第5章 物の管理
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プレミアムで見る発注方式は、いつ・どれだけ発注するかを決定するルールです。代表的なものに定量発注方式と定期発注方式があり、それぞれに適した品目の特性があります。EOQ(経済的発注量)公式や発注点の計算は試験での頻出論点です。
簡単にいうと
在庫が決めた線まで減ったら、決めた量を頼む。頼む量はいつも同じで、間隔のほうが伸び縮みします。だから「定量」発注方式です。
在庫が減っていって、あらかじめ決めておいた線を下回った ── その瞬間に発注をかける。注文する量は毎回決まっていて変わりません。これが 定量発注方式 です。
線のことを 発注点、毎回注文する決まった量のことを 経済的発注量 といいます。JISでは「発注時期になるとあらかじめ定められた一定量を発注する在庫管理方式。一般には、発注点方式を指す」(JIS Z 8141-7312)と定義されています。
注目すべきは、動くのは間隔のほうで、量は動かない という点です。よく売れる時期は在庫の減りが速いので発注点に早く届き、間隔は詰まります。売れない時期は減りが遅いので、間隔が伸びます。量が「定」で、タイミングのほうが伸び縮みする。だから定量発注方式と呼ばれます。
発注点 はJISで「発注点方式において、発注を促す在庫水準」(JIS Z 8141-7314)と定義されています。では、その水準をどこに置けばよいのか。
この式の意味を追ってみましょう。
発注してから品物が届くまでには時間がかかります(調達期間)。その間も商品は売れ続け、在庫は減り続けます。ですから、届くまでに減る分をまかなえるだけの在庫を残した時点で発注をかけなければ、途中で棚が空いてしまいます。これが第1項です。
ただし「減る分」は予測でしかなく、思ったより売れることもあります。その振れ幅に備える上積みが、第2項の 安全在庫 です。
安全在庫 はJISで「需要変動又は補充期間の不確実性を吸収するために必要とされる在庫」(JIS Z 8141-7304)と定義されます。噛み砕けば、どれだけ売れるか読み切れない部分に備えて、余分に持っておく在庫 です。
定量発注方式では次の式で求めます。
安全係数 は、品切れをどこまで許すかで決まる係数です。絶対に切らしたくないと考えるほど係数は大きくなり、抱える安全在庫も増えます。欠品しない安心は、在庫を持つ費用と引き換え になっている、という関係がこの式に表れています。
安全在庫と紛らわしい言葉に 見越在庫 があります。JISでは「季節変動などあらかじめ予測できる需要変動に対して、供給能力不足への備えとして先行して保有する在庫」(JIS Z 8141-7305)とされています。
| 区分 | 何に備えるか |
|---|---|
| 安全在庫 | 事前には 読めない 需要の振れ・補充期間の不確実さ |
| 見越在庫 | 季節変動のように事前に 読める 需要の変化 |
分かれ目は 読めるか読めないか です。夏に向けて飲料を積んでおくのは見越在庫、猛暑になるかどうか分からない分を上積みするのが安全在庫。同じ「余分に持つ」でも、理由がまるで違います。
1回あたりいくつ注文するか。この量を決めるとき、正反対に動く2つの費用がぶつかります。
| 発注量を | 発注回数 | 発注費用 | 在庫量 | 在庫保管費用 |
|---|---|---|---|---|
| 増やす | 減る | 下がる | 増える | 上がる |
| 減らす | 増える | 上がる | 減る | 下がる |
まとめて頼めば発注の手間は減りますが、倉庫に積み上がります。小刻みに頼めば倉庫は空きますが、そのたびに手配の手間がかかります。どちらを立てても、もう一方が倒れる。
この2つを足した費用がいちばん小さくなる発注量が 経済的発注量(EOQ:Economic Order Quantity) です。発注費用には発注事務の人件費・受入検査費・運搬費などが、在庫保管費用には倉庫の人件費・賃料などが含まれます。
具体例
次の条件のときの定量発注方式における発注点を求めてみましょう。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 部品Aの1日の使用量 | 100個 |
| 部品Aの調達期間 | 7日 |
| 部品Aの安全在庫 | 500個 |

経済的発注量(EOQ)と在庫関連費用
試験のポイント
簡単にいうと
発注する日を先に決めておき、そのつど必要な量を計算して頼む。間隔が「定期」で、量のほうが毎回変わります。定量発注方式のちょうど裏返しです。
毎月1日に発注する、毎週月曜に発注する ── このように 日を先に決めておき、そのつど必要な量を計算して注文するのが 定期発注方式 です。
定量発注方式とはちょうど裏返しの関係になります。あちらは量が固定でタイミングが動きましたが、こちらは タイミングが固定で量のほうが毎回変わります。
在庫を見にいく間隔(在庫調査間隔)をあらかじめ決めておき、見にいくたびに「次まで何個要るか」を計算して発注する。これが基本の動き方です。
簡単にいうと
2本の柱ではカバーしきれない品目のための、割り切った方式です。箱が空いたら頼むダブルビン方式、基準まで戻す補充点方式、必要なときだけ頼む不定量不定期発注方式の3つを押さえましょう。
定量発注方式と定期発注方式が2本の柱ですが、現場ではもっと割り切った方式も使われます。手間をかけるほどの品目ではない とき、あるいは そもそも計算のしようがない ときです。
同じ材料を2つの箱(ビン)に分けて置いておき、片方を使い切った時点で発注する という方式です。発注したら、もう一方の箱から使い始めます。
計算は一切ありません。在庫数を数える必要すらなく、箱が空いたかどうかを見るだけ です。発注点管理を極限まで簡略化した形と言えます。
向くのは、安くて、消費量が読めていて、数の多い品目。ネジやボルトのようなC品目が典型です。こうした品目に需要予測をかけても、かけた手間に見合う効果は出ません。
定期的に在庫を確認し、発注点 s を下回っていたら、補充点 S まで戻す量を発注する
簡単にいうと
簡単にいうと、定量発注と定期発注にはそれぞれ一長一短があり、品目特性に応じて使い分けます。また、有効在庫や補充点方式など、在庫管理に欠かせない関連概念もここで整理します。
2つの方式は、何を固定して何を動かすか がちょうど逆になっています。そこからすべての違いが出てきます。
| 項目 | 定量発注方式 | 定期発注方式 |
|---|---|---|
| 固定するもの | 発注量 | 発注のタイミング |
| 動くもの |
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なおEOQは「需要は既知であり、一定であり、継続的である」という前提の上に立っています。現実の需要が大きく振れる品目では、この前提から崩れます。
1回あたりの発注量を とします。
① 1期あたりの在庫保管費用
在庫の動きをグラフにすると、のこぎりの歯のような形になります。品物が届いた瞬間に まで跳ね上がり、そこから使われて0へ向かって一直線に下りていく。この上下をならせば、在庫は平均して だけある ことになります。1個1期あたりの在庫保管費用を とすると、
ここで注意がひとつ。平均在庫量は1回の発注量の半分であって、安全在庫は足しません。定量発注方式では、まずEOQで量を決め、そのあと発注点を置くときに安全在庫を考えます。順序が分かれているのです。
② 1期あたりの発注費用
1回の発注費用を 、1期あたりの推定所要量を とすると、発注回数は 回なので、
③ 2本が交わる点がEOQ
グラフにすると、在庫保管費用は右上がりの直線、発注費用は右下がりの曲線になります。足し合わせた在庫関連費用はU字を描き、その底は2本の線が交わるところ にあたります。つまり EOQで発注しているとき、在庫保管費用と発注費用は等しくなる ということです。
長所 ── 単純だから回る
日々やることは「在庫が発注点に届いたか」を見るだけです。量はすでに決まっているので考える必要がありません。運用が単純で、担当者が変わっても同じように回ります。
単純だからこそ 仕組みに任せやすい のも利点です。在庫数が発注点を下回ったら自動で発注をかける形にできれば、事務の手間そのものを削れます。
短所 ── 単純ゆえに融通がきかない
裏返すと、需要の振れが大きい品目には向きません。いつも同じ量しか頼まないので、急に売れれば足りなくなり、急に止まれば積み上がります。
調達期間が長い品目 も苦手です。届くまでが長いほど、その間に起きる変化は大きくなり、決め打ちの量では受け止めきれなくなります。
つまりこの方式は、需要が安定していて、すぐ手に入る品目 でこそ力を発揮します。
在庫が1,200個まで減った時点で発注をかけます。そこから7日かけて品物が届くあいだに700個(7日×100個)が消費され、納入時点では安全在庫の500個が残っている、という計算です。需要が予想どおりなら、この500個には手をつけずに次のロットが届きます。
1回の発注費用が2,000円、1期あたりの推定所要量が10,000個、1個1期あたりの在庫保管費用が100円だとします。
この数字を確かめてみましょう。632個ずつ発注すると、発注回数は 10,000 ÷ 632 ≒ 15.8回なので発注費用は約31,600円。平均在庫量は 632 ÷ 2 = 316個なので在庫保管費用は31,600円。たしかに2つの費用がほぼ等しくなっています。
もし1回に2,000個ずつ発注したら、発注費用は10,000円に下がりますが、在庫保管費用は 1,000個 × 100円 = 100,000円に跳ね上がり、合計は110,000円。EOQで発注したときの約63,200円よりずっと高くつきます。
式が長くて覚えにくいので、考え方から入りましょう。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 発注残 | すでに注文したが、まだ届いていない量 |
| 手持在庫量 | いま手元にある量 |
安全在庫は次の式で求めます。
定量発注方式の式(ルートの中が調達期間だけ)と見比べると、ルートの中に発注間隔が足されている のが違いです。定期発注方式では次の発注日まで待つしかないので、備えるべき期間がそのぶん長くなるからです。
定期発注方式の発注量は、ひとことで言えば 「いま頼む分と、いま持っている分を合わせて、次の納品が届くまでを持たせる」 ということです。
では「次の納品が届くまで」とはどれだけか。次に発注する日までの期間(発注間隔) と、その発注から届くまでの期間(調達期間) を足したものです。これを 在庫調整期間 といいます。
あとは引き算です。在庫調整期間に必要な量から、すでに当てにできる分(発注残と手持在庫)を差し引き、読み切れない振れに備える安全在庫を足す。残った差が、いま頼むべき量になります。
長い式を丸暗記するより、必要な量 − 当てにできる量 + 備え という形でつかんでおくほうが、本番で崩れません。
在庫を数えるとき、棚にある現物だけを見ていると判断を誤ります。そこで使うのが 有効在庫 という考え方です。
JISでは「手持在庫に加えて発注残及び引当済みの量(引当量)を考慮した、実質的に利用可能な在庫量」(JIS Z 8141-7307)と定義されています。
引当量 は、いま倉庫にはあるけれど、すでに別の用途に使うと決まっている分です。数の上では在庫でも、こちらの都合では使えません。だから差し引きます。
逆に 発注残 は、まだ手元にはないけれど、近く届くと分かっている分です。だから足します。現物の数ではなく、当てにできる数を見る。これが有効在庫の発想です。
長所 ── 細かく効かせられる
発注のたびに需要を読み直すので、そのときどきの状況に合わせた量 を頼めます。無駄な在庫を抱えにくく、きめ細かい在庫管理ができます。
需要の振れが大きい品目にも対応できる のは、この読み直しがあるからです。定量発注方式が苦手としていたところを、そのままカバーします。
短所 ── 手間がかかる
そのかわり、発注のたびに需要予測と計算が必要です。運用が複雑で、人の手がかかります。
また、発注間隔や調達期間が長いと安全在庫が膨らみます。先ほどの式のルートの中が大きくなるからです。備える期間が長いほど、読み違えたときの痛手も大きくなるためです。
裏を返せば、発注間隔や調達期間を短くできれば在庫調整期間が縮み、その範囲の需要予測は当たりやすくなります。結果として安全在庫を削れるので、余計な在庫を持たずに済みます。
手間をかけてでも精度を取りにいく方式なので、金額の大きい重要品目 に向いています。
具体例
次の条件のときの、定期発注方式における4月1日の発注量を求めてみましょう。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 発注間隔 | 毎月1回月初(1日) |
| 調達期間 | 7日 |
| 予測消費量 | 1日1個 |
| 発注残 | なし |
| 安全在庫 | 5個 |
| 4月1日の在庫量 | 12個 |
ステップ1:在庫調整期間を出す
ここが最大の山場です。時間軸に印を打ってみましょう。
今回発注した分でしのがなければならないのは、4月1日から5月8日までの37日間です。これが在庫調整期間(発注間隔30日+調達期間7日)になります。
ステップ2:式に当てはめる
なぜ37日なのか
ここを「調達期間の7日分だけ」としてしまうのが典型的な間違いです。4月8日に品物が届いても、次に届くのは5月8日。その間の1か月は、いま頼んだ分と手元の在庫でしのぐしかありません。だから発注間隔も含めた37日分を手当てする必要があるのです。
図で確かめると、5月8日に次の納入があった時点で手元に安全在庫の5個が残っている、という設計になっていることが分かります。

定期発注方式
試験のポイント
見にいくタイミングは決まっている(定期発注方式に似た性格)一方、発注するかどうかは在庫水準で判断する(定量発注方式に似た性格)。両方の性格を併せ持つ折衷型 になります。
s を下回っていなければ発注しない、という点が特徴です。毎回必ず発注する定期発注方式と違い、無駄な小口発注を避けられます。
必要になったときに、必要な量だけ発注する 方式です。
量も時期もあらかじめ決めません。特注品や一品生産の材料のように、次にいつ何がどれだけ要るのかが事前に分からない 品目で使われます。
在庫を持たずに済む代わりに、そのつど調達期間を待つことになります。
| 方式 | 決まっているもの | 向く品目 |
|---|---|---|
| ダブルビン方式 | 量(箱1つ分)。時期は在庫次第 | 安価で消費が安定したC品目 |
| 補充点方式 | 確認の時期。量は補充点までの不足分 | 定期・定量の中間にあたる品目 |
| 不定量不定期発注方式 | どちらも決めない | 特注品、一品生産の材料 |
管理に手間をかけるかどうかは、その品目が全体に占める重み で決めます。ABC分析と合わせて考えると、使い分けの理屈がはっきりします。
具体例
ネジ工場では、M6ボルトをダブルビン方式で管理しています。2つの箱にそれぞれ500本ずつ入れておき、片方が空になったら空の箱を発注カードと一緒に購買担当に渡します。もう片方の箱の500本を使い切る前に補充が届く仕組みです。

その他の発注方式
試験のポイント
| 発注のタイミング(不定期) |
| 発注量(毎回計算) |
| 発注のきっかけ | 在庫が発注点に届いたとき | あらかじめ決めた日が来たとき |
| 長所 | 運用が単純。自動発注にしやすい | 状況に合わせて量を変えられる。振れに強い |
| 短所 | 需要の振れに弱い。調達期間が長いと苦しい | 計算の手間がかかる。安全在庫が膨らみやすい |
| 向く品目 | 需要が安定した品目(Cグループなど) | 需要の振れが大きい重要品目(Aグループなど) |
ABC分析と組み合わせると使い分けがはっきりします。金額の大きいA品目は手間をかけて定期発注、数が多くて安いC品目は仕組みに任せて定量発注、という配分が基本形です。
棚にある現物の数と、実際に当てにできる数は違います。その差をならした数が 有効在庫 です(JIS Z 8141-7307)。
在庫をある水準(補充点)まで戻す、という考え方の方式が3つあります。何をきっかけに戻すかが違います。
| 方式 | JIS番号 | きっかけ |
|---|---|---|
| 発注点補充点方式 | JIS Z 8141-7318 | 在庫が発注点に届いたら、補充点までの不足分を発注 |
| 定期補充点方式 | JIS Z 8141-7322 | 決めた周期が来たら、補充点までの不足分を発注 |
| 定期発注点補充点方式 | JIS Z 8141-7323 | 決めた周期で在庫を確認し、発注点以下なら補充点まで発注 |
3つめは、周期で見にいく点が定期発注方式に、発注点で判断する点が定量発注方式に似ています。両方のいいところを取った折衷型 と捉えておくと整理しやすくなります。
具体例
部品Aは月間消費量が安定(変動係数10%以下)しているため定量発注方式を採用。部品Bは季節変動が大きい(変動係数40%)ため定期発注方式で需要予測に基づき発注量を調整しています。

発注方式のメリット・デメリットと関連用語(1)

発注方式のメリット・デメリットと関連用語(2)
試験のポイント
プレミアムプラン
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