第2章 商品仕入・販売(マーチャンダイジング)
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プレミアムで見る値段の付け方は、そのまま店の性格になります。毎日安くするのか、ときどき大きく下げるのか。この選択が、売場の運営コストから客の来店動機まで変えてしまいます。この節では3つの価格政策を比べたうえで、価格を変えるときの考え方と、守らなければならない表示のルールを押さえます。
簡単にいうと
価格を数段階に絞ってしまう。そうすれば客は選びやすく、店は仕入れやすくなります。プライスポイントとプライスゾーンという用語もここで出てきます。
プライスライン政策 は、売れる価格を先に数段階だけ決めてしまい、その値段に収まる商品だけを並べる というやり方です。
眼鏡店を思い浮かべてください。フレームの値段を「ベーシック」「スタンダード」「プレミアム」の3段だけに絞り、しかも 段と段の差を等しく取って おく。こうすると客は見比べやすくなり、決めるまでが早くなります。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| プライスライン | 設定した数段階の価格そのもの |
| プライスポイント | 設定したラインの中で最も販売数量が多い価格 |
| プライスゾーン(価格帯) | ライン全体の上限と下限の幅 |
3つの言葉は似ていますが、指しているものが違います。
具体例
紳士服店がスーツの価格をプライスライン政策で組み立てる場面を考えてみましょう。
ステップ1:価格ラインを決める
市場調査の結果、この商圏で売れる価格は 29,800円、49,800円、79,800円 の3段階と判断しました。これがプライスラインです。
ステップ2:その価格に合う商品を仕入れる
29,800円で売るには原価を17,000円以内に収める必要があります。その条件に合う生地と縫製の仕入先を探します。同様に49,800円、79,800円のラインもそろえます。
ステップ3:売れ方を見る
1か月後、販売数量は次のようになりました。
| プライスライン | 販売数量 |
|---|---|
| 29,800円 | 40着 |
| 49,800円 | 95着 |
| 79,800円 |

プライスライン・プライスポイント・プライスゾーン
試験のポイント
簡単にいうと
ときどき大きく下げて客を呼ぶか、毎日淡々と安くして他店に行かせないか。この2つは、値付けの思想がまったく違います。
ハイ・ロー政策は、一時的に通常価格の商品を値下げして販売する価格政策です。
なかでも、チラシの一面に大きく載せて思い切り値を下げる品は「ロス・リーダー(目玉商品)」と呼ばれます。その品単体の採算は、はじめから脇に置いて値を決めることもあります。
ねらいは2段構えです。
1. ふだん来ない客や、まだ来たことのない客に足を向けさせる
2. 来た客がついでに、あるいはその場の勢いで他の品も買い、結果としてレシート1枚の額が上がる
「ロス」という名のとおり、その商品自体では損をします。それでも店全体では儲かる、という前提に立った政策です。
簡単にいうと
値下げには必ず理由があります。仕入れを誤ったのか、値付けを誤ったのか、売り方を誤ったのか。そして「元は1万円」と書くときには、法律上のルールがあります。
特売とは、顧客動員を高めるために行われる価格政策で、一定期間において通常の価格より安い価格で販売することです。
「一定期間」という限定がついている点が、EDLPとの違いです。
値下げとは、通常の売価を減価することです。
値下げの主な原因は以下のとおりです。
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順序が肝心です。値段の段を先に決め、そこへ収まる商品を計画的に集めてくる。そうやって品ぞろえを組み上げます。
順番が逆になってはいけません。仕入れた商品に後から値段を付けるのではなく、価格を先に決めて、それに合う商品を探してくるのがプライスライン政策です。
| 得られるもの | 失うもの |
|---|---|
| 値段の選択肢が絞られるので、客は迷わず決められる | 仕入原価が上がっても、売価を動かしにくい |
| 持つべき在庫の形が決まり、仕入の判断が単純になる | |
| 値付け・記帳・在庫管理といった 事務が簡素になる |
デメリットが1つしかないのは、それだけ利点の大きい政策だからです。ただしこの1つは重く、原材料費が急に上がるような局面では利幅が一気に削られることになります。
価格が固定されているぶん、調整弁は品質か原価しかないわけです。
最も売れているのは49,800円。これがプライスポイントです。そして29,800円〜79,800円という幅がプライスゾーンになります。
この情報をどう使うか
プライスポイントが49,800円と分かれば、そこに品揃えを厚くするという判断ができます。色柄のバリエーションを増やし、在庫も多めに持つ。
逆に79,800円のラインは、数は出ないものの、49,800円を「お買い得に見せる」役割を果たしています。上のラインがあるからこそ、真ん中が選ばれやすくなるのです。
デメリットが効く局面
翌年、生地の仕入価格が2割上がったとします。原価17,000円が20,400円になり、29,800円で売ると利幅が大きく削られます。
しかし「29,800円のスーツ」という看板を掲げてきた以上、簡単に32,800円に上げるわけにはいきません。これが仕入原価が高騰しても売価を変更しにくいというデメリットです。
対応策としては、生地の等級を少し下げる、仕入先を変える、といった原価側の調整になります。
EDLP政策は「毎日が低価格販売」を政策に掲げ商品提供することです。
一時の値引きで引きつけるのではなく、運営の無駄をとことん削って作った安さを、毎日そのまま並べ続けるところに特徴があります。
いつ来ても全部が安い。だから他を見に行く理由がない。そう思わせて自店で買い切ってもらうのがねらいです。
基本的に特売は行わないため、チラシ配布や値札表示変更などのコストが抑制できるメリットもあります。
| ハイ・ロー政策 | EDLP政策 | |
|---|---|---|
| 価格の動き | 通常価格と特売価格を行き来する | 毎日一定の低価格 |
| 集客のしかた | 目玉商品(ロス・リーダー)で引きつける | 毎日安いことで他店に行かせない |
| チラシ | 頻繁に配布する | 基本的に不要 |
| 値札の変更 | 特売のたびに必要 | ほとんど不要 |
| 需要の変動 | 特売日に集中し、変動が大きい | 平準化されやすい |
| 発注・在庫 | 特売に合わせた大量仕入が必要 | 安定して計画しやすい |
| 前提となる強み | 販促の企画力 | 徹底したローコストオペレーション |
EDLPで見落とされやすいのが、需要の平準化という効果です。特売をやめれば、特売日に客と作業が集中することがなくなり、発注も人員配置も安定します。この運営面の効率化が、さらなる低価格の原資になる、という循環です。
逆にいえば、ローコストオペレーションが伴わないままEDLPを掲げると、ただ利益を削るだけで終わります。EDLPは値付けの話というより、経営全体の作り方の話だといえます。
具体例
同じ商圏で競合する2つのスーパーを比べてみましょう。
A店:ハイ・ロー政策
毎週水曜日に「特売日」を設定し、チラシを新聞折込で配布します。卵を1パック98円(原価割れ)で提供し、これがロス・リーダーです。
水曜日の来店客数は平常日の1.8倍。卵だけを買って帰る客もいますが、多くは肉や野菜も一緒に買っていくため、店全体では利益が出ます。
一方で、水曜日に客と作業が集中します。レジの応援を入れ、品出しの人員を増やし、前日から大量に仕入れておく必要があります。木曜から火曜までは客足が落ち、人手が余りぎみになります。チラシの制作・折込費用も毎週かかります。
B店:EDLP政策
特売は行いません。卵は年間を通して158円です。A店の特売日には負けますが、それ以外の日はA店(198円)より安い。
チラシは配りません。値札を貼り替える作業もほとんど発生しません。客数は日によって大きく変わらないので、発注量も人員配置も計画しやすく、無駄が出ません。
この運営効率の高さが、158円という価格を支えています。
優劣の問題ではなく、何を強みにしている店かの違いです。
| 向いている店 | |
|---|---|
| ハイ・ロー政策 | 商圏内に競合が多く、新規客の獲得が課題の店。販促の企画力がある店 |
| EDLP政策 | 徹底したローコストオペレーションを実現できる店。固定客の来店頻度を高めたい店 |
ただし、顧客から見た「安さの感じ方」には違いがあります。
ハイ・ロー政策の店では、客は「特売日を狙って買う」ようになります。つまり特売日以外は来ない客が育ってしまう危険があります。
EDLPの店では、「いつ行っても同じ値段」という安心感があるため、必要なときに立ち寄るという行動になります。店側としては、こちらのほうが来店頻度を読みやすくなります。

EDLP政策とハイ・ロー政策の価格推移比較
試験のポイント
| 具体例 |
|---|
| ① 仕入上の誤り | 過剰仕入など |
| ② 価格設定上の誤り | 売価が高すぎた、競合との価格差が大きすぎたなど |
| ③ 販売上の誤り | 商品の陳列場所や陳列方法の失敗による在庫過多など |
この3分類は、値下げを「結果」ではなく「症状」として見るという考え方です。
値下げをしなければならなくなったとき、「そもそもどこで間違えたのか」を振り返らなければ、同じことが繰り返されます。仕入れすぎたのか、値付けを間違えたのか、置き場所が悪かったのか。原因によって打つべき手はまったく違います。
特売が計画的な値引きであるのに対し、値下げはやむを得ず行う値引きだという性格の違いも押さえておきましょう。
事業者が自己の販売価格と当該販売価格よりも高い価格(比較対照価格)を併記して表示することを二重価格表示といいます。
二重価格表示の内容が適正な場合には、一般消費者の適正な商品選択と事業者間の価格競争の促進に資する面があります。
問題になるのは、並べて書いた価格が実態から離れているときです。実勢が5,000円程度の商品を4,000円で売るのに「市価10,000円の品を4,000円で」と掲げる ── こうして 安さを際立たせるために持ち出した比較対照価格が実態に合っていない 場合、客は実際より安いと思い込みます。これが 不当表示にあたる とされる理由です。
つまり、二重価格表示そのものが違法なのではありません。比較対照価格が実態と合っていないときに、初めて問題になります。ここは正確に押さえておきましょう。
景品表示法は、不当表示や不当景品から一般消費者の利益を保護するための法律です。
不当表示が社会問題として取り上げられるなかで、違反した側に金銭の負担を負わせ、不当に得た利益を取り上げる 仕組みが要るという声が強まりました。
これを受けて、不当表示などの違反が認められたときに課徴金の納付を命じる制度 が設けられています。
課徴金は「罰」というより、不当表示によって得た利益を吐き出させるという性格のものです。「バレたら表示を直せばいい」で済ませないための仕組みです。
具体例
値下げの3つの原因を、実際の場面で見分けてみましょう。
ケース1:夏物のシャツが100枚売れ残った
販売計画では60枚の見込みだったのに、150枚仕入れていました。→ 仕入上の誤り(過剰仕入)
打つ手は、次シーズンの仕入数量の見直しです。需要予測の精度を上げるか、追加発注できる体制をつくるかになります。
ケース2:隣の店より1,000円高いことに後から気づいた
売価を設定するとき、競合の価格を調べていませんでした。→ 価格設定上の誤り(競合との価格差が大きすぎた)
打つ手は、値付け前の競合調査を手順に組み込むことです。
ケース3:仕入も価格も妥当だったが、まったく売れなかった
調べてみると、売場の一番奥の目立たない棚に置かれていました。→ 販売上の誤り(陳列場所の失敗)
打つ手は、値下げの前にまず陳列場所を変えてみることです。エンドに移すだけで売れ出すかもしれません。ここで安易に値下げしてしまうと、利益を失ったうえに原因も分からないまま終わってしまいます。
| 表示 | 実態 | 判断 |
|---|---|---|
| 「通常価格5,000円 → 4,000円」 | 直前まで実際に5,000円で相当期間販売していた | 適正 |
| 「市価10,000円 → 4,000円」 | 実際の市価は5,000円程度 | 不当表示 |
| 「メーカー希望小売価格8,000円 → 4,000円」 | メーカーが実際にその価格を設定・公表している | 適正 |
| 「通常価格8,000円 → 4,000円」 | 8,000円で売ったのは一度もない | 不当表示 |
判断の分かれ目は、比較対照価格が実態を伴っているかです。
安く見せたいあまり、根拠のない高い価格を並べて書く。これが不当表示にあたり、課徴金の対象にもなります。
適正な二重価格表示であれば、消費者はどれだけ安くなったかを判断でき、店どうしの価格競争も促されます。制度自体は消費者のためにある、という位置づけを間違えないようにしましょう。

特売・値下げと二重価格表示の規制(1)

特売・値下げと二重価格表示の規制(2)
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。