第2章 商品仕入・販売(マーチャンダイジング)
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プレミアムで見る何を並べるかで、店の性格はほぼ決まってしまいます。広く浅くか、狭く深くか。この2軸の組み合わせが業態そのものを規定している、というところまで理解しておくと、事例問題でも使える知識になります。
簡単にいうと
商品ラインの数が「幅」、商品アイテムの数が「深さ」。この2つの言葉さえ取り違えなければ、あとは業態との対応を当てはめるだけです。
棚は有限です。だから小売業は、狙った客層に合う商品ラインと商品アイテムを選び取る ことになります。この選び取りが 商品ミックス です。
選ぶ基準は「客が喜ぶかどうか」だけではありません。管理しきれるか(経営管理の観点)、競合に対して強みになるか(競争優位の観点) まで含めて決める必要があります。
なお、業態によっては、宅配便取次ぎ、ATM、公共料金収納代行などの「サービス」も商品ミックスの大事な要素となっています。コンビニエンスストアを考えれば分かりやすいでしょう。物を売るだけが商品ミックスではない、ということです。
互いに 深くつながり合った商品のまとまり を指します。つながり方にはいくつかの型があり、同じニーズを満たす、補い合って使われる、同じ客層が買って使う ── こうした条件のどれかで束ねられたグループが商品ラインです。
衣料品店なら、カジュアル、スーツ、ネクタイ、ジャケットといった束がそれぞれ1本の商品ラインにあたります。
この 束がいくつあるかを「幅」 と呼びます。
1本の商品ラインの中身を細かく割っていったときの、ひとつひとつの品目です。割り方は ブランド、スタイル、素材、味 などさまざまです。
この 中身がどれだけ細かいかを「深さ」 と呼びます。
| 単位 | 中身 | 数を表す言葉 |
|---|---|---|
| 商品ライン | 相互に密接な関連をもつ商品群 | 幅 |
| 商品アイテム | ブランド・スタイル・素材・味などで区分される品目 | 深さ |
| SKU | 受発注・在庫管理の最小単位 | − |
どこまで広げ、どこまで深くするか。この決定は品揃えの話で終わりません。その店が何者であるか(ストアコンセプト)、どの業態に属するのか まで、おのずと決まってしまいます。
商品ラインの幅と商品アイテムの深さを組み合わせた業態の例は次のとおりです。
| 幅が狭い | 幅が広い | |
|---|---|---|
| 深さが浅い | (小規模店) | コンビニエンスストア型 |
| 深さが深い | 専門店型 | 総合スーパー型・百貨店型 |
幅をどう扱うかで、政策は2つに分かれます。
| 政策 | 幅の扱い | 狙うもの | 行き着く形 |
|---|---|---|---|
| フルライン政策(総合化) | 広げる | 幅広いニーズをまとめて拾う | ワンストップショッピング の便利さ |
| 限定ライン政策(専門化) | 絞り込む | 特定市場の深いニーズに応える | 専門店型 |
限定ライン政策を選んだ店は、幅で勝てない相手と向き合うことになります。総合型の大手と同じ土俵に立っても品目数では敵わないので、アイテムの密度を上げた深い品揃え で差を付けるしかありません。
「あの店なら必ず置いてある」と思わせられるかどうか。そこが専門化の分かれ目になります。
品揃えを広げれば、いまの客のニーズをより多く拾えますし、これまで来なかった客層にも手が届きます。それ自体は正しい手です。
ただし、広げた分だけ裏側で負担が増えます。とくに効いてくるのが 商品投下資本の増大 です。棚に並べる以上、そこにお金が寝ることになります。
ですから、市場をどう取りにいくかという話(市場戦略)と、資本をどこまで寝かせられるかという話(財務戦略)を、均衡在庫 の観点で突き合わせたうえで判断することになります。
| 広げて得られるもの | 広げて失うもの |
|---|---|
| 多様なニーズに応えられ、ワンストップショッピング を提供できる | 在庫が膨らみ、在庫リスクが高まって 商品回転率が落ちる |
| 品揃えが偏らないので、読み違えたときの打撃が小さい | 扱う品目が増え、商品管理も在庫管理も煩雑になる |
| 売れる商品がばらけるので、需要の波がならされる | 経営資源が分散し、何の店なのかが伝わりにくくなる |
左右を見比べると、どれも同じ構図であることが分かります。守りが固くなる代わりに、効率と輪郭を失う。
なお、絞り込んだ場合はこの表の左右が入れ替わるだけ です。両方を覚える必要はありません。
幅を広げるとき、ただ品目を足していくだけでは散らかります。効くのは、顧客の暮らしの場面に沿って商品とサービスを組み合わせ直す ことです。
分かりやすい例が、酒だけを扱っていた店の業態転換です。弁当、日用品、公共料金の収納、現金の引き出しまで扱うようになる。これは単なる品目の追加ではなく、「近所で用が足りる」という場面ごと引き受けた 結果として売上が伸びた、という話になります。
アイテム数を増やして深さを出す方向です。ただし、深めれば自動的に売れるわけではありません。売上を伸ばすには、次のどちらかが要ります。
| 進む道 | 何を増やすのか |
|---|---|
| 客単価を上げる | 1人あたりの購入金額 |
| 商圏を広げる | 遠方から呼び込んで来店客数 |
ここに専門化の厳しさがあります。深い品揃えは、近所の人だけを相手にしていては元が取れません。品目を増やした分だけ在庫は寝るのに、近隣の需要には限りがあるからです。
だから専門店は、わざわざ足を運ばせるか、一度の来店で大きく使ってもらうか ── この2つのどちらかに賭けることになります。
具体例
同じ「本を売る店」を、幅と深さの組み合わせで並べてみましょう。
| 店 | 幅(商品ラインの数) | 深さ(商品アイテムの数) | 型 |
|---|---|---|---|
| 駅前の小さな書店 | 狭い(雑誌・文庫・コミック程度) | 浅い | 小規模店 |
| 郊外の大型書店 | 広い(全ジャンル+文具+カフェ) | 深い | 総合型 |
| 鉄道書専門店 | 極端に狭い(鉄道関連のみ) | 極端に深い | 専門店型 |

品揃えの幅と深さ
試験のポイント
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同じTシャツでも、色が3色、サイズが4種類あれば12SKUになります。商品アイテムよりさらに細かい単位だと考えてください。
| 広い(食品・日用品・雑誌・サービス) |
| 浅い |
| コンビニエンスストア型 |
鉄道書専門店が成り立つ理由
近所の住民だけを相手にしていたら、この店は1週間で潰れます。成り立っているのは、全国から鉄道ファンが訪れる(商圏の拡大)か、1人が1万円単位で買っていく(客単価の向上)か、その両方だからです。
まさに「専門性を強化した商品構成」が成り立つ条件そのものです。
酒店がコンビニになった例
酒だけを売っていた店が、弁当・日用品・公共料金収納・ATMまで扱うようになる。これは商品ラインを大幅に広げた「モノを横割りにした商品構成」の典型です。
ここで大事なのは、ATMや公共料金収納代行といったサービスも商品ミックスの要素だという点です。物を売って儲けているわけではないこれらのサービスが、来店の理由をつくり、ついで買いを生んでいます。
ただし、広げれば広げるほどよいわけではない
商品ラインを広げると在庫が増え、商品回転率が下がります。そして「この店は何の店なのか」がぼやけてきます。
小さな店が大型店の真似をしてラインを広げると、どの分野でも中途半端になり、経営資源が分散するだけです。だからこそ、限られた資源しかない中小小売業では限定ライン政策(専門化)が選ばれることが多くなります。
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