第1章 店舗・商業集積
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プレミアムで見る「八百屋」と「コンビニ」。この2つは同じ物差しでは比べられません。前者は何を売るかで名前がつき、後者はどう売るかで名前がついているからです。この違いが業種と業態の違いです。そのうえで、いまどの業態が伸びていて、ネット通販がどこまで来ているのか。統計の数字は細かく覚えるより、順位と傾向でつかんでおくのが得策です。
簡単にいうと
何を売るかが業種、どう売るかが業態。この一言で覚えてしまって構いません。ただし業態には「だれに」「何を」「どのように」の3つの軸がある、というところまで押さえておきましょう。
小売店を分類する物差しは、1本ではありません。使い分けられている物差しが2本あり、それが 業種 と 業態 です。
分けている基準がまるで違うので、まずそこを押さえます。
| 区分 | 分類の基準 | 具体例 |
|---|---|---|
| 業種 | 棚に並んでいる 取扱い商品 を手がかりに分ける。要するに「何を売る店か」 | 鮮魚店、生花店、精肉店、靴店、眼鏡店 |
| 業態 | 「だれに」「何を」「どのように」売るのか。この3つの軸の組み合わせで営業形態をとらえて分ける | コンビニエンスストア、ホームセンター、ドラッグストア、ディスカウントストア |
ストアコンセプトを明確に打ち出した小売店を業態店といいます。
具体例
同じ「おにぎりを売る店」を、業種と業態の両方から見てみましょう。
| 店 | 業種で見ると | 業態で見ると |
|---|---|---|
| 町の米屋 | 米穀店 | (業態店ではない) |
| コンビニ | 各種食料品小売業 | コンビニエンスストア |
| 食品スーパー | 各種食料品小売業 | 食品スーパー |
| 駅ナカの専門店 | 各種食料品小売業 | 専門店 |
業種で見ると3つの店は同じ分類に入ってしまいますが、業態で見ると性格がはっきり分かれます。

業種と業態、そしてEC市場
試験のポイント
簡単にいうと
どの業態がいま強いのか。毎月の調査で追いかけているのが商業動態統計です。順位とその入れ替わりが問われるので、上位から順に口に出して覚えてしまうのが早道です。
商業動態統計調査 は、全国で商業を営む事業所と企業の販売額などを 毎月 調べる統計です。商業がいまどちらへ動いているかをつかみ、景気判断や消費動向の基礎資料 とすることをねらいとしています。
年に1度の調査と違い、毎月数字が出ます。そのぶん季節の波や景気の変わり目が早く表に出てくる、という特徴があります。
年間販売額の大きい順に並べると、次のようになります。
| 順位 | 業態 |
|---|
簡単にいうと
ネット通販はどこまで来ているのか。分野ごとに市場規模もEC化率もまったく違うので、「どの分野が大きいか」と「どの分野でECが進んでいるか」を分けて押さえるのがコツです。
ネット取引が広がったことで、経済や社会はどう変わったのか。それを分析するために 経済産業省 が実施しているのが 電子商取引実態調査 です。企業の側と消費者の側、両方の利用実態をとらえています。
BtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場では、①物販系、②サービス系、③デジタル系の順に市場規模が大きくなっています。
| 市場 | 2023年 |
|---|
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業態を決める3つの軸は、次のように考えます。
コンビニエンスストアを例にとると、「近隣の単身者や通勤者に(だれに)」「日常必要な最寄品を絞り込んで(何を)」「24時間営業の小型店で近さと速さを売りに(どのように)」提供する、という組み合わせになります。
同じ食品を売っていても、食品スーパーとコンビニが別の業態なのは、この3つの軸の組み合わせが違うからです。
かつては「何を売るか」で店を分類すれば足りました。魚は魚屋、肉は肉屋、薬は薬局。それぞれが別の店だったからです。
ところがドラッグストアが食品を売り、ホームセンターが家電を扱い、コンビニが公共料金の収納やチケット販売まで手がけるようになると、取扱い商品だけでは店の性格をとらえられなくなりました。
そこで「だれに・何を・どのように」という組み合わせで見る業態という考え方が必要になった、という流れです。
業種から業態へ、という変化は、小売業の競争が「品揃えの勝負」から「売り方の勝負」に移ったことを意味しています。
食品スーパー 近隣の主婦層に、幅広い生鮮食品を、まとめ買いしやすい価格で。おにぎりは数ある商品の1つにすぎません。
駅ナカの専門店 手土産を探す人に、こだわりの素材を使った商品を、見せ方にこだわって。1個500円でも成立します。
同じ商品を売っていても、だれに・どのように売るかが違えば別の業態です。そしてこの3つは、互いに直接の競争相手にならないこともあります。業態という見方は、誰と戦っているのかを見きわめるための道具でもあるわけです。
| ① | スーパー | 16.1兆円 |
| ② | コンビニエンスストア | 12.9兆円 |
| ③ | ドラッグストア | 8.9兆円 |
| ④ | 百貨店 | 6.3兆円 |
| ⑤ | 家電大型専門店 | 4.7兆円 |
| ⑥ | ホームセンター | 3.4兆円 |
2015年から2024年までの推移をたどると、いくつかの傾向が見えてきます。
スーパーが伸びてトップに立った
2019年頃まではコンビニエンスストアと拮抗していましたが、2020年に大きく伸びてコンビニを引き離しました。外出が減って家で食事をする機会が増えたことが背景にあります。
ドラッグストアが着実に伸びている
5.4兆円ほどだったものが8.9兆円へ。医薬品・化粧品だけでなく、食品を広く扱うようになったことが効いています。この期間でいちばん伸び率が高い業態です。
百貨店は減少から横ばい
6兆円台後半から一度大きく落ち込み、その後やや戻して6.3兆円。2020年前後の落ち込みが目立ちます。
ドラッグストアが百貨店を追い越した
推移のグラフでいちばん印象的なのがこの逆転です。かつて百貨店より小さかったドラッグストアが、いまでは1.4倍の規模になっています。
順位を覚えるときは、「スーパー・コンビニ・ドラッグ・百貨店・家電・ホームセンター」と6つ続けて口に出すと定着します。そしてドラッグストアが百貨店を抜いているという1点を押さえておけば、順位を入れ替えた選択肢は見破れます。
具体例
順位が入れ替わった背景を、業態の中身から考えてみましょう。
なぜドラッグストアが伸びたのか
かつてのドラッグストアは医薬品と化粧品の店でした。いまは食品・日用品を安く大量に扱い、食品スーパーの客層まで取り込んでいます。
医薬品・化粧品は粗利益率が高いので、利益の出る商品で稼ぎ、食品は安く売って客を呼ぶという組み立てが可能です。これは食品スーパーには真似しにくい構造です。業態の定義でいえば「どのように売るか」を変えて成長した例といえます。
なぜ百貨店が苦しいのか
百貨店は「高品質・高サービス・都心立地」という組み合わせでした。ところが衣料品は専門店やECに、食品はスーパーやデパ地下以外の選択肢に流れ、外商に頼る構造だけが残りました。
「だれに」の部分が富裕層とインバウンドに絞られていった結果、市場全体としては縮小した、という見方ができます。
なぜスーパーがコンビニを引き離したのか
コンビニは「近さと時間」を売りにしてきましたが、在宅時間が増えるとその価値は相対的に下がります。まとめ買いに向くスーパーのほうが選ばれるようになった、という構図です。
統計データの問題は、丸暗記しようとすると際限がありません。次の3点だけ押さえれば、たいていの選択肢は判断できます。
1. 順位(スーパー > コンビニ > ドラッグストア > 百貨店 > 家電 > ホームセンター)
2. 増えているか減っているか(ドラッグストアは増加、百貨店は減少)
3. 逆転が起きたところ(ドラッグストアが百貨店を追い越した)
数字そのものは1兆円単位のイメージで十分です。

商業動態統計と業態別の販売額
試験のポイント
| 増減率 |
|---|
| BtoC-EC | 物販系 | 14兆6,760億円 | 15兆2,194億円 | 3.70% |
| サービス系 | 7兆5,169億円 | 8兆2,256億円 | 9.43% | |
| デジタル系 | 2兆6,506億円 | 2兆6,776億円 | 1.02% | |
| 合計 | 24兆8,435億円 | 26兆1,225億円 | 5.15% | |
| CtoC-EC | 2兆4,817億円 | 2兆5,269億円 | 1.82% |
BtoC-EC市場とCtoC-EC(個人間EC)市場を比べると、BtoC-EC市場の方が大きいです。26兆円に対して2.5兆円なので、約10倍の開きがあります。
伸び率で見るとサービス系が9.43%と最も高くなっています。旅行や飲食の予約がネットに移った影響です。
「食品、飲料、酒類」の市場規模が最も大きい一方で、EC化率は「書籍、映像・音楽ソフト」が最も高いです。全体のEC化率は約10%です。
| 分類 | 市場規模 | EC化率 |
|---|---|---|
| 食品、飲料、酒類 | 3兆1,163億円 | 4.52% |
| 衣類・服飾雑貨等 | 2兆7,980億円 | 23.38% |
| 生活家電、AV機器、PC・周辺機器等 | 2兆7,443億円 | 43.03% |
| 生活雑貨、家具、インテリア | 2兆5,616億円 | 32.58% |
| 書籍、映像・音楽ソフト | 1兆8,708億円 | 56.45% |
| 化粧品、医薬品 | 1兆150億円 | 8.82% |
| 自動車、自動二輪、パーツ等 | 3,336億円 | 4.16% |
| その他 | 7,797億円 | 2.08% |
| 合計 | 15兆2,194億円 | 9.78% |
EC化率とは、すべての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合を指します。
ここが最大のひっかけどころです。市場規模が最大なのは食品(3.1兆円)ですが、そのEC化率はわずか4.52%。逆にEC化率が最高の書籍(56.45%)は、市場規模では5番目です。
食品はそもそもの市場が巨大なのでECの金額も大きくなりますが、鮮度や配送の問題でネットに移りにくい。書籍は市場自体は小さいものの、配送しやすくデジタル化もできるのでECに移りやすい。「大きい」と「進んでいる」は別の話だと押さえてください。
「旅行サービス」の市場規模が最も大きく、約4割を占めます。
| 分類 | 市場規模 |
|---|---|
| 旅行サービス | 3兆5,249億円 |
| 金融サービス | 9,890億円 |
| 飲食サービス | 9,692億円 |
| 理美容サービス | 7,302億円 |
| チケット販売 | 7,061億円 |
| フードデリバリーサービス | 5,442億円 |
| その他(医療、保険、住居関連、教育等) | 7,621億円 |
| 合計 | 8兆2,256億円 |
旅行サービスが突出しており、2位以下の3倍以上です。
「オンラインゲーム」の市場規模が最も大きいです。
| 分類 | 市場規模 |
|---|---|
| オンラインゲーム | 1兆2,553億円 |
| 電子出版(電子書籍・電子雑誌) | 6,722億円 |
| 有料動画配信 | 4,873億円 |
| 有料音楽配信 | 1,233億円 |
| その他 | 1,395億円 |
| 合計 | 2兆6,776億円 |
日本・米国・中国の3か国間における越境電子商取引の市場規模では、中国の消費者の購入金額が最も大きく、次いで米国が大きくなっています。
| 国 | 購入額 |
|---|---|
| 中国 | 5兆7,769億円 |
| 米国 | 2兆7,144億円 |
| 日本 | 4,410億円 |
日本の消費者が海外から買う金額は、3か国のなかで際立って小さいのが特徴です。
具体例
EC市場の数字を、身の回りの買い物に置き換えて確かめてみましょう。
EC化率43%の家電
テレビや洗濯機を買うとき、店で現物を見てからネットで注文した、という経験のある人は多いはずです。型番さえ決まれば、あとはどこで買っても同じもの。だから価格の安いネットに流れます。
EC化率56%の書籍・映像音楽ソフト
この分野は突出しています。紙の本もネットで買えるうえ、電子書籍や配信という完全にデジタルで完結する形態があるからです。半分以上がECというのは、他の分野とは次元が違います。
EC化率4.5%の食品
一方、今日の夕飯の食材をネットで頼む人はまだ少数派です。鮮度、送料、すぐ欲しいという事情があるからです。ただし市場そのものが巨大なので、4.5%でも3.1兆円という規模になります。
サービス系で旅行が4割
航空券もホテルもネットで予約するのが当たり前になりました。物として届ける必要がないため、ECとの相性が極めてよい分野です。
統計の問題では、次のような入れ替えが仕掛けられます。
| よくある誤りの記述 | どこが誤りか |
|---|---|
| 物販系分野でEC化率が最も高いのは「食品、飲料、酒類」である | 市場規模が最大なのが食品。EC化率が最高なのは書籍、映像・音楽ソフト |
| BtoC-EC市場よりCtoC-EC市場の方が大きい | BtoC-ECの方が約10倍大きい |
| サービス系分野で最も大きいのは飲食サービスである | 旅行サービスが約4割で最大 |
| デジタル系分野で最も大きいのは電子出版である | オンラインゲームが最大 |
「市場規模が最大」なのか「EC化率が最高」なのかを読み分けること。これが、この分野でいちばん大事な読解のポイントです。

電子商取引(EC)市場(1)

電子商取引(EC)市場(2)
試験のポイント
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