令和5年度 事例IV 過去問解説
企業: D社(化粧品製造) 業種: 化粧品製造業
企業・事例の概要
OEM生産を活用する化粧品製造会社。売上高・有形固定資産回転率が悪化する一方、自己資本比率は改善。男性向けアンチエイジング製品の基礎研究を進めており、新規事業投資の意思決定が主題。CVP分析・NPV計算・OEM生産vs新製品開発の財務的利点に関する問題が出題された。
令和3年度と令和4年度の財務諸表を比較し、悪化した指標2つ・改善した指標1つを選定して分析せよ(設問1:指標選定と計算、設問2:売上高営業利益率悪化の原因80字以内)。
設問の意図
2期比較の財務分析。悪化2指標・改善1指標の選定と原因分析が求められる。
与件文のポイント
財務諸表
「売上高営業利益率:R3年度17.00%→R4年度11.59%(約5.4ポイント悪化)」
→ 悪化指標①:収益性の低下
財務諸表
「有形固定資産回転率:R3年度89.82回→R4年度71.90回(売上減少による効率低下)」
→ 悪化指標②:資産効率の低下
財務諸表
「自己資本比率:R3年度69.47%→R4年度77.56%(有利子負債削減・利益剰余金増加で改善)」
→ 改善指標:安全性の向上
解法のポイント
- ·悪化指標は収益性(売上高営業利益率)と効率性(有形固定資産回転率)から選ぶ
- ·改善指標は安全性(自己資本比率)が適切
- ·原因分析:売上高減少+売上原価率上昇+販管費の固定費化(人件費維持方針)
模範解答例
悪化指標は①売上高営業利益率(17.00%→11.59%、収益性低下)②有形固定資産回転率(89.82回→71.90回、効率低下)。改善指標は③自己資本比率(69.47%→77.56%、安全性向上)。売上高営業利益率悪化の原因は、売上減少・原材料価格上昇・基礎研究費負担増・人件費削減不実施により利幅が低下したため。
158字
(設問1)高低点法でCVP分析を行い、変動費率・固定費・損益分岐点売上高を求めよ。(設問2)X製品の販売中止の可否と理由を述べよ。(設問3)売上高基準の共通費配賦の妥当性について80字以内で論述せよ。
設問の意図
CVP分析の計算(設問1)・貢献利益による意思決定(設問2)・配賦基準の妥当性評価(設問3)の複合問題。
与件文のポイント
CVP計算
「売上高変動額1,248,197千円、営業利益変動額457,990千円」
→ 高低点法の元データ
設問2前提
「X製品の限界利益2億円、回避可能な個別固定費1.5億円×0.8=1.2億円」
→ 貢献利益=2億−1.2億=8,000万円(正のため中止すべきでない)
解法のポイント
- ·設問1:変動費率=457,990÷1,248,197≒63.31%、固定費=1,141,590千円、損益分岐点=3,111,447千円
- ·設問2:貢献利益が正(8,000万円)のため中止すべきでない
- ·設問3:売上高基準は拡大製品に多く配賦→販売拡大へのディスインセンティブが生じる
模範解答例
設問1:変動費率63.31%、固定費1,141,590千円、損益分岐点売上高3,111,447千円。設問2:中止すべきでない。X製品の貢献利益(限界利益2億円−回避可能固定費1.2億円)は8,000万円の黒字のため。設問3:妥当でない。売上高が増えた製品に共通費が多く配賦され、販売拡大のインセンティブにならないため。
159字
新規設備投資11,000万円について、(設問1)販売量10,000個・5,000個それぞれのNPVを求めよ。(設問2)70%の確率で予測通り・30%で予測の70%という条件でNPVの期待値を求め、投資の可否を述べよ。
設問の意図
NPV計算(設問1)と期待値アプローチによる不確実下の投資判断(設問2)を問う問題。
与件文のポイント
前提条件
「販売価格1万円/個、変動費0.4万円/個、固定費2,200万円、耐用年数5年、残存10%、税率30%、割引率8%」
→ NPV計算の基礎データ
解法のポイント
- ·10,000個:NPV≈2,585万円(正)、5,000個:NPV≈△5,702万円(負)
- ·NPV期待値=2,585×0.7+(−5,702)×0.3≈99万円(正のため投資実行すべき)
- ·税引後CFは税引後利益+減価償却費で計算。運転資本増減・処分収入の税効果に注意
模範解答例
設問1:10,000個の場合NPV≈2,585万円(正)、5,000個の場合NPV≈△5,702万円(負)。設問2:NPVの期待値=2,585×0.7+(−5,702)×0.3≈99万円で正のため、投資を実行すべきである。不確実性があっても期待値ベースでは黒字が期待できる。
137字
(設問1)OEM生産を委託することの財務的利点を50字以内で述べよ。(設問2)新製品開発を自社生産で行うことの財務的利点を50字以内で述べよ。
設問の意図
OEM生産と自社生産それぞれの財務的メリットを比較的に問う問題。固定費構造・資産効率の観点が核心。
与件文のポイント
財務分析
「D社の有形固定資産回転率71.90回は同業他社6.74回より高い」
→ OEM活用による設備投資不要が回転率の高さに寄与
与件文
「将来の成長を見込んで、当面は人件費等の削減は行わない方針」
→ 新製品開発で既存人員を有効活用できる根拠
解法のポイント
- ·OEM利点:設備投資不要→固定資産が少なく有形固定資産回転率が高い、変動費化で損益分岐点低下
- ·新製品開発利点:既存人員・設備をフル活用→労働生産性向上・固定費の売上による吸収
模範解答例
設問1(OEM生産の財務的利点):設備投資が不要で固定資産が少なくなり有形固定資産回転率が高まる。生産コストが変動費化され損益分岐点が低下する。設問2(新製品開発の財務的利点):既存の人員・設備を活用して生産性を高めることができ、固定費を新製品売上で回収して収益性を改善できる。
139字
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