第6章 中小企業施策
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プレミアムで見る第2章で学んだとおり、価格転嫁率はコスト全体で45.7%、労務費に至っては36.7%にとどまっています。仕入れ値が上がっても売値に乗せられない。その背景には、発注側と受注側の力の差があります。
この力の差を法律で是正しようとするのが中小受託取引適正化法(取適法)です。令和8年1月1日に下請代金支払遅延等防止法(下請法)が改正・改称されたもので、独占禁止法の特別法であり、不公正な取引方法のうち優越的地位の濫用行為を、迅速かつ効率的に排除するために設けられました。
取適法で最も問われるのは適用範囲です。委託事業者と中小受託事業者の資本金の組み合わせで適用の有無が決まるため、2つの取引類型 × 2段階の資本金区分=4パターンを正確に覚える必要があります。改正で従業員基準も加わりました。
そして令和6年11月1日、新しい法律が施行されました。フリーランス・事業者間取引適正化等法です。こちらは資本金区分がなく、従業員を使用するかどうかで線を引きます。取適法との違い(書類の保存義務がない/遅延利息の規定がない)が、そのまま出題ポイントになります。
後半では受託中小企業振興法(旧・下請中小企業振興法。振興基準・振興事業計画・取引かけこみ寺)と、労働対策(中小企業退職金共済制度など)を扱います。
簡単にいうと
資本金(と従業員数)の組み合わせで適用が決まる。委託事業者の義務は4つ、禁止行為は11。60日以内・2年間保存・年率14.6%の3つの数字は絶対押さえよう!
下請代金支払遅延等防止法(下請法)は、令和8年1月1日に名前と中身の両方が変わりました。根拠は「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」(令和7年法律第41号)です。
| 改正前 | 改正後(令和8年1月1日〜) | |
|---|---|---|
| 法律名 | 下請代金支払遅延等防止法(下請法) | 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律<br>略称:中小受託取引適正化法/通称:取適法 |
簡単にいうと
フリーランス新法は令和6年11月1日施行。資本金区分がなく、従業員を使うかどうかで決まる。書類保存義務も遅延利息の規定もないのが取適法との違いだよ!
フリーランス・事業者間取引適正化等法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、従業員を使用せず一人の「個人」として業務委託を受けるフリーランスと、従業員を使用して「組織」として業務委託を行う発注事業者との間において、交渉力などに格差が生じることを踏まえて、取引の適正化等を図ることを目的としています(令和6年11月1日施行)。
| 用語 | 定義 |
|---|---|
| 特定受託事業者 |
簡単にいうと
振興基準を定めるのは経済産業大臣。価格交渉促進月間は毎年9月と3月で、年1回以上の価格協議が求められるよ。
下請中小企業振興法も、令和8年1月1日に受託中小企業振興法へ改称されました(取適法と同じ令和7年法律第41号による改正)。受託中小企業の振興を目的とした法律であり、振興基準、振興事業計画制度、受託中小企業振興協会について規定しています。
受託中小企業を伸ばしていくために、委託事業者と中小受託事業者のあいだの取引をまっとうな形に保つことを目的とした指針です。中身を定めて世に出すのは国、具体的には経済産業大臣になります。
主な内容は次のとおりです。
1. 中小受託事業者の生産性向上、製品・情報成果物の品質・性能の改善、役務の品質の改善
2. 委託事業者の発注分野の明確化、発注方法の改善
簡単にいうと
中小企業退職金共済は勤労者退職金共済機構との契約。掛金は全額損金または必要経費。国の助成は掛金月額の2分の1(上限5,000円)を1年間だよ!
労働対策には、中小企業労働力確保法などがあります。
労働力の確保のために中小企業が行う労働時間の短縮、職場環境の改善、福利厚生制度の充実など、雇用管理の改善の取組を支援するための法律です。
経済産業大臣と厚生労働大臣が定めた基本指針に基づき、事業協同組合などの組合や個別の中小企業者などが労働時間短縮などについての改善計画を作成し、都道府県知事の認定を受けて実施する場合、助成金、融資、信用補完などが講じられます。
押さえどころは2つです。
労働に関する法律なので厚生労働大臣が関わるのは自然ですが、経済産業大臣との共管である点が特徴です。
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| 親事業者 |
| 委託事業者 |
| 受注側 | 下請事業者 | 中小受託事業者 |
| 代金 | 下請代金 | 製造委託等代金 |
| 関連法 | 下請中小企業振興法 | 受託中小企業振興法 |
| 相談窓口 | 下請かけこみ寺 | 取引かけこみ寺 |
過去問は旧名称で出題されています。どちらの言い方も読めるようにしておいてください。
名前のほかに、次の5つが変わりました。いずれも新しい出題ポイントです。
1. 適用基準に従業員基準が加わった(資本金基準だけではなくなった)
2. 対象取引に特定運送委託が加わった
3. 手形払が禁止された(支払遅延の一類型として整理)
4. 協議に応じない一方的な代金決定が禁止された(新しい禁止行為)
5. 事業所管大臣も指導・助言ができるようになった(面的執行の強化)
独占禁止法の役割の中心は、私的独占、不当な取引制限および不公正な取引方法の禁止にあります。不公正な取引方法とは、公正な競争を阻害するおそれのある行為のうち、公正取引委員会が指定するものをいいます。
支払いを引き延ばす、相場よりはるかに安く買い叩く。こうした行為は、独占禁止法でいう優越的地位の濫用にあたり、不公正な取引方法の一種です。ただ、独占禁止法の手続きで一件ずつ処理していては時間がかかりすぎます。素早く確実に取り除くために用意された独占禁止法の特別法が、中小受託取引適正化法(取適法)です。
```
独占禁止法 ── 私的独占/不当な取引制限/不公正な取引方法の禁止
└─ 優越的地位の濫用
└─【特別法】中小受託取引適正化法(取適法)
```
取適法は独占禁止法の特別法──この位置づけがまず問われます。
製造委託等代金の支払遅延などの防止により、不公正な取引の規制と中小受託事業者の利益保護を目的とした法律です。公正取引委員会および中小企業庁が、受託取引の適正化のために、委託事業者の義務および禁止行為を規定し、違反の場合には罰金や勧告を行います。
所管は公正取引委員会と中小企業庁の2つである点に注意してください。中小企業庁だけでも、公正取引委員会だけでもありません。なお、改正で事業を所管する大臣も指導・助言ができるようになりました(第8条)。これを面的執行の強化といいます。
この法律において、以下に掲げる行為を行う場合、委託者を委託事業者、受託者を中小受託事業者とし、委託事業者を規制の対象とします。
なお、建設工事の請負は、別途「建設業法」(国土交通省所管)が適用されます。
対象となる取引(製造委託等)は、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託の4つに、改正で特定運送委託が加わって5つになりました。特定運送委託とは、販売・製造・修理・作成の目的物を取引の相手方へ運ぶ行為を他の事業者に委託することです。
1)物品の製造・修理委託および政令で定める情報成果物作成委託・役務提供委託
| 委託事業者 | 中小受託事業者 |
|---|---|
| 資本金額3億円超 | 資本金額3億円以下(個人含む) |
| 資本金額1,000万円超3億円以下 | 資本金額1,000万円以下(個人含む) |
※ 政令で定める情報成果物作成委託……プログラム作成
※ 政令で定める役務提供委託……運送、物品の倉庫における保管、情報処理
2)情報成果物作成委託・役務提供委託(プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管および情報処理に係るものを除く)
| 委託事業者 | 中小受託事業者 |
|---|---|
| 資本金額5,000万円超 | 資本金額5,000万円以下(個人含む) |
| 資本金額1,000万円超5,000万円以下 | 資本金額1,000万円以下(個人含む) |
3)従業員基準(改正で追加)
改正前の規模要件は資本金基準だけでしたが、従業員基準が加わりました。資本金基準が適用されない場合に、従業員基準で見ます。
| 取引の類型 | 委託事業者 | 中小受託事業者 |
|---|---|---|
| 製造委託等 | 常時使用する従業員300人超 | 300人以下(個人含む) |
| 情報成果物作成委託・役務提供委託 | 常時使用する従業員100人超 | 100人以下(個人含む) |
数字は資本金の3億円が従業員300人、5,000万円が100人に対応すると覚えると楽です。派遣社員は派遣元が使用者なので、派遣先の「常時使用する従業員」には入りません。
2つの類型の違いは、上段の金額が3億円か5,000万円かだけです。
| 類型 | 上段(大きい取引) | 下段(小さい取引) |
|---|---|---|
| 製造・修理委託等 | 3億円超 → 3億円以下 | 1,000万円超3億円以下 → 1,000万円以下 |
| 情報成果物・役務提供委託 | 5,000万円超 → 5,000万円以下 | 1,000万円超5,000万円以下 → 1,000万円以下 |
下段の「1,000万円」はどちらも共通です。
そしてプログラム作成、運送、倉庫保管、情報処理の4つだけは「3億円」のほうに入ります。情報成果物・役務提供委託であっても、この4つは製造委託と同じ扱いになる、ということです。
判定の手順は次のとおりです。
1. 委託側(委託事業者)の資本金が1,000万円を超えているかを確認する
2. 超えていれば、受託側(中小受託事業者)の資本金が対応する区分に収まっているかを確認する
次は旧名称(下請代金支払遅延等防止法)で出題されたものですが、資本金基準は改正後も変わっていないので、そのまま解けます。
下請代金支払遅延等防止法が適用される取引として、最も適切なものはどれか。
ア 飲食業(資本金500万円)が、サービス業(資本金100万円)に物品の修理委託をする。
イ 家電製造業(資本金500万円)が、金属部品製造業(資本金300万円)に製造委託をする。
ウ 衣類卸売業(資本金1,500万円)が、衣類製造業(資本金1,000万円)に製造委託をする。
エ 家具小売業(資本金2,000万円)が、家具製造業(資本金1,500万円)に製造委託をする。
オ 電子部品製造業(資本金1億円)が、電子部品製造業(資本金3,000万円)に製造委託をする。
答え:ウ
受託側がちょうど1,000万円のときは「1,000万円以下」に含まれるという点が決め手です。「超」と「以下」の境目を丁寧に読む習慣をつけましょう。
以下は取適法が委託事業者に課している義務です(同法第3条=支払期日、第4条=明示、第6条=遅延利息、第7条=書類等の作成及び保存)。旧下請法の「3条書面」は4条明示に、「5条書類」は7条記録に変わりました。
1. 注文する時は、直ちに取引条件などを明示すること(4条明示)
2. 注文した内容などについて記載・記録した書類等を作成し、2年間保存すること(7条記録)
3. 注文品などを受け取った日から60日以内で、かつできる限り短い期間内に代金の支払期日を定めること
4. 注文品などを受け取った日から60日を過ぎても代金を支払わなかった場合は、受け取った日の60日後から支払いを行った日までの日数に遅延利息(年率14.6%)を加算して支払うこと
3つの数字を必ず覚えてください。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 書類の保存期間 | 2年間 |
| 支払期日 | 受領日から60日以内 |
| 遅延利息 | 年率14.6% |
支払期日は「60日以内」であり「3週間以内」ではありません(令和4年度第21問 設問2でこの誤りが出題されています)。
また、遅延利息の起算点は「受け取った日の60日後から」です。受領日からでも支払期日からでもありません。
中小受託事業者の利益を不当に害する以下のような行為を委託事業者が行うことは禁止されています。
以下は取適法第5条が委託事業者に禁じている行為です。第1項に7つ、第2項に4つで、合わせて11。条文の並びのまま挙げます。
| 項 | 番号 | 禁止行為 |
|---|---|---|
| 1項 | 1 | 受領拒否 |
| 1項 | 2 | 製造委託等代金の支払遅延(手形の交付、および支払期日までに現金化が困難な支払手段の使用を含む) |
| 1項 | 3 | 製造委託等代金の減額 |
| 1項 | 4 | 返品 |
| 1項 | 5 | 買いたたき |
| 1項 | 6 | 物の購入強制・役務の利用強制 |
| 1項 | 7 | 報復措置 |
| 2項 | 8 | 有償支給原材料等の対価の早期決済 |
| 2項 | 9 | 不当な経済上の利益の提供要請 |
| 2項 | 10 | 不当なやり直し等 |
| 2項 | 11 | 協議に応じない一方的な代金決定(改正で新設) |
改正前後で入れ替わった2つが、そのまま出題ポイントです。
11項目は多いので、性質で束ねて覚えると楽になります。
⑦報復措置とは、中小受託事業者が公正取引委員会・中小企業庁・事業所管大臣に違反を知らせたことを理由に、取引を止めるなどの不利益な取扱いをすることです。これが禁止されているからこそ、中小受託事業者は安心して申告できます。

下請法の適用範囲・義務・禁止行為
試験のポイント
| 業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないもの |
| 特定受託業務従事者 | 特定受託事業者である個人および特定受託事業者である法人の代表者 |
| 業務委託 | 事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成または役務の提供を委託すること |
| 特定業務委託事業者(いわゆる発注事業者のこと) | 特定受託事業者に業務委託をする事業者であって、従業員を使用するもの |
線引きは「従業員を使用するかどうか」です。
なお特定受託事業者には法人も含まれます(代表者だけの一人会社など)。「個人に限る」という選択肢は誤りです。
取適法と異なり、資本金区分も従業員基準もありません。
また、建設工事については取適法は適用されませんが(別途、建設業法が適用されているため)、フリーランス・事業者間取引適正化等法は適用されます。
| 項目 | 取適法 | フリーランス新法 |
|---|---|---|
| 判定基準 | 資本金区分 | 従業員を使用するかどうか |
| 建設工事 | 適用されない(建設業法) | 適用される |
| 書類の保存義務 | あり(2年間) | ない |
| 遅延利息の規定 | あり(年率14.6%) | ない(ただし公正取引委員会の勧告の対象) |
| 支払期日 | 受領日から60日以内 | 受領日から60日以内(再委託の場合は発注元からの支払期日から30日以内) |
特定業務委託事業者には、以下のような規制が課せられます。
1)明示義務
特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額等を書面(または電磁的方法)により明示しなければなりません。この規定は、従業員を使用していない事業者が特定受託事業者に対し業務委託を行うときについても適用されます。
※取適法と異なり、書類の保存義務はありません。
明示義務だけは、従業員を使用していない事業者(つまりフリーランス同士の取引)にも適用されるという点が特徴です。
2)報酬支払期日
特定受託事業者の給付を受領した日から60日以内(特定業務委託事業者が、他の者から受けた業務委託を特定受託事業者に再委託する場合には、発注元から支払いを受ける期日から30日以内)の報酬支払期日を設定し、支払わなければなりません。
※取適法と異なり、遅延利息の規定はありません。ただし、支払遅延の場合には、公正取引委員会の勧告の対象となります。
再委託の場合の「30日以内」は、この法律に固有の規定です。元請から入金される前に受注側が払わされることがないよう配慮した仕組みになっています。
3)禁止行為(7つ)
特定受託事業者との業務委託(政令で定める期間(1か月)以上のもの)に関し、以下の①〜⑤の行為をしてはなりません。また、⑥・⑦の行為によって特定受託事業者の利益を不当に害してはなりません。
以下はフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)第5条が定める禁止行為です。
| 番号 | 禁止行為 | 内容 |
|---|---|---|
| ① | 受領拒否 | 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること |
| ② | 報酬の減額 | 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること |
| ③ | 返品 | 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと |
| ④ | 買いたたき | 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること |
| ⑤ | 購入・利用強制 | 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること |
| ⑥ | 不当な経済上の利益の提供要請 | 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること |
| ⑦ | 不当な給付内容の変更・やり直し | 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、またはやり直させること |
①〜⑤は行為そのものが禁止、⑥⑦は「利益を不当に害する場合」に禁止という違いがあります。
また対象は「政令で定める期間(1か月)以上」の業務委託に限られます。単発の短い仕事は対象外、ということです。
取適法の禁止行為(11)と比べると、報復措置・有償支給原材料等の対価の早期決済・支払遅延・協議に応じない一方的な代金決定がこの7つには入っていません。

フリーランス取引適正化法と下請中小企業振興法
試験のポイント
4. 対価の決定方法、納品の検査方法その他取引条件の改善
振興基準を策定・公表するのは経済産業大臣です。取適法の所管(公正取引委員会と中小企業庁)とは違う点に注意してください。
委託事業者(当時の呼び名は親事業者)が求められる取組として、以下の内容が追加されました。
1)価格交渉・価格転嫁
2)支払方法・約束手形
3)パートナーシップ構築宣言
4)知財取引・その他
押さえどころは3つです。
第2章で学んだ「価格転嫁率の推移」は、まさにこの価格交渉促進月間のフォローアップ調査によるものです。制度と統計がつながっていることを確認しておきましょう。
パートナーシップ構築宣言は、サプライチェーンの取引先や価値創造を図る事業者との連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップを構築することを、企業の代表者の名前で宣言するものです。令和2年5月18日に公表要領等が発表されました。
個々の企業は、作成した宣言を全国中小企業振興機関協会が運営するポータルサイトにWEB上で提出し、提出された宣言は、同サイト上に掲載されます。ポータルサイトにおいて公表した企業は、「パートナーシップ宣言」ロゴマーク使用規約に基づき、ロゴマークを使用して広報活動や企業間連携等の活動を展開することができます。また、経済産業省の一部の補助金について、加点措置が講じられます。
「パートナーシップ宣言」には、次の2つを盛り込む必要があります。
1. サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を越えた新たな連携
2. 委託事業者と中小受託事業者との望ましい取引慣行(受託中小企業振興法に基づく「振興基準」)の遵守
ポータルサイトを運営しているのは全国中小企業振興機関協会(公益財団法人)です。
中小受託事業者を組合員とする事業協同組合などとその委託事業者が共同で「振興事業計画」を作成し、国(主務大臣)が承認します。承認された「振興事業計画」に基づき組合が実施する事業に対して、国が支援します。
組合と委託事業者が「共同で」作成し、国(主務大臣)が「承認」する、という2点が押さえどころです。
1 公益財団法人全国中小企業振興機関協会
都道府県中小企業振興機関(都道府県協会)と密接に連携して、中小企業・小規模事業者の新たな販路開拓のための商談会の開催、取引上のトラブルに係る相談、その他中小企業・小規模事業者の振興に関する各種の支援事業を行うことにより、全国の中小企業・小規模事業者の振興を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とした公益財団法人です。「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトを運営しています。
2 都道府県中小企業振興機関協会(都道府県等中小企業支援センター)
都道府県中小企業振興機関協会(都道府県協会)は、取引の円滑化を促進し中小企業の振興を図るため都道府県に設立された受託中小企業振興協会(受託中小企業振興法第23条)のことです。
なお、都道府県協会は、都道府県等中小企業支援センターとして、地域産業振興事業や経営支援事業等、多くの事業を多面的に実施しています。代表的な事業として、「取引かけこみ寺」事業があります(令和8年1月1日に「下請かけこみ寺」から改称)。
「取引かけこみ寺」は全国48箇所(各都道府県および東京本部〔全国中小企業振興機関協会〕)に設置され、以下の取組を行っています。
① 各種相談への対応
取引に関するさまざまな相談(注:取引あっせん、経営、技術、金融、労働等に関する相談を除く)に、取適法や中小企業の取引問題に知見を有する相談員や弁護士等が親身に話しを聴き、アドバイス等を無料で行います。
② 迅速な紛争解決
中小企業・小規模事業者が抱える取引に係る紛争を迅速かつ簡便に解決するため、裁判外紛争解決手続(ADR:裁判によらない紛争解決)を用いて、全国の登録弁護士等が相談者の身近なところで調停手続等を行います(費用は無料)。
数字の押さえどころは全国48箇所(47都道府県+東京本部)です。信用保証協会の51か所(47都道府県+4市)と混同しないようにしてください。
| 組織 | 箇所数 | 内訳 |
|---|---|---|
| 信用保証協会 | 51か所 | 各都道府県+横浜・川崎・名古屋・岐阜 |
| 取引かけこみ寺 | 48箇所 | 各都道府県+東京本部 |
| 中小企業大学校 | 9校 | ― |
そして相談もADRも無料である点、ADR=裁判によらない紛争解決という用語も押さえておきましょう。

下請中小企業振興法
試験のポイント
中小企業退職金共済法に基づき、中小企業で働く従業員の福祉の増進と中小企業の振興を目的とした共済制度です。
単独では退職金制度を設けることが困難な中小企業者に対し、事業主の相互共済の仕組みと国の助成によって運営されます。
1 国の助成
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 新規加入助成 | 初めて加入した中小企業者に対して、掛金月額の2分の1(上限5,000円)を従業員ごとに、加入後4か月目から1年間、国が助成する |
| 月額変更助成 | 18,000円以下の掛金を増額する事業主に対して、増額分の3分の1を、増額した月から1年間、国が助成する |
数字が多いので表で整理しておきましょう。
どちらも助成期間は1年間ですが、起算点が違う(4か月目から/増額した月から)点に注意してください。
2 制度の仕組み
中小企業者が、勤労者退職金共済機構との間で従業員ごとに退職金共済契約を締結し、毎月一定額の掛金(5,000円〜30,000円(短時間労働者は2,000円〜4,000円))を納付することにより、従業員の退職の際には、同機構から所定の退職金が直接従業員に支払われます。
また、掛金は、全額損金または必要経費として扱われます(本試験では「非課税」という表現で出題されています)。
制度の要点は次の4つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 契約の相手方 | 勤労者退職金共済機構 |
| 掛金 | 月額5,000円〜30,000円(短時間労働者は2,000円〜4,000円) |
| 退職金の支払先 | 同機構から直接従業員に支払われる(会社を経由しない) |
| 掛金の扱い | 全額損金または必要経費(本試験では「非課税」) |
退職金が機構から直接従業員に支払われるという点が特に重要です。会社が倒産していても、従業員は退職金を受け取れます。これこそが、この制度が「従業員の福祉の増進」を目的とする理由です。
なお、後で学ぶ小規模企業共済制度とは別物です。
| 制度 | 対象 | 運営 |
|---|---|---|
| 中小企業退職金共済制度 | 中小企業の従業員 | 勤労者退職金共済機構 |
| 小規模企業共済制度 | 小規模企業の経営者・役員 | 中小企業基盤整備機構 |
| 経営セーフティ共済(倒産防止共済) | 中小企業者(連鎖倒産防止) | 中小企業基盤整備機構 |
「従業員のため」なら勤労者退職金共済機構、「経営者のため」なら中小企業基盤整備機構、と覚えておくと取り違えません。
中小企業の経営課題の背景には、必要な人材を十分に確保できないなど、人材の課題が潜んでいることが少なくありません。そのような人材課題を解決するためには、経営戦略と人材戦略を一体的に推進することが重要です。
中小企業庁では、経営・人材戦略、労働市場に精通する有識者をメンバーとする検討会を開催し、日々の経営課題の背景にある人材課題の解決のために、経営者が取り組むべき人材活用策のポイントや、利用できる支援策を整理した「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」を令和5年6月に公表しました。
本ガイドラインは、人材戦略の検討を3ステップに示しており、支援機関が中小企業に伴走しながら、人材活用に関する課題解決を目指す際に活用することを想定しています。
| ステップ | 名称 | 内容 |
|---|---|---|
| Step 1 | 経営課題と人材課題を見つめ直す | 経営課題と背景にある人材課題を確認。現在の経営課題が何であるか(「販路を拡大できない」「価格転嫁ができない」「人材が採用できない・定着しない」など)をチェックリストで確認し、該当する経営課題の背景に、どのような人材の課題が潜んでいるかを確認 |
| Step 2 | 人材戦略を検討する | 課題に対する人材戦略を検討。Step 1で明らかになった課題に対する人材戦略を、「中核人材の採用」「中核人材の育成」「業務人材の採用・育成」の3つに整理し、具体的な対策(副業・兼業人材の活用、リスキリングによる人材育成、人事評価制度の見直しなど)を検討 |
| Step 3 | 人材戦略を実行する | 人材課題を解決するための具体的な取組を確認。Step 2で定めた人材戦略に取り組む際のポイントや、取組に活用できる政府の支援策、サポートしてくれる支援機関(よろず支援拠点、商工会・商工会議所、地域金融機関、ハローワークなど)を紹介。あわせて、具体的な取組事例も紹介 |
Step 2の3分類が押さえどころです。
「中核人材の採用」「中核人材の育成」「業務人材の採用・育成」
中核人材は採用と育成が分かれているのに対し、業務人材は採用・育成がひとまとめになっています。経営を担う中核人材のほうが、より丁寧な戦略を要する、という考え方です。
3ステップの流れは、「見つめ直す → 検討する → 実行する」。第3章で学んだ経営力再構築伴走支援と同じく、支援機関が伴走しながら使うことを想定している点も共通しています。

中小企業退職金共済制度
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。