第4章 小規模企業白書2024年版第2部 経営課題に立ち向かう小規模事業者
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プレミアムで見るここからは「小規模事業者に対する今後の期待」という節です。地域における小規模事業者の重要性と、地域の新たな担い手を創出するための起業・創業と事業承継の動向を扱います。
この節のキーワードは人口密度区分です。人口密度の高さから市区町村を4つに分け、人口密度が最も低い「区分1」から最も高い「区分4」まで並べると、区分1になるほど小規模事業所の存在感が大きくなるという、きれいな傾斜が現れます。事業所数で87.1%(約9割)、従業者数で48.1%(約5割)、売上高で35.4%、付加価値額で39.9%(ともに約4割)。
そして数字だけではありません。小規模事業者が取り組んでいる地域貢献活動の1位は「祭りなどの伝統行事の開催や維持」(38.6%)。事業に直接関係しないところでも、小規模事業者は地域の伝統や文化を守る上で欠かせない存在です。
商店街についても、期待されている役割と実際に応えられている役割のギャップという視点で読み解きます。「治安や防犯への寄与」はギャップが小さく、「地域住民への身近な購買機会の提供」「地域の賑わいの創出」はギャップが大きい。この対比が出題の狙い目です。
簡単にいうと
人口密度が低い地域ほど小規模事業所の割合が高い。区分1では事業所数の87.1%が小規模事業所、従業者数でも48.1%だよ!
企業規模別の企業数の推移です(単位:万者)。
| 年 | 小規模企業 | 中規模企業 |
|---|---|---|
| 1999年 | 422.9 | 60.8 |
| 2004年 | 377.7 | 54.9 |
| 2009年 | 366.5 | 53.6 |
| 2014年 | 325.2 | 55.7 |
| 2016年 | 304.8 |

地域に貢献する小規模事業者
試験のポイント
簡単にいうと
地域貢献活動の1位は「祭りなどの伝統行事の開催や維持」38.6%。商店街は「治安や防犯」はギャップが小さく、「購買機会の提供」「賑わいの創出」はギャップが大きいよ。
EYストラテジー・アンド・コンサルティングの調査です(n=5,892・複数回答)。
| 活動 | 割合 |
|---|---|
| 祭りなどの伝統行事の開催や維持 | 38.6% |
| 地場産業の活性化 | 25.2% |
| 特に行っていない | 20.5% |
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| 2021年 | 285.3 | 51.2 |
足下の小規模事業者数は285.3万者となっており、企業全体が減少している中、小規模事業者も比例して減少しています。また中規模企業と比較すると、小規模企業のほうが高い割合で減少しています。
1999年から2021年にかけて、小規模企業は422.9万者から285.3万者へと32.5%減少したのに対し、中規模企業は60.8万者から51.2万者へと15.8%減少にとどまります。減少率で約2倍の差がある、ということです。
なお「経済センサス」では、商業・法人登記等の行政記録を活用して事業所・企業の補足範囲を拡大しており、「事業所・企業統計調査」による結果と単純に比較することは適切ではない、という注記があります。
以降の図表では人口密度区分という考え方が使われます。
人口密度の四分位で各市区町村を4つの区分(人口密度が低いものから区分1〜区分4)に分けたものです。
| 区分 | 人口密度 |
|---|---|
| 区分1 | 0〜51.8 人/km² |
| 区分2 | 52.3〜189.6 人/km² |
| 区分3 | 189.7〜766.3 人/km² |
| 区分4 | 770.1〜23,182.1 人/km² |
区分1が最も人口密度が低いという向きを、まず間違えないようにしてください。なお「市区町村」とは、市町村に東京23区の特別区を追加したものを指します。
| 人口密度区分 | 小規模事業所 | 中規模事業所 |
|---|---|---|
| 区分1(最も人口密度が低い) | 87.1% | 12.6% |
| 区分2 | 82.9% | 16.7% |
| 区分3 | 78.9% | 20.3% |
| 区分4(最も人口密度が高い) | 74.5% | 24.3% |
人口密度がいちばん低い「区分1」では、事業所全体のうち小規模事業所が87.1%。おおよそ9割を占めます。
区分4でも74.5%あるので「小規模事業所が多い」こと自体は全国共通ですが、人口密度が低いほどその割合が高くなるという傾斜が明確です。
(1)売上高
| 人口密度区分 | 小規模事業所 | 中規模事業所 | 大規模事業所 |
|---|---|---|---|
| 区分1 | 35.4% | 54.2% | 10.4% |
| 区分2 | 23.9% | 56.2% | 19.9% |
| 区分3 | 18.7% | 49.0% | 32.3% |
| 区分4 | 16.4% | 46.9% | 36.7% |
(2)付加価値額
| 人口密度区分 | 小規模事業所 | 中規模事業所 | 大規模事業所 |
|---|---|---|---|
| 区分1 | 39.9% | 51.0% | 9.1% |
| 区分2 | 29.9% | 54.8% | 15.3% |
| 区分3 | 24.4% | 52.6% | 23.0% |
| 区分4 | 19.7% | 46.7% | 33.5% |
向きは事業所数のときと同じです。「区分4」から「区分1」へ、人口密度が下がるほど小規模事業所の構成割合は上がっていき、「区分1」ではいずれも4割ほどに達します。
⇒ 人口密度が低くなるほど、小規模事業所の存在感が相対的に大きくなります。
裏を返せば、大規模事業所の割合は区分1で10.4%(売上高)・9.1%(付加価値額)と1割程度しかありません。人口の少ない地域では、大企業は事実上存在しないに等しいのです。
| 人口密度区分 | 小規模事業所 | 中規模事業所 | 大規模事業所 |
|---|---|---|---|
| 区分1 | 48.1% | 45.5% | 6.4% |
| 区分2 | 37.1% | 51.3% | 11.5% |
| 区分3 | 30.3% | 51.8% | 17.8% |
| 区分4 | 23.7% | 50.1% | 26.2% |
人口密度がいちばん低い「区分1」では、小規模事業所の構成割合が48.1%、ほぼ半分です。人口密度が下がるほどこの割合が上がるという関係がはっきり出ています。
⇒ 特に人口密度の低い地域において、小規模事業者が雇用面で重要な役割を担っていることが示唆されます。
区分1(最も人口密度が低い地域)における小規模事業所の構成割合は、次のようになります。
| 指標 | 区分1での構成割合 | 白書の表現 |
|---|---|---|
| 事業所数 | 87.1% | 約9割 |
| 従業者数 | 48.1% | 約5割 |
| 売上高 | 35.4% | 約4割 |
| 付加価値額 | 39.9% | 約4割 |
「事業所数は約9割、従業者数は約5割、売上高・付加価値額は約4割」という順に覚えておけば、数字を入れ替えた選択肢にも対応できます。
第1章で学んだ全国ベースの数字(中小企業は企業数99.7%・従業者数69.7%・売上高47.3%・付加価値額56.0%)と同じ構造──数で見るといちばん大きく、金額で見るといちばん小さい──が、ここでも繰り返されていることに注目してください。
| 特産品や農水産物など地域資源の活用 |
| 19.9% |
| 地域の環境保全 | 19.0% |
| 祭りなどの伝統行事以外の地域における文化やスポーツの振興 | 17.9% |
| 地域の美化や緑化 | 17.5% |
| 商店街の活性化 | 16.7% |
| 消防・防災活動 | 14.4% |
| 職場体験の受入れ | 10.7% |
| 防犯活動 | 8.9% |
| 交通安全活動 | 8.6% |
「祭りなどの伝統行事の開催や維持」と回答した小規模事業者が最も多く(38.6%)、2位の「地場産業の活性化」(25.2%)を13ポイント以上引き離しています。
⇒ 事業に直接関係しないところでも、小規模事業者は地域の伝統や文化を守る上で欠かせない存在であることが推察されます。
「特に行っていない」が20.5%で3位に入っている点も押さえておきましょう。裏を返せば約8割が何らかの地域貢献活動に取り組んでいるということです。
中小企業庁「令和3年度商店街実態調査」による、期待されていると思うもの(n=4,064)と期待に応えられていると思うもの(n=2,834)の比較です。
| 役割 | 期待されている | 応えられている | 差(ギャップ) |
|---|---|---|---|
| 地域住民への身近な購買機会の提供 | 69.0% | 52.3% | 16.7pt |
| 治安や防犯への寄与 | 63.3% | 60.1% | 3.2pt |
| 地域の賑わいの創出 | 62.2% | 41.7% | 20.5pt |
| 自治会活動など地域活動の担い手 | 40.9% | 32.9% | 8.0pt |
| まちの中心となる顔としての役割 | 38.7% | 23.4% | 15.3pt |
| 地域情報発信の担い手 | 34.5% | 20.8% | 13.7pt |
| 一人暮らし高齢者への宅配サービス/子育て支援などのサービス | 27.4% | 12.2% | 15.2pt |
| 他の公共機能等と相まった利便性の提供 | 23.7% | 14.3% | 9.4pt |
| 町並みや歴史的資産の保存 | 23.4% | 16.2% | 7.2pt |
| 地域の歴史・文化の担い手 | 20.8% | 14.4% | 6.4pt |
| 創業機会の提供 | 18.1% | 10.1% | 8.0pt |
読み取りどころは2段階です。
① 半数を上回る3つの役割
商店街自身が「期待されている」と感じている役割を聞くと、買い物の場という答え(地域住民への身近な購買機会の提供)に加えて、「治安や防犯への寄与」「地域の賑わいの創出」も半数を超えました(順に69.0%・63.3%・62.2%)。
② ギャップの大小
「治安や防犯への寄与」は、「期待されていると思うもの」と「期待に応えられていると思うもの」の差が小さい(63.3% → 60.1%、わずか3.2ポイント)。
一方、「地域住民への身近な購買機会の提供」や「地域の賑わいの創出」は差が大きく、期待と現状のギャップが見られます(16.7ポイント・20.5ポイント)。
「治安・防犯はギャップが小さい/購買機会と賑わいはギャップが大きい」──この対比が、そのまま出題の形になります。
理屈で考えると納得がいきます。商店街が存在してシャッターが開いているだけで、街灯がつき人通りが生まれ、治安には自然に寄与します。ところが「買い物ができる」「賑わっている」と言えるだけの品揃えや集客力を保つには、常に投資と努力が要る。存在するだけで果たせる役割と、頑張らないと果たせない役割の違いです。
なお「特に期待されていることはない」は6.1%(応えられている側は0.0%)でした。
商店街におけるソフト事業の実施状況です(n=4,536)。
| 事業 | 取組中 | 検討中 | 予定なし |
|---|---|---|---|
| 祭り・イベント | 53.3% | 13.2% | 19.3% |
| 防災・防犯 | 41.0% | 13.0% | 28.5% |
| 環境美化、エコ活動 | 34.7% | ― | 36.0% |
| 共同宣伝(マップ、チラシ等) | 32.6% | 11.7% | 38.0% |
| 共通商品券(飲み歩き券・食べ歩き券等を含む) | 22.0% | 9.9% | 49.6% |
| キャッシュレス端末の導入 | 20.2% | 13.9% | 45.7% |
| 高齢者向けサービス | ― | 17.8% | 54.5% |
| まちゼミ | 9.9% | ― | 60.5% |
過半数の商店街が「祭り・イベント」について「取組中」と回答しています(53.3%)。また「防災・防犯」(41.0%)や「環境美化、エコ活動」(34.7%)を実施している商店街も多く、商店街は、地域の賑わいの創出のほか、地域の環境整備においても重要な役割を担っていることが示唆されます。
前の図表で「治安や防犯への寄与」のギャップが小さかったのは、41.0%の商店街が実際に防災・防犯に取り組んでいるからだ、と読むこともできます。
支援機関と地方公共団体それぞれから見た、商店街に期待する役割です。
| 視点 | 1位 | 2位 |
|---|---|---|
| 支援機関から見た、商店街に期待する役割 | 地域の賑わいの創出(71.0%) | 地域住民への身近な購買機会の提供(53.0%) |
| 地方公共団体から見た、商店街に期待する役割 | 地域の賑わいの創出(93.8%) | 地域住民への身近な購買機会の提供(72.7%) |
どちらも1位は「地域の賑わいの創出」、2位は「地域住民への身近な購買機会の提供」で同じ顔ぶれです。ただし地方公共団体のほうが割合が大幅に高い(93.8% 対 71.0%)点が特徴です。
ここで前の図表を思い出してください。商店街自身が「期待されている」と考えている1位は購買機会の提供(69.0%)でした。ところが支援機関と地方公共団体の1位は賑わいの創出です。
| 誰の視点か | 1位 |
|---|---|
| 商店街自身 | 地域住民への身近な購買機会の提供(69.0%) |
| 支援機関 | 地域の賑わいの創出(71.0%) |
| 地方公共団体 | 地域の賑わいの創出(93.8%) |
商店街は「売る場所」として見られたいが、周囲は「集まる場所」として期待している。しかもその賑わいの創出こそ、ギャップが最も大きい(20.5ポイント)項目でした。この三者のずれは、第6章で学ぶ中心市街地活性化法の背景を理解するうえでも役に立ちます。
地域とのつながりが強い小規模事業者は、伝統工芸品や農林水産物、観光資源などの地域資源を事業で活用しながら、後世につないでいくことも重要です。
| 論点 | 1位 | 2位 |
|---|---|---|
| 地域資源を活用したきっかけ | 地元の地域資源を後世へ伝えていくため(46.8%) | 新しい主力製品・商品・サービスを創出するため(45.2%) |
| 地域資源を活用したことによる効果 | 既存の商圏外からの新規顧客獲得(45.1%) | 既存の商圏内における新規顧客の獲得(39.1%) |
きっかけの1位と2位が46.8%対45.2%とほぼ拮抗している点に注目してください。「地域のため」という使命感と「新しい商品を作りたい」という事業意欲が、ほぼ同じ重みで並んでいます。地域資源の活用は、慈善活動でも事業でもある、ということです。
そして効果の1位が「既存の商圏外からの新規顧客獲得」(45.1%)であることは、この章の冒頭で学んだ課題への答えになっています。
小規模事業者は商圏が狭い(58.0%が同一市区町村)。人口減少で需要が縮む。だから地域の枠を超えた新たな需要の獲得が重要だ──その具体的な手段として、地域資源の活用が商圏外の顧客を連れてきているわけです。
第6章で学ぶ中小企業地域資源活用促進法や農商工等連携促進法、伝統的工芸品産業振興法といった施策は、まさにこの流れを後押しするものです。「なぜ地域資源を使うことが政策になるのか」を、この数字から説明できるようにしておきましょう。

商店街の役割と地域資源の活用
試験のポイント
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