中小企業の事業承継と再生支援
第6章 中小企業施策
中小企業経営者の高齢化が加速し、後継者が見つからないまま廃業を選択するケースが増えています。せっかく培った技術・顧客・ノウハウが失われる「黒字廃業」を防ぐことが重要な政策課題です。本節では、相続税・贈与税を猶予する「事業承継税制(一般措置・特例措置)」、M&Aを活用した第三者承継の流れ(中小M&Aガイドライン)、そして経営が苦しい企業を再生に導く「中小企業活性化協議会」の役割を学びます。特例措置の「100%猶予・令和9年12月31日まで」は必須暗記事項です。
経営承継円滑化法に基づく税制措置(法人版・個人版)
簡単にいうと
後継者に会社の株式を引き継ぐとき、莫大な相続税・贈与税が壁になる——それを100%猶予する「特例措置」の期限と要件を正確に押さえよう。
中小企業のオーナー経営者が持つ自社株式は、事業承継時に多額の相続税・贈与税の対象となり、後継者の資金負担が承継の大きな障壁となってきました。経営承継円滑化法はこの問題を解決するため、後継者が非上場株式等を相続・贈与で取得した場合の税金を猶予・免除する制度です。
制度には「一般措置」と「特例措置」の2種類があります。一般措置は:相続税=課税価格の80%猶予・贈与税=100%猶予。特例措置は:相続税・贈与税ともに100%猶予。特例措置は平成30年〜令和9年(2027年)12月31日までに贈与・相続が行われた場合が対象で、①対象株式数の上限を撤廃(全株式が対象)②雇用要件の弾力化(5年間平均8割未達でも継続可能)③親族外を含む複数株主から最大3人まで後継者に適用可能——という4つの改正ポイントがあります。
個人版事業承継税制は、個人事業主が廃業せず後継者に事業用資産を引き継ぐための制度で、平成31年4月〜令和10年(2028年)12月31日までの贈与・相続が対象です。事業用宅地(400m²まで)・建物(800m²まで)・機械・器具備品等が対象資産です。
試験のポイント
- ・一般措置(法人):相続税=課税価格の80%猶予・贈与税=贈与税額全額(100%)猶予
- ・特例措置(法人):平成30年〜令和9年(2027年)12月31日の非上場株式の贈与・相続が対象
- ・特例措置の4つの改正ポイント:①対象株式数の上限を撤廃→全株式が対象 ②相続税・贈与税ともに100%猶予 ③雇用要件の弾力化(5年間平均8割未達でも継続可能) ④親族外を含む複数の株主から3人まで後継者対象
- ・個人版事業承継税制:平成31年(2019年)4月1日〜令和10年(2028年)12月31日の一定の事業用資産の贈与・相続が対象(都道府県知事に計画提出)
- ・個人版の対象:事業用宅地(400m²まで)・建物(800m²まで)・機械・器具備品等の幅広い事業用資産
- ・所在不明株主に関する会社法の特例(令和3年8月2日創設):非上場の中小企業者に限り「5年」を「1年」に短縮して株式の売却・買取りが可能
事業承継ガイドライン・中小M&Aガイドライン・PMIガイドライン
簡単にいうと
後継者が見つからないなら「M&A」という選択肢がある——中小M&Aの5ステップの流れと、M&A後の統合「PMI」の重要性を理解しよう。
後継者不在の中小企業が廃業を選ぶ前に検討すべき選択肢の一つがM&A(第三者承継)です。事業承継ガイドラインでは、事業承継を進める5つのステップとして①準備の必要性の認識→②経営状況・課題等の把握(見える化)→③経営改善(磨き上げ)→④事業承継計画策定・M&Aの工程→⑤実行→ポスト事業承継(成長・発展)という流れが示されています。事業承継には「人(経営)」「資産」「知的資産(目に見えにくい強み)」の3要素が引き継がれることが重要です。
中小M&Aガイドライン(令和2年3月公表・令和6年8月30日第3版公表)は、後継者不在企業のM&Aを円滑化するための指針で、仲介者・FA(フィナンシャル・アドバイザー)の行動規範や手数料の透明性確保などが定められています。
M&A成立後には「PMI(POST MERGER INTEGRATION)」として経営・業務・IT等の統合作業が必要で、中小PMIガイドライン(令和4年3月公表)がその実践を支援しています。M&Aは「成立がゴール」ではなく、統合後のシナジー実現こそが本来の目的です。
試験のポイント
- ・事業承継ガイドラインの5ステップ:ステップ1(準備の必要性の認識)→ステップ2(経営状況・課題等の把握(見える化))→ステップ3(経営改善(磨き上げ))→ステップ4(事業承継計画策定・M&Aの工程)→ステップ5(事業承継の実行・M&Aの実行)→ポスト事業承継(成長・発展)
- ・事業承継の3要素:人(経営)・資産・知的資産(目に見えにくい経営資源・強み)
- ・中小M&Aガイドライン:令和2年(2020年)3月31日公表・令和6年(2024年)8月30日第3版公表
- ・中小M&Aフロー:後継者不在→身近な支援機関に相談→意思決定→仲介者・FAを選定(または選定しない)→バリュエーション→譲り受け候補の選定(マッチング)→交渉→基本合意の締結→デュー・ディリジェンス(DD)→最終契約の締結→クロージング→ポストM&A
- ・FA(フィナンシャル・アドバイザー):譲渡側または譲受け側一方との契約に基づきマッチング支援等を行う支援機関
- ・PMI(POST MERGER INTEGRATION):M&A成立後に統合を進める取組。中小PMIガイドラインが令和4年(2022年)3月17日に公表
産業競争力強化法に基づく再生支援(中小企業活性化協議会等)
簡単にいうと
経営が苦しくなった中小企業の再生を、専門家チームが無料で伴走支援する——「中小企業活性化協議会」と「再チャレンジ支援融資」の仕組みとは?
経営が悪化した中小企業でも、適切な支援を受ければ再生できるケースは少なくありません。また、一度廃業した経営者が再び起業する「再チャレンジ」も支援されています。
中小企業活性化協議会(旧称:中小企業再生支援協議会)は産業競争力強化法に基づき全都道府県に設置された公的相談機関です(全国本部は中小企業基盤整備機構)。中小企業診断士・公認会計士・税理士・弁護士等の常駐専門家が、収益改善の相談から経営改善計画の策定支援、再チャレンジに至るまで無料で対応します。
事業承継・引継ぎ支援センターは各都道府県に設置されており、事業承継に関する課題解決・M&Aマッチングをワンストップで提供します(相談は原則無料)。
再チャレンジ支援融資(再挑戦支援資金)は日本政策金融公庫(中小企業事業)が実施し、①廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人②廃業時の負債が新事業に影響を与えない程度に整理される見込み③廃業理由がやむを得ないもの等——の3要件を満たす者が対象です。「失敗を恐れずに挑戦し直せる環境づくり」が政策の趣旨です。
試験のポイント
- ・中小企業活性化協議会:全都道府県設置・産業競争力強化法に基づく相談機関(全国本部は中小企業基盤整備機構)
- ・協議会の機能:収益改善から再チャレンジまでの幅広い相談・課題解決のアドバイス・計画策定を含めた個別支援(常駐専門家として中小企業診断士・公認会計士・税理士・弁護士等)・相談は無料
- ・事業承継総合支援事業:各都道府県に設置された事業承継・引継ぎ支援センターで事業承継に関する課題解決・マッチング支援をワンストップで提供(相談は原則無料)
- ・再チャレンジ支援融資(再挑戦支援資金):廃業歴等を有する個人や廃業歴等を有する経営者が営む法人が対象・日本政策金融公庫(中小企業事業)が実施
- ・再チャレンジの3要件:①廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人 ②廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等 ③廃業の理由・事情がやむを得ないもの等
まとめ
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