第2章 商品仕入・販売(マーチャンダイジング)
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プレミアムで見る同じ商品を並べていても、どうやって仕入れたかで店の体力はまったく変わります。まとめて買えば安いが在庫を抱える。売れた分だけ計上すれば在庫リスクはないが利幅は薄い。この節では、仕入の方法を4つの軸で整理したうえで、商品の所有権がいつ移るのかという角度からも押さえていきます。
簡単にいうと
量で分けると大量仕入と当用仕入。相手先の数で分けると集中仕入と分散仕入。誰が決めるかで本部集中仕入と店舗分散仕入。そして組むかどうかで共同仕入と単独仕入です。
仕入のやり方は、何を基準に分けるか で4通りの切り口があります。1回にどれだけ買うか、どこから買うか、だれが決めるか、だれと組んで買うか。順に見ていきます。
大量仕入 は、1回の仕入で同じ商品をまとめて大量に買う方法です。対する 当用仕入 は、売れ行きを見ながら、必要なだけを小刻みに買っていく方法です。
| 大量仕入で得られるもの | 大量仕入で背負うもの |
|---|---|
| まとめ買いによる 数量割引 が効く | 在庫が過剰になり、商品回転率と商品投下資本の効率が落ちる |
| 値上がりを見越して買えば、価格変動の差益 が取れる | 寝かせた在庫のぶん、金利と保管費用がかさむ |
| 仕入の回数が減るので、期間あたりの 仕入費用を抑えられる | 値上がりの読みを外せば、そのまま損失になる |
| 品切れによる 機会ロスを防げる | 需要やニーズが動いたときに、身動きが取りにくい |
当用仕入の長所短所は、この表をそのまま裏返したもの と考えて差し支えありません。
ただし当用仕入には固有の工夫があります。特定の仕入先と細く長く取引を続けることで、累積数量割引 を受けられる形に持ち込むのが望ましいとされます。1回あたりは少なくても、積み上げれば量になるからです。
ここで集中・分散させるのは 仕入先企業の数 です。絞り込むのが 集中仕入、散らすのが 分散仕入 になります。
| 集中仕入で得られるもの | 集中仕入で背負うもの |
|---|---|
| 1社あたりの取引量が増えるので、大量仕入の利点 がそのまま効く | 選べる商品の幅が、その仕入先の品揃えに縛られる |
| 大口の取引先として扱われ、売れ筋を優先的に回してもらえる | よその仕入先にしかない商品を、売る機会ごと逃す |
| 商品情報や与信条件といった リテールサポート を受けやすい | その仕入先が傾けば、供給が止まる |
| 取引が読めるので計画的に動け、仕入費用を削れる |
分散仕入はこの裏返し です。
こちらで集中・分散させるのは 仕入の権限 です。
本部集中仕入 は、チェーン店が各店舗に散らばった仕入を本部で一手に引き受ける仕組みです。本部に仕入部門を置き、権限と責任をそこへ集めます。仕入は集権化し、販売は分散したまま という形になります。
店舗分散仕入 は逆に、仕入権を各店舗へ渡して 販売と仕入を同じ手に握らせる 仕組みです。その店の客を誰よりも分かっているのは店の販売部門だ、という考え方に立ちます。
| 本部集中仕入で得られるもの | 本部集中仕入で背負うもの |
|---|---|
| 仕入だけを専門に担うので、市場への適合が上がり、ノウハウも溜まる。売れ筋を押さえて回転率を高め、業務を効率化して費用も削れる | 地域ごとの事情を飛ばした一律の仕入になりやすく、きめ細かいマーチャンダイジングがやりにくくなる |
| 量をまとめられるので、大量仕入の利点 が効く | 仕入と販売が別々の手に分かれるため、両者の連携が薄くなりがち |
店舗分散仕入はこの裏返し です。
名前がよく似ていますが、集中させている対象がまったく違います。
| 何を集中させるか | |
|---|---|
| 集中仕入 | 仕入先の 数 |
| 本部集中仕入 | 仕入の 権限 |
ここは問われます。
共同仕入 は、規模の小さい小売業者どうしが手を組んで仕入を行い、大量仕入の利点を分け合おう とするものです。買う量が増えるだけでなく、複数の仕入担当者が目を寄せ合うことで、商品を見る目が働きやすいという利点もあります。
一方で、組むがゆえの難しさもあります。参加する店ごとに力を入れたい商品や必需品が違う こと、そして 担当者が集まって動くため足並みがそろいにくい ことです。
単独仕入 は、文字どおり小売業者が単独で仕入れることを指します。
具体例
3つのタイプの小売業が、それぞれどう仕入れているかを見てみましょう。
全国チェーンのドラッグストア(500店舗)
本部集中仕入+集中仕入+大量仕入の組み合わせです。本部が主要メーカーと直接交渉し、500店分をまとめて発注します。数量割引は最大限効き、リベートも得られます。
ただし、沖縄の店舗にも北海道の店舗にも同じ商品が届きます。地域の嗜好に合わない商品が並ぶこともあり、これが画一的な仕入になりやすいというデメリットです。
地方の老舗百貨店(1店舗)
分散仕入が中心です。婦人服、紳士服、宝飾、食品と、売場ごとにバイヤーが多数の仕入先と付き合います。品揃えの幅と独自性が命の業態なので、仕入先を絞るわけにはいきません。
その代わり、1社あたりの取引量は小さく、数量割引の恩恵は限られます。
商店街の個人経営の食料品店
単独では仕入交渉力がありません。そこで近隣の同業者10店と共同仕入の組織をつくり、まとめて発注することにしました。1店あたりの仕入価格は下がります。
ところが半年もすると、A店は惣菜に力を入れたい、B店は調味料を増やしたい、C店はとにかく安い商品がほしい、と要望がばらけてきました。これが重点商品の相違であり、足並みが揃いにくいという共同仕入のデメリットです。
4つの軸は互いに独立しているので、実際の企業は組み合わせで選んでいます。

仕入方法の分類
試験のポイント
簡単にいうと
商品の所有権がいつ、誰から誰に移るのか。この一点だけで、在庫リスクを誰が負うかが決まります。図で矢印を書いてみると、3つの違いがすっきり整理できます。
仕入の形を分ける3つ目の物差しが 所有権 です。商品の持ち主がいつ入れ替わるかで、売れ残りを誰がかぶるかが決まります。
ここでは 卸が売り手、小売店が買い手 という場面で見ていきます。
小売店が卸から商品を 買い取る 形です。卸が商品を引き渡した時点で、所有権が卸から小売店へ移ります。
いちばん一般的なやり方です。持ち主になった以上、売れ残れば損をかぶるのは小売店 です。その代わり、いくらで売るか、いつ値下げするかは小売店の裁量で決められます。リスクと自由がセットになっています。
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| 軸 | 選択肢 | 何を基準に選ぶか |
|---|
| 1回の量 | 大量仕入/当用仕入 | 数量割引と在庫リスクの釣り合い |
| 仕入先の数 | 集中仕入/分散仕入 | 交渉力と品揃えの幅の釣り合い |
| 仕入の権限 | 本部集中仕入/店舗分散仕入 | 効率と地域適合の釣り合い |
| 他社と組むか | 共同仕入/単独仕入 | 交渉力と意思決定の速さの釣り合い |
どの軸も効率をとるか、きめ細かさをとるかという同じ形のトレードオフになっています。この構図が見えていれば、メリット・デメリットを丸暗記しなくても導けます。
注目すべきは、小売店が商品の所有権を一度も持たない ことです。小売店は売場と販売の手間を差し出しているだけで、売れ残りのリスクは一切負いません。売れたときに手数料を受け取る場合もあります。
売場に並べている間も 所有権を卸に残しておき、売上が立った瞬間に、売れた分だけ仕入を計上する形です。
消費者が買った時点で、所有権が卸から小売店へ、そして小売店から消費者へと同時に移ります。
売れ残った商品は卸へ返されるので、小売店に在庫リスクはありません。百貨店で広く使われている 方式です。
| 仕入形態 | 所有権が動くとき | 動き方 | 小売店の在庫リスク |
|---|---|---|---|
| 買取仕入 | 卸が引き渡したとき | 卸 → 小売店 | あり |
| 委託仕入 | 消費者が買ったとき | 卸 → 消費者 | なし |
| 売上仕入(消化仕入) | 消費者が買ったとき | 卸 → 小売店 → 消費者(同時) | なし |
この2つの区別が、いちばん問われます。どちらも小売店は在庫リスクを負いませんが、所有権のたどる道筋が違います。
| 所有権は小売店を通るか | |
|---|---|
| 委託仕入 | 通らない。卸から消費者へ直接わたる |
| 売上仕入 | 一瞬だけ通る。卸→小売店→消費者が同時に起きる |
形式的な違いに見えますが、帳簿の付き方が変わります。売上仕入では小売店の帳簿に売上と仕入の両方が立ちます。委託仕入では商品が自分のものになっていないので、立つのは手数料収入だけです。
百貨店は扱う幅が広く、流行の移り変わりも速い業態です。これをすべて買取仕入でまかなえば、売れ残りの損失が積み上がって経営を圧迫します。
そこで、所有権を仕入先に預けたまま売場に並べ、売れた分だけ仕入を立てる やり方が広まりました。百貨店は在庫リスクを負わずに済み、仕入先は一等地の売場に商品を置ける。双方に利があります。
ただし、この仕組みには裏面があります。何を置くかの判断を仕入先に預けることになる からです。自ら商品を選び抜く力は、使わなければ鈍ります。どの百貨店も似たような売場になってしまう ── 百貨店の苦戦の一因として、この点を挙げる見方もあります。
具体例
3つの仕入方法を、婦人服の売場で比べてみましょう。定価2万円、原価1万2千円のコートを100着仕入れるケースです。
買取仕入の場合
小売店は120万円を支払って100着を買い取ります。この時点で所有権は小売店のものです。
70着が定価で売れ、30着が売れ残りました。売れ残りは自分のものなので、半額のセールで処分します。
定価で全部売れていれば粗利益は80万円だったので、売れ残りの分だけ利益が削られたことになります。これが在庫リスクです。
委託仕入の場合
小売店は1円も払わずに100着を預かります。70着が売れ、30着は卸に返します。
所有権は卸から消費者に直接移るので、小売店の帳簿に立つのは販売手数料だけです。仮に手数料率が30%なら、70着 × 2万円 × 30% = 42万円。
売れ残っても損はしません。ただし、うまく売っても買取仕入の50万円には届きませんでした。リスクを負わない代わりに、儲けの上限も抑えられるという関係です。
売上仕入(消化仕入)の場合
こちらも仕入時点では支払いません。70着が売れた時点で、その70着分だけ仕入を計上します。
売れ残った30着は卸に戻るので、損失は出ません。
この例で3つを並べると
| 方法 | 粗利益 | 在庫リスク | 売れ行きが良ければ |
|---|---|---|---|
| 買取仕入 | 50万円 | あり | 80万円まで伸びる |
| 委託仕入 | 42万円(手数料) | なし | 手数料率で頭打ち |
| 売上仕入 | 56万円 | なし | 80万円まで伸びる |
数字は条件次第で変わりますが、押さえるべきは所有権をどこで受けるかが、リスクと利幅の両方を決めているという構図です。

所有権による分類
試験のポイント
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