第2章 中小企業白書2024年版第1部 令和5年度(2023年度)の中小企業の動向
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プレミアムで見る企業が生まれ、育ち、縮み、消えていく。その出入りを数字で追うのがこの節です。
まず押さえたいのは、日本の中小企業が「大きくなる」より「小さくなる」ほうが多いという事実です。小規模事業者から中規模企業へ成長した企業が3.8万者だったのに対し、中規模企業から小規模事業者へ縮んだ企業は6.5万者。ほぼ2倍の開きがあります。
次に開廃業率。第1章では経済センサスをもとにした数字を学びましたが、ここでは厚生労働省「雇用保険事業年報」という別の統計が使われます。同じ「開廃業率」という言葉でも、出所が違えば数字も違う。雇用保険事業年報の開業率は2022年度3.9%、廃業率は3.3%で、経済センサスの4.7%・5.5%とはまったく別の値です。どちらの統計の話なのかを必ず確認してください。
そして休廃業・解散。ここでも統計が2つ(東京商工リサーチと帝国データバンク)あり、2023年の動きが「ほぼ横ばい」と「増加」で食い違います。出題者にとっては格好の材料なので、2つを並べて覚えておきましょう。
簡単にいうと
大きくなった企業より小さくなった企業のほうが多い。開廃業率はここでは雇用保険事業年報がベース——経済センサスとは数字が違うから注意!
平成28年と令和3年の経済センサスの2時点で存在が確認できた企業について、その間に規模がどう変わったかを追跡した図表です。
| 区分 | 企業数 |
|---|---|
| 規模変化なし | 254.0万者 |
| 規模拡大 | 4.0万者 |
| 規模縮小 | 6.7万者 |
内訳を見るとさらに具体的です。
規模拡大
規模縮小

企業の規模間移動と開廃業率
試験のポイント
簡単にいうと
休廃業・解散は2つの統計で結論が違う。東京商工リサーチは横ばい、帝国データバンクは増加。そして小規模事業者の黒字割合が2023年に5割を切ったのが大事件!
まず言葉の整理から。
いずれも倒産とは違います。倒産は債務の支払不能に陥った状態、つまり負債が返せなくなった結末ですが、休廃業は資産超過のまま自主的にやめることです。「まだ払えるうちに畳む」のが休廃業、「払えなくなって潰れる」のが倒産、と考えてください。
統計が2つあり、2023年の動きについて結論が異なります。
① 東京商工リサーチ
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一方で、小規模事業者からいきなり大企業へ駆け上がった企業が29者も存在するという事実も、覚えておくとおもしろいところです。数としては微々たるものですが、道が閉ざされているわけではありません。
ここで使われるのは厚生労働省「雇用保険事業年報」による事業所ベースの数字です。
開業率は1988年度をピーク(7.4%)として低下傾向に転じた後、2000年代を通じて緩やかな上昇傾向にありましたが、2018年度に再び低下し、2022年度は3.9%となっています(2021年度は4.4%)。
廃業率は2010年度から低下傾向にありましたが、2022年度は僅かに上昇し3.3%となりました(2021年度は3.1%)。廃業率の最低は2.5%程度(1996年度頃)です。
| 指標 | 2021年度 | 2022年度 | 動き |
|---|---|---|---|
| 開業率 | 4.4% | 3.9% | 低下 |
| 廃業率 | 3.1% | 3.3% | 僅かに上昇 |
開業率は低下、廃業率は上昇と、向きが逆になっている点が重要です。ただしこの統計では開業率(3.9%)が廃業率(3.3%)を上回っています。第1章で学んだ経済センサスベースでは開業率4.7% < 廃業率5.5%で逆転していたのとは、結論が反対になります。
この違いは統計の作り方から来ています。
雇用保険事業年報は、事業所における雇用関係の成立・消滅をそれぞれ開業・廃業とみなします。そのため、
という特徴があります。それでも白書が採用しているのは、毎年実施されていることと、「日本再興戦略2016」(2016年6月2日閣議決定)で開廃業率のKPIとして用いられているためです。
これに対し、全数調査である経済センサスの開廃業率には、雇用者が存在しない事業所の開廃業も含まれます。
| 統計 | 単位 | 一人親方の開廃業 | 頻度 | 2022年度の開業率/廃業率 |
|---|---|---|---|---|
| 雇用保険事業年報 | 雇用関係の成立・消滅 | 把握できない | 毎年 | 3.9% / 3.3% |
| 経済センサス | 事業所 | 含む | 数年おき | 4.7% / 5.5%(2015〜2021年) |
| 区分 | 小規模事業者 | 中規模企業 |
|---|---|---|
| 開業企業 | 84.2% | 15.6% |
| 存続企業 | 84.6% | 15.0% |
| 廃業企業 | 88.7% | 11.2% |
廃業企業には小規模事業者が比較的多く存在しています(88.7%)。開業・存続のいずれも84%台であるのに対し、廃業だけが88.7%と4ポイント高い。規模が小さいほど退出しやすいという、直感どおりの結果です。
| 年 | 件数 |
|---|---|
| 2013年 | 34,800件 |
| 2016年 | 41,162件 |
| 2018年 | 46,724件 |
| 2020年 | 49,698件 |
| 2021年 | 44,377件 |
| 2022年 | 49,625件 |
| 2023年 | 49,788件 |
2023年は49,788件で、2022年とほぼ同じ水準です。
② 帝国データバンク
| 年 | 件数 |
|---|---|
| 2016年 | 60,168件 |
| 2018年 | 58,519件 |
| 2020年 | 56,103件 |
| 2021年 | 54,709件 |
| 2022年 | 53,426件 |
| 2023年 | 59,105件 |
こちらは2023年に59,105件と、2022年と比べて増加しています。
同じ現象を測っても、調査対象の取り方が違えば結論は変わります。「東京商工リサーチはほぼ横ばい、帝国データバンクは増加」という対比を、どちらがどちらかセットで覚えておきましょう。なお件数の水準そのものも帝国データバンクのほうが1万件ほど多くなっています。
ここがこの節で最も重要な数字です。休廃業・解散した企業のうち、黒字だった企業の割合を企業規模別に追っています。
| 年 | 中規模企業の黒字割合 | 小規模事業者の黒字割合 |
|---|---|---|
| 2016年 | 61.4% | 55.3% |
| 2018年 | 58.3% | 54.4% |
| 2019年 | 65.0% | 56.6% |
| 2020年 | 57.7% | 56.2% |
| 2021年 | 51.3% | 56.1% |
| 2022年 | 50.2% | 55.2% |
| 2023年 | 55.8% | 49.6% |
中規模企業では、2022年(50.2%)を底として足下では黒字割合が増加しており、2023年は55.8%と5割以上が黒字のまま退出しています。
小規模事業者では逆に、2023年に49.6%と5割を下回りました(赤字割合は50.4%)。2016年から2022年までずっと54〜56%台で推移していたのが、2023年に初めて半数を割り込んだ形です。
「中規模企業は5割以上が黒字、小規模事業者は5割未満」──この対比が、そのまま出題の狙い目になります。
黒字なのに事業をやめる。これが黒字廃業と呼ばれる現象です。利益が出ているのに畳むということは、理由は業績ではなく後継者がいないことにあると考えられます。次の節で学ぶ事業承継が中小企業政策の柱になっているのは、まさにこの数字があるからです。
同時に、小規模事業者の黒字割合が5割を割ったという変化は、物価高や人手不足で採算そのものが悪化している事業者が増えていることも示唆しています。「後継者難による黒字廃業」と「採算悪化による赤字廃業」の両方が進んでいる、という二面的な読み方をしておきましょう。

休廃業・解散の状況
試験のポイント
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