第2章 中小企業白書2024年版第1部 令和5年度(2023年度)の中小企業の動向
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プレミアムで見る中小企業が直面している最大の制約は、いまや資金ではなく人です。この節では、その制約がどこから来ているのかを3段階で追いかけます。
第一に、労働力の供給そのものが細っていること。生産年齢人口が減るなか、これまでは女性と高齢者の就業が増えることで全体の就業者数が維持されてきました。ところが足下ではその両方が頭打ちになっています。補う手立てが尽きかけている、ということです。
第二に、その穴を埋める存在として外国人労働者が急速に増えていること。2023年10月末時点で204.9万人、就業者数全体の3.0%に達しました。
第三に、人を集めるために企業側が何をしているか。答えは身も蓋もなく「賃金を上げる」です。人手が不足していない企業に理由を尋ねると、半数以上が「賃金や賞与の引き上げ」を挙げています。そしてもう一歩進んで、可処分時間や子育てのしやすさまで含めた「良質な雇用」をつくれるかどうかが、定着率や採用力を左右することも数字で裏づけられています。
簡単にいうと
女性と高齢者の就業で支えてきた労働力が、いよいよ頭打ち。人手が足りている企業の1位の理由は「賃金や賞与の引き上げ」だよ!
総務省「労働力調査」で、生産年齢人口(15〜64歳)、生産年齢人口のうち女性、そして65〜69歳人口という3つの区分について、人口・就業者数・就業率の推移を追った図表です。
読み取れることは2つあります。
① 長期的には、女性と高齢者が労働力を補ってきた
生産年齢人口そのものは長期的に減少傾向にあります。しかし女性の生産年齢人口の就業者数や、高齢者である65〜69歳人口の就業者数はともに増加し、就業率も上昇してきました。人口が減っても働く人の数は維持されてきたのです。
② ところが足下ではその補いが止まっている
ところが2019年から2023年を見ると流れが変わります。生産年齢にあたる女性の就業者数は横ばいで止まり、65〜69歳の就業者数にいたっては減りはじめました。
読み取れるのはこういうことです。これまでは女性と高齢者が入ることで全体の就業者数が保たれてきました。しかしその供給源がいま頭打ちになっており、人材そのものが足りないという壁に突き当たっているわけです。
「女性は横ばい、高齢者は減少」という向きの違いに注意してください。
視点を変えて、人手不足に陥っていない企業に「なぜ足りているのか」を尋ねた調査です(n=319)。
| 要因 | 割合 |
|---|---|
| 賃金や賞与の引き上げ | 52.0% |
| 働きやすい職場環境づくり |

雇用環境と人手不足
試験のポイント
簡単にいうと
2023年10月末で204.9万人、就業者の3.0%。在留資格で最多は「身分に基づく在留資格」。賃金が最も高いのは「専門的・技術的分野」だよ。
厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」による、各年10月末時点の数値です。
| 年 | 外国人労働者数 | 就業者数全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 2017年 | 127.9万人 | 2.0% |
| 2018年 | 146.0万人 |
簡単にいうと
賃金だけじゃない。可処分時間や子育てのしやすさまで含めた「良質な雇用」が、採用力と定着率を変える。数字で効果がはっきり出ているよ!
少子化が進展するわが国において、地域の中小企業・小規模事業者が賃金などの待遇だけでなく、可処分所得・可処分時間の多さや子育てのしやすい勤務環境を整えるといった「良質な雇用」の創出を進めれば、人材確保・定着が期待できるとともに、地域の少子化対策にも貢献する可能性がある──これが白書の問題意識です。
地方の中小企業が人を得るには、そもそも人が動いてくれる必要があります。東京圏の居住者に移住の阻害要因を尋ねた調査(n=158)の結果は次のとおりです。
| 阻害要因 | 割合 |
|---|---|
| 新しい仕事を探すこと | 43.7% |
| 移住先の社会や地域コミュニティに馴染めるかという不安 |
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| 定年延長やシニアの再雇用 | 31.7% |
| 福利厚生の充実 | 25.7% |
| 公平で公正な人事評価 | 23.2% |
| 働き方の多様化やワークライフバランスの推進 | 19.1% |
| 仕事内容の魅力度の向上 | 19.1% |
| 業務プロセスの見直しなどによる効率化 | 19.1% |
| 多様な人材の積極的な採用・登用 | 16.3% |
| 機械化や自動化の実施 | 14.4% |
1位は「賃金や賞与の引き上げ」で52.0%と、2位以下を大きく引き離しています。「機械化や自動化の実施」が最下位の14.4%にとどまっている点も対照的で、省力化投資よりもまず処遇改善、というのが中小企業の現実です。この結論は、次の節で学ぶ「賃上げ」の議論に直結します。
厚生労働省「令和5年労働経済動向調査」を企業規模別に見ると、総じて「採用・正社員登用」が多くなっています。ただし30〜99人の規模においては「在職者賃金改善」が最も多いという例外があります。
規模が小さいほど、新しく採るより、いま働いている人に辞められないようにする方向へ資源を振り向けている。この規模別の逆転は出題されやすいポイントです。
| 2019年 | 165.9万人 | 2.5% |
| 2020年 | 172.4万人 | 2.6% |
| 2021年 | 172.7万人 | 2.6% |
| 2022年 | 182.3万人 | 2.7% |
| 2023年 | 204.9万人 | 3.0% |
感染症の感染拡大の影響により2020年から2022年にかけて上昇幅が小さくなったものの、足下では急激に増大し、2023年10月末時点では204.9万人となっています。就業者数全体に占める割合も上昇しており、3.0%に達しました。
2020年と2021年がほぼ横ばい(172.4万人→172.7万人)だったことが、水際対策で入国が止まっていた期間を映しています。
2023年10月末時点の在留資格別の内訳は次のとおりです。
| 在留資格 | 人数 |
|---|---|
| 身分に基づく在留資格 | 61.6万人 |
| 専門的・技術的分野の在留資格 | 59.6万人 |
| 技能実習 | 41.3万人 |
| 資格外活動 | 35.3万人 |
| 特定活動 | 7.2万人 |
最も多いのは「身分に基づく在留資格」で61.6万人、次いで「専門的・技術的分野の在留資格」59.6万人、「技能実習」41.3万人と続きます。上位2つは2万人の僅差なので、順番を入れ替えた選択肢に注意してください。
それぞれの中身も押さえておきましょう。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」による2022年時点の月額賃金(6月分の所定内給与額の平均)です。
| 区分 | 月額賃金 |
|---|---|
| 一般労働者(正社員・正職員) | 32.8万円 |
| 専門的・技術的分野(特定技能を除く) | 30.0万円 |
| 身分に基づくもの | 28.1万円 |
| 外国人労働者計 | 24.8万円 |
| 一般労働者(正社員・正職員以外) | 22.1万円 |
| その他(特定活動・留学以外の資格外活動) | 22.1万円 |
| 特定技能 | 20.6万円 |
| 技能実習 | 17.8万円 |
一般労働者のうち正社員・正職員が32.8万円であるのに対し、外国人労働者計では24.8万円です。在留資格別に見ると、「専門的・技術的分野の在留資格(特定技能を除く)」が最も高く30.0万円、「技能実習」が最も低く17.8万円となります。
在留資格別に月額賃金の推移をたどると、どの年においても「専門的・技術的分野の在留資格(特定技能を除く)」が最も多いという結論になります。
| 在留資格 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
|---|---|---|---|---|
| 専門的・技術的分野(特定技能を除く) | 32.4 | 30.2 | 32.7 | 30.0 |
| 身分に基づくもの | 24.5 | 25.7 | 27.1 | 28.1 |
| その他 | 21.5 | 20.5 | 19.5 | 22.1 |
| 特定技能 | ― | 17.5 | 19.0 | 20.6 |
| 技能実習 | 15.7 | 16.2 | 16.4 | 17.8 |
「どの年においても」という表現が使われているときは、順位が一度も入れ替わっていないという意味です。「身分に基づくもの」が年々着実に上がって差を詰めている点も、あわせて見ておきましょう。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によれば、国内の生産年齢人口全体のうち日本人人口が減少していく中で外国人人口は増加していき、生産年齢人口全体に占める比率は2020年の3.1%から2070年には14.9%まで上昇すると推計されています。
50年で約5倍。日本の労働市場の姿が根本から変わる見通しであり、外国人材の受入れと定着が中小企業政策の重要テーマになっている背景がここにあります。

外国人労働者の現状
試験のポイント
| 子供の転校や進学についての不安 | 8.2% |
| 両親が住む場所から離れてしまうこと | 7.6% |
| 娯楽やエンターテインメントなどの生活の楽しみが減る | 7.0% |
| 医療施設が遠いなど社会インフラについての不安 | 4.4% |
| その他 | 3.8% |
「新しい仕事を探すこと」が43.7%と突出しており、2位以下を3倍以上引き離しています。裏を返せば、地域に良質な雇用があることが、移住の最大の後押しになるということです。
ここが最も示唆に富む図表です。自社の経営戦略に働き方改革等の実行に向けた取組が含まれているかどうかで、企業を3つに分けています。
| 効果 | 項目がある<br>(n=2,467) | 項目がない<br>(n=304) | 特に経営戦略はない<br>(n=1,405) |
|---|---|---|---|
| 離職率の低下 | 32.2% | 25.3% | 23.0% |
| 従業員の健康増進 | 32.1% | 21.7% | 22.9% |
| 若年層従業員の採用拡大 | 32.0% | 15.1% | 16.1% |
| 女性従業員の採用拡大 | 31.9% | 11.2% | 11.0% |
| 女性従業員の定着率向上 | 31.5% | 11.5% | 10.7% |
| シニア人材の定着率向上 | 28.7% | 15.5% | 19.4% |
| 若年層従業員の定着率向上 | 24.4% | 11.5% | 11.9% |
| 子育て世帯の従業員数の増加 | 20.4% | 2.6% | 4.3% |
読み方は2段階です。
① 「項目がある」企業の中で最も多い効果は「離職率の低下」(32.2%)。
② ただし「項目がない」企業と比べて差が大きいのは別の項目です。「若年層従業員の採用拡大」(32.0% 対 15.1%)、「女性従業員の採用拡大」(31.9% 対 11.2%)、「女性従業員の定着率向上」(31.5% 対 11.5%)、そして「子育て世帯の従業員数の増加」(20.4% 対 2.6%)では、回答割合の差が2〜8倍に広がっています。
「最も多いのは離職率の低下」だが「差が大きいのは女性・若年層・子育て世帯」──この2つの答えを混同させる出題が十分にありえます。分けて覚えておきましょう。
エンゲージメントとは、従業員の、自身が勤める企業に対する自発的な貢献意欲を指します。
| 取組 | 割合 |
|---|---|
| 社内コミュニケーションの活性化 | 50.9% |
| 上司・部下間のコミュニケーションの円滑化 | 41.6% |
| 企業理念・ビジョンの浸透 | 32.1% |
| 経営目標のオープンな情報開示 | 27.8% |
| 表彰など称賛する組織風土づくり | 23.6% |
| 社員のキャリア開発支援 | 20.1% |
| 従業員満足度・エンゲージメントの調査 | 13.9% |
| タレントマネジメントによる適切な人材配置 | 2.9% |
上位2つがいずれもコミュニケーションに関する項目であることが特徴です。一方、「タレントマネジメントによる適切な人材配置」は2.9%と極端に低く、仕組みとしての人材マネジメントまで踏み込めている企業はごく一部にとどまります。第1章で学んだ「中小企業はコミュニケーションが緊密」という強みを、そのまま定着策として使っている構図だと読めます。
「良質な雇用」を提供するには経営体力が要ります。過去10年間における国内での売上高と投資の伸び率を企業規模別に見ると、次のようになります。
| 企業規模 | 国内売上高 | 伸び率 | 国内投資 | 伸び率 |
|---|---|---|---|---|
| 中小企業 | 14.7兆円 | +12.9% | 1.3兆円 | +56.8% |
| 中堅企業 | 18.9兆円 | +10.7% | 1.5兆円 | +37.5% |
| 大企業 | 3.9兆円 | +1.4% | 0.7兆円 | +7.3% |
中堅・中小企業は着実に成長している、というのが白書の結論です。とりわけ国内投資の伸び率は、中小企業が+56.8%と大企業(+7.3%)を大きく上回っています。
ここでいう中堅企業とは従業者数2,000人以下(中小企業者を除く)、大企業とは従業者数2,000人超を指す点に注意してください。大企業と比べて経営体力がない中小企業にとって「良質な雇用」の提供には困難も伴いますが、それでも積極的に働き方改革等に取り組んでいる企業は数多く存在します。

良質な雇用の創出と働き方改革
試験のポイント
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