第2章 中小企業白書2024年版第1部 令和5年度(2023年度)の中小企業の動向
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プレミアムで見る労働生産性は、この科目でいちばん誤解されやすい論点です。「中小企業は生産性が低い」という一文は確かに正しい。けれども、それは中央値の話にすぎません。
中小企業の上位10%(90%タイル)の労働生産性は、実は大企業の中央値を上回っています。規模が小さくても生産性の高い企業は確かに存在する。この「平均で語るな、分布で見ろ」というメッセージこそが、白書2024年版が最も強調したかったところです。
さらに業種を重ねると、もう一段おもしろい絵が見えてきます。建設業・情報通信業・製造業では中小企業の生産性が比較的高い一方、宿泊業・飲食サービス業や生活関連サービス業・娯楽業では、そもそも企業規模による差がほとんどありません。規模を大きくすれば生産性が上がる業種と、上がらない業種がある、ということです。
そして国際比較。日本の労働生産性はOECD加盟国平均を下回り、一人当たり名目GDPの成長率にいたっては主要国で唯一のマイナスです。厳しい数字ですが、ここは正確に覚えておきましょう。
簡単にいうと
中央値では大企業に大きく負けている。でも中小企業の上位10%は大企業の中央値を超えている。「規模が小さくても生産性の高い企業はいる」がこの節の主役だよ!
ここでいう労働生産性は、経済センサスをもとにした企業ベースの「純付加価値額 ÷ 従業者数」です。非一次産業の値を集計しています。
| 企業規模 | 10%タイル | 中央値 | 90%タイル |
|---|---|---|---|
| 小規模事業者 | 6万円 | 168万円 | 677万円 |
| 中規模企業 | 77万円 | 315万円 | 841万円 |
| 大企業 | 110万円 | 605万円 | 1,618万円 |

労働生産性の現状
試験のポイント
簡単にいうと
日本の労働生産性はOECD平均より低い。一人当たり名目GDPの成長率は主要国で唯一のマイナス。一方で中小企業の設備投資額は一貫して増えているよ!
2005年から2022年にかけての年平均成長率です(内閣府)。
| 国 | 平均成長率 |
|---|---|
| 中国 | +12.7% |
| ロシア | +8.5% |
| インド | +7.8% |
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ところが中小企業の上位10%の水準(90%タイル)は、大企業の中央値(605万円)を上回っています。小規模事業者の90%タイルが677万円、中規模企業が841万円。どちらも605万円より上です。
つまり企業規模が小さくても労働生産性の高い企業が一定程度存在するわけです。
この一文は白書の主張の核であり、「中小企業だから生産性が低いのではなく、生産性の低い中小企業が多いだけ」という読み替えを可能にします。政策が「底上げ」と「伸ばす」の両方を志向する根拠にもなっています。
| 業種 | 小規模事業者 | 中規模企業 | 大企業 |
|---|---|---|---|
| 建設業 | 329万円 | 558万円 | 1,052万円 |
| 製造業 | 226万円 | 433万円 | 786万円 |
| 情報通信業 | 255万円 | 492万円 | 864万円 |
| 運輸業、郵便業 | 285万円 | 401万円 | 513万円 |
| 卸売業 | 229万円 | 450万円 | 867万円 |
| 小売業 | 125万円 | 250万円 | 395万円 |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 266万円 | 490万円 | 828万円 |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 84万円 | 134万円 | 128万円 |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 91万円 | 221万円 | 246万円 |
| 非一次産業 | 168万円 | 315万円 | 605万円 |
読み取りどころは2つです。
① 企業規模は同じでも、業種によって労働生産性が異なる。「建設業」「情報通信業」「製造業」は中規模企業・小規模事業者が比較的高い労働生産性となっています。
② 業種が同じ場合、企業規模が大きくなるにつれて労働生産性が高くなる。ただし「宿泊業、飲食サービス業」や「生活関連サービス業、娯楽業」では企業規模間での差が小さい。
とくに宿泊業・飲食サービス業では、中規模企業134万円に対して大企業128万円と、大企業のほうがわずかに低いという逆転すら起きています。労働集約的で標準化しにくい業態では、規模を大きくしても一人当たりの付加価値が伸びにくいのです。
ばらつきとは、90%タイル値と10%タイル値の差分を指します。
| 業種 | 小規模事業者 | 中規模企業 | 大企業 |
|---|---|---|---|
| 建設業 | 838万円 | 966万円 | 1,389万円 |
| 製造業 | 671万円 | 799万円 | 1,338万円 |
| 情報通信業 | 881万円 | 887万円 | 1,648万円 |
| 卸売業 | 900万円 | 1,075万円 | 2,079万円 |
| 小売業 | 529万円 | 627万円 | 897万円 |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 820万円 | 832万円 | 1,829万円 |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 300万円 | 312万円 | 455万円 |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 327万円 | 490万円 | 690万円 |
| 非一次産業 | 672万円 | 764万円 | 1,508万円 |
いずれの業種においても、大企業の労働生産性のばらつきは中規模企業・小規模事業者に比べて大きくなっています。業種別では「宿泊業、飲食サービス業」や「生活関連サービス業、娯楽業」はばらつきが小さく、先の中央値の差が小さかったことと合わせると、労働生産性の分布が企業規模間で近いものになっていることが分かります。
この2業種は「中央値の差も小さい、ばらつきも小さい」とセットで覚えてください。
| +5.0% |
| 韓国 | +3.4% |
| アメリカ | +3.3% |
| カナダ | +2.9% |
| ドイツ | +2.2% |
| フランス | +1.2% |
| イギリス | +0.8% |
| イタリア | +0.8% |
| 日本 | ▲0.3% |
日本だけがマイナスです。各国平均は+4.4%、欧米平均に限っても+1.9%なので、日本はほかの国々と比べて非常に低い水準にあります。
白書はさらに踏み込んで、1994年から2022年の日本の生産性向上率が+0.2%であったのに対し、一人当たり名目GDPを欧米並みに成長させるために必要な生産性向上率は+2.1%だと示しています。10倍の差。生産性向上が国家的な課題とされる理由が、この2つの数字に集約されています。
2022年、購買力平価換算USドル建て(日本生産性本部)。全体の労働生産性はGDPを就業者数で割って計算しています。
| 順位帯 | 国 | 労働生産性 |
|---|---|---|
| 上位 | アイルランド | 255,296ドル |
| ノルウェー | 219,359ドル | |
| ルクセンブルク | 182,738ドル | |
| 米国 | 160,715ドル | |
| スイス | 157,639ドル | |
| 中位 | ドイツ | 125,163ドル |
| OECD平均 | 115,454ドル | |
| カナダ | 115,344ドル | |
| 英国 | 112,351ドル | |
| 下位 | 韓国 | 92,508ドル |
| 日本 | 85,329ドル |
日本はOECD加盟国平均よりも低い水準にあり、韓国も下回っています。「OECD平均を上回っている」とする選択肢は誤りです。
生産性を上げるには投資が要ります。経済センサスによる設備投資額(有形固定資産(土地を除く)と無形固定資産(ソフトウェアのみ)の取得額)は次のように推移しています。
| 年 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 2012年 | 12.6兆円 | 22.2兆円 |
| 2016年 | 13.3兆円 | 31.0兆円 |
| 2021年 | 18.2兆円 | 32.6兆円 |
中小企業の設備投資額は2012年から一貫して上昇し続けています(12.6 → 13.3 → 18.2兆円)。とくに2016年から2021年にかけての伸びが大きく、5兆円近く増えました。
第1章で「企業数は減っているのに中小企業の従業者数は増えている」という話をしましたが、設備投資も同じ方向を向いています。事業者の数は減りながら、生き残った企業は規模を拡大し、投資を増やしている。白書が繰り返し述べる「中堅・中小企業は着実に成長している」という認識は、この数字に支えられています。

生産性の国際比較と設備投資
試験のポイント
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