事例IV(財務・会計)攻略テキスト
事例IVとはどんな事例か
財務分析・CVP分析・NPV計算・線形計画法など、財務・会計の知識を使って企業の投資判断や収益性改善を提案する事例です。計算問題と論述問題が混在しており、公式の正確な理解と計算手順の習熟が求められます。
財務分析(第1問)の解き方
財務分析は事例IV第1問の定番テーマです。「D社と同業他社を比較して優れている指標2つと課題指標2つ(または1つ)を選定せよ」という形式が典型。
【指標の選び方のポイント】優れている指標 = D社 > 同業他社、課題指標 = D社 < 同業他社。指標は3〜4つ計算して比較してから選びます。
【収益性指標】売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高販管費比率。
【効率性指標】有形固定資産回転率、棚卸資産回転率、売上債権回転率。
【安定性指標】自己資本比率、流動比率、当座比率。
【生産性指標】従業員1人当たり付加価値額 = (営業利益 + 人件費 + 減価償却費) ÷ 従業員数。生産性指標を1つ含めるよう指示されることがあります(令和4年度)。
【解答の型】「○○比率は○○%でD社が同業他社の○○%を上回っており、○○(与件文の事業特性)によるものである。」という形で、必ず与件文と紐づけて説明します。
CVP分析(損益分岐点)の解き方
CVP分析は変動費・固定費・利益の関係を分析し、損益分岐点や目標販売量を求める手法です。
【基本公式】変動費率 = 変動費 ÷ 売上高。限界利益率 = 1 - 変動費率。損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率。
【目標利益を達成する販売量】= (固定費 + 目標利益) ÷ (単価 - 単位変動費)。
【段階的価格帯がある問題のコツ】各価格帯で「目標達成に必要な販売量」を計算 → その価格帯の販売可能範囲に収まるかを確認 → 収まる価格帯が答え。
令和3年度例:1,060円/kgの価格帯では必要販売量38,571kg → 30,001〜40,000kgの範囲内で実現可能。
NPV(正味現在価値)計算の解き方
設備投資の経済性評価でNPV計算は最重要テーマです。正確なキャッシュフロー構造を理解することが先決です。
【ステップ1: 期首CF】設備投資額(マイナス)+ 旧設備売却収入(プラス)+ 売却損の節税効果(プラス)+ 売却益の節税効果(マイナス)。
【ステップ2: 各年CF(税引後)】税引後CF = 収益増加額(または費用削減額)× (1 - 税率)。節税効果 = 減価償却費増加額 × 税率。各年CF = 税引後収益増加 + 節税効果。
【ステップ3: NPV計算】NPV = 期首CF + Σ(各年CF × 現価係数)。年金現価係数表を使って各年の現価を合計します。
【判定】NPV > 0 → 採用。NPV < 0 → 不採用。
【よくある落とし穴】旧設備の帳簿価額の計算(残存期間を耐用年数で按分)。売却損益の節税効果の符号(損なら税金が減る → プラス)。繰り延べ投資(1年後に導入する場合)の取り扱い。
線形計画法(LP)の解き方
制約条件のもとで利益を最大化する最適な製品ミックスを求める問題です。
【制約条件が1つの場合】単位制約当たりの限界利益(限界利益 ÷ 制約消費量)が高い製品を優先生産します。
【制約条件が2つの場合】連立方程式を立てて解きます。2A + 4B ≤ 3,600 と 4A + 2B ≤ 6,000 の場合、両方が等号で成立する交点を連立方程式で求めます。A=1,400個、B=200個が解となり、この点での利益が最大です。
手順:①各製品の限界利益を計算(販売価格 - 変動費)。②制約条件を式で表す。③1つなら比率で優先順位、2つなら連立方程式。④最大利益を計算。
論述問題(リスクマネジメント等)の解き方
事例IVの最終問題は論述形式が多く、財務的リスクや定性的な分析力が問われます。
【リスクマネジメント問題の型】リスクを2点挙げてそれぞれのマネジメント方法を述べる。
典型的なリスクと対策:①為替変動リスク → 為替予約・通貨オプション・価格条項設定。②投資回収リスク → 感度分析・シナリオ分析・段階的投資・撤退基準設定。③在庫リスク → 適正在庫管理・需要予測精度向上。
【定性的分析問題の型】事業撤退/継続の判断。財務数値だけでなく、定性的な貢献(ブランド・顧客基盤・社員のモチベーション等)も考慮した分析。
解答例:「リスクは①為替変動リスクと②投資回収リスクである。①には為替予約等のリスク回避手段を講じ、②には感度分析を用いてNPVがゼロとなる販売台数を確認するマネジメントを行う。」
80分の解答プロセスと時間配分
事例IVは、解く順番とタイムマネジメント、そして計算ミス対策が合否を大きく左右します。実力があっても、時間切れや計算ミスで大きく失点する事例だからです。次の手順を型として固めます。
【0〜3分】全設問にざっと目を通し、各問の配点・難易度・所要時間を把握します。第1問の経営分析と各設問の記述(論述)問題は比較的確実に取れるため、まずそこを押さえる方針を立てます。
【解く順番】(1)経営分析(第1問)→(2)各問の記述・文章問題→(3)CVP・NPVなど確実に解ける計算→(4)難しい計算・最後の大問、の順が定石です。難問に時間を溶かさず、取れる問題から確実に得点します。
◎ポイント
事例IVは「部分点の積み上げ」が勝負です。最終値が合わなくても、計算過程・使った式・途中の数値を必ず書き残せば部分点が入ります。答えだけを書いて過程を省略しないでください。
★実践テクニック
計算問題は「単位(千円・百万円)」「税引前か税引後か」「年度のズレ(初期投資は第0年度)」で間違えやすいです。問題用紙の余白に、与えられた数値・税率・割引率・単位を最初に書き出してから解き始めると、ミスが激減します。
【経営分析の指標選び】収益性・効率性・安全性の3カテゴリーから、与件の課題に合う指標を選びます。良い指標と悪い指標を、与件の根拠とセットで挙げ、その数値が示す意味を記述で結びます。
!注意
時間が足りなくなったら、難しい計算問題は潔く飛ばし、経営分析と記述問題を完成させることを最優先にします。1問の配点が大きい事例IVで、難問1問に固執して他を落とすのが最悪のパターンです。
◎まとめ
事例IVは「取れる問題(経営分析・記述・頻出計算)を確実に取り、難問は捨てる勇気を持つ」。日々の演習で計算ミスの原因と対策をノートに書き溜め、同じミスを繰り返さないことが、本番での安定得点につながります。
財務・会計の重要公式まとめ
【売上高総利益率】= 売上総利益 ÷ 売上高 × 100
【売上高営業利益率】= 営業利益 ÷ 売上高 × 100
【有形固定資産回転率】= 売上高 ÷ 有形固定資産(高いほど効率的)
【棚卸資産回転率】= 売上高 ÷ 棚卸資産(高いほど在庫効率が良い)
【自己資本比率】= 自己資本 ÷ 総資本 × 100(高いほど財務安定)
【損益分岐点売上高】= 固定費 ÷ 限界利益率
【NPV】= 初期投資(-)+ Σ(各年CF × 現価係数)
【減価償却費(定額法)】= (取得原価 - 残存価値) ÷ 耐用年数
【税引後CF】= 税引前増分利益 × (1 - 税率) + 減価償却費
攻略のポイント
- ✓財務分析は必ず同業他社と数値比較して、その差の理由を与件文で説明する
- ✓生産性指標(付加価値額/人)は専門的なので必ず公式を暗記する
- ✓NPV計算はキャッシュフロー構造(期首・各年・最終年)を図で整理してから計算する
- ✓線形計画法は制約条件の数(1つか2つか)で解法が変わる
- ✓リスクマネジメント論述は「リスクの名称」「具体的な事象」「対策手段」を3点セットで書く
独学でありがちな失敗
なる子ちゃんからのアドバイス
事例IVは計算が多く「どこかでミスる」のが普通です。部分点を確実に取るために、計算式・単位・判定コメントをすべて書くことを徹底してください。白紙は0点ですが、途中式があれば部分点が取れます。