点が、次に見る模倣困難性の話につながります。
資源・能力の潜在力を十分に引き出し、活用するように企業は組織されているのか。
② 4つの条件と、得られる優位の段階
ここがVRIO分析の要です。4つをすべて満たさなければ意味がない、というものではありません。満たした条件の数に応じて、得られる優位の性格が変わります。
| 満たす条件 | 得られるもの |
|---|---|
| Vだけ | 競争優位の源泉とはならない |
| V + R | 一時的な競争優位の源泉となる |
| V + R + I | 持続的な競争優位の源泉となる |
| V + R + I + O | 実際に持続的な競争優位を築ける |
VとRだけでは、他社がいずれ同じ資源を手に入れてくるので一時的です。Iが加わってはじめて、他社が追いつけなくなります。そしてOがなければ、せっかくの資源を活かせないまま終わります。
③ 「低い」とはどういうことか
用語の意味を正確に押さえておきましょう。
・「希少性が低い」とは、現時点で他社が保有している経営資源のこと
・「模倣困難性が低い」とは、現時点では他社が保有していないが、近い将来保有することが可能な経営資源のこと
希少性は「いま他社が持っているか」、模倣困難性は「これから他社が持てるか」を問うている、という違いです。
④ 組織(O)の重みを軽く見ない
Oは4番目に置かれるため軽く扱われがちですが、資源を活かす組織の方針や体制が整わないなかでは、その経営資源を有効に活用することが困難であり、持続的な競争優位の確立は困難です。
過去問では、
『独自に長い年月をかけて開発した価値ある経営資源を保有する企業は、その資源が業界内で希少でないとき、資源をいかす組織の方針や体制が整わない中でも持続的な競争優位を確立する』
という記述が誤りとして出題されています。希少でないなら優位は築けませんし、組織が整っていなければ資源を活かせません。二重に誤っているわけです。
⑤ 環境変化という落とし穴
もうひとつ重要な指摘があります。事前に予測することが困難な環境変化は、経営資源が持続的な競争優位の源泉であることを困難にします。
どれだけ模倣が難しい資源でも、世の中がその資源を必要としなくなれば価値(V)を失います。フィルムの製造技術がデジタル化で価値を失ったのが、その典型です。資源に立脚した優位も、けっして永久ではないということです。
具体例
地方の温泉旅館I館が持つ3つの資源を、VRIOにかけてみましょう。
❶ 敷地内の自家源泉
・V……温泉目当ての客を呼べる。あり
・R……周辺で自家源泉を持つのは3軒中1軒。あり
・I……新たに掘削するには数億円と許認可が必要。あり
・O……源泉の温度管理ができる番頭がいて、泉質を訴求する販促もできている。あり
→ 持続的な競争優位を実際に築けている
❷ 最新の予約管理システム
・V……業務が効率化される。あり
・R……同じシステムを周辺の旅館も導入済み。なし
→ 競争優位の源泉とはならない(Vだけ)
❸ 若女将のSNS発信力
・V……若い客層が増えた。あり
・R……周辺で同じことをしている旅館はまだない。あり
・I……他館も若手を担当に据えれば1〜2年で追いつける。なし
→ 一時的な競争優位の源泉(V+R)
同じ「強み」でも、VRIOにかけると優位の性格がまったく違うことが分かります。第1章のSWOT分析で挙げた強みを、このようにふるいにかけるのが実務的な使い方です。

VRIO分析と模倣困難性の規定要因
試験のポイント
当該経営資源と競争優位性との因果関係が不明であるということです。
たとえば次のような場合は、因果関係の不明性が高く、それだけ模倣困難性が高いということになります。
・組織文化のように、内部者にとっても空気のようにあまりに自然な経営資源である
・当該経営資源が組織内の複数の要素が複雑に絡み合って形成されている
・当該経営資源が組織内に広く分散した状態で存在する
興味深いのは、その会社の人自身にも、なぜ強いのかが説明できないという点です。本人が説明できないものを、他社が分析して真似するのは極めて難しいわけです。
❸ 社会的複雑性
当該経営資源が非物理的で社会的な要因によるものかどうかということです。社内コミュニケーションや文化、対外的評判などといったものが該当します。
❹ 特許
当該資源が特許等の知的財産権として確立されているかどうかということです。
ただし、知的財産権として法的な保護対象となっているものであっても、模倣されるリスクがなくなるわけではない点には留意する必要があります。特許は出願すると内容が公開されるため、それを手がかりに回避する技術を開発される可能性があるからです。この点は第4章の知的財産戦略でも扱います。
⑤ 取り違えに注意
過去問では、次の記述が不適切なものとして出題されています。
『経営資源やケイパビリティが競争優位を生じさせており、企業の内部者にとって競争優位の源泉との関係が理解できない場合、経路依存性による模倣困難が生じている』
「内部者にとって関係が理解できない」というのは因果関係の不明性に関する内容であり、経路依存性ではありません。経路依存性とセットになるのは「独自の歴史的条件」です。この対応をしっかり覚えておきましょう。
⑥ 模倣には2つのパターンがある
もうひとつ押さえておきたい論点です。経営資源の模倣には、
・まったく同じ経営資源を獲得する(直接的な複製)
・同じ機能を果たす別の経営資源で代替する
という2つのパターンがあります。「真似される」といったときに、そっくり同じものを作られる場合だけでなく、別の手段で同じ結果を出されてしまう場合も含む、ということです。
具体例
4つの規定要因が、実際にはどんな形で現れるかを見てみましょう。
独自の歴史的条件(経路依存性) ある酒蔵の蔵つき酵母は、100年以上にわたって蔵の建物に棲みついたものです。他社が同じ酵母を得るには、同じ場所で同じ100年を過ごすしかありません。過程をそのまま辿れないという意味で、模倣困難性の典型です。
因果関係の不明性 ある機械メーカーは、同業他社より新製品の開発が1年早いことで知られています。しかし社内の誰に聞いても、「なぜ早いのか」を説明できる人がいません。設計と製造の距離の近さ、会議の少なさ、昼食時の雑談から仕様が決まる慣習など、複数の要素が絡み合っており、当事者にも切り分けられないのです。
社会的複雑性 ある食品会社は、全国の農家との50年にわたる関係のおかげで、不作の年でも優先的に原料を確保できます。契約書に書かれているわけではなく、長年の付き合いによる信用がそうさせています。お金を積んでも、新参者には作れない関係です。
特許 ある化学メーカーの製法特許は、20年にわたり他社の参入を阻みました。ただし、その特許が公開されていたため、競合は特許を回避する別の製法の開発に着手し、権利期間の満了前に代替製法を完成させています。法的保護があっても模倣リスクは消えないという実例です。
試験のポイント
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