第3章 中小企業白書2024年版第2部 環境変化に対応する中小企業
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プレミアムで見る白書2024年版の第2部は「環境変化に対応する中小企業」と題され、人への投資と省力化/資金調達/成長/支援機関という4本柱で構成されています。その先頭に置かれているのが、この「人」のテーマです。
中小企業が現在いちばん優先度が高いと考えている経営課題を尋ねると、1位は人材の確保(46.6%)、2位が人材の育成(13.1%)。3位の「財務・資金繰りの改善」(7.5%)を大きく引き離しています。もはやカネではなくヒトが最大の制約である、ということが数字でも裏づけられているわけです。
この節では、確保(採る)→ 育成(育てる)→ 定着(辞めさせない)という人材マネジメントの3段階を順に追い、最後に副業人材・シニア人材・外国人労働者といった多様な人材の活用状況を確認します。結論を先に言ってしまうと、多様な人材の活用はいずれもあまり進んでいません。
覚えどころは、中途採用が中小企業の主流であること、育成はOJTが中心であること、そして働き手が仕事に求めるものが「やりがい」から「成長できること」へ移りつつあること。この3点です。
簡単にいうと
経営課題の1位は人材の確保で46.6%。そして採用は中途がメイン——規模が小さいほど即戦力を求めているよ。
帝国データバンクの調査で、現在対応する優先度が高いと考えている経営課題を上から順に3つ聞いたものです。ここでは上位2位までを見ます。
(1)最も優先度が高い経営課題(n=21,526)
| 経営課題 | 割合 |
|---|---|
| 人材の確保 | 46.6% |
| 人材の育成 | 13.1% |
| 財務・資金繰りの改善 | 7.5% |
| 資金の確保 | 7.3% |
| 業務の効率化 | 6.8% |
| 新製品・新サービスの開発 | 5.6% |
| 後継者・後継者候補の選定 |

人材の確保

中途採用と新卒採用
試験のポイント
簡単にいうと
育成の中心はOJT。課題は「指導する人材の不足」。そして働き手が仕事に求めるものは「やりがい」から「成長できること」へ移りつつあるよ!
帝国データバンクの調査(2023年11〜12月)による、人材育成関連の結果です。
| 論点 | 結果 |
|---|---|
| 人材育成の取組の増減 | 約半数(49.5%)の企業が「変わらない」と回答 |
| 増やした人材育成の取組内容 | 主にOJT(42.6%)が最多、次いでOJTを中心に一部OFF-JT(33.0%)。なお「主にOFF-JT」は |
簡単にいうと
副業人材・シニア人材・外国人労働者——結論から言うと、いずれもあまり活用されていない。「外部」のシニア人材がとくに進んでいないのがポイント!
ここでは人の集め方の幅を見ていきます。副業・兼業という形で関わってもらう、シニアに力を借りる、外国人労働者に加わってもらう。それぞれどこまで進んでいるかを確かめます。結論を先に述べると、いずれもあまり活用されていません。この一文は白書の要約としてそのまま覚えてしまってかまいません。
公益財団法人産業雇用安定センター「従業員の『副業・兼業』に関するアンケート調査」(2023年6〜7月)によります。
自社従業員の社外での副業・兼業を認めているか(送り出す側)
| 回答 | 割合 |
|---|---|
| 「雇用による副業・兼業」を認めている | 25.7% |
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| 製品・サービスの差別化 | 3.3% |
| 技術・ノウハウの蓄積 | 1.4% |
| 投資案の検討 | 0.9% |
| 経営の透明性の確保 | 0.4% |
(2)次点で優先度が高い経営課題(n=19,577)
| 経営課題 | 割合 |
|---|---|
| 人材の育成 | 34.6% |
| 人材の確保 | 16.3% |
| 業務の効率化 | 14.8% |
| 資金の確保 | 6.7% |
| 財務・資金繰りの改善 | 6.6% |
| 新製品・新サービスの開発 | 5.8% |
| 技術・ノウハウの蓄積 | 4.7% |
「人材の確保」「人材の育成」が1位・2位を占め、次点でも順番を入れ替えて上位2つを占める。人口減少トレンドが続く中で、人材の確保は避けては通れない経営課題と認識されているといえます。
なお(1)で「特にない」と回答した企業(2.2%)は、2位以下を回答していません。
帝国データバンク「企業が求める人材像アンケート」(2022年9月)による、企業規模別の主な採用形態です。
| 企業規模 | 中途採用メイン | 新卒採用メイン | 未回答 |
|---|---|---|---|
| 全規模(n=1,550) | 56.6% | 21.3% | 22.1% |
| 大企業(n=215) | 35.8% | 48.8% | 15.3% |
| 中小企業(n=1,335) | 60.0% | 16.9% | 23.1% |
| うち小規模企業(n=507) | 63.5% | 8.9% | 27.6% |
中小企業は「中途採用メイン」の回答割合が約6割(60.0%)であり、中小企業の主な採用形態は中途採用であることがうかがえます。これに対し大企業は新卒採用メインが48.8%と、まったく逆の構造です。
さらに中小企業のうち小規模企業に絞ると「中途採用メイン」が63.5%とより高くなっており、規模の小さい企業では中途採用で即戦力を求めている傾向にあります。新卒を採って育てる余力がないぶん、すでにできる人を採るしかない。「規模が小さいほど中途採用の割合が高い」という向きを押さえてください。
帝国データバンクの調査(2023年11〜12月)から、採用関連の結果をまとめます。
| 論点 | 1位 | 2位 |
|---|---|---|
| 中途採用のメリット | 即戦力となる(75.6%) | 育成コストを抑えられる(32.6%) |
| 新卒採用のメリット | 社内が活性化する(61.9%) | 計画的な求人・育成ができる(49.2%) |
| 中途採用に感じている課題 | 応募が少ない(61.1%) | 指導する人材の不足(23.6%) |
| 新卒採用に感じている課題 | 応募が少ない(62.8%) | 育成に時間がかかる(44.5%) |
| インターンシップの実施で得られた効果 | 学生の意見を知ることができた(46.8%) | 自社に合う人材の採用につながった(29.7%) |
| 採用面接で自社から伝えている内容 | 給与体系(82.7%) | 休暇制度・福利厚生(81.6%) |
読みどころが3つあります。
① 課題は中途も新卒も「応募が少ない」(61.1%・62.8%)。採用形態を変えても、そもそも母集団が集まらないという壁は同じです。
② メリットは対照的。中途は「即戦力」、新卒は「社内が活性化する」。いますぐ戦力がほしいなら中途、組織を変えたいなら新卒、という住み分けが見えます。
③ 面接で伝えているのは給与体系と休暇制度・福利厚生(82.7%・81.6%)。この2つがほぼ並んで8割を超えており、処遇の透明化が採用の前提になっていることが分かります。
| 人材育成に取り組む上での課題 | 指導する人材の不足(53.3%)が最多、次いで育成にかける時間がない(39.5%) |
ここから読み取れることは3つです。
① 育成の取組はあまり増えていない。約半数が「変わらない」と答えています。
② 増やした場合でもOJTが中心。「主にOJT」42.6%と「OJTを中心に一部OFF-JT」33.0%を合わせると75.6%に達し、「主にOFF-JT」はわずか5.8%にとどまります。研修に人と時間を割く余裕がないぶん、現場で教えるしかないというのが実情です。
③ 課題は人と時間。「指導する人材の不足」53.3%と「育成にかける時間がない」39.5%。前のテーマで見た「中途採用に感じている課題」の2位も「指導する人材の不足」(23.6%)でした。教える人がいないから育たない、育たないから教える人が増えないという悪循環が起きています。
OJTとOFF-JTの違いは企業経営理論でも扱う基本用語です。
| 用語 | 意味 | 中小企業での位置づけ |
|---|---|---|
| OJT(On the Job Training) | 実際の職務を通じて行う教育訓練 | 中心(75.6%が何らかの形で採用) |
| OFF-JT(Off the Job Training) | 職場を離れて行う集合研修等 | 「主にOFF-JT」は5.8%のみ |
パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」をもとに、有職者が仕事内容を選ぶ上で重視することについて、2019年と2023年の数値を比較したものです。
① 増加したもの(n=10,000)
| 重視すること | 2019年 | 2023年 | 増加幅 |
|---|---|---|---|
| 資格や免許の取得に繋がること | 7.2% | 8.5% | +1.3 |
| 色々な知識やスキルが得られること | 13.2% | 14.3% | +1.1 |
| 社会的な成功が得られること | 7.0% | 8.0% | +1.0 |
| 自律的に自分の判断で仕事を進められること | 13.7% | 14.6% | +0.9 |
| キャリアを活かせること | 11.4% | 12.2% | +0.8 |
| 様々な仕事を経験できること | 9.4% | 9.9% | +0.5 |
| 大きな責任のある仕事が任されること | 7.6% | 8.0% | +0.4 |
最も増加したのは「資格や免許の取得に繋がること」であり、次いで「色々な知識やスキルが得られること」が増加しています。働き手は自身が成長できると感じられる仕事を求めていることが示唆されます。
② 減少したもの(n=10,000)
| 重視すること | 2019年 | 2023年 | 減少幅 |
|---|---|---|---|
| やりがいを感じられること | 33.8% | 28.4% | ▲5.4 |
| 自分のやりたい仕事であること | 31.4% | 28.1% | ▲3.3 |
| 自分の能力や個性が生かせること | 23.4% | 21.8% | ▲1.6 |
| 社会に貢献できること | 11.7% | 11.4% | ▲0.3 |
最も減少したのは「やりがいを感じられること」であり、次いで「自分のやりたい仕事であること」が減少しています。いずれも全体の中で回答割合が高いものであり、働き手が重視することについてトレンドに変化が起きている可能性が示唆されます。
白書は慎重に「この結果から一概にいえないものの、働き手のニーズの変化にも目を向け、人材確保に向けた取組を検討することが重要」と結んでいます。
とはいえ方向性は明確です。「やりがい」や「やりたい仕事」といった情緒的な価値が下がり、「資格」「スキル」「自律性」といった自分の市場価値を高める要素が上がっている。
これは、終身雇用を前提とせず、どこでも通用する力を身につけたいという意識の表れと読めます。中小企業が人を集めるには、「うちはやりがいがある」と訴えるだけでは足りず、ここで働けばどんな力がつくのかを具体的に示す必要がある、ということです。
なお、増加項目の絶対値(8〜14%台)と減少項目の絶対値(11〜28%台)を比べると、依然として「やりがい」が最も重視されている項目であることは変わりません。「やりがいはもう重視されていない」という極端な選択肢には注意してください。

人材の育成と定着
試験のポイント
| 6.2% |
| 認める予定はない | 27.7% |
| 検討していない | 23.9% |
約3割の企業が「認めている」または「今後認める予定」と回答しているのに対し、「認める予定はない」と「検討していない」を合わせると約半数(51.6%)に達します。
他社の従業員(常用労働者)を副業・兼業で受け入れているか(受け入れる側)
| 回答 | 割合 |
|---|---|
| 検討していない | 45.9% |
| 今後も受入れる予定はない | 28.4% |
約7割の企業がこの2つのいずれかを回答しています。
送り出すより受け入れるほうが消極的(約半数 対 約7割)という非対称が特徴です。自社の人材が外で働くことは認めても、外の人材を迎え入れるには至っていない。この向きを取り違えないようにしてください。
帝国データバンクの調査(2023年11〜12月)で、シニア人材の活用状況を内部のシニア人材と外部のシニア人材に分けて確認しています。
ここでいう内部のシニア人材とは、定年引上げ、再雇用制度の活用、定年の廃止等により自社に所属している人材を指します。
| 区分 | 「全く活用していない」の割合 |
|---|---|
| 内部のシニア人材 | 19.6% |
| 外部のシニア人材 | 61.9% |
同じシニアでも、内と外で差がはっきり出ました。社内のシニアは活用が進んでおり、「全く活用していない」は19.6%。対して社外のシニアは「全く活用していない」が61.9%と、3倍以上に開いています。
定年後も自社に残ってもらうことは広く行われているが、他社を退職した経験豊富な人材を新たに迎え入れることは進んでいない。内部と外部で3倍以上の差があるこの対比が、この項目の出題ポイントです。
副業・兼業と同じく「送り出す/内部は進む、受け入れる/外部は進まない」という共通のパターンが見て取れます。
同じ調査で外国人労働者の活用状況を確認すると、次のようになります。
| 区分 | 割合 |
|---|---|
| 外国人技能実習生 | 10.8% |
| 専門的・技術的分野 | 10.0% |
| 資格外活動を許可された労働者 | 4.8% |
| 活用していない | 71.9% |
これらを活用している企業も一定数存在しますが、「活用していない」の回答割合が7割を超えています(71.9%)。
第2章で学んだとおり、外国人労働者数は2023年10月末時点で204.9万人・就業者の3.0%まで増えています。しかし企業の側から見ると、7割強はまだ外国人材を使っていない。マクロの増加と、個々の企業における普及率のギャップに注意してください。
| 多様な人材 | 活用が進んでいない側 | 数字 |
|---|---|---|
| 副業・兼業人材 | 受け入れる側 | 約7割が検討していない/受入れ予定なし |
| シニア人材 | 外部のシニア人材 | 全く活用していない61.9% |
| 外国人労働者 | 全般 | 活用していない71.9% |
人手不足は深刻なのに、社外から人を迎え入れる仕組みは整っていない。だからこそ、次のテーマで扱う省力化投資──人を増やす代わりに機械やシステムで補う道──が政策の柱に据えられているわけです。第6章で学ぶ「中小企業省力化投資補助金」や「ものづくり補助金」は、この文脈の中に位置づけられます。

多様な人材の活用
試験のポイント
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