第4章 販売流通情報システム
下の動画はこの節の解説ではありません。 解説動画の雰囲気を知っていただくための見本として、「JITシステム」の動画を再生します。
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プレミアムで見るレジを通した瞬間に、何が、いつ、いくらで、いくつ売れたかが記録される。POSシステムが集めているのは、それだけです。しかしそこに「誰が買ったか」を足すと、データの価値が一気に変わります。この節では、POSデータの限界を押さえたうえで、PI値・デシル分析・バスケット分析・LTVという分析の道具を、計算例を追いながら身につけていきます。
簡単にいうと
POSの強みは、単品の単位で、しかもリアルタイムに分かること。弱みは「売れた」という結果しか残らないことです。この2つをセットで押さえるところから始めましょう。
バーコードにスキャナを当てると、その瞬間に「どの商品が、どの店で、何時何分に、いくらで、何個」出ていったかが記録に残ります。この仕組みが POS(Point Of Sales)システム です。
ここには長所が2つあります。
ひとつは、記録のために余分な作業をしていないこと。会計というどのみち避けられない動作が、そのままデータ入力を兼ねています。帳簿に書き写す手間も、あとから数え直す手間もかかりません。
もうひとつは、集まるデータの細かさです。「飲料が何本」ではなく「A社の緑茶500ミリリットル入りが何本」というところまで分かる。この 単品レベルでの管理 ができることが、POSの最大の特徴とされます。しかも集計を待たずに リアルタイム で把握できます。
とはいえ、記録されるのは すでに起きたこと だけです。
「先週この商品が30個売れた」は分かります。ところが、なぜ30個だったのかは分かりません。雨が続いたからか、隣に置いた商品との相性がよかったのか、値札が見えにくかったのか。理由はどこにも残っていないのです。
POSデータはあくまで「売れた」という 結果のデータ であり、それ自体からは なぜ売れたのか、なぜ売れなかったのかを読み取れない。これがPOSの限界です。
では、この限界をどう埋めるか。活用のポイントが3つあります。
データが理由を教えてくれないなら、こちらから理由の候補を立てて、試して確かめればよい
具体例
ドラッグストアで「入浴剤の売上を伸ばしたい」と考えたとしましょう。3つのポイントを順に使ってみます。
① 仮説検証型アプローチ
POSデータを見ると、入浴剤は11月から売上が伸び始めています。しかし「なぜ」は分かりません。そこで仮説を立てます。
> 仮説:気温が下がると入浴時間が長くなり、入浴剤の需要が増えるのではないか
この仮説にもとづき、10月末に入浴剤売場を拡大し、レジ前にも小袋タイプを置いてみました。11月のPOSデータを見ると、前年同月比で140%。仮説は支持されました。
翌年はさらに「気温が15度を下回った週に拡大する」という仮説に進化させます。この繰り返しがPOS活用の本筋です。
② 自店以外のデータの活用
自店のPOSでは、入浴剤の売れ筋はA社の定番品でした。しかし全国POSデータランキングを見ると、1位はまだ自店で扱っていないB社の炭酸タイプ。
自店のデータだけ見ていたら、この商品の存在に気づけませんでした。取り扱っていない商品は、永遠に「売れていない」ままだからです。さっそく仕入れることにしました。
③ 顧客購買データの活用
ポイントカードのID-POSデータを見ると、入浴剤を買っている顧客の7割が40代以上の女性で、同時に化粧品や健康食品も購入していることが分かりました。
そこで、化粧品売場の近くに入浴剤のコーナーをつくり、「リラックス」というテーマでまとめて陳列したところ、さらに売上が伸びました。
POSだけでは「何が売れたか」しか分からない。ID-POSがあれば「誰が、何と一緒に買ったか」まで分かる。この差が、打てる施策の幅を決めています。

POSシステムと活用の3つのポイント(1)

POSシステムと活用の3つのポイント(2)
試験のポイント
簡単にいうと
客が多い店のほうが数が出るのは当たり前。その当たり前を取り除いて売れ方そのものを比べるのがPI値です。そして顧客の側を切り分けるのが、デシル分析やRFM分析になります。
駅前の大型店と住宅街の小型店で、同じ商品の販売個数を並べても意味がありません。大型店のほうが多く出るのは当たり前で、それは 商品の力ではなく客数の差 だからです。
この当たり前の差を取り除いてから比べるための物差しが PI値(Purchase Incidence) です。来店客1,000人あたりで何個、あるいは何円売れたか に換算します。
分母を1,000人にそろえておけば、店の大小に関係なく数字を横に並べられます。PI値には、金額でみる 金額PI と、個数でみる 数量PI の2つがあります。
簡単にいうと
何と何が一緒に買われているか。それを支持度・信頼度・リフト値という3つの数字で測ります。式は似ていますが、分母が何かで意味がまるで変わるので、ベン図を思い浮かべながら押さえていきましょう。
買い物カゴの中身に注目する分析です。ショッピングバスケット分析(マーケット・バスケット分析)、あるいは 併買分析 と呼ばれます。
見るのは、1人の顧客が何と何をいっしょにカゴへ入れたか。単位はレシート1枚です。どの棚に何が置かれていたかという位置の情報とあわせて調べます。
ねらいは、いっしょに買われやすい商品どうしを近くに並べたりセットで売ったりして、1人あたりの買上額を引き上げること にあります。
いっしょに買われる度合いを測る物差しが、支持度・信頼度・リフト値 の3つです。以下、同じ数字を使って順に計算していきます。
ある期間に買い物をした顧客が 2,000人
簡単にいうと
1回の買い物でいくら儲けるかではなく、その人が生涯でいくら落としてくれるかを考える。この視点の切り替えがCRMの出発点です。
CRM(Customer Relationship Management) は 顧客関係管理 と訳されます。
名前に「管理」が入っているせいで、顧客名簿や売上データを整えることだと受け取られがちです。しかし本来の重心はそこではありません。顧客とのあいだに関係を築いていくこと に力点を置いた経営手法であり、情報の管理はそのための手段にすぎません。
この違いは試験でも問われます。「顧客の情報や売上などを管理すること」だけを指す、という説明は誤りです。
CRMでは、顧客そのものの属性と、顧客と自社が触れ合った記録 の両方を蓄えます。扱う項目は、相手が法人か個人かによっても変わります。
接点の記録 … 購入履歴、セミナーや展示会に来てくれた記録、営業が訪問した記録、寄せられた苦情や意見。どれも「いつ、何があったか」の積み重ねです。
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「気温が下がると入浴剤が売れるのではないか」と見当をつけ、実際に売場を広げてみる。そのうえで結果をPOSで数える。伸びていれば見当は当たっていたことになり、次はもう一歩踏み込んだ見当を立てられます。
仮説を立てる → 施策を打つ → POSで検証する。この回転を くり返す ことが、売上を伸ばすうえで有効とされます。一度きりで終わらせない点が要点です。
POSが記録できるのは、その時点で自分の店の棚に並んでいた商品 に限られます。
仕入れていない商品は、当然ながら1個も売れていません。よその店では一番の売れ筋であっても、自店のデータ上は存在しないのと同じ扱いになります。売れなかったのではなく、売る機会そのものが無かったわけです。
自店のデータだけを眺めている限り、この空白には気づきようがありません。だからこそ、全国のPOSデータランキングや地域単位の集計データ といった外部のデータを取り寄せ、自分の品揃えと突き合わせる必要があります。
POSが答えられるのは「何が、いつ、いくつ」までです。ここに 「だれが買ったのか、だれが買わなかったのか」 を足せると、見える景色が変わります。
そのための道具が ポイントカード です。値引きやポイントという見返りを差し出す代わりに、顧客の情報を登録してもらう。こうして得た顧客情報をPOSデータに結びつけたものが 顧客ID付きPOSデータ で、顧客を識別する番号(顧客ID)を伴うことから ID-POSデータ とも呼ばれます。
| POSデータ | ID-POSデータ | |
|---|---|---|
| 分かること | 何が、いつ、いくつ売れたか | +だれが買ったか |
| できる分析 | 売れ筋と死に筋、時間帯別の動き | +顧客セグメント分析、併買分析、LTV |
同じ1枚のレシートでも、持ち主が分かった瞬間に「1回の取引」から「ある人の買い物の履歴」へ変わります。この節でこれから扱う分析は、どれもこの変化の上に成り立っています。
分母の 販売期間来店客数は、レシート枚数で代用できます。レシート1枚が1組の買い物客にあたるので、実務ではこちらのほうが数えやすいからです。
PI値はPOSデータ分析でとくに重要な指標のひとつで、使い道は大きく2方向あります。
そこから、売れ筋の見きわめ、棚割りの見直し、次に何を仕入れるかの判断へつなげます。
ID-POSデータが手に入ると、顧客を一人ひとり区別できるようになります。すると次に浮かぶのは、全員へ同じ販促をかけるのは無駄ではないか という問いです。
年に一度しか来ない人と、毎週来て大きく使ってくれる人に、同じダイレクトメールを送る。かかる費用は同じでも、返ってくるものはまるで違います。そこで顧客をいくつかの層に切り分け、よく買ってくれる層ほど手厚く という配分をします。
切り分け方には、次の3つがよく使われます。
購買金額の多い順に顧客を並べ、上から10等分 します。できた10個の層をデシル1からデシル10と呼び、上位のデシルに入る顧客を優良とみなします。
デシル(decile)はラテン語の「10分の1」から来た言葉で、10等分する ところがこの手法の中身そのものです。優良顧客を「デシル1〜3の顧客」というように指定します。
一定期間にいくら買ったかで線を引き、決めた金額以上の顧客を優良とみなします。「月に3万円以上使う顧客」といった指定の仕方になります。
デシル分析が 上位何%かという相対評価 であるのに対し、閾値分析は いくら以上かという絶対評価 です。ここが両者の分かれ目になります。
金額だけでなく、いつ・何回・いくら の3つの軸で得点をつけ、ランク分けします。
| 記号 | 英語 | 見るもの |
|---|---|---|
| R | Recency | 直近購買日(最後に買ったのはいつか) |
| F | Frequency | 購買頻度(どれくらいの回数買っているか) |
| M | Monetary | 一定期間の購買金額(いくら使っているか) |
優良顧客は「直近に来ていて、よく来ていて、たくさん使う顧客」ということになります。
軸が3本あるぶん、金額だけでは見えないものが見えます。使った金額が同じ2人でも、先週来た人と、1年前を最後に姿を見ない人とでは、打つべき手がまったく違う。この違いを拾えるのがRFM分析の強みです。
具体例
同じ商品Xを扱っている2つの店の、ある期間の数字です。
| 期間来店客数(人) | 商品Xの販売個数(個) | 数量PI(個/千人) | |
|---|---|---|---|
| みどり台店 | 8,000 | 72 | 72 ÷ 8,000 × 1,000 = 9.0 |
| 本町店 | 3,000 | 45 | 45 ÷ 3,000 × 1,000 = 15.0 |
販売個数だけを見れば、みどり台店の72個が本町店の45個を上回っています。
ところがPI値に直すと逆転します。本町店の15.0に対し、みどり台店は9.0。本町店のほうが1.6倍以上、この商品を売る力がある という読み方になります。みどり台店の個数の多さは、客数が2倍以上あることでほぼ説明がついてしまうわけです。
販売個数だけを見ていたら
「みどり台店のほうが売れている。本町店の棚は減らそう」という判断をしてしまいます。
実際は逆で、学ぶべきは本町店のほうです。陳列や声かけに何か理由があるかもしれませんし、棚を増やせばさらに伸びる余地があるかもしれません。
規模の違う店を並べるときは、必ず客数で割る。 PI値が教えているのはこの一点です。
| 手法 | 分け方 | 向く場面 |
|---|---|---|
| デシル分析 | 購買金額の多い順に10等分 | 上位層が売上の何割を占めるかを見たいとき |
| 閾値分析 | 決めた金額以上か未満か | 「月3万円以上の顧客」と基準を切って施策を打つとき |
| RFM分析 | 直近購買日・購買頻度・購買金額の3軸 | 離れかけている上得意を見つけたいとき |
実務で使いやすいのはRFM分析です。理由は、MとFは高いのにRだけ落ちている顧客 を拾えるから。かつての上得意が、最近だけ来ていない。ここにクーポン付きの案内を送れば、新しい顧客を1人獲得するよりずっと安く売上が戻ります。
デシル分析と閾値分析は金額しか見ていないので、この危険信号に気づけません。

PI値と顧客セグメント分析(1)

PI値と顧客セグメント分析(2)
試験のポイント
| 人数 | |
|---|---|
| 商品Aを買った人 | 400人 |
| 商品Bを買った人 | 500人 |
| 商品A・Bの両方を買った人 | 200人 |
重なりを整理すると、
支持度 は、全顧客のうち、その商品(またはその組み合わせ)を買った人がどれだけいたか の割合です。
支持度が高いほど、その商品や組み合わせが 店全体の売上に与える影響は大きくなります。店内には膨大な数の商品があるので、支持度の高い組み合わせから手をつけるほうが、打ち手の効きは大きくなります。
支持度の分母は、つねに全顧客人数。ここを押さえてください。
信頼度 は、ある商品を買った人のうち、もう一方の商品も買った人の割合 です。
商品Aを買った人の半分が、商品Bも買っている、と読みます。
信頼度の分母は「商品Aを買った人数」。支持度との違いは、まさにこの分母にあります。
信頼度には落とし穴があります。
商品Bがもともと店の看板商品で、来店客のほとんどが買っていく としましょう。このとき、商品Aを買った人が全員Bも買っていれば信頼度は100%になります。しかしそれは Bが単によく売れているだけ で、AとBのあいだに特別な結びつきがあるとは言えません。
逆に、Bはあまり売れていないのに、Aを買った人に限ってはBもよく買っている なら、両者の関係は強いと考えられます。
この偏りをならして2商品の結びつきを測るために、リフト値 を使います。
リフト値 は、ある商品を買った人がもう一方も買う確率が、店全体の平均と比べて何倍か を表します。
商品Aを買った人は、平均的な来店客に比べて 2倍 の確率で商品Bも買っている、ということです。
※ リフト値は向きを入れ替えても同じ値 になります(A→BとB→Aは等しい)。
リフト値が大きいほど同時に買われやすいということなので、クロスマーチャンダイジングやセット販売 といった、いっしょに買ってもらう仕掛けを打つ価値が高まります。
目安として、1.0を超えれば意味があり、2.0を超えれば結びつきが強い とされます。
| 指標 | 分子 | 分母 | 見ているもの |
|---|---|---|---|
| 支持度 | 同時購買人数(または単品の購買人数) | 全顧客人数 | 全体への影響の大きさ |
| 信頼度 | 同時購買人数 | 商品Aの購買人数 | Aを買った人がBも買う割合 |
| リフト値 | 信頼度(A→B) | 支持度(B) | 平均の何倍買われやすいか |
3つを取り違えないコツは、分母が何かを見ること。これに尽きます。
具体例
スーパーマーケットで、パンと牛乳の併買を分析してみましょう。ある期間の顧客は1,000人でした。
| 人数 | |
|---|---|
| パンの購入者 | 400人 |
| 牛乳の購入者 | 600人 |
| 両方の購入者 | 300人 |
支持度
信頼度
パンを買った人の75%が牛乳も買っています。一見すると強い関係に見えます。
リフト値
信頼度は75%と高いのに、リフト値は1.25にとどまりました。
なぜでしょうか。牛乳はそもそも全顧客の60%が買っているからです。パンを買おうが買うまいが、多くの人が牛乳を買う。だからパンとの特別な結びつきは、それほど強くないのです。
同じ店で、ワインとチーズを分析しました。
| 人数 | |
|---|---|
| ワインの購入者 | 100人 |
| チーズの購入者 | 50人 |
| 両方の購入者 | 25人 |
| 組み合わせ | 支持度 | 信頼度 | リフト値 | 判断 |
|---|---|---|---|---|
| パン→牛乳 | 30% | 75% | 1.25 | 影響は大きいが結びつきは弱い |
| ワイン→チーズ | 2.5% | 25% | 5.0 | 影響は小さいが結びつきは非常に強い |
ワイン売場の隣にチーズを置くクロスマーチャンダイジングは、明らかに効果が見込めます。
一方、パンと牛乳を並べても、もともと両方買う人が多いので、追加の効果は限定的です。
信頼度だけを見て判断してはいけない。これが、リフト値という指標が用意されている理由です。

バスケット分析(併買分析)の3指標
試験のポイント
| 呼び方 | 中身 | 覚え方 |
|---|---|---|
| デモグラフィックデータ | 年齢、性別 | デモ=人口統計 |
| ジオグラフィックデータ | 地域 | ジオ=地理 |
| サイコグラフィックデータ | 性格、好み | サイコ=心理 |
この3つの呼び分けは、そのまま出題されることがあります。
集めた情報をもとに顧客を セグメンテーション し、層ごとに響きそうな商品・サービス・案内を届けます。
たとえば、購入履歴を RFM分析 にかけて優良顧客を抜き出し、催事の招待状を送る。あるいは、しばらく来ていない顧客を抜き出し、クーポンを付けた案内で呼び戻す。
こうすると 必要な人に、必要なときに届けられる ようになります。全員へ配るのをやめられるので広告宣伝費は抑えられ、一方で1人あたりの購買額は上がり、上得意は離れにくくなる。短期の売上ではなく、長く続く関係 を組み立てるための仕組みです。
LTV は 顧客生涯価値(あるいは生涯顧客価値)と訳されます。
1回の取引でいくら儲けたかではなく、同じ顧客が買い続けてくれることで、生涯を通じていくら残してくれるか をとらえる考え方です。そして LTVはCRMの中心に置かれる概念 でもあります。顧客と長い関係を築けば、利便性や満足度、信頼が高まり、結果としてLTVが伸びる ── CRMが目指しているのはこの連鎖です。
計算は次の式によります。
式を眺めれば、打てる手は4つしかないと分かります。
| 方法 | 式のどこに効くか |
|---|---|
| 平均購入単価を増やす | 平均購買単価(掛け算) |
| 購買頻度を増やす | 購買頻度(掛け算) |
| 長く顧客でい続けてもらう | 継続購買期間(掛け算) |
| 獲得・維持にかかる費用を減らす | 獲得・維持コスト(引き算) |
前の3つは掛け算の項、最後のひとつは引き算の項です。掛け算の項を伸ばすほうが効きは大きい という見当が、ここから立ちます。
売上を増やす道は2本あります。顧客の数を増やす か、顧客1人あたりの売上を増やす かです。
前者には新規獲得が欠かせず、知ってもらうための広告宣伝費がかかります。後者は、すでに付き合いのある相手にもう一度買ってもらったり、関連する商品をすすめたりするので、費用も手間も軽くて済みます。CRMで一人ひとりの好みがつかめていれば、後者はさらにやりやすくなります。
ただし、どちらを選ぶかは 市場がどの段階にあるか で変わります。
成長期はシェア、成熟期はLTV。CRMが広く使われるようになった背景には、多くの市場が後者に入ったという事情があります。
具体例
美容室のLTVを計算してみましょう。
顧客Aさんの場合
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 平均購買単価 | 8,000円 |
| 粗利率 | 60% |
| 購買頻度 | 年6回 |
| 継続購買期間 | 5年 |
| 顧客の獲得・維持コスト | 20,000円 |
Aさんは、この美容室に生涯で124,000円の利益をもたらす計算になります。
1回の来店の粗利は4,800円にすぎません。しかし5年間通ってくれるなら、その25倍以上の価値があるわけです。
| 施策 | 変化 | LTV |
|---|---|---|
| 現状 | − | 124,000円 |
| 単価を上げる(トリートメント追加で10,000円に) | 単価 8,000→10,000 | 160,000円 |
| 頻度を上げる(次回予約を促し年8回に) | 頻度 6→8 | 172,000円 |
| 継続期間を延ばす(7年に) | 期間 5→7 | 181,600円 |
| 獲得コストを下げる(紹介制度で10,000円に) | コスト 20,000→10,000 |
この例では、継続購買期間を延ばす効果が最も大きいという結果になりました。
式を見れば当然で、単価・粗利率・頻度・期間は掛け算で効くのに対し、獲得・維持コストは引き算でしか効かないからです。
掛け算の項を伸ばすほうが、引き算の項を削るより効果が大きい。これがLTVの式から読み取れる、いちばん実務的な示唆です。
新しいAさんを1人獲得するには、広告費で20,000円かかります。一方、既存のAさんに次回予約を促してもらうコストは、声かけとDM代でせいぜい数百円です。
「顧客あたりの売上を増やす」ほうがコストや労力の点で有利だというのは、こういうことです。
ただし、これは市場が成熟している場合の話です。その街に美容室が足りていない成長期なら、新規顧客をどんどん取り込んでシェアを押さえるほうが正解になります。市場の段階によって、取るべき戦略は変わります。

CRMと顧客生涯価値(LTV)(1)

CRMと顧客生涯価値(LTV)(2)
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。
信頼度は25%とパン・牛乳より低いのに、リフト値は5.0。2.0を大きく超えており、関係性は非常に高いといえます。
チーズを買う人は全体の5%しかいないのに、ワインを買った人に限れば25%が買っている。つまりワインを買うと、チーズを買う確率が5倍に跳ね上がるわけです。