恒常所得仮説(Permanent Income Hypothesis)とは、フリードマンが提唱した消費理論で、合理的な消費者は一時的な所得変動に左右されず、長期的な平均所得(恒常所得)に基づいて消費水準を決定するという考え方である。突発的な収入増(宝くじ当選・臨時ボーナス)や突発的な所得減(一時的な失業)が起きても、消費はほとんど変化せず、その影響は貯蓄・取り崩しによって吸収されると予測する。この仮説は、短期的には限界消費性向(MPC)が低く見え、長期的には高く見えるという実証的観察(クズネッツのパラドックス)を統一的に説明できる。政策的含意として、一時的な減税(臨時給付金など)は恒常所得を変えないため消費刺激効果が小さく、恒久減税は恒常所得を引き上げるため効果が大きいとされる。ライフサイクル仮説とともに「期待所得に基づく消費理論」として対比される。