第6章 中小企業施策
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プレミアムで見るこの節では、地域未来投資促進法/農商工等連携促進法/伝統的工芸品産業振興法(伝産法)/事業再構築補助金という4つの制度を扱います。いずれも「いまの事業の外へ出ていく」ための支援だ、という共通点で束ねられています。
整理の軸は、やはり誰が承認・認定するかです。
| 制度 | 計画 | 承認・認定する者 |
|---|---|---|
| 地域未来投資促進法 | 地域経済牽引事業計画 | 都道府県知事(官民連携型は国) |
| 地域未来投資促進法 | 基本計画(市町村+都道府県) | 国の同意 |
| 農商工等連携促進法 | 農商工等連携事業計画 | 国(主務大臣) |
| 伝産法 | 5つの事業計画 | 経済産業大臣 |
地域未来投資促進法は都道府県知事、農商工等連携は国。前の節で学んだ経営革新計画(都道府県知事等)・経営力向上計画(国)と合わせて、「地域」がつくものは都道府県、「連携」や「強化」は国という大まかな傾向で整理しておくと思い出しやすくなります。
そして事業再構築補助金。6つの類型(新市場進出/事業転換/業種転換/事業再編/国内回帰/地域サプライチェーン維持・強靱化)は、名前が似ていて紛らわしいので、何を変えるのかを軸に区別してください。
簡単にいうと
正式名称が長いけど、要は地域の強みを使って稼ぐ事業を応援する法律。基本計画は国が同意、事業計画は都道府県知事が承認だよ!
正式名称は「地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律」です。平成29年7月31日に施行されました。
条文を引いておきます(地域未来投資促進法 第1条)。
地域における産業の集積、観光資源、特産物、技術、人材、情報その他の自然的、経済的または社会的な観点からみた地域の特性を生かして高い付加価値を創出し、かつ、地域内の取引の拡大、受注の機会の増大その他の地域の事業者に対する相当の経済的効果を及ぼすものである地域経済牽引事業の促進のために地方公共団体がその地域の経済社会情勢を踏まえつつ行う主体的かつ計画的な取組を効果的に支援するための措置を講ずることにより、地域の成長発展の基盤強化を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
長い条文ですが、地域経済牽引事業の3要件がここに埋め込まれています。
1. 地域の特性を生かして
2. 高い付加価値を創出し
簡単にいうと
農商工連携は「有機的な連携」がキーワード。互いに持っていない経営資源を持ち寄るんだ。伝産法は経済産業大臣が指定する伝統的工芸品の5要件を覚えよう!
正式名称は「中小企業者と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律」です。
条文を引いておきます(農商工等連携促進法 第1条)。
中小企業者と農林漁業者とが有機的に連携し、それぞれの経営資源を有効に活用して行う事業活動を促進することにより、中小企業の経営の向上及び農林漁業経営の改善を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
目的が「中小企業の経営の向上」と「農林漁業経営の改善」の2つであることに注目してください。中小企業だけでなく、農林漁業の側も良くすることを目指しています。だからこそ主務大臣には農林水産大臣も含まれるのです。
中小企業者と農林漁業者が有機的に連携して実施する事業であることが要件となります。
簡単にいうと
6つの類型は「何を変えるか」で見分けるのがコツ。業種は日本標準産業分類の大分類、事業は中分類・小分類・細分類だよ!
経済産業省では、ウィズコロナ時代の経済環境の変化に対応するために、中小企業等の思い切った事業再構築の挑戦を支援する事業として、事業再構築補助金を実施するための基金を造成しています。
第2章で学んだ「政府施策の利用経験」では、事業再構築補助金の利用率は15.5%でした。持続化給付金(51.6%)やゼロゼロ融資(47.3%)と比べれば限定的ですが、金額の大きい補助金として注目を集めた制度です。
事業再構築指針では、以下の6つを事業再構築と定めています。
事業再構築の支援を受けるためには、以下の6つのうち、いずれかの類型に該当する事業計画を金融機関等または認定支援機関と策定することが必要となります。
① 新市場進出(新分野展開、業態転換)
中小企業等が主たる業種または主たる事業を変更することなく、新たな製品等を製造等することにより、新たな市場に進出すること。
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この3つがそのまま設問の選択肢になるので、順番も含めて覚えておきましょう。
この法律が見ているのは、地域ならではの特性を生かした事業が、どれだけの経済的効果を生むかという点です。その効果をできるだけ大きくしようと動く地方公共団体を、国が後ろから支えるという構図になっています。
支援の対象が「企業」ではなく「地方公共団体の取組」である点が、この法律の特徴です。
手続の流れは次のようになります。
1. 国(主務大臣)が基本方針を定める
2. 市町村および都道府県が基本計画を策定し、国の同意を得る
3. 同意された基本計画に基づき事業者が地域経済牽引事業計画を策定
4. 都道府県知事が承認
また、地域経済牽引事業の支援を行う「地域経済牽引支援機関」による連携支援計画を国が承認します。
```
【国(主務大臣)】基本方針
├─同意→【市町村および都道府県】基本計画 ─承認→【事業者】地域経済牽引事業計画
└─承認→【支援機関】連携支援計画 ─支援→ ※都道府県知事が承認
官民連携型は国が承認
```
基本計画は国が「同意」、事業計画は都道府県知事が「承認」、連携支援計画は国が「承認」。3つの主語と3つの動詞の組み合わせを取り違えないようにしてください。
なお官民連携型の地域経済牽引事業計画は国が承認します。
地域経済牽引事業計画(実施期間:5年以内)の承認を受けた事業者(中小企業者に限られませんが、中小企業者のほうが支援策が多い)には、次の支援措置があります。
| 支援措置 | 内容 |
|---|---|
| ① 予算 | 各種の予算事業などで審査の加点や優遇を受けられる |
| ② 税制 | 地域未来投資促進税制。条件を満たす建物・機械などへの設備投資について、特別償却か税額控除を使える |
| ③ 金融 | 日本政策金融公庫が固定金利で融資する |
| ④ 規制の特例 | 農地転用の許可や、市街化調整区域での開発許可などで配慮が受けられる |
| ⑤ 信用保険・投資育成の特例 | 中小企業信用保険法と中小企業投資育成株式会社法の特例が使える |
| ⑥ 地域団体商標の特例 | 一般社団法人でも地域団体商標を登録できるようになる |
押さえどころは3つです。
・実施期間は5年以内(経営革新計画や経営力向上計画の3〜5年とは違う)
・中小企業者に限られない(大企業も対象。ただし中小企業者のほうが支援策が多い)
・規制の特例措置(農地転用許可・市街化調整区域の開発許可)がある
とくに規制の特例措置は、他の計画制度にはない独特の支援です。工場を建てるために農地を転用したい、市街化調整区域を開発したい──そうした規制上のハードルを下げてくれる点が、この法律の実務的な価値になっています。
また地域団体商標の登録に関する特例により、一般社団法人も地域団体商標を登録できるようになりました。地域団体商標は本来、事業協同組合や商工会・商工会議所などに限られていた制度です(経営法務でも学ぶ論点です)。

地域未来投資促進法
試験のポイント
定義の要素を分解すると次の3つです。
1. 相手方は保有していないが自らは保有する経営資源であること(同じものを持ち寄るのではない)
2. お互いに持ち寄ること(一方通行ではない)
3. 連携事業期間を通じて、両者いずれもが参画すること(途中で抜けない)
「一方が原料を売り、他方が加工する」だけでは有機的な連携になりません。双方が経営資源を出し合い、期間を通じて関わり続けることが求められます。
農商工等連携促進法では、次の2つの計画が規定されています。
| 計画 | 作成する者 | 特徴 |
|---|---|---|
| 農商工等連携事業計画 | 中小企業者と農林漁業者が共同で作成 | 有機的に連携して新商品・新サービスの開発等を行う |
| 農商工等連携支援事業計画 | NPO法人、一般社団法人、一般財団法人 | 中小企業者と農林漁業者との連携を支援する |
いずれも国(主務大臣)の認定を受けると、各種支援措置が講じられます。
事業計画は「共同」で作成するという点、そして支援事業計画を作成できるのはNPO法人・一般社団法人・一般財団法人という点が押さえどころです。
1. 国(主務大臣)が基本方針を定める
2. (1) 中小企業者と農林漁業者が基本方針に基づき農商工等連携事業計画を共同で作成
(2) NPO法人等が基本方針に基づき農商工等連携支援事業計画を作成
3. 国(主務大臣)に申請
4. 認定を受けると各種支援策の利用が可能
認定するのは国(主務大臣)です。前のテーマの地域未来投資促進法(都道府県知事が承認)とは違います。
農商工等連携事業計画に基づく支援措置
農商工等連携支援事業計画に基づく支援措置
支援事業計画のほうは支援措置が信用保険法の特例だけという差があります。実際に事業を行う側と、それを支援する側で、受けられる支援の厚みが違う、ということです。
「伝統的工芸品」は好きに名乗れるものではありません。次の5つをすべて満たしたうえで、伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)にもとづく経済産業大臣の指定を受けたものだけがこう呼べます。
1. 主として日常生活の用に供されるものであること
2. その製造過程の主要部分が手工業的であること
3. 伝統的な技術または技法により製造されるものであること
4. 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること
5. その地域で、まとまった数の人がその製造を行っている、あるいは製造に関わっていること
5要件をすべて満たすこと、そして経済産業大臣の指定を受けることが必要です。
覚え方のコツは、「日常・手工業・伝統技術・伝統原材料・産地」という5つのキーワードです。
とくに引っかけに注意したいのが次の2点です。
伝統的工芸品の製造協同組合、製造事業者、支援者等は、各種事業計画(計画期間:一部を除き3〜5年)を策定し、経済産業大臣の認定を受けることができます。
事業計画の認定を受けることで、当該事業計画に基づく事業を実施する場合に、その事業を実施するために必要な経費の一部について、補助を受けることができます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 3分の2(一部2分の1) |
| 補助上限額 | 2,000万円 |
| 計画 | 対象 |
|---|---|
| ① 振興計画 | 伝統的工芸品の製造事業者を代表する事業協同組合等(特定製造協同組合等)が事業を行う場合 |
| ② 共同振興計画 | 作る側(特定製造協同組合等)が、売る側(販売事業者や販売協同組合等)と組んで取り組む場合 |
| ③ 活性化計画 | 対象が伝統的工芸品1つのとき。個々の製造事業者か、製造事業者を含むグループが取り組む |
| ④ 連携活性化計画 | 複数の伝統的工芸品について、個別の製造事業者や製造事業者を含むグループが事業を行う場合 |
| ⑤ 支援計画 | 伝統的工芸品産業を支援しようとする事業者・団体等が事業を行う場合 |
5つの計画を見分ける軸は2つです。
軸1:誰がやるか
軸2:何と組むか/いくつ扱うか
「共同」は販売との共同、「連携」は複数工芸品の連携。この2語の意味の違いを押さえれば、5つの計画は整理できます。

農商工等連携促進法

伝統的工芸品産業振興法
試験のポイント
| 用語 | 日本標準産業分類における区分 | 例(食料品製造業の場合) |
|---|---|---|
| 業種 | 大分類 | 製造業 |
| 事業 | 中分類、小分類または細分類 | 食料品製造業 |
業種のほうが大きく、事業のほうが細かいという関係です。この区別がわかっていないと、次の②③が見分けられません。
② 事業転換
中小企業等が新たな製品等を製造等することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更すること。
③ 業種転換
中小企業等が新たな製品を製造することにより、主たる業種を変更すること。
④ 事業再編
会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を補助事業開始後に行い、新たな事業形態のもとに、新市場進出、事業転換または業種転換のいずれかを行うこと。
⑤ 国内回帰
中小企業等が海外で製造等する製品について、その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を整備すること。
⑥ 地域サプライチェーン維持・強靱化
中小企業等が地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠であり、その供給に不足が生じ、または、生ずるおそれのある製品について、その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を整備すること。
①②③は「何を変えるか」で一直線に並びます。
| 類型 | 主たる業種 | 主たる事業 | 変えるもの |
|---|---|---|---|
| ① 新市場進出 | 変えない | 変えない | 市場だけ(新たな製品等で新市場へ) |
| ② 事業転換 | 変えない | 変える | 事業 |
| ③ 業種転換 | 変える | (当然変わる) | 業種 |
変える範囲が ① < ② < ③ と大きくなっていく、と覚えてください。
④事業再編は、①②③のいずれかを組織再編行為とセットで行うものです。合併・会社分割・株式交換・株式移転・事業譲渡という会社法上の行為が伴う点が特徴で、しかも補助事業開始後に行う必要があります。
⑤国内回帰と⑥地域サプライチェーン維持・強靱化は、どちらも「その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を整備すること」という同じ結末になります。違いは出発点です。
| 類型 | 出発点 |
|---|---|
| ⑤ 国内回帰 | 海外で製造等する製品を国内に戻す |
| ⑥ 地域サプライチェーン維持・強靱化 | 地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠で、供給不足が生じる(おそれのある)製品 |
⑤は「海外から」、⑥は「地域のために」。この違いで区別してください。
補助事業終了後3〜5年で付加価値額(または従業員一人当たり付加価値額)を一定以上増加させる事業計画を策定することが必要となります。
新市場進出(新分野展開、業態転換)では、新たな製品の売上高が総売上高の10%(または総付加価値額の15%)以上となる事業計画を策定する必要があるなど、補助率や補助上限額も含めて要件は申請類型等によって異なります。
なお、付加価値額の定義は、経営革新計画と同じです(営業利益、人件費、減価償却費の合計)。
この一文は重要です。第6章を通じて、付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費という定義が繰り返し使われています。
| 制度 | 付加価値額の定義 |
|---|---|
| 経営革新計画 | 営業利益+人件費+減価償却費 |
| 経営力向上計画(労働生産性の分子) | 営業利益+人件費+減価償却費 |
| 先端設備等導入計画(労働生産性の分子) | 営業利益+人件費+減価償却費 |
| 事業再構築補助金 | 営業利益+人件費+減価償却費 |
| (参考)中小企業実態基本調査 | 営業純益+人件費+支払利息等+動産不動産賃借料+租税公課 |
施策分野の付加価値額は一貫して3項目。統計分野(第1章)の付加価値額とは定義が違う、という対比で覚えておくと混乱しません。
事業計画は金融機関等または認定支援機関と策定する必要があります。自社だけで作って申請することはできません。
第3章で学んだ「支援機関の役割」や、この章で学んだ「認定経営革新等支援機関」が、ここで実際の要件として顔を出しています。補助金の申請には支援機関の関与が求められるという流れは、ものづくり補助金や持続化補助金にも共通する考え方です。

事業再構築補助金
試験のポイント
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