第2章 生産の管理
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プレミアムで見る見込生産を行う企業にとって、需要予測の精度はそのまま利益に跳ね返ります。多く見積もりすぎれば売れ残りの在庫コストがかかり、少なく見積もれば売る機会そのものを逃す機会損失が出ます。予測と実績の差をどれだけ小さくできるかが、見込生産の企業にとっての大きな課題です。この節では、移動平均法・指数平滑法・回帰分析・線形計画法という4つの道具を、具体的な数値例を最後まで計算する形で身につけていきます。
簡単にいうと
いちばん素朴な予測は「ここ数か月の平均」です。全部を同じ重さで扱うのが単純移動平均、新しいデータほど重く扱うのが加重移動平均。対象となる期間が1か月ずつ「移動」していくので移動平均といいます。
移動平均法は、過去の任意の個数の観測値を使って需要量の予測値を出す方法です。「直近4か月」のように対象とする個数を決めておき、月が進むごとに対象の窓を1つずつずらしていきます。この窓が移動していくところから移動平均と呼ばれます。
移動平均法には次の2つがあります。
| 種類 | 考え方 |
|---|---|
| 単純移動平均法 | 対象期間の実績データの単純平均を予測値とする |
| 加重移動平均法 | 実績データに異なる「重み」を与えた加重平均を予測値とする |
単純移動平均は計算が簡単で、数字のブレをならす力が強い反面、直近の変化への反応が鈍くなります。売れ行きが一定の商品には向きますが、はっきりした上昇傾向や下降傾向があるときは、予測が実勢から遅れていきます。
加重移動平均は、新しいデータほど大きな重みを与えることで、この遅れをやわらげます。重みの合計は1にそろえるのが一般的ですが、そろっていない場合は重みの合計で割ることで平均になります。
対象とする期間の長さも効いてきます。期間を長くとればなめらかになりますが反応は遅くなり、短くとれば敏感になりますが偶然のブレにも振り回されます。どちらが良いかは、その商品の需要がどれだけ安定しているかで決まります。
具体例
商品Xの月間売上高(単位:万円)が次のようになっているとします。
| 時期 | 売上高 |
|---|---|
| 今月 | 1,200 |
| 先月 | 1,000 |
| 2か月前 | 1,200 |
| 3か月前 | 1,400 |
| 4か月前 | 1,000 |
今月の予測売上高は、今月より前の4か月分を平均します。

需要予測の手法
試験のポイント
簡単にいうと
先月の予測がどれだけ外れたか。その外れ幅の何割かを、次の予測に足し込む。それだけで予測を更新していくのが指数平滑法です。過去のデータを全部持っていなくても計算できるのが強みです。
指数平滑法は、観測値が古くなるにつれて「重み」を指数的に減らしていく重みづけ移動平均法です。どの程度重みを減らしていくかは、平滑化定数によって決まります。
単純指数平滑法による次期の予測値は、次の式で表されます。
簡単にいうと
「宣伝費を増やせば売上はどれだけ伸びるか」。原因になる数字と結果になる数字の関係を、1本の直線の式にするのが回帰分析です。式が手に入れば、来期の宣伝費予算から売上高を見積もれるようになります。
回帰分析とは、目的変数 について、説明変数 を使った回帰方程式を求めることをいいます。
| 変数 |
|---|
簡単にいうと
設備の時間にも人手にも限りがあるなかで、どの製品を何個つくれば利益が最大になるか。この手の問題を数式にして解くのが線形計画法です。試験では選択肢を1つずつ検算する解き方が結局いちばん速く終わります。
線形計画法とは、目的関数と制約条件を数式で表し、その条件のもとで目的関数を最大化(または最小化)する解を求める方法です。制約条件を満たす実行可能解のなかから、目的関数が最大あるいは最小になる最適解を探します。目的関数も制約条件もすべて1次式で表されるものを、線形計画法(リニアプログラミング:LP)といいます。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 目的関数 | 最大化・最小化したいもの | 総利益 |
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来月の予測売上高は、窓が1か月分ずれて、今月の実績が入り4か月前が抜けます。
直近から順に 0.4/0.3/0.2/0.1 の重みを与えます。
今月の予測(重みは先月0.4・2か月前0.3・3か月前0.2・4か月前0.1)
来月の予測(重みは今月0.4・先月0.3・2か月前0.2・3か月前0.1)
同じデータでも、単純移動平均だと来月は1,200、加重移動平均だと1,160という違いが出ます。この例では直近の先月が1,000と低めだったため、直近を重く見る加重移動平均のほうが低い予測になりました。
式を展開すると、次の形にもなります。
ここで が平滑化定数で、 の範囲をとります。
前半の式のかっこの中、「当期の実績値 − 当期の予測値」は、予測がどれだけ外れたかというブレです。そのブレのうち の割合だけを次の予測に反映させる、というのが指数平滑法の考え方です。
後半の式で見ると、次期の予測値は「当期の実績値」と「当期の予測値」を と で混ぜ合わせたものだと分かります。
| ブレの反映 | 予測値の性格 | 向く場面 | |
|---|---|---|---|
| 大きい(1に近い) | 大きく反映する | 今期の実績値に近づく | 需要変動が大きいとき |
| 小さい(0に近い) | あまり反映しない | 今期の予測値に近いまま | 需要が安定しているとき |
を大きくするというのは、直近の重みを大きくとるということです。需要の動きが激しく、過去の平均よりも「いま起きていること」を信じたい場面で大きくします。逆に安定した商品で を大きくすると、偶然の売れ方に予測が振り回されてしまいます。
具体例
今月の売上予測が1,150万円、今月の売上実績が1,200万円だったとします。ブレは 1,200 − 1,150 = 50万円 です。
この差を、月末の時点で来月の予測に織り込みます。
平滑化定数 の場合
平滑化定数 の場合
が0.9のときは、50万円のブレのうち45万円を取り込むので、予測値は実績の1,200にぐっと近づいて1,195になります。0.1のときは5万円しか取り込まないので、もとの予測1,150からほとんど動かず1,155にとどまります。
つまり は「直近の実績をどれだけ信じるか」を決めるつまみです。季節や流行で需要が大きく動く商品なら大きめに、定番の日用品なら小さめに設定するのが定石になります。

指数平滑法
試験のポイント
| 中身 |
|---|
| 説明変数 | 原因系の変数 | 宣伝費、気温、店舗面積など |
| 目的変数 | 結果系の変数 | 売上高、来店客数など |
散布図にデータを打ち、その真ん中を通るような直線 を求めます。この直線が手に入れば、 に来期の計画値を入れるだけで の予測値が出せます。
| 種類 | 説明変数の数 | 例 |
|---|---|---|
| 単回帰分析 | 1つ | 宣伝費だけから売上高を予測する |
| 重回帰分析 | 複数 | 宣伝費・店舗面積・気温から売上高を予測する |
現実の売上は1つの要因だけで決まるわけではないので、実務では重回帰分析を使う場面が多くなります。ただし説明変数を増やせば必ず精度が上がるわけではなく、似たような意味の変数を入れると、かえって式が不安定になることが知られています。
具体例
ある販売会社の営業所別に、宣伝費 と売上高 (いずれも百万円)を並べます。
| 営業所 | 宣伝費 | 売上高 |
|---|---|---|
| A | 4.2 | 800 |
| B | 4.5 | 850 |
| C | 4.0 | 700 |
| D | 2.5 | 550 |
| E | 3.0 | 620 |
| F | 2.8 | 630 |
| G | 3.3 | 610 |
これを散布図に打ってあてはめると、回帰方程式は次のようになります。
傾きの134.59は、宣伝費を1百万円増やすと売上高が約135百万円増えるという関係を表します。切片の212.77は、宣伝費がゼロでも見込まれる売上高にあたります。
たとえば来期、ある営業所の宣伝費を3.5百万円と計画したなら、

回帰分析(1)

回帰分析(2)
試験のポイント
| 制約条件 | 守らなければならない上限・下限 | 設備1の工数 |
| 実行可能領域 | 制約条件をすべて満たす範囲 | グラフ上の網掛け部分 |
| 最適解 | 実行可能領域のなかで目的関数が最大になる点 | 領域の頂点のどれか |
変数が2つなら、グラフを描いて解く図解法が使えます。制約条件の不等式をグラフに描き、重なった部分が実行可能領域です。そこへ目的関数の直線を平行移動させ、領域から離れる直前の点が最適解になります。
線形計画法には次の3つの性質があります。
1. 解の領域(実行可能領域)は、必ず凸型の多角形になる
2. 求める解は、必ずその多角形の頂点のどれかである
3. 解(目的関数)の値は、領域内で必ずある方向に向かって大きくなる
2つ目の性質が大切です。領域の内側をくまなく調べる必要はなく、頂点だけを調べればよいということです。
具体例
ある工場では、2つの生産設備を使って製品A・Bをつくれます。製品1単位あたりに必要な工数と利益、各設備の使用可能工数は次のとおりです。総利益を最も高くする実行可能な生産量の組み合わせを探します。
| 設備1 | 設備2 | 製品1単位当たりの利益 | |
|---|---|---|---|
| 製品A | 2 | 4 | 4 |
| 製品B | 4 | 2 | 6 |
| 使用可能工数 | 20 | 28 | − |
候補は ア(10, 0)/イ(7, 0)/ウ(0, 5)/エ(6, 2) の4つです。
試験ではこれが最短です。まず各候補の総利益を出します。
| 候補 | 総利益 | 順位 |
|---|---|---|
| ア(10, 0) | 4×10 + 6×0 = 40 | 1位 |
| エ(6, 2) | 4×6 + 6×2 = 36 | 2位 |
| ウ(0, 5) | 4×0 + 6×5 = 30 | 3位 |
| イ(7, 0) | 4×7 + 6×0 = 28 | 4位 |
利益が最大のアから、工数に収まるか確かめます。
よって答えは エ(6, 2)、総利益36です。
製品A・Bの生産量を 、 とすると、個数はマイナスになりえないので 、

線形計画法(LP)(1)

線形計画法(LP)(2)
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。
およそ684百万円の売上高が見込める、という予測が立てられます。
なお、この関係はあくまで手元のデータの範囲で観察されたものです。宣伝費を10百万円に増やせば売上が1,558百万円になる、というところまで直線を伸ばして信じるのは危険だという点は、頭に置いておいてください。
この2本と両軸で囲まれた部分が実行可能領域です。グラフを描くと、ア(10, 0)はこの領域の外にあることがすぐ分かります。
次に、最大の総利益を とおくと目的関数は 。これを について整理すると次のようになります。
傾き の直線を平行移動させ、実行可能領域に接する位置が原点から最も遠いものが最適解です。候補イ・ウ・エのうち、最も遠いのはエ(6, 2)。やはり同じ答えになります。