生産管理の基本機能
第1章 生産管理概論
生産管理では、生産活動をQ(品質)・C(コスト)・D(納期)の観点から管理するためにさまざまな指標や手法が用いられます。ここでは主な管理指標、生産の4M、3Sや5Sの概念、ECRSの改善原則などを学びます。
主な管理指標
簡単にいうと
簡単にいうと、生産がうまくいっているかどうかを測るための「ものさし」がいくつかあります。生産性・歩留り・直行率などの指標を使って、工場の効率を数値で把握します。
生産管理における主な管理指標には以下のものがあります。
生産性とは、「投入量に対する産出量の比率」(JIS Z 8141-1238)のことです。
通常、分子には付加価値額や生産量などを用い、分母には労働量(従業員数)や投入資本(有形固定資産)などを用います。
歩留りとは、投入された主原材料の量に対する、実際に良品として産出された品の量の比率です。
直行率とは、生産される製品のうち、生産過程で不良とみなされることなく、手直しを必要としないで生産された製品の比率のことです。歩留りでは手直し品も良品に含まれますが、直行率は手直し品を除くため、より厳密に生産過程の評価を行うことができます。
具体例
原材料100kgを投入して、良品が90kg(うち手直し品5kgを含む)得られた場合、歩留りは90%です。一方、手直しなしで生産された85kgだけを評価する直行率は85%となり、より厳しい指標になります。
試験のポイント
- ・生産性=産出量÷投入量の基本公式を押さえましょう
- ・労働生産性は「資本生産性×資本装備率」に分解できる点が出題されやすいです
- ・歩留りと直行率の違い(手直し品を含むか否か)を正確に区別しましょう
安全衛生管理に関する指標
簡単にいうと
簡単にいうと、工場の安全成績を数値で示すための3つの指標(度数率・年千人率・強度率)があります。どれも労働災害の頻度や重さを測る尺度です。
安全成績を示す代表的な尺度として、度数率・年千人率・強度率があります。
度数率は、労働時間100万時間あたりに発生する死傷者数で表し、災害発生の「頻度」を測る指標です。延べ実労働時間数は1か月または1年といった一定期間で集計します。
年千人率は、労働者1,000人あたり1年間に発生する死傷者数を示す指標です。
強度率は、労働時間1,000時間あたりの労働損失日数を表す指標です。
度数率や年千人率は災害発生の頻度を表し、強度率は災害の重さを表します。
具体例
年間2,000人が働く工場で延べ実労働時間400万時間のうち、4人が労働災害に遭い、合計200日の労働損失が生じた場合、度数率=4÷4,000,000×1,000,000=1.0、年千人率=4÷2,000×1,000=2.0、強度率=200÷4,000,000×1,000=0.05 となります。
試験のポイント
- ・度数率と年千人率は「頻度」、強度率は「重さ」を表す違いを理解しましょう
- ・各指標の分母・分子と掛ける定数(100万、1,000)を正確に覚えましょう
PQCDSME
簡単にいうと
簡単にいうと、PQCDSMEは生産管理の目標を7つの頭文字で表したものです。QCDに「生産性」「安全性」「モラル」「環境」を加えた包括的な管理基準です。
PQCDSMEは、生産管理の目標や評価の観点を7つ取り上げ、その頭文字を並べたものです。QCDは生産管理の基本的な管理基準ですが、PQCDSMEはそこにProductivity(生産性)・Safety(安全性)・Morale(モラル・意欲)・Environment/Ecology(環境)を追加した、より包括的な目標体系です。
| 頭文字 | 英語 | 意味 |
|---|---|---|
| P | Productivity | 生産性 |
| Q | Quality | 品質 |
| C | Cost | コスト・原価 |
| D | Delivery | 納期・数量 |
| S | Safety | 安全性 |
| M | Morale | モラル・意欲 |
| E | Environment / Ecology | 環境 |
具体例
製造現場で作業改善を行う際に、単に品質やコストだけでなく、作業者の安全(S)やモチベーション(M)、環境負荷(E)も含めた総合的な視点で評価することが求められます。
試験のポイント
- ・PQCDSMEの7つの要素をすべて覚えましょう
- ・QCDが基本であり、そこにP・S・M・Eが加わった構成です
生産の4Mと設計・調達・作業
簡単にいうと
簡単にいうと、ものづくりに必要な資源は「ヒト・モノ・機械・方法」の4つ(4M)です。そして生産活動は「設計→調達→作業」の3段階で構成されます。
生産管理の目的は、QCDを満たすために生産の4Mを合理的に運用することです。生産の4Mとは、Material(原材料・部品)、Machine(機械設備)、Man(作業者・ヒト)、Method(作業方法)の4つの構成要素です。これにMoney(金)を加えて5M、さらにInformation(情報)を加えて4M1Iと呼ぶこともあります。
生産活動(生産機能)は①設計、②調達、③作業の3つから構成されます。この全体の期間短縮が大きなテーマとなります。所定のQCDを達成するためには「生産管理」を駆使し、4Mを各生産活動において効率的に(ムダなく、ムラなく、ムリなく)利用することが必要です。
さらに、生産活動全般で考えると、「受注」「納品」の業務も生産に関わります。「受注」では、販売予測や売れ行き情報が生産に影響を与え、「納品」では倉庫や配送などの物流システムが関係します。
具体例
自動車メーカーでは、①新車のデザインと仕様を決める「設計」、②鉄板やタイヤなどの部品を仕入れる「調達」、③工場のラインで組み立てる「作業」の3段階を経て車が完成します。各段階で4M(作業者の技能、材料の品質、ロボット設備、組立手順)の最適化が図られます。
試験のポイント
- ・4M(Material, Machine, Man, Method)は生産管理の基本用語として必ず覚えましょう
- ・生産活動は「設計→調達→作業」の3段階で構成される点も頻出です
- ・2次試験では設計・調達・作業・納品の5つの機能間の連携が問われることがあります
3Sと5S
簡単にいうと
簡単にいうと、3Sは「標準化・単純化・専門化」で業務を効率化する考え方です。5Sは「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」で職場環境を整える活動です。どちらも生産の合理化に欠かせません。
3Sとは、「標準化・単純化・専門化」の総称であり、企業活動を効率的に行うための考え方です(JIS Z 8141-1105)。
1. 標準化(Standardization):設計、計画、業務、データベースなどで繰り返し共通に用いるための標準を設定し、標準に基づいて(統一して)管理活動を行うことです
2. 単純化(Simplification):設計、品種構成、構造、組織、手法、業務、システムなどの複雑さを減らすことです
3. 専門化(Specialization):生産工程、生産システム、工場または企業を対象に特定の機能に特化することです
5Sとは、「職場の管理の前提となる整理、整頓、清掃、清潔、及びしつけ(躾)」について、日本語ローマ字表記で頭文字にSが付くことから5Sと呼ばれています(JIS Z 8141-5603)。製造現場の5Sでは、その工場の生産性や信頼性がわかるといわれるほど5Sは重視されています。
1. 整理(捨てる):必要なものと不必要なものを区別し、不必要なものを捨てること
2. 整頓(一目でわかるようにする):必要なものを必要なときにすぐ使用できるように、決められた場所に準備しておくこと
3. 清掃(きれいにする):必要なものについた異物を除去し、きれいな状態にすること
4. 清潔(整理・整頓・清掃を維持する):整理・整頓・清掃が繰り返され、汚れのない状態を維持していること
5. しつけ(躾:守る):決めたことを必ず守り、習慣付けること
具体例
5Sを実施する手順としては、まず整理(不要品を分別)→整頓(必要品を定位置管理)→清掃(清掃で問題点を顕在化)→清潔(きれいな状態の維持)→しつけ(ルールの習慣化)の順で進めるのが一般的です。
試験のポイント
- ・3S(標準化・単純化・専門化)の内容を正確に覚えましょう
- ・5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の順番と各定義は頻出です
- ・5Sの実施手順として「整理→整頓→清掃→清潔→しつけ」の順が問われます
ECRSの原則
簡単にいうと
簡単にいうと、ECRSは改善を考えるときの4つの視点を優先順位で並べた原則です。「やめられないか→まとめられないか→順序を変えられないか→もっと簡単にできないか」の順で検討します。
ECRSの原則とは、工程・作業・動作を対象とした改善の指針であり、次の4つの観点から検討を行います。改善はE→C→R→Sの順番で実施するのが一般的であり、効果の大きい順に並んでいます。
| 記号 | 英語 | 日本語 | 検討内容 |
|---|---|---|---|
| E | Eliminate | 排除 | なくせないか |
| C | Combine | 結合 | 一緒にできないか |
| R | Rearrange | 交換 | 順序の変更はできないか |
| S | Simplify | 簡素化 | 単純化できないか |
具体例
製品検査工程の改善でECRSを適用する場合、まず「その検査自体をなくせないか(E)」→「他の工程と一緒にできないか(C)」→「検査の順番を変えられないか(R)」→「検査手順を簡素化できないか(S)」の順で検討します。
試験のポイント
- ・ECRSの4つの要素(Eliminate・Combine・Rearrange・Simplify)と日本語名を覚えましょう
- ・改善はE→C→R→Sの順番で検討するのが原則です
- ・試験では作業改善の事例にECRSのどれが該当するかを問う問題が出ます
5W1Hの原則
簡単にいうと
簡単にいうと、5W1Hは「何を・いつ・だれが・どこで・どのように、そしてなぜ」という6つの問いかけで改善点を見つける方法です。
5W1Hとは、What(何を)、When(いつ)、Who(だれが)、Where(どこで)、How(どのようにして)、Why(なぜ)の6つの疑問詞を使って改善の切り口を見つける原則です(JIS Z 8141-5305)。
Why以外の疑問詞とWhyを組み合わせて問いかけを行います。
1. What? Why?:そのモノでないとダメか、不要な仕事を排除できないか
2. When? Why?:いつその仕事を必要としているか、時間や順序の変更はできないか
3. Who? Why?:だれがその仕事を行うか、ほかの人ではいけないか
4. Where? Why?:どこでその作業を行うか、別のところではできないか
5. How? Why?:どのようにしてその仕事を行うか、方法の変更はできないか、簡略化できないか
実施手順としては、最初に(1)を問いかけ、次に残った仕事について(2)~(4)を問いかけ、最後に(5)で簡略化を進めます。
具体例
製品の検品作業について5W1Hを適用すると、「この検品は必要か(What)」→「このタイミングでなければダメか(When)」→「この人がやる必要があるか(Who)」→「この場所で行う必要があるか(Where)」→「もっと簡単なやり方はないか(How)」と順に問いかけて改善点を洗い出します。
試験のポイント
- ・5W1Hの各要素とWhyの組み合わせで問いかける点を理解しましょう
- ・実施順序(What→When→Who→Where→How)を覚えましょう
自主管理活動とQCサークル
簡単にいうと
簡単にいうと、現場の作業者が自ら改善に取り組む小グループ活動のことです。代表的なものがQCサークル活動です。
自主管理活動とは、職場における問題の改善に、小集団活動などにより従業員がその自主性を発揮して取り組む活動のことです。
小集団活動とは、作業者などの集団が作業方法や作業環境の条件などについて、主体的に取り組み、改善を図ろうとする活動です。その代表例がQCサークル活動です。
QCサークル活動とは、第一線の職場で働く人々が継続的に製品・サービス・仕事などの質の改善・管理を行うための小グループの活動です。QCサークルの特徴として、QCの活動を通じた合理的な考え方や科学的手法の習得、サークル員同士の話し合いによるチームワークの醸成、職場の問題解決による会社への貢献などが挙げられます。
具体例
ある製造工場では、生産ラインの作業者5~6名でQCサークルを結成し、月1回のミーティングで不良率低減をテーマに改善活動を行っています。データを集めてパレート図で分析し、主要な不良原因を特定して対策を実施したところ、不良率が30%低減しました。
試験のポイント
- ・QCサークルは第一線の職場で働く人々の自主的な小グループ活動です
- ・小集団活動の「自主性」がキーワードです
複数台もち作業
簡単にいうと
簡単にいうと、1人の作業者が複数の機械を担当する作業形態です。「多工程もち」と「多台もち」の2種類があります。
複数台もち作業とは、一人または二人以上の作業者が複数台の機械を受けもって行う作業です(JIS Z 8141-5401)。大きく多工程もち作業と多台もち作業に分けられます。
多工程もち作業は、工程の流れに沿って作業者が複数の工程を担当する形態です。作業時間のバラツキや工程間の不均衡を吸収でき、手待ちや仕掛品を減らせます。複数工程を担当できる作業者を多能工と呼び、1つの工程しか担当できない単能工と区別されます。多能工化により生産変動への柔軟性が高まります。
多台もち作業は、工程順序に関係なく、作業者が複数台の同種の機械を担当する形態です。受けもち台数を増やすと作業者の稼働率は上がりますが、機械干渉(作業者がある機械の操作をしている間に他の機械が停止・空転すること)により稼働率が低下する可能性があります。作業者と機械の双方の稼働率が最適になるように台数を決めることが重要です。
具体例
自動車部品工場では、旋盤・フライス盤・ボール盤の3工程を1人の多能工が順に担当する「多工程もち」を採用しています。一方、プレス工場では1人の作業者がプレス機3台を担当する「多台もち」を採用しています。
試験のポイント
- ・多工程もちと多台もちの違いを正確に区別しましょう
- ・多能工と単能工の定義、多能工化のメリット(柔軟性向上)を押さえましょう
- ・機械干渉は多台もち作業で発生する問題です
生産管理の基礎用語
簡単にいうと
簡単にいうと、生産管理で使われる基本的な専門用語をまとめて覚えましょう。リードタイム・稼働率・工数・スループットなどが代表的です。
生産管理の学習で押さえておくべき基礎用語を整理します。
リードタイム:発注してから納入されるまでの時間、または素材が準備されてから完成品になるまでの期間です(JIS Z 8141-1206)。調達時間ともいいます。
生産リードタイム:生産の着手時期から完了時期に至るまでの期間です(JIS Z 8141-3304)。
稼働率:就業時間に対する人の、または利用可能時間に対する機械の有効稼働時間の比率です(JIS Z 8141-1237)。
工数:仕事量の全体を表す尺度で、仕事を一人の作業者で遂行するのに要する時間です(JIS Z 8141-1227)。
スループット:単位時間に処理される仕事量を測る尺度です(JIS Z 8141-1208)。
課業(タスク):道具、装置またはその他の手段を用いて、特定の目的のために行う人間の活動または作業です。科学的管理法では、標準の作業速度に基づいて設定された1日の公正な仕事量を指します(JIS Z 8141-1225)。
負荷:人または機械・設備に課せられた仕事量です。時間・重量・工数などの単位で示されます(JIS Z 8141-1228)。
同期化:各工程の生産速度や稼働時間、材料の供給時刻をすべて一致させ、仕掛品の滞留や工程の遊休が生じないようにすることです。ジャストインタイムと同義語として用いられることがあります(JIS Z 8141-1212)。
具体例
ある製品の製造で、原材料の発注から工場に届くまでの期間(調達リードタイム)が5日、工場で加工開始から完成までの期間(生産リードタイム)が3日とすると、合計のリードタイムは8日になります。
試験のポイント
- ・リードタイムと生産リードタイムの違い(調達を含むか否か)を区別しましょう
- ・稼働率・工数・スループットの定義は正確に覚えましょう
- ・同期化とJITの関連性が問われることがあります
まとめ
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