第5章 中小企業政策の基本(基本法・憲章・計画)
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プレミアムで見る中小企業基本法が「法律」であるのに対し、中小企業憲章は閣議決定、小規模基本法は基本法に続くもう一本の法律です。3つの性格の違いを最初に押さえておきましょう。
| 中小企業基本法 | 中小企業憲章 | 小規模基本法 | |
|---|---|---|---|
| 性格 | 法律 | 閣議決定(政府の決意表明) | 法律 |
| 時期 | 昭和38年制定・平成11年全面改正 | 平成22年6月18日 | 平成26年6月27日 |
| 対象 | 中小企業 | 中小企業 | 小規模企業 |
中小企業憲章は、法律ではなく政府の決意表明という形をとった文書です。中身は基本理念と5つの基本原則などから成り、やる気のある中小企業が新しい道を開いていけるよう、中小企業政策の考え方と向かう先を示したものにあたります。「社会の主役」「国家の財産」といった熱のある言葉が並ぶのが特徴で、5つの基本原則と8つの行動指針の組み合わせがそのまま出題されます。
小規模基本法(小規模企業振興基本法)でいちばん大きいのは、見るものさしを増やしたことです。中小企業基本法が掲げる「成長発展」に加え、技術やノウハウを磨くこと、雇用を安定して保つことまで含めた「事業の持続的発展」を正面から位置づけました。大きくなることだけが正解ではないという価値観の転換だと考えてください。
そして小規模基本法に基づく基本計画(小規模企業振興基本計画)は5年間の計画で、内閣が定めるもの。4つの目標が設定されています。
簡単にいうと
平成22年6月18日に閣議決定された政府の決意表明。基本理念+5つの基本原則+8つの行動指針。「社会の主役」「国家の財産」がキーワードだよ!
くり返しになりますが、中小企業憲章は法律ではなく政府の決意表明です。基本理念と5つの基本原則などで構成され、やる気のある中小企業が新しい道を開いていけるよう、政策の考え方と方針を示しています(2010年6月18日 閣議決定)。平成22年6月18日に閣議決定されました。
ここで最も重要なのは、法律ではなく閣議決定であるという点です。したがって法的な拘束力はなく、あくまで政府の意思を示したものです。「中小企業憲章法」といった言い方は存在しません。
憲章の基本理念は、中小企業がこれまでどういう位置を占めてきたか、そしていま経済と社会のなかで何を担っているかを、次のように言い表しています。
以下は憲章の本文です。
・中小企業は、意思決定の素早さや行動力、個性豊かな得意分野などの多種多様な可能性をもつ。経営者は、企業家精神に溢れ、自らの才覚で事業を営みながら、家族のみならず従業員を守る責任を果たす。
・中小企業は、社会の主役として地域社会と住民生活に貢献し、伝統技能や文化の継承に重要な機能を果たす。中小企業は、国家の財産ともいうべき存在である。
簡単にいうと
平成26年6月27日施行。「成長発展」だけでなく「事業の持続的発展」を位置づけたのが最大のポイント!基本方針4つと基本計画の目標4つを混同しないように。
順番はこうです。まず小規模企業活性化法が平成25年9月20日に施行されました。その翌年、中小企業基本法の基本理念は踏まえたまま、焦点を小規模企業に絞ってもう一歩踏み込む形で、小規模基本法(小規模企業振興基本法)が平成26年6月27日に施行されています。
2つの法律の関係を整理しておきましょう。
| 法律 | 施行 | 性格 |
|---|---|---|
| 小規模企業活性化法 | 平成25年9月20日 |
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キーワードは3つです。
| 語句 | 文脈 |
|---|---|
| 企業家精神 | 経営者は企業家精神に溢れ、自らの才覚で事業を営む |
| 社会の主役 | 中小企業は社会の主役として地域社会と住民生活に貢献する |
| 国家の財産 | 中小企業は国家の財産ともいうべき存在である |
第1章で学んだ「意思決定の迅速性」という強みが、ここでは「意思決定の素早さや行動力」という言葉で憲章に書き込まれています。分析としての強みが、政策文書のなかで価値として宣言されている、という関係です。
また「伝統技能や文化の継承」という一句は、第4章で見た「小規模事業者の地域貢献活動1位は祭りなどの伝統行事の開催や維持(38.6%)」という数字と響き合います。
憲章が置いているものは2段構えです。政策に向き合うときの土台となる5つの基本原則と、実際に動くときの道しるべとなる8つの行動指針。この5と8という数の組み合わせが問われます。
| 基本原則(5つ) | 行動指針(8つ) |
|---|---|
| ① 経済活力の源泉である中小企業が、その力を思う存分に発揮できるよう支援する | ① 中小企業の立場から経営支援を充実・徹底する<br>② 人材の育成・確保を支援する |
| ② 起業を増やす | ③ 起業・新事業展開のしやすい環境を整える |
| ③ 創意工夫で、新しい市場を切り拓く中小企業の挑戦を促す | ④ 海外展開を支援する |
| ④ 公正な市場環境を整える | ⑤ 公正な市場環境を整える |
| ⑤ セーフティネットを整備し、中小企業の安心を確保する | ⑥ 中小企業向けの金融を円滑化する<br>⑦ 地域および社会に貢献できるよう体制を整備する<br>⑧ 中小企業への影響を考慮し政策を総合的に進め、政策評価に中小企業の声を生かす |
数が合わない(5対8)ので、対応関係に癖があります。
・基本原則①には行動指針①②の2つが対応
・基本原則⑤には行動指針⑥⑦⑧の3つが対応
・基本原則②③④にはそれぞれ行動指針③④⑤が1つずつ対応
覚え方のコツは、基本原則と行動指針で言葉がそのまま重なっている2か所に注目することです。
| 基本原則 | 行動指針 |
|---|---|
| ② 起業を増やす | ③ 起業・新事業展開のしやすい環境を整える |
| ④ 公正な市場環境を整える | ⑤ 公正な市場環境を整える |
とくに④と⑤は文言が完全に一致しています。ここを軸にすると、前後の並びを思い出しやすくなります。
支援する → 起業を増やす → 挑戦を促す → 公正な市場環境 → セーフティネット
前半(①〜③)は攻め、後半(④⑤)は守りです。そして中小企業基本法の基本方針と並べると、対応が見えてきます。
| 中小企業基本法の基本方針 | 中小企業憲章の基本原則 |
|---|---|
| ① 経営の革新および創業の促進 | ② 起業を増やす/③ 挑戦を促す |
| ② 経営基盤の強化 | ① 力を発揮できるよう支援/④ 公正な市場環境 |
| ③ 環境変化への適応の円滑化 | ⑤ セーフティネットの整備 |
| ④ 資金供給の円滑化・自己資本の充実 | (行動指針⑥ 金融の円滑化) |
憲章は基本法を言い換えて、より情緒的・宣言的にしたものだと理解すると、両者を混同せずに覚えられます。
中小企業憲章は、基本原則と行動指針を入れ替える、基本法の基本方針と混ぜる、閣議決定の年月を問うという3パターンで出題されます。
とくに行動指針⑧の「政策評価に中小企業の声を生かす」は、憲章にしかない特徴的な表現です。政策を作る側の姿勢まで書き込んでいる点が、決意表明としての憲章らしさを表しています。

中小企業憲章
試験のポイント
| 小規模基本法(小規模企業振興基本法) | 平成26年6月27日 | 新しく制定された独立の法律 |
活性化法は既存の法律の改正、基本法は新法。この違いは出題されうるところです。
振興の基本原則が置かれています。対象は小規模企業で、おおむね従業員5人以下の小企業者もここに含まれます。そして見るものさしが1つではありません。中小企業基本法が掲げる「成長発展」に加えて、技術やノウハウを磨くこと、雇用を安定して保つことまで含んだ「事業の持続的発展」が並べて位置づけられています。
なお、「小規模企業者」の定義は中小企業基本法と同じです(従業員20人以下、商業・サービス業は5人以下)。
ここで新しく登場するのが小企業者という概念です。
| 用語 | 定義 |
|---|---|
| 中小企業者 | 業種別の資本金 または 従業員数(中小企業基本法第2条) |
| 小規模企業者 | 従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下) |
| 小企業者 | おおむね従業員5人以下(小規模基本法) |
3段階の入れ子構造になっていることを押さえてください。
この法律の核心はここです。
中小企業基本法の基本理念は「多様で活力ある中小企業の成長発展」でした。つまり大きくなることが前提に置かれていたわけです。
しかし小規模企業の実態を見ると、規模の拡大を志向しない事業者も数多く存在します。そこで小規模基本法は、成長発展のみならず「事業の持続的発展」も正当な目標として認めたのです。
| 法律 | 目指す姿 |
|---|---|
| 中小企業基本法 | 成長発展 |
| 小規模基本法 | 成長発展 + 事業の持続的発展(技術やノウハウの向上、安定的な雇用の維持等を含む) |
「大きくならなくてもよい、続いていくことに価値がある」という価値観の転換。これが小規模基本法の最大の意義であり、最も問われやすい論点です。
もう一つ、小規模企業施策については内閣が5年分の基本計画(小規模企業振興基本計画)を定めることになりました。政権や担当者が変わっても方針がぶれないようにするための歯止めです。
「5年間」と「内閣が定める」の2点が出題ポイントです。中小企業庁でも経済産業大臣でもなく、内閣が定めます。
小規模基本法は以下の4つを基本方針として掲げています。
1)国内外の多様な需要に応じた商品の販売または役務の提供の促進および新たな事業の展開の促進
2)小規模企業の経営資源の有効な活用ならびに小規模企業に必要な人材の育成および確保
3)地域経済の活性化ならびに地域住民の生活の向上および交流の促進に資する小規模企業の事業活動の推進
4)小規模企業への適切な支援を実施するための支援体制の整備等
| 中小企業基本法 | 小規模基本法 |
|---|---|
| ① 経営の革新および創業の促進ならびに創造的な事業活動の促進 | ① 需要に応じた商品の販売、新事業展開の促進 |
| ② 中小企業の経営基盤の強化 | ② 経営資源の有効な活用、人材育成・確保 |
| ③ 経済的社会的環境の変化への適応の円滑化 | ③ 地域経済の活性化に資する事業活動の推進 |
| ④ 資金供給の円滑化および自己資本の充実 | ④ 適切な支援体制の整備 |
並べると違いがはっきりします。
・中小企業基本法の④は「資金供給・自己資本」だが、小規模基本法の④は「支援体制の整備」
・小規模基本法には「地域」が入っている(③)
・小規模基本法の基本方針に、金融・資金調達関連のものはない
「小規模基本法の基本方針」として、最も不適切なものはどれか。
ア 経営資源の有効な活用、人材育成・確保
イ 需要に応じた商品の販売、新事業展開の促進
ウ 小規模企業向けの金融の円滑化
エ 地域経済の活性化に資する事業活動の推進
答え:ウ
小規模基本法の基本方針に、金融・資金調達関連のものはありません。
「金融の円滑化」は中小企業基本法の基本方針④(資金供給の円滑化および自己資本の充実)や、中小企業憲章の行動指針⑥(中小企業向けの金融を円滑化する)に出てくる表現です。似た言葉が3つの文書に散らばっているので、どこに何があるかを整理しておきましょう。
| 文書 | 金融関連の記述 |
|---|---|
| 中小企業基本法 第5条 | ④ 資金の供給の円滑化および自己資本の充実(あり) |
| 中小企業憲章 行動指針 | ⑥ 中小企業向けの金融を円滑化する(あり) |
| 小規模基本法 基本方針 | なし |
| 小規模企業に対する中小企業施策の方針(基本法第8条) | 3)金融、税制、情報の提供(あり) |
第Ⅱ期(令和元年6月18日閣議決定)では、以下の4つの目標(および重点施策)が設定されていました。
1)需要を見据えた経営の促進
2)新陳代謝の促進
3)地域経済の活性化に資する事業活動の推進
4)地域ぐるみで総力を挙げた支援体制の整備
基本計画は第Ⅰ期が平成26年10月3日、第Ⅱ期が令和元年6月18日、第Ⅲ期が令和7年3月25日に、それぞれ閣議決定されました。いま現行なのは第Ⅲ期です。第Ⅲ期も目標は4つですが、15の重点施策を掲げ、「経営力の向上」「地域課題解決の推進」「支援機関の体制・連携強化」「多発する大規模災害等への対応」を強めた内容になっています。
どちらも4つあるうえ、3)と4)は表現が似ているので、混同しやすいところです。
| 基本方針(法律) | 基本計画の目標 | |
|---|---|---|
| 1) | 国内外の多様な需要に応じた商品の販売・新たな事業の展開の促進 | 需要を見据えた経営の促進 |
| 2) | 経営資源の有効な活用・人材の育成および確保 | 新陳代謝の促進 |
| 3) | 地域経済の活性化ならびに地域住民の生活の向上・交流の促進に資する事業活動の推進 | 地域経済の活性化に資する事業活動の推進 |
| 4) | 小規模企業への適切な支援を実施するための支援体制の整備等 | 地域ぐるみで総力を挙げた支援体制の整備 |
違いが大きいのは2)です。基本方針は「人材の育成および確保」ですが、基本計画の目標は「新陳代謝の促進」。まったく別の内容なので、ここを手がかりにするとどちらの話か判別できます。
4)も、基本計画のほうには「地域ぐるみで総力を挙げた」という修飾がついています。基本計画のほうが「地域」の色が濃いと覚えておくとよいでしょう。

小規模企業振興基本法と基本計画の4目標
試験のポイント
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